《ナクソス島のアリアドネ》とヤノフスキは“運命的な縁”

レポート
2016.4.10
マレク・ヤノフスキ (Photo:M.Terashi/Tokyo MDE)

マレク・ヤノフスキ (Photo:M.Terashi/Tokyo MDE)

〜ウィーン国立歌劇場日本公演記者会見より(1)

ヤノフスキのオペラ指揮、これが最後に?!

 ドミニク・マイヤー総裁とともに記者会見に登壇した指揮者マレク・ヤノフスキからは、次々と興味深いことが語られた。

 まずは長く離れていたオペラ指揮をすることになった経緯。
 「私がもう二度と歌劇場のオケピットに入るのはやめようと決意したのは、ドイツの歌劇場での《ナクソス島のアリアドネ》でした。演出先行で音楽が大切にされないオペラ上演の在り方は間違いだと。この考えは今も変わってはいません。ただ、いま考えれば、2010年から13年にベルリン放送交響楽団とワーグナーの全10作演奏を遂げ、私のなかにもオペラを指揮することへの気持ちの高まりがあったのかもしれません。そんなときにバイロイト音楽祭からの話があり、これを聞きつけたマイヤー総裁からの要請をいただいたのです。日本公演での《ナクソス島のアリアドネ》の指揮だと聞いて、私がピットに入ることを辞めた最後もこの作品であったことに、なにか運命的なものを感じました」

 ちなみに、記者会見では時間がなく質問としては出なかったが、2016年、17年のバイロイト音楽祭と今年のウィーン国立歌劇場日本公演は、「特別に振ることにした」と聞く。つまり、これを機に歌劇場の指揮に復帰するという考えは無いのだ。周知の通り、バイロイト音楽祭は、通常の歌劇場よりも訪れることが難しい。ということは、今回のウィーン国立歌劇場日本公演は、多くのオペラ・ファンにとって、マエストロのオペラを観る事実上最後の機会となるのかもしれない。

 マエストロが“間違っている”と感じる演出とは、どのようなものなのだろう?
「私はコンサバティブなものが良くて、新しいもののすべてがダメだと言っているわけではありません。変化が訪れることは当然です。ただし、そこには文化としての内容がなければなりません。多くの場合、現在の“ムジーク・テアター”にはそれがないのです。演劇とオペラは、ちがうものとしてあるべきなのです」

 《ナクソス島のアリアドネ》という作品については、観る者にインテリジェンスが要求されると言うマエストロ。
「特に〈プロローグ〉には登場人物の間で皮肉をこめた言葉のやりとりがあります。これをすべて理解するのはドイツ人でも大変かもしれませんが、日本の方々はとても優れた聴衆なので、楽しんでいただけるはずです」

 2014年から、「東京・春・音楽祭」で《ニーベルングの指環》(演奏会形式)を毎年一作品ずつ日本で演奏しているマエストロの日本の聴衆への信頼は高いようだ。

ウィーンと縁深いR.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》ウィーン初演100年を日本公演で!

 マイヤー総裁からは、R.シュトラウスは1919年から24年にウィーン国立歌劇場の総監督であったことや、Rシュトラウスの《ナクソス島のアリアドネ》と《影のない女》はウィーンで初演されたものであること、そしてオペラ版《ナクソス島のアリアドネ》がウィーンで初演されてから100年目に当たる今年、日本公演で上演できることは喜ばしいと語り、演出家および歌手についての紹介が行われた。
「演出のスヴェン=エリック・ベヒトルフは、ウィーン国立歌劇場ではすでに《ニーベルングの指環》を含む10本のオペラ演出を行っています。登場人物の性格を描き出すことに長けた演出家です。アリアドネ役のグン=ブリット・バークミンは、前回の日本公演の後、《エレクトラ》のクリュソテミス、《ワルキューレ》のジークリンデを歌い、成功をおさめています。バッカス役は出番は少ないとはいえ難役にちがいありません。この役を高い水準で歌える人は少なく、ヨハン・ボータはそのうちの一人です。ツェルビネッタ役を歌うのは、生粋のウィーンっ子で、ウィーンでもとても愛されているダニエラ・ファリーが歌います。作曲家役のヴェッセリーナ・カザロヴァも注目されますが、いわゆる脇役と呼ばれる人にもとても優れた人が登場します。たとえば舞踊教師役のノルベルト・エルンストは《ラインの黄金》のローゲでも優れた歌手として認められている人なのです」

 《ナクソス島のアリアドネ》は、39人という小規模なオーケストラ編成で演奏される。ヤノフスキいわく「R.シュトラウスによる奇跡的のーケストレーション、グルメのための音楽」。「それぞれにソリストとしての技量が要求されるこの作品は、ベストな人が演奏することになる」とマイヤー総裁は自信満々。そうだ、ウィーン国立歌劇場管弦楽団は、ウィーン・フィルのメンバーでもある。トップ・メンバーとは、まさしく、世界の頂点の響きを生み出すメンバーだ! 

(取材・文:吉羽尋子 Photo:M.Terashi/Tokyo MDE)
 

Photo: Wiener Staatsoper/Michael Poehn

Photo: Wiener Staatsoper/Michael Poehn


 
 
ウィーン国立歌劇場 2016年 日本公演
 
リヒャルト・シュトラウス作曲
《ナクソス島のアリアドネ》(プロローグ付1幕)

演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:マレク・ヤノフスキ
10月25日(火)19:00
10月28日(金)15:00
10月30日(日)15:00
 
リヒャルト・ワーグナー作曲
《ワルキューレ》全3幕

演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:アダム・フィッシャー 
11月6日(日)15:00
11月9日(水)15:00
11月12日(土)15:00
東京文化会館
 
ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
《フィガロの結婚》全4幕

演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ
11月10日(木)17:00
11月13日(日)15:00
11月15日(火)15:00
神奈川県民ホール

ウィーン国立歌劇場2016年日本公演公式HP
http://www.wien2016.jp/
 
問合せ NBSチケットセンター03-3791-8888
●全公演のS〜D券
一斉発売開始
6月4日(土) 10:00より
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