一切の妥協を許さない女王マドンナ、こだわりと“日本愛”溢れる10年ぶり来日公演初日徹底レポート

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2016.2.14

 

 

 2006年の【コンフェッションズ・ツアー】以来、10年ぶりとなるマドンナの来日ツアー【レベル・ハート・ツアー】の初日公演がさいたまスーパーアリーナにて2016年2月13日に行われた。1987年3月の【フーズ・ザット・ガール・ツアー】、1990年の【ブロンド・アンビション・ツアー】、1993年の【ザ・ガーリー・ショー・ツアー】、そして前回の2006年【コンフェッションズ・ツアー】に続く、5度目の来日公演となる。

 開始前2時間の17時頃には、すでにアリーナ周辺はマドンナのファンでごった返し、SNSにアップするための撮影会や、物販の販売などで賑わっていた。10年ぶりの来日公演ともあり、ファンの気合いも十分。ブロンドのウィッグにラメのドレス、上半身裸にサスペンダーだけの男性など、マドンナを崇拝する姿が、会場付近で多々見受けられた。

 開演19時からは、DJメアリー・マックが登場し、ファンのテンションをさらに上げるため、最新のフロアチューンから、70年代/80年代のディスコ・ナンバーまでを爆音でプレイし、会場はクラブ化、熱気を高めた。なかなか登場しない女王に、疲労や落胆する姿も見受けられたが、そんな時こそファンが一体化。会場全員でウェーブを楽しむという遊び心も十分に、さすが、マドンナのファンだけはあると、そのパワーを感じた。

 マイケル・ジャクソンの「ワナビー・スターティング・サムシング」がフェイドアウトし始めた20時55分、会場の照明が消えると、マイク・タイソンが出演するオープニング・ムービーがはじまり、ダンサー達がクロスを掲げた合図で、ステージ上空から檻に閉じ込められた女王、マドンナが降臨する。オープニング・ナンバー「Iconic」がかき消されるほど、会場の歓声が沸きあがり、マドンナもご満悦の様子だ。

 「トウキョウ! 私についてこれる?」と挑発し、続く「Bitch I'm Madonna」では、ビデオで共演した日本人ダンサー、AyaSatoとBambiを引き連れ、赤い扇子を振りかざして踊る「和」のステージを披露。バックモニターには、「スケバン」や「雌犬」など、曲の内容に合わせた日本語が映し出されるユニークな演出もあり、歌い終わると「アリガトウゴザイマス!バンビチャン、アヤチャン!さぁパーティを始めるわよ!」と、日本語を交えつつ、会場を盛り上げた。

 3曲目は、デビュー・アルバムから「Burning up」をハードロック・テイストにアレンジし、曲間では、ロッカーのようにギタープレイを雄々しく披露。近年のマドンナのツアーでは、ギターを用いた弾き語りのパフォーマンスも目玉のひとつで、今回のツアーでも、ステージのアクセントとなっている。続く「Holy Water」では、十字架をポールに見立て、女性ダンサーたちがポールダンスを披露。彼女たちとセクシーに絡みつつ、自身もポールにまたがり逆さになる様は、とても57歳とは思えないクオリティだ。

 ハードなパフォーマンスを終えると、横たわって祈りを捧げるように「Devil Pray」を歌い、中央に座る黒人ダンサーに敬礼する。1989年の大ヒットナンバー「Like a Prayer」を彷彿させるようだ。ビデオインタールード「Messiah」を挟み、ブリティッシュポップ風の衣装にチェンジしたマドンナが、クラシックカーにまたがって登場。「Body Shop」を歌い終えると、「コンニチハ、トウキョウ!コンバンハ、トウキョウ!」と、再び日本語でご挨拶。「皆楽しんでる?」という問いかけに、会場の熱気を左右で比較し、「こっちの方が声が大きい気がするわ。こっちの勝ち。こっちはジャンプしてるし、手もふってるもの!」と、ステージから見て左手側のパフォーマーたちにエールを送った。

 「私の裸がみたいの?見せてあげるわよ。」と、マドンナらしいジョークを交えつつ、「私のジョークよりシックスパックのほうがいいでしょ!」と、男性ダンサー3人の、見事な肉体美を会場に披露するサプライズも。会場がヒートアップしたところで、ウクレレ片手に1986年のヒット・チューン「True Blue」をカントリー調に弾き語る。当初の思い出もあってか、涙を見せるファンもいた。和やかなムードから一転、続いては1992年のハウストラック「Deeper And Deeper」で再び軽快なステップを魅せ、大きな歓声が沸き上がる。クロスのセンターステージにらせん階段が登場し、また一転、重々しい空気感漂う「Heartbreak City」を熱唱した。途中、男性ダンサーが階段上部から、マドンナに突き落とされるシーンには悲鳴があがったが、これも女王ならではの拘り抜いたパフォーマンスだ。

 「熱くなってきたわ!」そういうと、黒いジャケットを脱ぎ、チェックのシャツ1枚で1984年の代表曲「Like a Virgin」を会場全員でセッション。どの国に行っても、この曲を歌えないファンはいない。そのままステージ下へ姿を消し、「S.E.X.」のトラックに合わせて、ダンサーがスクリーンを起用した見事なパフォーマンスを披露。パープルの長いヴェールを纏ったマドンナが再び登場し、最新作『レベル・ハート』の冒頭を飾る「Living For Love」を、闘牛士風の衣装で情熱的に歌い、その熱を帯びたまま、カリブの風吹き抜ける「La Isla Bonita」に続けた。日本ではドラマに起用されたこともあり、この曲での盛り上がりは「Like a Virgin」以上だったかもしれない。ラテンの演出に合わせて、曲が終わるとテキーラのショットを二杯飲みほし、「私がこんな風に楽しんでも、みんなはとやかく言わないわよね?」と笑わせ、ファンを和ませた。

 「東京に戻ってこれて嬉しいわ。本当に日本には素敵な思い出がたくさんあるから。ファンのみんな、ありがとう。30年もの間応援してくれてすごく嬉しいわ、とっても感謝してる。」あらためて、日本への愛とファンに対しての気持ちを語るマドンナ。「あなた達もレベルハートがあるなら、なんで手をあげないの?ドウイタシマシテ、アイシテマス!モシモシ?」と、覚えた日本語を交えつつ、まだまだ盛り上がりが足りないと挑発する。マドンナのステージでは、いかにファンが盛り上がっているかが重要で、その温度次第で、マドンナのパフォーマンスも変わってくるほどだ。

 型にハマったステージは嫌だと話し、おそらくセットリストにあったナンバーをカットし、予定していなかった2000年の大ヒットナンバー「Don't Tell Me」を急遽披露。ワシントンでの公演では、「フーズ・ザット・ガール」(1987年)を弾き語りで歌ったりと、その国ならではの限定トラックが聴けるのも、マドンナのツアーならでは。そのまま「Rebel Heart」と続き、歌い終えると十字架のポールが再び登場、「Illuminati」に合わせて、ダンサーたちがシルク・ドゥ・ソレイユ顔負けのポール・ショーを披露した。センターステージの客席にまで届きそうなアクロバティックなパフォーマンスは、今公演で最もスリリングな場面だった。

 ステージは、ネオンが瞬く60年代のオールディーズ・アメリカンに一転。ジャジーなサウンドに合わせて、2000年のNo.1ソング「Music」がはじまる。髪を束ねてスパンコールのドレスを纏った、ミュージカル女優に変身したマドンナのおみ足が美しすぎる。「Music」~「Candy Shop」に続いて、代表曲「Material Girl」(1985年)をミュージカル風にアレンジし、最多となるダンサー20人を引き連れて歌った。途中、アルバム『ライク・ア・バージン』のジャケットを用いた、ウエディングドレスのベールとッブーケを身に着けて、センターステージを歩いていくと、「私の次の夫になるのは誰?」と問いかける。

 後ろむきでブーケを投げ、受け取ったのは…なんと女性だった。「私には妻ができたみたいね」と笑わせ、「私と結婚したい?これからあなたににラヴソングを歌うわ」と、名曲「La Vie En Rose」をブーケを受け取った女性に向けて情熱的に歌う。自身も過去に女性との交際を宣言したこともあり、性に対する偏見は一切ないマドンナだからこそ、説得力のあるパフォーマンスだったといえる。会場は、その愛を祝福すべく掲げた、スマートフォンのライトで瞬いていた。「掲げてない人は充電がないの?」と厳しい突っ込みを入れる茶目っ気も、マドンナらしい。

 センターステージのサイドで、マドンナそっくりに似せたウィッグと衣装を身に着けたファンを見つけると、「あら!それ私の衣装じゃない!」と、その女性2人をステージに上げ、「Unapologetic Bitch」をセッション。ダンサーと共に見事にダンスを熟す彼女たちに、マドンナ自身も熱狂し、喜ぶ姿が少女のようだった。「レディたちみんなバイバイ!ありがとう!」と投げかけ、本編は終了。

 アンコールは、1983年のブレイク曲、「Holiday」。スクリーンには各国の国旗や、ラストを締めくくる壮大なライトアップが映し出され、日の丸の旗を羽織って登場したマドンナが、テンションを最高潮に歌いあげる。会場の熱気もピークに達し、10年分温めたマドンナへの想いが、一気に開放されたという感じだ。「サンキュートーキョー、アリガトウゴザイマス!おやすみ!」と、ステージ裏に姿を消して、初日公演はフィナーレを迎えた。
 
 今回が10年ぶりとなる来日公演、気が付けば女王マドンナも御年57歳だ。次回の来日がいつになるか、はたまた今回で最後となるかは、誰にもわからないが、たとえ今回が最後の来日公演であっても、このステージに魅了されたファンなら、悔いはないだろう。一切の妥協を許さない、マドンナの拘り抜いたステージは、ファンにとって一生ものの価値、財産になっただろう。


Text: 本家 一成
Photo: Yoshika Horita

◎公演情報
【Madonna Rebel Heart Tour】
2016年2月13日(土)、14(日) さいたまスーパーアリーナ
開場17:00 / 開演19:00
http://www.madonna-japantour2016.com/

◎リリース情報
『レベル・ハート(ジャパン・ツアー・エディション)』
マドンナ
2016/1/22 RELEASE
CD+DVD:3,300円(plus tax)
※日本盤のみボーナス・トラック収録

 

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