村井良大・武田梨奈・秋山真太郎インタビュー アクションからラブシーンまで、すべてが生々しい映画『ドクムシ』の裏側
左から、秋山真太郎、武田梨奈、村井良大 撮影=原地達浩
4月9日から劇場と「ニコニコ」ネットシネマで映画『ドクムシ』が同時公開される。同作は2013年に「E★エブリスタ」にネット小説として投稿された八頭道尾の「コドク~蠱毒~」にオリジナル要素を加えて漫画化した「ドクムシ」の実写化作品で、廃校舎の教室内で目を覚ました男女7人が肉体的・精神的に追い詰められて惨劇を繰り広げるソリッドシチュエーションスリラーだ。騙し、騙され疑心暗鬼に陥るゲームのような原作の要素に加え、映画版では人間の残酷さや生々しい感情にさらにスポットが当てられ、15+R指定を受けるほど過激なものに。そんな物語の中心となるのは、大学生・レイジ役の村井良大、キャバ嬢・アカネ役の武田梨奈の主演二人と、キーとなる新聞記者・ユキトシ役の秋山真太郎だ。若くして演技経験豊富な3人の俳優たちは、いかにして作品に挑んだのか?インタビューで語ってくれた。
左から、秋山真太郎、村井良大、武田梨奈 撮影=原地達浩
――『ドクムシ』はゆうばり国際映画祭でワールドプレミアを迎えました。村井さんと秋山さんは会場にいらっしゃいましたが、お客様の反応はいかがでしたか?
村井:そうですね……どんよりしてましたね(笑)。
秋山:そうだね(笑)
村井:気持ちのいい拍手はもらえなかったので……何と言えばいいんですかね。
秋山:観終わった後にウキウキする映画ではないので(笑)
村井:やっぱり、シーンとしてましたね。ショックを受けているというか。観た方と会話はしてないので、どう思われたかまでは正直わからないです。
――7人の個性豊かなキャラクターが登場しますが、村井さんの役柄・レイジは一見ごく普通の大学生です。逆に役づくりが難しいかとも思いますが、いかがでしたか?
村井:確かに「普通っていったい何だろう」と考えてしまうので、難しかったですね。ほかのキャストの方に助けられたというか、周りの役者さんたちの演じるキャラクターの色が濃いので、それに順応していく役づくりをしました。あとはその場、環境に慣れるというか。
――フラットな状態で現場に入られたんですね。
村井:ある意味等身大の価値観と感覚を持ったキャラクターなので、お芝居の流れによってどうなるかを考えました。その場に合わせたり、周りの人たちと交わった時にどう対処するかというところですね。
村井良大 撮影=原地達浩
――武田さんは‶女を武器にするキャバ嬢″アカネ役ですね。キャバ嬢役はドラマ『婚活刑事』でも演じられていましたが、その経験は活かせましたか?
武田梨奈 撮影=原地達浩
武田:今回の場合は営業的ではなく、本当に一人の人間として接する役だったので……キャバ嬢という意識よりも、アカネは仕事じゃない素の部分を出していくんだろうな、と考えました。人としての隙だったり、そういうところを表現するように意識しました。
――どちらかというと、強いイメージの役どころですね。
武田:そうですね。ただ、本当はすごく弱い女性でもあるんです。でも、みんなの前では決して弱みを見せず、相手の男性によって少しずつ弱みを見せていくというか。
--秋山さんが演じたユキトシは新聞記者を名乗ってはいますが、謎の多い男です。演じるうえで何か気を付けたことはありますか?
秋山真太郎 撮影=原地達浩
秋山:シーンの前半と後半で人柄がちょっとずつ変わっていって、本性が見えていくキャラクターなので、なるべく前半では抑えるというか。セリフの持っているパワーに引っ張られないように、中身を出さないように、というのは気を付けました。
――秋山さんはかなりストイックな役作りをされたとうかがいました。具体的にどのようなことをされたのでしょう?
秋山:1週間閉じ込められて水しか飲めないという話で、ちょうど順撮りするということだったので、食事はなるべく摂らないようにしました。時間が経過していくのにリアリティを持たせたいと思ったので、ヒゲも生やしっぱなしです。ぜんぜんヒゲが生えてないとか、そういうのはあまり好きじゃないので。
――お三方が演じられた役は、実は過去のご出演作と共通点があったりするので、ファンの方はそういう観かたをしても楽しいかもしれません。例えば秋山さんは、昨年の舞台『Tomorrow Never Dies~やってこない明日はない~』で新聞記者役をやられていたり。
秋山:よくご存じですね(笑)。
――武田さんは『木屋町DARUMA』の風俗嬢と共通する性格だったり。
武田:そうですね。
--村井さんは……ちょっと違うかもしれませんが、『醒めながら見る夢』で緊縛師の弟子役でしたが、本作でも‶紐″を使った重要なシーンがあったり。
村井:そんな観かたしますかね(笑)。
村井良大 撮影=原地達浩
――すいません、ちょっと無理がありました(笑)。お三方が物語の中心なので、必然的に撮影現場でも一緒に過ごされることが多かったと思います。現場で印象的なエピソードはありますか?
武田:秋山さんがほとんど食べ物を食べてなかったので、「クランクアップしたら何を食べたいですか?」って訊いたら、「ぺヤング」っておっしゃったのが印象に残ってますね。
――ぺヤング?
武田:はい。なので、クランクアップしたほぼ朝方くらいに、3人でぺヤングで乾杯しました。
――けっこう味が濃いものいきますね。
秋山:焼きそばがどうしても食べたくて(笑)。
――村井さんと武田さんも食事は抑えられたんですか?
村井:ぼくらは普通に食べましたね。最初の1日目にその方向でやろうかな、とは思ったんですが、夜くらいに「これ、完全に体調崩すな」と思ったんです。で、やめました。秋真(※秋山のこと)さんがすごいなと思ったのは、プロテインを持参してたところですね。その覚悟で来てるから、準備の差が出たな、と。
――栄養バランスがいいプロテインで身体に気を遣いながらも食事を抑えると。肉体的もキツくて、7日間続けての撮影だと精神的にも参りませんか?
左から、秋山真太郎、村井良大、武田梨奈 撮影=原地達浩
秋山:そうでもなかったですね。和やかでしたよ。確かにキツいシーンはずっと閉じ込められていたので、体力的には辛いんですけど。ぼくがフラフラになって良大と立ち回りするシーンがあるんですけど、そこでは良大が「秋真さん、もうすぐ終わりますから!もうすぐ終わりますから!」って、ずっと俺を励ましてくれてて(笑)。
村井:あの時は一番ヤバかったと思いますよ。
秋山:俺もあんまり覚えてないもんね、最後。
――とにかく物理的にキツかったんですね。
秋山:ええ、物理的に疲れてしまったという。
村井:そりゃ疲れますよね、何にも食べてないですから。
――本作では人間の本質、残酷さが強く描かれていて、カニバリズム(人肉食)のような残酷なシーンも出てくるんですが…みなさん、追い詰められてこういった行動に出るのって、理解できますか?
秋山:うーん、理解できるかと言えば出来ないですけど(笑)。ただ、「そういう時ってどういう表情をするんだろう?」という、それぐらいの興味は多少なりともありますけどね。
秋山真太郎 撮影=原地達浩
――ここまで追い詰められたらやるかもしれない、と?
秋山:はい。普段見られないものを見たくなるのが俳優という職業でもありますし。「興味ない」というのも役に説得力がなくなるし、「興味ある」というのもヤバいですし、難しいですね(笑)。
村井:残酷、というのとは違うかもしれないですが、アカネとタイチ(駒木根隆介)のあるシーンが印象に残ってますね。アカネが色仕掛けをしたあとに、タイチが○○されるあたりが、すごく残酷というか、可哀そうだなと。
――武田さんは何を考えながらあのシーンを演じたんですか?
武田:あの瞬間にあの行動に出るのって、頭の回転が速いというか……アカネは一番冷静に見ているんじゃないかな、と思いましたね。わたしがもしあの場にいたら、あんな風に冷静に考えられないと思います。
村井:普段なら殴り倒すでしょ?
武田:はい(笑)。頭で考えてたら間に合わないんじゃないか?と思いましたね。アカネという役をやれて勉強になりました。
――どういったシーンかは楽しみにしていただきたいですね。ちなみに、みなさんはプライベートで残酷な映画はご覧になられます?
村井:すごくたくさん観てます!好きです!という感じではないですね。レンタルショップに行ったら、レンタルはしない、みたいな(笑)。
秋山:ぼくも好んで観るほうではないですね。観ないこともないですが……。
――武田さんはかなり映画を観られるほうですが、スプラッターは?
武田:借りて観るというよりは、海外のファンタスティック系の映画祭に行くことが多いので、そこで海外の‶ヤバい映画″は観ます。
――ヤバい映画(笑)。
武田:日本では上映しないようなスプラッターだったり、殺し合いだったり。けっこうグロい作品は観ますね。
――朝倉加葉子監督は、スラッシャームービーを得意とされていますが、演出はいかがでした?
秋山:スラッシャーに関する演出はちょっと思いつかないですね(笑)。
村井:でも、特殊メイクや特殊効果、例えば血が噴き出る演出には特殊メイクチームが参加していて。そのチームと朝倉監督はすごく連携感ありませんでした?
武田・秋山:ああ!
村井:すごい話の合う人たちのテンションで会話してらしたので、「やっぱり好きなんだな、そういうのが」と思っていました。血がすごいキレイに出ると「素晴らしい!」とか(笑)。
武田:すごくにこやかになってましたね(笑)。
秋山:イキイキしてたね(笑)。
――朝倉監督とお三方は、どちらかというと心情面の演出について話されたんですね。武田さんは監督とかなりやりとりをされてアカネを作っていったと聞きましたが。
武田梨奈 撮影=原地達浩
武田:男性をどうやって誘惑していくか?ですね。普通の言葉だけの誘惑ではなく。信頼関係ができていない、それぞれが「生き残りたい」「誰も信用できない」って人たちが集まっている設定なので、どう懐に入っていけばいいのか?というのは、つねに監督と相談しあいながら撮影していました。けっこう粘って何テイクも撮ったんですが、最後のカットの時に監督が「よくやった」ってハグしてくれたのは覚えています。
――男を騙す手練手管をいろいろ考えたと。男性から見るとすごく怖いんですが、村井さん、秋山さんはどうでしょうか?実際にああいう形で迫られたら。
村井:ああいう状況で、自分が弱ってるところにあんな言い方されちゃうと、うまくコロッと騙されちゃうんですかねえ。わからないですけど。
秋山:ぼくなら乗りまくりですね!
武田:(笑)
秋山:ごはんも食べてなかったら、理性なんかないわけですから。でも、そういうのがこの映画のリアリティに繋がってるのかな、と思います。
――リアリティがすごくありましたね。ただ、村井さんは劇中でモテ過ぎているという問題があるんですけど。すごく色んな女性に言い寄られるので。
武田・秋山:(笑)
村井:まあ、「騙されるだろうな」っていう、軽い見方をされてるキャラクターですから(笑)。しかも、心のない誘惑ですからね。
――村井さんのモテながらも複雑な心境になっていくところも、まだご覧になってない方は楽しみにしていただければ。もうひとつ、本作は実はアクションシーンもすごく多い作品なんですよね。例えば、序盤に武田さんたちがチームであることをする場面は、とてもアクロバティックなことをしています。ああいうアクションはどうやって考えたんでしょうか。
秋山:あのシーンは原作どおりですね。
――原作へのリスペクトがちゃんとあるんですね。他のアクションも地味に危ないシーンが多いですよね。
秋山:ああ、確かに。
武田:床が血だらけだったり、鎖に繋がれてたりするので、動きがすごく制限されたりするという意味では現場はすごく危なかったですね。なので、生々しいリアルなアクションになりました。「ここで転ぼう」と思わなくても、実際に滑ってしまうので。
村井良大 撮影=原地達浩
――お三方はラブシーンも演じてらっしゃいますね。何を考えながら演じてらっしゃったんでしょうか?村井さんと武田さんのシーンはとても激しかったので驚きました。武田さんは『木屋町DARUMA』でも濡れ場を演じられましたが、それよりもっと生々しい。
武田:そうですね。今までで一番生々しいかもしれないです。
――段取りは決まっていたんでしょうか?
村井:段取りはしなかったですね。最初のセリフの部分は多少話しましたが、いざ2人の〝闘い″の時は監督もあまり何も言わず、「本番いきましょうか」くらいです。
――その場のノリですか。アドリブですね。
武田:テストもあまりやらなかったですね。
村井:もう、流れのまま。
武田:段取りがあったら、わたしは出来ないかもしれないですね。けっこう勢いで撮ったところがあるので。
――秋山さんも武田さんと絡みますね。あの‶形のつけかた″も生々しかったのですが、あれもアドリブですか?
武田:形は(秋山さんに)作っていただきましたよね。
秋山:作るというか、流れですね。ぼくのシーンに関しては、最初はユキトシが能動的な芝居ではないので、まずはアカネが能動的に見えなきゃいけない。じゃあどうしたらいいか?というのを考えて、あの態勢を考えてやりました。時間が経過したらユキトシが能動的になるから、ぼくが主導でやればいいだけなので。それぐらいですかね、ぼくが考えてやったのは。
――なるほど。「こういう感じでいこう」というお話はされたんですね。
秋山:そうですね。ジャケットは脱ぐのか?とか。
武田:ボタンを外すかどうか?とか、ズボンを脱ぐか?も。
秋山:どこからスイッチが入るのか?とか。
――冷静に演じられてたんですね。
武田:そうですね。村井さんのシーンとは真逆の撮り方だったかもしれないですね。
――それはなかなか面白いですね。まったく方向性の違う二つの濡れ場なんですね。
左から、秋山真太郎、村井良大、武田梨奈 撮影=原地達浩
――原作はかなりぶっとんだ設定ですが、映画のほうはあり得るんじゃないか?と思わせるラストを迎えます。実際にこういう状況に陥ったら、みなさんどうされますか?
秋山:レイジくんみたいにやるんじゃないですかね、最初は。そうありたいな、とは思います。ただ、実際に1週間閉じ込められて、ごはんもないとなるとどうなるかはわからないです。
村井:ぼくも右に同じくですね。
武田:一人で生き残らなきゃいけないとなったら、わたしは「全員で死のうよ!」って言うかもしれないです。
――大胆ですね。
武田:生き残っても、何かを背負わなきゃいけないので。だったら「死のう!」と言うかもしれないです。
村井:「全員で死のうよ!」って言ったら殺されるかもよ。「あいつ、とんでもないこと言ってんな」って。
武田:確かに(笑)。
――最後に、これからご覧になる方にメッセージをお願いします。
左から、秋山真太郎、武田梨奈、村井良大 撮影=原地達浩
秋山:今お話ししてきたように、「自分だったらどうするか」と考えながら観るのが一番楽しめるかと思います。そこを考えて、普段の生活に活かせたら……そんな大きなことじゃないか(笑)。アクションもありますし、お色気もありますし、色んな楽しみ方が出来るんじゃないかと思います。
村井:観終わった後にすごく晴れ晴れとした気持ちになる映画ではないですし、スカッとする映画でもないです。ぼくはいつも、映画って観終わって何が残るかっていうのがやっぱり大事だなあって思っていて。それは何でもいいんですけど「あのシーンがすごく良かった」とか、「あのセリフがすごい良かった」とか、色々あると思います。『ドクムシ』に関しては、観終わった後に絶望しかないみたいなところがあるんですけど(笑)。でも、その中でも役者が一つ一つのシーンに命を懸けて全身全霊で挑んでいるので、心に残るセリフ、もしくはシーンが一つでもあったらいいと思いますね。
武田:わたしはこの作品を客観的に「誰に感情移入するだろう」と、そういうところを興味深く感じながら観ました。是非観終わった後に、一緒に観た方と感想を言い合ってほしい作品だな、と思います。
左から、秋山真太郎、武田梨奈、村井良大 撮影=原地達浩
『ドクムシ』は4月9日から2週間限定特別上映&「ニコニコ」ネットシネマにて同日公開
インタビュー=藤本洋輔 撮影=原地達浩
4月9日から2週間限定特別上映&「ニコニコ」ネットシネマにて同時公開
(c)2016「ドクムシ」製作委員会 (c)合田蛍冬八頭道尾/双葉社・E★エブリスタ
監督:朝倉加葉子/脚本:黒木久勝
制作プロダクション:ツインピークス/セディックドゥ