少年王者舘『思い出し未来』天野天街の会見レポート

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 チラシ原画:アマノテンガイ

チラシ原画:アマノテンガイ

「終わりが始まりを食い尽くしていく、シンプルだけど複雑怪奇な世界に」(天野)

ここ最近は「tsumazuki no ishi」との合同公演や、バンド「パスカルズ」と組んだダンス公演など、新しい試みの舞台が続いていた名古屋の劇団「少年王者舘」。しかし次回公演は、なんと6年ぶりに主宰・天野天街の書き下ろし長編作品を上演する。しかも関西では4年ぶり、四日市市では初の公演を行うというトピック付きだ。流山児★事務所『西遊記』や『レミング』など、外部の舞台でも高く評価されている天野だが、彼の思い描く世界が最も理想に近い形で具現化されるのは、やはり自らの劇団での公演だろう。その注目の新作『思い出し未来』を前に、天野天街の会見が大阪で行われた。

天野天街

天野天街

映像やダンスや言葉などの舞台上の情報量が異常に多いのに、いわゆる「物語」というものが存在しないため、一見非常に難解に思える少年王者舘の舞台。しかしその根本にあるのは「私がいるこの世界とは何なのか?」という実に素朴な、そして誰もが一度は考えるであろう疑問だという。

「かいつまんで言うとものすごく簡単なことになってしまうけど、基本的に“なぜこの世界はあってしまうのか”“私はどこから来て、どこへ行くのか”という話です。あるいは宇宙の果てはどうなっているのか、宇宙の始まりの前や終わりの後はどんなのだろうとか。先端の物理学者が考えても結局わかんないことを、演劇という一つの枠に当てはめるとどうなるんでしょう? という所から、いつも始まるんです。演劇には“(芝居が)始まって終わる”という枠があってしまうということと、それを重ね合わせてみたいという」

「思い出し笑い」と掛けたという今回のタイトル。廃工場と駅が重なっているような世界の中で、巷でよく聞く「懐かしい未来」という感覚とは一味違う“未来”を体感させることに挑戦したいとのことだ。

「ウロボロス(蛇が自分の尻尾を咥えて円環状になっている図。パラドックスを語る時によく使われる)のような、過去が未来を…始まりが終わりを食い尽くしていくという構造の芝居をやりたいというのが、今回の一番の動機。いつもよりシンプルにしたいんですが、シンプルっていうのとわかりやすいのはまた別で、構造は複雑怪奇にどんどん成長させていきたいんです。アインシュタインの方程式が、シンプルだけどすごいものをはらんでいるように、図形や図式に還元できるような複雑なことをやってみたい。どこから始まってどこから終わるのか? というやり口として、演劇でできることにはいろんな可能性があると思うんですけど、それの新しい形を目指しています」

少年王者舘 第36回本公演『累-かさね-』より 撮影:羽鳥直志

少年王者舘 第36回本公演『累-かさね-』より 撮影:羽鳥直志

ちなみに脚本は、会見を行った時点ではまだ序盤を執筆中の段階。「できるだけ自分を無意識に近づけてから書き始めるというやり方」と聞くと致し方なしと思うけど、今回はさらに新しい課題を自らに与えているそう。

「いつもは作る側の無意識に恐ろしく頼った作り方をしてますけど、今回はちょっとだけそれを操作しようかなと思ってるんです。でもこれが、なかなか難しい。今のところまだ、未来からの思い出が来ていないという状態です。そのうち来ると信じてるんですけど」

ほとんどの時間が「創作の苦しみを語る会見」(天野談)となってしまったが、それでも天野ワールドを理解するヒントがいくつか出てきた会見だった。彼が未来を思い出し、そのテキストが王者舘の役者たちの演技とスタッフワークによって立体化された時は、まるで世界の終わりの始まり(あるいは始まりの終わり)を目撃するかのような、得も言われぬ圧倒感に満ちた舞台となるに違いない。

公演情報

少年王者舘 第38回本公演『思い出し未来』

《愛知公演》
■日時:2月11日(木)~14日(日) 19:30~ ※13日=14:00~/19:30~、14日=14:00~
■場所:七ツ寺共同スタジオ
■料金:前売=一般3,000円 学生2,000円 当日=各500円増
 
《三重公演》 Yonbun Drama Collection~四日市演劇化計画~参加作品
■日時:2月18日(木)・19日(金) 19:00~
■場所:四日市市文化会館 第1ホール舞台上特設ステージ
■料金:前売=一般3,000円 学生1,500円 当日=一般3,300円 学生1,600円
 
《兵庫公演》
■日時:2月26日(金)~28日(日) 26日=19:30~、27日=14:00~/19:30~、28日=14:00~
■場所:アイホール(伊丹市立演劇ホール)
■料金:前売=一般3,000円 学生2,000円 当日=各500円増
 
《東京公演》
■日時:3月3日(木)~8日(火) 19:30~ ※5・7日=14:00~/19:30~、6日=18:00~、8日=14:00~
■場所:ザ・スズナリ
■料金:前売=一般3,500円 学生2,500円 当日=各500円増
 
■作・演出:天野天街
■出演:夕沈、虎馬鯨、白鷗文子、雪港、ひのみもく、小林夢二、宮璃アリ、水柊、池田遼、る正和
※ほぼ全公演に日替わりゲストが登場。ゲストのスケジュールは公式サイトでご確認を。
■公式サイト:http://www.oujakan.jp/

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