高橋直純インタビュー、ライブツアー真っ最中の本人に迫る
高橋直純
2月6日から全国ライブツアー『MAGIC BOX』がスタートした高橋直純。ツアー中の話を中心に、新曲に散りばめられた様々な仕掛けやライブに込めた想いについて、本人に訊いた。
――全国ライブツアー『MAGIC BOX』、取材日の今日の段階で3ヶ所終えましたが、感想はいかがでしょうか?
以前からのお客さんや最近の新しいお客さんもいらっしゃるんですが、両方から想像以上に反応があります。興奮状態のメールなどが届いているので、自分が思ってたよりは受け入れてもらえているというか。今回は曲も冒険しているところがあるので、最初は受け入れられてないような雰囲気もあった中、どうかなと思っていたんですが。
――いままでのライブとはちょっと違うんですね?
曲調がちょっといままでとは違う部分もあって、過去自分の音楽を聞いてきた人たちに対してはどうかなと思っていたんですが、結果よかったと言っていただいてるので、「ほらみろ!」と思ってるんですけど(笑)。
――曲調を変えてきたんですね。
そうですね。曲調がちょっとゴリゴリッとしたところもあるんですよ。いままではどっちかと言えば、柔らかかったり、笑顔だったり、優しそうとかいう見た目のそういう感じの曲が多かったんですけど。まあもちろん今回もそういう曲もあるんですが。そういう印象の話をよくされるけど、それだけじゃないよというのをやってみたくて。
――ちなみに新作の4枚のCD(「AXIS」、「MOB」、「TRICK」、「PON PON KING」)の中だったら、どれが一番攻めてる感じなんでしょう。
全体的にそうなんですけど。「AXIS」とかはけっこう攻めてると思います。「MOB」とか。こういうロック系統ってあんまりやってこなかったんですが、今回は冒険してみようと。
――この4枚と、ツアー限定CDも出されているとお伺いしました。
そうなんです。今年はソロで始めて13周年になるんですが、13という数字からトランプを思いついて。4枚あるのも、トランプのマークが4種類だったりとか、絵札が4種類だったりすることとの兼ね合いだったりしていて。
――ツアー限定CDが「JOKER」なのもトランプの柄にかけたということなんですね。
そうです。あとCDジャケットにも仕掛けがあって、曲のタイトルの中から、ちょっと雰囲気の違うフォントを抜き出してまとめると、ツアーのロゴになるんですよ。なので、わざわざ4枚バラバラに出したんですよ。CDを開けてブックレットを見てみると、またCDジャケットとは違う4文字に仕掛けを仕込んであります。それが今回のツアーの裏テーマになってます。
――ああ、本当にツアーロゴになりますね!
で、ツアーに来てもらった方にはMCでそのお話をさせていただいてます。そして、そもそもこの4枚のCDはリスナーが曲を聴く順番を変えてみることで、様々なストーリー展開が想像出来るように歌詞を作っていったんで。そういう意味でも攻めてみたんです。ツアー限定CDの「JOKER」はライブで初めて聞くことになると思うので、そこでびっくりしてもらって。CDではいろんな順番で聞いて楽しんでもらえるようにはしてあるんですが、ライブのセットリストはその中でも一番メインストーリーになる聴き方を提示する場にもなってますね。アルバムだとどうしても曲順通り聞いてもらうようになるんですけど、今回はわざわざ4枚に分けたことで、今回のツアーでは僕がこの順番で歌いますよというのを提示してストーリーを作っていくようにはしています。
――ではライブに行って初めてわかることもあるんですね。
「JOKER」に関しては、発売前に一切オンエアしないで、みんなほぼ初めて聞くのは生の演奏っていうところはいつもとは違うやり方だったので、ライブ会場で「ああ。そうだったのか」っていう答え合わせができるんじゃないかなと思います。なかなかCDを手に取ってもらえなかったり、ライブにも行けないという方も居ると思うんですけど、ぜひCDを手にとって、ライブにも来て楽しんでいただきたいという思いをこめてあります。
――ただ順番に聞くだけじゃない楽しみが込められてる、という感じですね。
この4枚のCDの歌詞にはいろいろ謎掛けもあって、推理小説じゃないですが、順番を変えて聴いたら犯人が変わるかのように、ストーリーの結末が変わるみたいな感じに作ってあります。その中には実はバッドエンディングもあるんですけどね(笑) バッドというか、寂しいとか悲しいとか聴き方によってはそうなるストーリーもあるんですけど。その逆で、ものすごくハッピーエンドになるような聴き方もあるし。みなさんにはそうやっていろんな聴き方を楽しんでいただきつつ、ライブに来ていただいた方には僕のおすすめな順番で聴いていただいて。そうすると、仕込んであった裏テーマがすっきりとわかるという状態になっているんです。
――そんな仕掛け満載のツアーですが、今回は地方も回られます。地方に行く楽しみは何かあったりしますか?
会場ごとにお客さんのノリ方が変わってくるんですよ。そのへんは楽しみですね。こっちが不安になるほどシーンとした中で始まることもあるし、でもそういう時って、ものすごく泣いて聴いてくれてたりするんですよ。「ああ、刺さっていたんだな」って思うこともあるし。受け取り方はお客さん1人1人で違うので、楽しみ方もバラバラでっていうのはそこの場に行かないとわからないのでそこはとても楽しみにしています。
――ライブ後の楽しみはあるんですか?
僕、最近打ち上げはしてないんですよ。前は地方のお酒を飲むとかそればっかりが楽しみだったんですけど(笑) 「あのお店予約してあります」とか言われたら楽しみで仕方なかったんですけど。最近はもう帰って弁当食べてマッサージして寝るって感じですね。もちろんお酒とか楽しみなんですけど、どうしても連日ライブだったりすると、アスリートみたいな気持ちになるんですよね。ちょっとストイックに行かないと保てないんじゃないかとか思ってしまうので。
――連日同じところを保っていきたいということですね。
一応こちらはそういう気持ちで行きたいので。……本当はね、寂しいんですけどね(笑)。
――じゃあ3月3日の東京が終わったら……?
どうなるかわからないですけどね。僕がぶち壊れるかもしれない(笑)
――ライブ期間中はライブに集中! ということですね。
そうですね。他のお仕事の話もされたりするんですけど、ちゃんと聞こえてないというか。ライブ期間が終わった後に、「あの時の話なんですけど……」とか言われたりしても、「え? そんな話した?」みたいな。自分でも怖くなるくらい(笑) 最近それが怖いですけどね。お酒飲んで酔っぱらって覚えてないのと同じ感じで、ダメな自分って感じでちょっと危険だなとは思っていますけど。
――ただそれくらいライブのこと考えてくれてるのは、ライブに行こうとしているファンにとっては嬉しいんじゃないでしょうか。
そう捉えるように頑張ろうと思います(笑)
――そんな気合の入った今回のライブのテーマや目指すところは何でしょうか?
前回のツアーからダンサーを入れてるんですよ。普段からライブで暴れて踊ってると、よく踊りながら歌ってピッチずれたりしないねなんて言ってもらってたんですけど。自分の中では踊ってたというより煽ってたっていう気持ちの方が強くて。で、まあ今まではお客さんも一緒に振りなんかもやってもらって楽しもうというのもあったんですが、今回はパワフルなダンスも取り入れてみているので。見ても楽しめるというところです。
――そこも今までにない新しい部分ですね。
本当は僕は踊らずに、最初の目論見としては、ダンサーに煽ってもらってちょっと楽しようと思ってたんですけど、負けず嫌いがそこで出てきて、「そのくらいだったら踊れるわ」みたいに動いちゃって(笑) 結局余計疲れるっていうのが前回今回と続いてるので、ケアして、体壊さず、最後までまっとうしたいと思っています。今回2ヶ所目を終えて、ダンサーの方も緊張がとれていい顔してきたとは思うので、東京に来る頃にはダンサーも、メンバーも、僕も含めさらにいい感じになっていると思います。お客さんも何度目かの方も、もちろん始めての方もいらっしゃるとは思いますが、どんどん新曲たちも馴染んでくるとは思いますし。そこは最後まで楽しみですね。
――ダンサーを入れて変わったことは?
やっぱり見て楽しむというところが増えたということですね。額縁の中の「かっこいい」とか「素敵」とかそういう部分を見てもらおうということと、今回はいろいろ仕掛けをしていたりもするので、そういう部分を見て楽しんでもらおうというところが変わったところかもしれないですね。
――なるほど、それでは改めてライブの注目ポイントをお教え頂ければ。
今回は、新曲のゴリゴリッとした感じとデビュー当時からの古い曲たちも歌うので、緩急がものすごくついてると思うんです。ただ全体を通じて聴くと、高橋直純はずっと変わってませんよというのがわかっていただけると思います。ツアーごとにいろんな手法はやってますけど、いろんな部分を脱いで、裸になって歌ってるという部分が僕の芯にはあるので、今回のように振り幅があっても、でも本質は変わってないんだっていうところも知っていただけるのではないかと思います。そして違う環境や時間のなかで録音された作品たちが、生でやるということによって、いままでの曲たちと新しい曲たちが混ざり合った相乗効果でさらに聴いた人の心に染み込んでいく感覚になってもらえるのかなという気はしています。
――いま行われているライブも楽しみですが、今後の活動に関してはいかがでしょうか?
事務所の人からは笑われたんですが、4枚のCDが完成する前から次の話をし始める僕がいて。次こういうことやりたいっていう話はもうしているんです。でもこの4枚のCDも制作期間ギリギリで、僕も含め各スタッフが寝ずにフラフラの状態の時に次の話wをしたので「おい!」って感じになりましたけどね(笑) でも言っておかないと忘れそうだし、いまここからの流れでやりたいことがあるんだよね、みたいな話はしていますね。びっくりさせたいし、まだこんな引き出しもあるんだっていうのを見せたいです。
――最後に来てくれるファンの皆さんに一言お願いします。
CDを発売して、皆さんいろいろ考えて想像も膨らませていただいた上で参加してくださる方も多いですし、知らないできていただける方もいると思いますが、一旦まっさらにして、どうくるのかなって、その場で見えてるものと聞こえているものを、その会場にいる自分の立っている環境は人それぞれいろいろあると思いますが、純粋に楽しんでいただけたらと思いますね。そしたらきっと一つか二つお持ち帰りいただける気持ちの種みたいな物が心に残るんじゃないかなと思います。そういうライブをしているつもりでいるので、ぜひそれを遊びに来て感じてほしいなと思っています。
高橋直純
インタビュー・文= 海梨