新世紀のフレンチ・ロック・ミュージカル『1789』、元宝塚歌劇団宙組トップスター凰稀かなめが王妃役に!

インタビュー
舞台
2016.2.12
『1789 ーバスティーユの恋人たちー』で女優デビューを飾る凰稀かなめ(撮影/石橋法子)

『1789 ーバスティーユの恋人たちー』で女優デビューを飾る凰稀かなめ(撮影/石橋法子)

男役を脱ぎ捨て、マリー・アントワネット役で本格女優デビュー!

2012年にフランスで初演されメガヒットを記録したロック・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』2015年4月には小池修一郎潤色・演出により宝塚歌劇団月組で上演され好評を博した注目作が今春、再び小池修一郎の潤色・演出によりフランス版とも宝塚版とも違う、東宝版として装いも新たに上演される。本作で元宝塚歌劇団宙組トップスターの凰稀かなめが、本格的な女優デビューを飾る。演じるのは花總まりとのWキャストも楽しみな、マリー・アントワネット役だ。

あらすじ: 18世紀末のフランス。貧しい農夫ロナンは貴族に理不尽な理由で父を殺された怒りから、パリへ飛び出し、革命に身を投じる。一方、王太子の教育係・オランプはマリー・アントワネットとフェルゼン伯の逢瀬を手引きして、パリにやってくる。ある日、運命的な出逢いを果たしたロナンとオランプは強く惹かれ合うが、対立する身分の違いが壁となる。やがて1789年7月14日、バスティーユ牢獄が襲撃され、無残にも革命の火蓋は切って落とされるのだった……。

◎「“ベルばら”のマリー・アントワネット役なら断っていた」(凰稀)

―――演出家の小池修一郎さんから、出演のご依頼があったそうですね。

はい、お電話をいただきました。これが『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネット役だったら、お断りしていました。でも、『1789』のマリーはあまり女性女性した役ではなく、現代的な要素も含まれているなと、フランス版と宝塚版の舞台を拝見して感じたので、初めての女性役としてはとてもいい勉強になるのではと思いお引き受けしました。これからは女性(女優)として生きていかなければならないので、不安はありますが楽しみな気持ちでいっぱいです。

―――凰稀さんが感じる『ベルサイユのばら』のマリーと、今作のマリーとは?

『ベルサイユのばら』は漫画の世界を忠実に表現しているのと、出演した当時はオスカルという立場でマリー・アントワネットのことを考えていたので、その部分ではかなり違います。自分がマリーを演じると決まった今は、どうしても彼女のことをかばってしまうのですが、マリーの派手な私生活や浪費などに、民衆はすごく怒り狂ったと思いますし、観客も民衆側に共感する方が大半だと思う。でも裕福な環境でしか育ったことのなかった彼女にとっては、普通がどれなのかわからない。みんなも同じだと思っていた。悪気はなかったのだと、ついマリーをかばってしまう。

―――実際にマリーのメイクと衣装を着けて挑んだ、ポスター撮影の感想は。

最初は(自分の女性姿を)見慣れないので、気持ち悪いと思ってしまいました(笑)。在団中は肌を露出することも、女性用のメイクをすることもなかったですし。宝塚の男役は特殊でショーの時などには、赤い口紅も塗りましたが、あれは仮面をかぶった状態なので、素顔の自分での女性役というのが、まだ受け入れられない。これは本当に男役をやったことのある人でしかわからない感情だと思うのですが。周囲からは普通に「女の子になってるよ」と言われますが、それに納得したくない自分もいたりして。退団して一年経っても、やっぱり癖というものはなかなか直らない。今大変な思いをしております(笑)。

―――フレンチ・ロックというジャンルについて。

今作で初めて知りました。正直、今はまだ何がどうなのかよくわからないですね。ただ、日本と海外のお客様とでは、ノリが全然違う。外国語は一言で色々な気持ちが伝わりますが、日本語は何文字も並べてひとつの言葉になる。その違いをどう表現するのか。また、日本の演劇は流れを大事にする感じがあり、楽曲、歌詞、台詞、目の前の状況、全部がマッチしないと成り立たない。ただ上手い、かっこいい、きれいだけで終わってしまうような、軽い印象にならないように、気をつけなければいけないなと思います。

―――マリー・アントワネットの歌い方について。

まだ台本もいただいていない状況なので、具体的にはこれからですが。男役を16、17年やってきたので、退団後はまず女性に戻すことを最優先に考えて、ボイストレーニングをしてきました。ちょうどそんな時に出演のお話をいただいたので、実際の舞台で勉強させていただくことも大切かなと思い、挑戦させていただこうと決めました。

―――女性の音域を出すには、やはりトレーニングが必要ですか。

そうですね、男役の癖は中々とれません! 先ほども女性スタッフに声が低いと言われ、これでも高くしている方なんですよと、普段の音域で話すと「そんなに低いんですか!」と驚かれました(笑)。やはり人生の半分以上の時間をかけて男役を作り上げてきたので、それをまた元に戻すのはきつい作業ですよね。しかも戻すだけでなく、また作り直す作業でもあるので。(女性として)まだ1年生なんです。

―――退団後に外の現場を経験されて、一番驚いたことは。

驚いたことは特にないですね。なるべく現役時代から外のものを受け入れようと意識していたので。このお答えで合っているかわかりませんが、私は現役時代に太陽の光に当たれることが少なかったので、いま太陽の光に当たれることが新鮮ですね。目覚ましをかけないで起きたり、普通にスーパーに買い物にいったり。そういう日常のちょっとしたことに幸せを感じています。

―――生活で一番変わったことは。

いっぱい寝られるようになりました。これは一番大きいです。現役時代は基本的にお稽古中は3時間でした。思いつめたり、追い詰められたりする役がとても多く、とにかく自分でもどん底まで落ちてやろうと生活していたので、役のことばかり考えて、寝ることを忘れてしまうことが多かった。ただ、ここ最近は寝不足気味。1月の半ばぐらいからマリーのことを考えだしたので、急に気が立ってきた。また元に戻りそうです(笑)。

「人間の心理とかを考えるのが好き、妄想族です(笑)」(凰稀)

―――ブログでは「マリーが降りてきた!」とのコメントも。

あはは、そうですね。今はどうすれば自分の心がマリーに向くかなと色々考えて、お花に囲まれる生活をしてみたり、役と自分との間で会話をしたりするんです。自問自答して、役と自分を近づける感覚の中で、ふとした瞬間に「マリーなら、絶対こうするだろうな」と思うときがある。最近で言えば、夜が来るのが怖くなりました。

―――なぜですか?

わからないです。暗くなると怖い、目が冴えて眠れなくなる。朝日が昇ってお昼前ぐらいからほっとする。よくわからないんですけど、何かあったのかな。牢獄にいたときの感覚なのかな……とか言い始めると、「この人大丈夫!?」と思われるので、上手く書いてほしいんですけど。妄想族なんです(笑)。人間の心理とかを考えるのが好きみたいです。

―――どんな役に対しても?

宝塚でもそうでした。たとえば、『モンテ・クリスト伯』で演じたのは、14年間無実の罪で牢獄に送られる役。彼は牢獄にいる間ずっと薄いスープだけを飲んでいたそうなので、お稽古中はずっとスープだけを飲み続けました。牢獄だから汚いだろうと、部屋の中をめちゃくちゃにして電気は点けない。できる限り似た環境に身をおいて、暗闇ではどれくらい目は見えて、鋭くなるのか、どれだけ耳は敏感になるのかと、台詞以外のことを考える。そうすると、今度は勝手に台詞が出てくるようになる。そこで、「私はこう思うが、先生はどうなんですか?」と、ずっとぶつかり稽古のような作品作り、役作りをしてきました。正直しんどかったですね。

―――舞台が終われば、自然と役柄から解放される?

私はツアーの大千秋楽が終わった次の日は、死んだように眠ります。現役中は16時間ほぼ半日以上寝る。夕方に起きて、2時間だけご飯タイムがあって、その後また寝る。ほんとにずっと寝る。一気にそこで体力を温存しようとするんでしょうね。宝塚のときは次の日にはもう新しい作品の稽古が始まるので、前の役は切り捨てるという感覚でした。今作はWキャストということで、時間に余裕がありそうなので、なれない事に心配しています。

―――花總まりさんとのWキャストについて。

聞いた瞬間は、「わー!」の一言でした。現役のときにご一緒したことはないのですが、素敵な娘役さんであったことは一方的に知っていましたので。花總さんからは、初めてのことなので何かあったらいつでも相談してという感じで、やさしく言葉をかけていただきました。タイプも全然違いますし、そもそも元娘役さんと元男役なので持ち味も全然違う。確実に違うものになるでしょうし、それがWキャストの醍醐味だと思います。私は女性役としての経験や勉強が足りていないので、そういう部分は花總さんをはじめ、夢咲ねねさん、神田沙也加さんたちからも、女の子の要素を学びたいなと思います。

―――日々の生活で、女性になるために意識していることは。

今回マリー・アントワネットを演じるにあたって、お恥ずかしながらネグリジェを買いました。今日は公の場で初めてスカート姿をご披露することになったんですが……と、たいしたことではないかもですが、まだスカート姿で歩くことが恥ずかしいんです! ですので、自分一人の自宅なら大丈夫だろうと、インターネットで買ったネグリジェを着て寝ております。退団後にも、スカートをいっぱい買ったんですが、一度もはきませんでした。髪の毛も少し伸ばそうかと思いましたが、それもストレスに感じてまた切ってしまったり。本当に何度も言いますが、今大変な思いをしております(笑)。

―――(笑)。『1789』を皮切りに、今後女優としての活躍に期待が高まります。

今作の『1789』で女優として初舞台を踏ませていただきます。これから舞台だけでなく、女優としてもっともっとたくさん勉強して頑張ってまいりたいと思いますので、今後も応援していただければうれしいです。劇場でお待ちしております。

会見では「男役が抜けない」としきりに話す彼女だったが、音楽学校の制服以来(!)というスカート姿の艶やかなこと! 人生の半分をかけて磨かれた役者魂は、女優として第二の人生をスタートさせた彼女にとって大きな糧となることは言うまでもない。トップスターのオーラはそのままに、どんなマリー・アントワネット像を作り上げるのか、花總版とも見比べたくなるはず。

公演情報
『1789 -バスティーユの恋人たち-』​
■潤色・演出:小池修一郎
■出演:小池徹平・加藤和樹[Wキャスト]/神田沙也加・夢咲ねね[Wキャスト]/花總まり・凰稀かなめ[Wキャスト]
古川雄大、上原理生、渡辺大輔、ソニン、吉野圭吾、坂元健児、広瀬友祐、岡幸二郎
■公式サイト:http://www.tohostage.com/1789/

<東京公演>
■帝国劇場
■期間:2016年4月11日(月)~5月15日(日)
※プレビュー公演:2016年4月9日(土)・4月10日(日)
■チケット一般発売:2016年1月30日(土)

・2016年4月24日(日)12:00公演(e+半館貸切)
・2016年5月08日(日)12:00公演 e+独占販売
・2016年5月10日(火)18:00公演 e+独占販売
・2016年5月14日(土)12:00公演 e+半館貸切



<大阪公演>
■梅田芸術劇場 メインホール
■期間:2016年5月21日(土)~6月05日(日)

■チケット一般発売:2016年1月30日(土)
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