少年社中×東映のケミストリー 『パラノイア★サーカス』開幕
華やかに、怪しく『パラノイア★サーカス』開幕 写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
「少年社中×東映 舞台プロジェクト」と題したコラボレーション企画『パラノイア★サーカス』が2月26日、池袋サンシャイン劇場で開幕した。
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
江戸川乱歩の作品群をモチーフにしたこのファンタジー作品は、『海賊戦隊ゴーカイジャー』主演の小澤亮太、『仮面ライダー鎧武』出演の松田凌と松田岳、白又敦、さらに唐橋充、吉井怜などそうそうたる客演を少年社中に迎えた意欲作である。
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
舞台はとあるサーカス団、「パラノイア★サーカス」を名乗る彼らは、江戸川乱歩の小説を題材にした演目を上演することで人気を博していた。それを聞きつけた編集者(堀池尚毅)と江戸川乱歩(小澤亮太)、団員に問い詰めるも彼らは江戸川乱歩などという作家は知らぬ存ぜぬの一点張り。そんな中現れるのはカイジン20面相、彼はこのサーカス団から「謎」を奪ったという。謎が消え去った世界では名探偵明智コゴロウ(井俣太良)もただの間抜けな男に成り下がってしまう。更に20面相はその得意の変装を駆使して一人、また一人とサーカスの団員を殺していく。江戸川乱歩はコバヤシ少年(松田凌)らと共にカイジン20面相の正体を暴くべく捜査を開始する、失われた「謎」の行方は? 20面相の正体は? 夢と現が交差する幻想と狂気の世界が幕を開ける。
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
舞台の作りはサーカスそのもの。そこで演者たちが踊り、動くさまはまさにサーカスの演目を見るようである。しかし、そこで行われるのはミステリーと冒険ファンタジーが見事に融合した、新しいエンターテイメントとしての舞台だった。
少年社中主催・毛利亘宏の作劇は全く見事で、入れ子方式のように入り組んだ複雑な脚本を見事に表現しきっている。正直、途中自分が見ているものがどこに行くものなのか迷う瞬間もあるのだが、それすらも最後に向けての大きな伏線だったと思わせる展開は圧巻である。
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
江戸川乱歩は大正から昭和初期にかけての作家である、そのどこか耽美で不可思議な世界観を使い、現代の社会が背負う闇のようなものをパラノイア(妄想)として表現している。劇中で何度も語られる「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」という言葉が表す通り、主人公である江戸川乱歩が迷い込む妄想と現実の端境にあるサーカス団は、奇妙で少し不気味である。だが複雑で怪奇なこの作品は、その乱歩作品のテイストを守りつつ、どこから見ても楽しめる極上の冒険活劇でもあるのだ。
主演を熱演している小澤亮太はスーパー戦隊で鳴らしたアクションも披露。鈴木勝吾演じるアルセーヌ・ルパンと舞台狭しと駆けまわりながら殺陣を繰り広げるのも見どころであるし、少年社中の大黒柱でもある井俣太良のコミカルでキレのある演技も、作品のテイストをポップに仕立て上げている。謎の女黒トカゲを演じた吉井怜の美しさは際立っているし、コバヤシ少年を演ずる松田凌もその明朗快活な演技で舞台に勢いを与えていた。
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
約二時間の作品であるが、見終わった後には何かの感動がある。まさにファンタジーを得意とし、現実とは違う世界を作り出す少年社中と、少年・少女らに勇気と夢を与えてきた東映のコラボレーションにふさわしい作品となっていた。また村瀬夏夜による衣装、YODA kenichiによる楽曲も素晴らしく、作品の完成度を何段も上げている。
写真:金丸圭 (C)少年社中・東映
この春の訪れを感じる3月、現実と妄想の間で不思議な冒険を堪能してほしい。そこにはきっと見たことのない興奮が待っている。
写真=金丸圭 文=加東岳史
日時:2月26日(金)~3月6日(日)
会場:サンシャイン劇場
出演者:江戸川乱歩...小澤亮太 編集者...掘池直毅 明智コゴロウ...井俣太良