即興が生み出す高揚感!平野公崇&田中拓也“サンデー・ブランチ・クラシック”レポート

レポート
2016.4.15
(左から)成田良子・平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

(左から)成田良子・平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

画像を全て表示(11件)

平野公崇&田中拓也による白熱の師弟共演!
第18回“サンデー・ブランチ・クラシック”2016.3.13ライブレポート

毎週、楽器や歌など様々なジャンルで活躍するアーティストの生演奏を間近で体感できる「サンデー・ブランチ・クラシック」。第18回目の開催となるこの日は、正統派から即興、ジャズまで幅広いフィールドで活躍を見せるサクソフォニスト・平野公崇と、平野を中心として結成したサックス四重奏団「ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット」としても活躍する若手の田中拓也が登場した。

定刻になると、まず平野がピアニストの成田良子を伴い登場。一礼するとサックスを構え、大きく息を吸い込んだ。ゆったりと流れだした旋律は、ヘンデル作曲『私を泣かせてください』。オペラ『リナルド』の中で歌われるアリアだ。ピアノの優しい伴奏に乗せて、平野が命を吹き込む音が、優美に、切なく響いた。会場に訪れた人々は、ゆっくりとその音に耳を傾け、歌うサックスのメロディに身をゆだねていく。

(左から)成田良子・平野公崇 (撮影=原地達浩)

(左から)成田良子・平野公崇 (撮影=原地達浩)

1曲目を終えると、平野は「皆様こんにちは、今日はお食事などお好きな時にどんどん召し上がってくださいね」と会場を見渡しながら挨拶し、「ちょっとここで一人、若手を紹介させてください」と田中を呼び込んだ。

紹介された田中は、はにかんだ笑顔でステージに登場。そんな田中を「僕より18歳くらい若いんですよ。いやになっちゃう(笑)」と改めて紹介する平野。現在は同じサックス四重奏団で活動をしながらも、以前は“先生”と“生徒”という関係でもあった二人。「田中です、って挨拶してごらん」「・・・田中です!」「ほんとに言いましたね(笑)」などと、そんな関係性が伺える中、プログラムは2曲目へ。

田中拓也 (撮影=原地達浩)

田中拓也 (撮影=原地達浩)

平野公崇 (撮影=原地達浩)

平野公崇 (撮影=原地達浩)

2曲目には、バッハ作曲『マタイ受難曲』よりアリアが演奏された。この曲は、映画音楽として聴いたことがある方も多かったかもしれない。主に歌の部分を演奏する田中と、それに寄り添うように支える平野の音が絡み合い、より深い味わいが生まれる。田中が奏でる音色には、師匠仕込みの確かなテクニックと、繊細さと大胆さの共存が垣間見えた。

「今日は、私の好きなバッハをたくさん聴いて頂きたいなと思っておりまして」と平野。「3月と言えば、卒業式ですね」と、続いて演奏してくれたのは、バッハ作曲『主よ人の望みの喜びよ』。まさに、この季節特にぴったりの一曲だ。ここで、「ただ演奏するのではなく、これにちょっと僕たちなりのアレンジを加えて・・・」と、平野の十八番ともいえる即興がメロディの中に織り込まれる。なめらかに天まで駆け上がっていくような幸福感に、二人の即興が紡ぎだす高揚感。カフェに光が満ちていくような、不思議な気持ちになった。

(手前から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

(手前から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

曲を終えると、二人は顔を見合わせ、息を整える。「次で早くも最後の曲なんですが、ついにクラシックというジャンルにはおさまりきらない曲をお届けしようと思います。…がんばります!」と演奏前に気合を入れなおした二人が、最後に選んだのは「ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット」の2枚目のCD『Blue BACH』にも収録されている『BASQ プレリュード(平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第2番より)だった。この曲の醍醐味は、それぞれがソロで聴かせる即興と、ぴったりと息のあった驚異的な速弾き!。“まだまだそんなもんじゃないだろ?”と見せつけるように仕掛けあう二人のメロディが、さらなる興奮を生み出し、観客を音の洪水の中に飲み込んでいく。

この曲は、もともとは平野がピアニストのアキコ・グレースとともに作った曲で、その後、数々の共演の中で練り上げられてきたというこの曲。互いに煽りあうような掛け合いに、どんどん熱を帯びる演奏に、ソロパートが終わるごとに会場からは拍手が沸き起こった。

(左から)成田良子・平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

(左から)成田良子・平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

印象的だったのは、ソロパートで魂を込めた演奏で魅せる平野を見る、田中の顔。おっとりと穏やかな雰囲気を持つ青年の表情には、その演奏が熱さを増す度に、笑顔が浮かぶ。演奏後のインタビューで、その時の心境を聞いてみると「それは初耳!」と驚く平野を目の前に、田中は「いや、あの・・・意図的に笑っていたわけではなくて・・・」と恐縮しきり。「すごく、楽しくなっちゃったんだと思います・・・(笑)」と師匠の“背中の大きさ”への無意識の喜びを感じさせた。

最後の曲と言われても、興奮状態となった会場からは、拍手が鳴りやまない!再びステージに登場した平野と田中。「皆さん、ありがとうございます。アイラブユーでございます。この拍手に応えないとね!」と言う平野に、コクリと頷く田中。最後は、バッハ作曲『G線上のアリア』に即興を混ぜ、穏やかにライブを締めくくった。ちなみに、2部では白熱の演奏でちょっと時間が巻いてしまったので、ヘンデル作曲『オンブラ・マイ・フ』も披露してくれた。

サイン会の様子 (左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

サイン会の様子 (左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

サイン会の様子 (左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

サイン会の様子 (左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

終演後、演奏を終えた二人に感想を伺うと、平野は「音楽って、どういう状態で聴くかによって、聴こえ方も変わってくるじゃないですか。洒落た空間や美味しい料理といった視覚的、嗅覚的な要素が揃った中に入っていくのはまた違った楽しみがあるなと思いました」と笑顔で語ってくれた。
田中は「普段ホールで演奏することが多いので、距離が近いのが結構新鮮というか、いい空間だなと思いました。すごくお客様の表情とかがよくわかるので・・・」と、楽しんで演奏されたようだ。

インタビューの模様 平野公崇 (撮影=原地達浩)

インタビューの模様 平野公崇 (撮影=原地達浩)

インタビューの模様 (左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

インタビューの模様 (左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

このライブでも炸裂していた“即興”。どのように生み出されるものなのか聞いてみると、「僕は留学中にフランスで即興に出会いまして。即興は、360度どちらに泳いでもいい、みたいな自由な感覚なんです。絶対このレールの上を歩いていかなきゃいけない、みたいな閉塞感がないんですよね」と平野。「こっち(演奏者)が自由になった瞬間、聴き手の発する空気もふっとほどけるのを、いつも感じるんです。だから、同じクラシックでも、固い空気の中で聴かせてしまうのと、一旦その空気がほどけてから聴いてもらうのでは、聴こえ方がたぶん変わっているだろうと思っていて」とその感覚を教えてくれた。

ちなみに、いつもカルテットで演奏している平野と田中だが、意外にも二人だけで演奏をするのは初めてだったという。平野曰く、数々の不思議な武勇伝を持っているという田中(なんと大事なコンクールの当日、直前に楽器を落としてしまい、動揺しながらも自ら楽器を仮修理。見事優勝!などなど・・・語りつくせないほどらしい)。

カルテットでの演奏は、個性よりもひとつになることに集中するため、個々の良い部分が出しにくいところもあるそうだが、「この形もなかなかいい」と、特に田中の良さが光ったと嬉しそうな表情を見せる“師匠”平野だった。「ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット」としての活動は、9月頃予定されているとのことなので、二人だけの演奏とはまた違うカルテットの音色を楽しみにしたい。

最後に、田中は「皆さんが一生懸命聴こうとしてくださったのが、とても嬉しかったです。ありがとうございました」、平野は「リラックスして音楽を楽しめるこういう場に、これからもたくさん足を運んでもらえたらいいなと思います」と観客への感謝の言葉で締めくくった。

(左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

(左から)平野公崇・田中拓也 (撮影=原地達浩)

ちなみに、平野は「もちっとしていて、歯ごたえと食感がやみつきになりますね」とランチメニューのパスタを絶賛!淡路島の生パスタを使用しているこだわりの逸品とのこと。訪れた際には、ぜひ音楽と一緒に味わってほしい。美味しい料理に、落ち着いた空間。カフェだからこその音楽の楽しみ方「サンデー・ブランチ・クラシック」を、次回もお楽しみに!

プロフィール
平野公崇(サクソフォーン)
正統派クラシックから、即興、ジャズまで、幅広いフィールドを縦横無尽に駆け抜ける実力派サクソフォニスト。東京藝術大学卒業後パリ国立高等音楽院で学び、在学中にJ.M.ロンデックス国際コンクールを制し、日本人として初の優勝者となる。東京藝術大学、エリザベト音楽大学、東邦音楽大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。フランスのギャップ国際大学およびアカデミー・ハバネラ講師。2015年秋には、パリ国立高等音楽院時代の同級生であった、クリスチャン・ヴィルトゥがリーダーをつとめる『ハバネラ・サクソフォン・カルテット』を9年ぶりに来日させ、鮮烈なデュオ公演を行った。
 
田中拓也(サクソフォーン)
15才よりサクソフォーンを始める。第25回日本管打楽器コンクール第1位並びに特別大賞、文部科学大臣賞、東京都知事賞を受賞。優秀学生顕彰事業大賞受賞。東京藝術大学在学中アカンサス賞受賞。サクソフォンを平野公崇氏に、室内楽を中村均一、林田祐和の各氏に師事。都立芸術高校、東京藝術大学を経て、現在、洗足学園音楽大学非常勤講師。平野公崇が満を持して結成したサックス四重奏団『ブルーオーロラ・サクソフォン・カルテット』のメンバーのとして活躍中。

 

サンデーブランチクラシック情報
4月17日(日)
松田理奈(ヴァイオリン) & 中野公揮(作曲家、ピアニスト)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円

4月24日(日)
前川ひろみ(ヴォーカル)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円

公式サイト:http://livingroomcafe.jp/
シェア / 保存先を選択