東京バレエ団『ラ・シルフィード』 東京文化会館で日替りキャスト上演、リハーサル&記者会見レポート

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2016.4.25
(左より)斎藤友佳理、松野乃知、沖香菜子、渡辺理恵、宮川新大 (撮影:引地信彦)

(左より)斎藤友佳理、松野乃知、沖香菜子、渡辺理恵、宮川新大 (撮影:引地信彦)

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昨年、新芸術監督・斎藤友佳理のもと新たな体制で始動した東京バレエ団。2月のブルメイステル版『白鳥の湖』に続いて斎藤を中心としたプロジェクト『ラ・シルフィード』が、4月29日(金・祝)と30日(土)の両日、2つの日替りキャストで上演される。公演を間近に控えた4月19日(火)、東京・目黒の東京バレエ団スタジオにて、記者向けリハーサル見学会と会見が行われた。

リハーサルでは第1幕を、4月29日に主演する渡辺理恵、宮川新大(あらた)らが、第2幕を4月30日主演の沖香菜子松野乃知(だいち)らが踊り、2つのキャストが披露された。

第1幕、妖精にふさわしい軽やかさと無邪気な魅力を備え、艶やかな美しさも加わった渡辺理恵は、まさに人間界に紛れ込んだシルフィードそのもの。ジェイムズ役の宮川新大は、機敏なバットリーやブレのない回転など、力強い動きを繰り出していく。彼らにエフィー役の吉川留衣を加えた第1幕のハイライト、“オンブル”のパ・ド・トロワは、各人が個性を際立たせながらドラマティックな場面を生み出していた。

宮川新大、渡辺理恵 (撮影:引地信彦)

宮川新大、渡辺理恵 (撮影:引地信彦)

第2幕、この3年で多くの主演経験を重ねた沖香菜子は、機敏で意志的な動きと蠱惑的な表情が印象的で、辺りの空気を引き寄せていく。甘く優しい雰囲気を漂わせる松野は、長身を生かした伸びやかな跳躍が目を引き付ける。沖に誘われ松野が追いかけていく2人の踊りは、仔犬どうしが戯れるような微笑ましさ。

沖香菜子、松野乃知 (撮影:引地信彦)

沖香菜子、松野乃知 (撮影:引地信彦)

一方、ソリストや群舞などシルフィードたちの美しい踊りがつづく中、斎藤友佳理から鋭い指導の声が飛んだ。
「そろえるのは素晴らしい。でも、もっと温かく。それぞれが個性を出して!」
浮遊感と優美さだけでは足りない、ぬくもりを感じさせる妖精を踊る─それが芸術監督の要求だ。

リハーサル後に行われた会見では、斎藤友佳理芸術監督が「この作品はダンサーとしても指導者としても私の原点」と語り始めた。『ラ・シルフィード』はダンサー斎藤の十八番と称えられた演目。彼女はのちにモスクワ音楽劇場で本作の振付家ピエール・ラコットのアシスタントを務め、3年前の東京バレエ団公演でも指導に当たった。「ラコットさんはこの作品の“香り”を伝えてほしいとおっしゃっていた。彼は常々、5番ポジションを正確にとり、上体を前傾姿勢にするよう注意していました。ロマンティック・バレエの香りはここから生まれるのです。」と監督は語る。

出演者の渡辺理恵は、「『ラ・シルフィード』は、登場時と死ぬ直前に同じ印象的なポーズをとる。その間を貫くジェイムズへの想いを役作りのポイントと考えています。2度目のシルフィードですが、宮川くんという新しいパートナーを得て緊張感をもって取り組んでおり、日々リハーサルでステップアップしている手応えを感じています。」と続く。パートナーの宮川新大は、昨年夏に入団。モスクワ音楽劇場バレエ在籍当時、『ラ・シルフィード』のリハーサルで斎藤と出会い、それが入団のきっかけになった。「この作品で主演デビューすることに運命を感じています。全幕の主役を演じるには多くを要求され、毎日が勉強ですが、表現を磨いて大人のダンサーになりたいと思っています。」と宮川は話す。渡辺同様、3年前につづいて主役のシルフィードを踊る沖香菜子は、「見たあとにお客さまが“妖精の世界を訪れた”と思ってくださるように、シルフィードがもつ空気感を大切にして、自分だけのシルフィードを演じたい」。やはり3年前、21歳で初めてジェイムズを踊った松野乃知は、「この3年間に自分の中で大きな変化があった。同じ役を演じていても感じ方が違っている。作品の中でジェイムズとして、シルフィードやほかの人たちと会話を交わすのを楽しみにしています。」と公演への気持ちをそれぞれ語った。

沖香菜子、松野乃知 (photo:Kiyonori Hasegawa)

沖香菜子、松野乃知 (photo:Kiyonori Hasegawa)

「この作品で大切にしていることは?」との問いには、4人全員が、作品や役が醸し出す“香り”を大切にして“表現”を磨き上げたいと語り、芸術監督のめざす高みを彼らが共有していることを感じさせた。

4月29日・30日の両日、上野の東京文化会館で2組のキャストをぜひ観て欲しい。

公演情報
東京バレエ団『ラ・シルフィード』全2幕

日時:2016年4月29日(金・祝) 14:00
   2016年4月30日(土) 14:00
会場:東京文化会館 大ホール(上野)
 
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
料金:S席=10,000円 A席=8,000円 B席=6,000円 C席=5,000円 D席=4,000円 E席=3,000円
 
<主な配役>
ラ・シルフィード:渡辺理恵(29日)/沖香菜子(30日)
ジェイムズ:宮川新大(29日)/松野乃知(30日)
エフィー:吉川留衣(29日)/河谷まりあ(30日)
ガーン:杉山優一(29日)/和田康佑(30日)
マッジ:木村和夫(29日)/森川茉央(30日)
パ・ド・ドゥ: 三雲友里加、岸本秀雄(29日)/金子仁美、入戸野伊織(30日) 
 
 

 

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