堺雅人が17年ぶりの舞台出演「世界でここでしか作れないものを」 新作戯曲『スリーゴースト』に臨む

インタビュー
舞台
2026.7.16
堺雅人                        撮影:細野晋司

堺雅人    撮影:細野晋司

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劇作家サイモン・スティーヴンスが書き下ろした新作戯曲『スリーゴースト』が、ショーン・ホームズ演出、堺雅人主演で、2026年10月から東京・PARCO劇場ほかで世界初演される。

トニー賞やローレンス・オリヴィエ賞などを受賞し、イギリス演劇界を牽引するばかりか、世界を股にかけて活躍を続ける劇作家サイモン・スティーヴンスが、数年後の世界をテーマに書き下ろした新作戯曲『スリーゴースト』。サイモン・スティーヴンス脚本の舞台『FORTUNE』ワールドプレミア(2020年)の際に、PARCO劇場への新作を依頼してから6年。コロナ禍のオンラインミーティング、第一稿をもとに23年に来日ミーティング、24年にはロンドンで英語台本のワークショップ、25年には東京で日本語台本のワークショップ、今年2月東京で作品演出のワークショップを重ねながら温められてきた本プロジェクトは、日本人の俳優による日本語上演を目指して準備をしてきたという。

今回、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞をはじめ数々の受賞歴を持ち、名実ともに日本を代表する俳優・堺雅人が主演。堺自身、実に17年ぶりの舞台出演となる。どんな思いでこの舞台に臨むのか。堺に話を聞いた。

ーー17年ぶりの舞台出演ですが、あらためてどんなお気持ちですか。

もう17年も経ったのかという感じです。そんなに期間をあけていたつもりはなかったですし、舞台を避けていたわけではないんですが……あらためて振り返ると17年というのはすごく長い年月ですよね。忘れていることや、分からないこともいっぱいあるでしょうから、皆さんに教えていただきながら、稽古に参加したいと思っています。

ーーだんだんと舞台出演の実感が出てきましたか。

いや、まだ稽古が始まっていないので、あまり実感はないです。だから、稽古が始まったら、急に慌てたりするのかもしれないです(笑)。

ーー作品づくりのためのワークショップにも参加されたんですよね。

参加というほどのことはしていないです。サイモンさんとショーンさんが舞台装置のいろいろな実験をなさっていて、そのワークショップに俳優さんもいらっしゃったので、彼らがやっている作業を後ろで見ていたというのが正しいかな。途中で舞台に立ってもいいと言われたので、ちょっと立たせていただいた場面もあったんですが。皆さんが楽しそうに実験なさっているのを、羨ましく見ていて、最後に立たせていただいて。ありがたい時間でした。

ーーそのワークショップの中で何か印象に残っていることは?

基本的には舞台装置をどう使うかという実験だったんですね。ああでもない、こうでもないと言いながらいくつか試されていたのを見ていたんです。自分が大学の演劇研究会時代にアトリエでやっていたようなことを思い出しました。もちろん、僕らがやっていたこととは全然違いますけど(笑)。皆さんが楽しそうに、ああでもない、こうでもないと試しているのを見ていたら、早く自分もここに入りたいなという気持ちになりました。

PARCO PRODUCE 2026『スリーゴースト』チラシビジュアル

PARCO PRODUCE 2026『スリーゴースト』チラシビジュアル

ーー演出のショーンさんはどんな印象ですか? いい人そうでしたか?

とても礼儀正しくて物腰柔らかですが、いい人かどうかはまだ分かりません(笑)。今のところすごくいい人の印象です。ワークショップでも、アイデアを出す際はとても紳士的に提案してくれるし、俳優が何かをやったら必ず褒めてくださっていました。

ーーサイモンさんの作品の印象は?

僕は初めてなので、印象は『スリーゴースト』だけなんですが、なんだろう、神話のような余韻と、取り留めのなさがあって。正直、どんな風に作っていくのか、どういう作品になるのか、全然分からないんです。まだまだいろいろ変わっていく気もしますし。

物語の言葉って、直接何かを指し示す要素ももちろんあるんだけど、それだけじゃなく、いろいろな人の心に響きながら、たくさんの感情や風景を生んだりするものだと思うんですよね。きっとこの戯曲も、「これを読んでこんな景色が浮かびました」とか「これを読んでこの人を思い出しました」みたいな、そんなことから近づいていく物語じゃないのかなと思っています。

ワークショップでも、ポエティックな瞬間と、すごく現実的な瞬間とがあって、それがとても面白かったんです。お芝居って、詩的な空間を作ろうと思ったらいくらでも劇的にできると思うんですね。逆に、ライブ感に満ち溢れた、生で喋っているリアリティを追求することもできる気がする。その間のリアリティっていっぱいあると思うんです。ショーンさんたちは、そこの調整というか、このシーンはポエティックに行くか、リアリスティックに行くかをすごく考えてらっしゃる印象でした。

……と言っても、最終的にどうなるか、よく分からないです。どちらに転んでもおもしろいと思いますし。稽古場でショーンさんのお話をしっかり聞ききたいと思っています。

ーー海外の方が書かれた戯曲を翻訳したテキストということで、何かいつもと違う部分を感じていらっしゃるところはありますか?

どうでしょう。ちょっと直訳調なところもあるとは思うんですが、それもこの作品の魅力のような気もするし。舞台は日本のようでもありますけど、日本とは書かれていないので、別に日本じゃなくてもいい。そうした作品の世界のことは、きっとショーンさんを中心に稽古場で決まっていくと思います。

ーー明かせる範囲で、何か象徴的なシーンや見どころは?

見どころですか。まだ稽古も始まっていないので、僕が見どころを言うのは難しいんですけど、ワークショップを拝見していて、ショーンさんはその場で生まれるものをとても大事にされる方なのかなという印象を受けました。

稽古を通じて、世界の誰も見たことのない、生まれたての作品が出来上がったら本当に素晴らしいですよね。「新しい何かが生まれる」瞬間を劇場で皆さんにお見せできれば、最高の見どころになると思います。

もちろん、それがどんな作品になるのか、僕にはまだ分かりません。面白いと思っていただけるか、どんな意味を感じていただけるかも、見る方それぞれだと思います。

僕にできるのは、ショーンさんや皆さんと一緒に、毎日稽古場でいろいろなことを試していくことだけだと思っています。このメンバーだからこそ生まれる何かを探して、稽古に参加したいですね。せっかくの新作ですから。

ーー稽古場で楽しみにしていることは?

まさに稽古場での試行錯誤が楽しみです。映像作品だと、撮影初日まで一人で準備しなくてはいけないけれど、演劇の稽古場は、みんなで準備できますから。きっとヒントがたくさんあると思います。一人では読みきれなかった部分も、皆さんの気づきによって分かることがたくさんあると思いますし。

高畑(淳子)さんや段田(安則)さんのような、撮影現場ではただ見惚れていただけの先輩がたが、台本をどう読んで、稽古場でどんなことを試されるのかに触れられるのも、とても楽しみです。お二人ともドラマではご一緒していますけど、映像の撮影現場では、そこに至るまでにどんなことを考え、どんな準備をされているのかはなかなか分からないですから。それを近くで見られるのは、とても贅沢な時間だと思います。

PARCO PRODUCE 2026『スリーゴースト』イメージビジュアル

PARCO PRODUCE 2026『スリーゴースト』イメージビジュアル

ーー共演者の方々の印象は?

共演したことがあるのは、迫田(孝也)さん、高畑さん、段田さんの3人だけで、あとは初めてですね。どんな方々なのか、とても楽しみです。

迫田さんには、以前ご一緒した作品で本当に助けていただきました。役がそういう役だったからかもしれませんが、僕が演じた人物をずっと支えてくださって、こんなにも相手のためにお芝居をしてくださる方がいるんだなと思ったのを覚えています。だから、とても信頼しています。高畑さんと段田さんは、本当に尊敬する大好きな先輩です。僕が総理大臣なら、いっぱい勲章を差し上げたい。国宝です、国宝。

ーー堺さん流の距離の縮め方はあるんですか?

みんなでわいわい飲みに行ったりするやつですよね? 僕はあまりそういうのが得意ではなくて(笑)。もちろん誘っていただいたらうれしいですけど、まずは稽古場で一緒にお芝居をする中で、少しずつ皆さんのことを知っていけたらと思っています。

座長ではありますが……何をすればいいんですかね? 差し入れとかですかね? 差し入れはします。ちゃんとやろうと思います(笑)。

ーー堺さんと言えば、セリフを完璧に覚えて現場に臨まれると方々で聞くんですけども、今回、セリフに関してはどうですか?

セリフは長いですよ。でも、段田さんもいらっしゃいますからね。僕がセリフを飛ばしても、きっとなんとかしてくださるんじゃないかな(笑)。勝手に頼りにしております。

ーーちなみに普段はどういう風にセリフを覚えるのですか?

僕はぶつぶつ何度も何度も繰り返して覚えるタイプです。時間は決めずに、隙間時間にちょこちょこと。ドラマはワンシーンがそんな長くないので、隙間時間で覚えられるんですけど、今回は隙間時間を作れるのかな(笑)。まだセリフを覚える段階ではないですけど、今までと同じようにぶつぶつ繰り返して覚えると思います。

ーー舞台に臨む上でのルーティンは?

生活が規則正しくなるでしょうね。ならざるを得ないと思います。あとは、今回どれぐらい体を使うのかまだ分かっていないですけど、ストレッチぐらいしようかな(笑)。

ーー堺さんは映像作品と演劇作品をあまり分けて考えていらっしゃらないというか、シームレスに考えていらっしゃると思うんですけど、その試行錯誤や生な感覚は演劇だからこそ、でしょうか?

映像もその瞬間が生じゃない瞬間ってバレると思うんですよね。段取りで押さえにいったやり取りをしてしまったら、生き生きした感じが消えてしまうんじゃないかという恐怖が僕にはあります。演劇だと、それがより白日のもとに晒されるのかもしれないですね。

昔からそういう生のやり取りがすごく楽しいんです。それは早稲田で100人ぐらいのキャパシティの劇場でお客様の前でお芝居をやっていた頃からとても好きでした。ごっこ遊びの延長で、虚実が入り混じるあの感じがたまらなく好きですし、客席がゆっくり暗転していくあの瞬間もたまらなく好き。映像をやっていてもその楽しさはやっぱり残っていますし——そうじゃない瞬間も要素もいっぱいあると思うんですが、高校の演劇部からメンタリティが変わっていないんです。

ーーそれこそ17年の中で、猛烈に演劇やりたいという思いはなかったですか?

はい。特に舞台をやりたいなと思ったことなかったんですよ。多分、それはその欲求が映像で叶えられていたんだと思います。舞台だから、映像だからと演じ分ける技術もないですし。僕はお芝居が好きで、それをやることはできていたから、猛烈に舞台に立ちたいとそれほど思わなかったのではないかと、自分では分析しています。

ーーその上で、久々の演劇作品がこの作品になった理由は?

特にないんです。お話をいただいて、タイミングが合ったから、今取り組もうとしている。それだけなんですよ。だから、意気込みも普段と変わらない。生だからこうしようとか、舞台だからこうしようとか、思っていないんです。セリフがいっぱいあったからといって、画面にいっぱい映っているからといって、それがいい役とも限らないでしょう? それと同じで、お客様がいっぱい入る劇場だろうと、キャパシティが100人ぐらいだろうと、あまり変わらないと思っているんです。

堺雅人                        撮影:細野晋司

堺雅人    撮影:細野晋司

ーー堺さんにとってのお芝居のモチベーションはどこにあるんですか?

楽しいから。それに尽きます。楽しいです、お芝居。

ーーいろいろなはまり役をお持ちである中で、楽しいという感覚に行きつくまでは、セリフ覚えをはじめ、大変なこともあるのかなと思うんですけども。

はまり役かどうかはお客様が決めるもの。人気が出た役はそれはそれで嬉しいですけど、人気が出ない役も実は僕は好きだったりする。公演も興行である以上、お客様がいっぱい入った方が嬉しいんでしょうけど、やっている方はやるだけで楽しいですからね。

今回は特に楽しみです。初日にこの脚本をそれぞれがどう捉えたのかを聞くのも楽しみだし、一見バラバラなかもしれないその意見をショーンさんがどうまとめ、それを聞いてサイモンさんが全部書き直す可能性(!)があるのかも含めて楽しみです。どう転がっても楽しいでしょうね。

ーー舞台はまた出てくださる?

それはもう。機会があればやりたいです。

ーーPARCO劇場に対する印象はありますか?

プライベートで舞台を見に行く機会も、多々とは言えないけれど、それなりにありました。PARCO劇場はきらびやかな場所にあって、高級そうな椅子で、新しくて、キラキラしていますよね。舞台に立つ側としては、あまりそのキラキラは関係ないというか、どういうものが見せられるかだと思うんですけども。

PARCO劇場は僕が死んでも無くならないでほしいなぁ。渋谷がいろいろ変わっているけれど、若い頃からの思い出の場所ですし、パルコがどんなかたちになっても劇場だけは何百年と続いてほしいです。何階に移動してもいいから(笑)。

ーー観客の皆さんにメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、私が一番ワクワクしていると思います。世界で、ここでしか作れないものを、出来たての瞬間を皆様にお届けするべく全力を尽くして参りますので、ぜひ見届けて、ご感想などいただけたらとても幸せです。
 

取材・文=五月女菜穂

公演情報

PARCO PRODUCE 2026
『スリーゴースト』
 
作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:広田敦郎
演出:ショーン・ホームズ
美術・衣裳:ジョン・ボウサー
 
出演:堺雅人  倉科カナ  伊勢佳世  迫田孝也  sara  小日向星一 / 高畑淳子  段田安則
 
公式HP=https://stage.parco.jp/program/threeghosts
ハッシュタグ=#スリーゴースト
 
特別協賛:株式会社イープラス
制作協力:ゴーチ・ブラザーズ
企画・製作:株式会社パルコ
 
【東京公演】
日程・会場:2026年10月6日(火)〜27日(火)PARCO劇場(プレビュー公演あり)
入場料金(全席指定・税込):12,000円  ※プレビュー公演11,000円
※未就学児の入場はご遠慮ください。
一般発売日:2026年9月5日(土)
に関するお問合せ:サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
公演に関するお問合せ:パルコステージ 03-3477-5858 https://stage.parco.jp/
 
 
【ツアー公演】
日程・会場:
<岡山> 2026年11月6日(金)〜8日(日)岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場
<大阪> 2026年11月12日(木)~23日(月祝)SkyシアターMBS
<愛知> 2026年11月27日(金)〜29日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
<宮崎> 2026年12月3日(木)〜6日(日)メディキット県民文化センター (宮崎県立芸術劇場) 演劇ホール
<福岡> 2026年12月10日(木)〜13日(日)J:COM 北九州芸術劇場 大ホール
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