「最新の演劇情報を実感を持ってお伝えします!」 井上芳雄が語る「第70回トニー賞授賞式」とは?

インタビュー
舞台
2016.4.29
井上芳雄

井上芳雄

アメリカ演劇界の祭典「第70回トニー賞授賞式」が、6月13日(月)にWOWOWで生中継される。日本スタジオでは、案内役に宮本亜門、八嶋智人、スペシャル・サポーターに井上芳雄を迎え、授賞式の見どころを紹介していく。
番組のスペシャル・サポーター役を務めて今年で3回目となる井上に、これまでの出演秘話、そして今年の見どころなどを伺ってきた。

――率直な話、生放送のスタジオトーク、慣れましたか?

もちろん1回目より2回目のほうが慣れてきましたが…収録時間も長いので、最初はテンションの保ち方が難しかったです。、後半はあえてお茶の間でショーレースを観ているような気持ちでいるようにしています。そういう気持ちのコントロールも含めて1回目よりは楽しめるようになりましたね。
あと、朝がすごく早いんですよ!しかも番組の冒頭で歌わせていただくので、そのパフォーマンスの準備もあったりして。いつも舞台の稽古も入っているので、番組が終わったあとそのまま稽古場に行く…という、ものすごくハードな一日になるんです。
今年も…かな?…だな!!(※今年も「エリザベート」の稽古があるそうです)
それも含めて僕にとっての「トニー賞の日」だと思っています。

――今年ならではの見どころは?
 
僕、今年初めてこの番組の仕事でNYに行くんです!これまではどうしても時間があわなくて行けなかったんです。だから、今年は最新の情報をお届けできると思いますし、より実感を持って話せるのが嬉しいですね。

井上芳雄

井上芳雄

――これまでの「トニー賞授賞式」の放送について、印象に残るエピソードは?

昨年は黒柳徹子さんがスタジオゲストとしていらっしゃったのですが、徹子さんはミュージカルに造形が深くて、日本に限らず、ブロードウェイのミュージカル俳優についても詳しかった。ユル・ブリンナーとのエピソードもお話しになって。
番組には台本がありますが、、徹子さんの台本にはものすごくたくさんの書き込みがされていたんです。作品の解説とか。僕は徹子さんの隣の席だったのでちらっとそれを見たんですが、生放送でコメントをするということに対する凄さや姿勢とはこういうことなんだな、と勉強になりました。これだけの大御所の方がこんなに準備されて本番に臨んでいる。確か徹子さんは前日まで主演舞台「ルーマーズ」の大阪公演をされていたんですが、それでもしっかり準備されていて。一つ一つにかける情熱がすごかったです。

――さて、今年の「トニー賞」、井上さんの注目する作品はどれでしょうか?

「Hamilton」(ハミルトン)に尽きますね!すでにグラミー賞、ピューリッツアー賞といろいろな賞も受賞しているし、話題にもなっている。も取れないというし。ただ正直な話、断片的なパフォーマンスはよく観るんですが、何がそんなにすごいのかは実際に観てみないとわからないので。幸い今回現地で「Hamilton」を観る機会をいただけそうなので、そこは僕の感想をお伝えできればと思っています。
実在の歴史上の人物で普通に舞台化したら「勉強ミュージカル」になっちゃいそうですが、そうではなく新しい描き方をしていて興味深いです。主演のリン・マニュエル・ミランダがかつて作詞作曲した「イン・ザ・ハイツ」が世に出たときも話題になり、「こういう音楽でミュージカルが作れるんだ!」とすごくおどろきましたが、その人がまた新しいものを作り、そして話題になっている。。だからこそ、何がそんなにすごいのか、興味がありますね。
新しい形のミュージカルって、毎年毎年出てくるわけじゃない。10年に1本とか。でも「Hamilton」でまた新しい流れが来るんじゃないかなと思っています。

今年の「トニー賞」の対象ではないのですが、他に気になる作品は、「Shuffle Along, Or The Making of the Musical Sensation of 1921 and All That Followed」。オードラ・マクドナルドというトニー賞の最多受賞者かな?ストレートプレイもミュージカルもやるオードラが主演する作品なんですが、これはアフリカ系アメリカ人のミュージカル。黒人が作った音楽です。観てみたいです。

――ジョージ・タケイ作・主演の「Allegiance」はいかがですか?

凄いですよね。しかもご自分で書いてご自分で出演もしている。僕たちも知らないような話…日系アメリカ人が第2次世界大戦のときにどんな目に遭ったか、しかもそれを「エンターテイメント」作品としてオン・ブロードウェイに持っていけるのもすごいと思うんです。

王道の「シー・ラブズ・ミー」も観てみたいですね。古き良きミュージカル。日本でもよく上演されていますが、新しいものだけではなく、古きよきものを今、どうやるか、という点に注目したいです。ブロードウェイでも昨年は「巴里のアメリカ人」をやっていましたし、そういう「軸」も絶対あると思うんです。

――以前、井上さんが海外ミュージカルを観劇するときは、自分が演じられる役柄かどうか、という目線で観ていると話していらっしゃいました。そういう目線で最近気になる作品はありますか?

「Finding Neverland」。音楽だけ聴いてのイメージですが、派手な作品ですし主役の「glee」に出ていたマシュー・モリソンも、同世代なので。
あと、「A Gentleman's Guide to Love & Murder」。この作品は一人で何役もやる役なんですが、日本だと市村(正親)さんがぴったりだと思うんですよ…って以前どこかで話したら、その後、市村さんからメールが来ていて「俺の名前を出してくれてありがとう!」ってエピソードが。相変わらず先輩は貪欲だなあ、って思いました(笑)
僕だけじゃなく、全てのミュージカル俳優が「あの作品のあの役をやりたい!」って常に思っていると思います。先日、日本上演が決まった「キンキーブーツ」だって、何人もの役者が「あ、俺じゃなかったー!」って思っているんじゃないかな(笑)

井上芳雄

井上芳雄

――この1年くらい、ミュージカルだけでなく、ストレートプレイ「正しい教室」、連続ドラマW 「海に降る」(WOWOW)、ミュージカルコメディ番組「トライベッカ」(WOWOW)、そして舞台のPRで「関ジャム完全燃SHOW」(テレビ朝日)に出演と、様々な場所で仕事をする機会が増えているかと思います。そこで気づいたことや、心境の変化などありますか?
 

「舞台をやること」は一貫して「やりたいこと」なので、これからも追求していきますが、それ以外の映像のお仕事に関しては、StarSでやっても一人でやっても、もっと僕らに興味を持ってもらいたいと思ってやっているところが多いです。「トライベッカ」についても、誰もやったことのないことをやらせてもらいたい、という話から始まりましたし。バラエティ番組に出たときも、「そんなにしゃべらなくていいはず…むしろしゃべりすぎて怒られるんじゃないかな?」って思うこともあるんですが、せっかく番組に出演するからにはしっかり爪痕を残したい。「アイツ、あたりさわりのないことを言ってるよ」とは思われたくないですね(笑)「ミュージカル俳優って、おもしろいところもあるな」と思っていただくためには、ちょっと頑張ろうと思います。まずは知ってもらうためにね。最近は「ミュージカルあるある」のようなことを聴かれたりもします。「Wキャストというのはどんな心の闇が…」という話ばかり聞かれるんですけど(笑)まあ、それも含めて怒られない程度にやって、興味を持っていただけたら。

実はこの1年、ミュージカルよりはストレートプレイや映像でお芝居をしているほうが多いんですよ。番組などに出ると「ミュージカル俳優」として話を聴かれるんですけど。実際はミュージカルは数本しかやってないので、そこの時差のようなものがあるときに、「その差もおもしろいな」って思っています。いろいろやりすぎて「今、何をやっているんだっけ?」って思うこともありますけどね(笑)

――最後に今年の「トニー賞授賞式」について。井上さんをご存知の方でも海外のステージにはそれほど興味を持っていない方もいるかと思います。そんな方々に授賞式の楽しみ方を教えていただけますか?

日本のミュージカルを楽しんでくださっている方はもちろん大勢いらっしゃるのですが、やはりそれらが生まれた本場のミュージカルですし、世界最高峰のミュージカルと舞台俳優がパフォーマンスをするのが年に一度の「トニー賞授賞式」。ブロードウェイの舞台に出るということは、アメリカの俳優さんたちにとってもすばらしく栄誉なことだと聞いているので、みなさんのテンションやエネルギーのかけ方がすごい。また、その年度の新作が集まっているステージなので、本場の演劇事情も知っていただくにはとてもいい場が授賞式のパフォーマンス。全く知らないことばかりをやっている訳ではないと思うんです。日本でも知られている人が出ていたりね。ヒュー・ジャックマンとか。昨年は渡辺謙さんも出演されてたし。また、映画で有名な作品が舞台化されることもたくさんある。
「知っていること」を見つけていただくこと、そしてなによりパフォーマンスを観ていただくことで、そのレベルの高さを知ってもらえる機会になるんじゃないかなと思います。

放送情報
生中継! 第70回トニー賞授賞式
WOWOWプライム
2016年6月13日(月)午前8:00【二ヵ国語版】【同時通訳】
2016年6月18日(土)夜7:00【字幕版】
案内役:宮本亜門、八嶋智人
スペシャル・サポーター:井上芳雄
公式サイト:http://www.wowow.co.jp/stage/tony/
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