平田オリザが青年団に8年ぶり新作書き下ろし、善意の空回りを描く『ニッポン・サポート・センター』

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2016.5.1
青年団第75回公演 『ニッポン・サポート・センター』 ©Takahito Sato & Norio Kudo

青年団第75回公演 『ニッポン・サポート・センター』 ©Takahito Sato & Norio Kudo


青年団が第75回(!)目の公演として新作『ニッポン・サポート・センター』を、6月23日(木)~7月11日(月)に吉祥寺シアターで上演する。

平田オリザの主宰する青年団は、近年『ソウル市民1939・恋愛二重奏』(2011年)やアンドロイド版『変身』(2014年)、『新・冒険王』(2015年)など、シリーズ物、あるいは原案のある作品を継続して毎年発表し続けてきたが、新しい構想の作品としては『眠れない夜なんてない』(2008年)以来8年ぶりの書き下ろし新作となる。平田の構想段階から数えると、なんと10年の歳月が流れたという。

舞台は生活困窮者やドメスティック・バイオレンスの被害者などの一時避難を扱う駆け込み寺型NPOのオフィス。NPO幹部職員の不祥事を抱えて、全員の善意が空回りし、喜悲劇が繰り返される。ボランティア団体の日常を精緻に描きながら、現代社会の実情に鋭く切り込み、一方で「人を助ける」とはどういうことかという普遍的命題に正面から取り組む。山内健司、松田弘子、志賀廣太郎、永井秀樹ら青年団俳優陣が出演する。
 

<作者からのことば>

『ニッポン・サポート・センター』上演に向けて
 
2008年に、高齢化問題を主題とした『眠れない夜なんてない』を書いた前後から、次は貧困や格差の問題を描きたいと考えていた。そのために勉強をし、資料も読み込んでいたわけだが、その過程で二つの誤算があった。
 
一つは日本社会の格差が急速に広がり、貧困ということが当たり前に話題になる状況が起こったこと。もう一つは、それと関連して子どもの貧困や虐待などをテーマとした文芸作品が世にあふれ出したこと。そして、それらを読むにつけ、なんとなく「違うんじゃないか」という思いが強くなった。私の母はかつて東京都の教育相談所に勤務し、姉はいまも児童相談所に勤務している。そのような背景もあって、たとえば児童相談所を舞台にした漫画などを読んでも、どうにも強い違和感を感じると共に、その紋切り型の表現に飽き足らない思いが募った。
 
主に劇団のスケジュールの都合で、この新作上演が延び延びとなり、そのため私自身の構想も少しずつ変化した。というよりも少し冷静になって、ここは一つ、私自身のスタイルをきちんと守って、じっくりと作品を書いてみようと思った。
 
『ソウル市民』で植民地支配の背景の日常を描いたように、『カガクするココロ』や『北限の猿』で最先端の科学に寄り添うように生きる人間模様を描いたように、貧困や格差の問題からも少し距離を置いて、そこに生きる人々の姿をきちんと見つめてみようと考えた。
舞台は、貧困や子育て支援など様々な相談にのる、いわゆるワンストップサービスのNPOの窓口。そこで働く人々の日常が描かれる。弱者を助ける立場にいる人々にも、様々な人生の陰と陽があり、屈託がある。その屈折や屈託を、ゆっくりと描いていきたい。
 
『新・冒険王』のような続編、アンドロイド版『三人姉妹』や『変身』のような翻案を除くと、純粋な新作としては8年ぶりの書き下ろしとなる。構想からあしかけ10年。初心に返って、何事もない、のんびりとした時間を書ければと思っている。
ゆっくりと滅びの道を歩む日本の、影絵のような芝居になればと思っている。
-- 平田オリザ
平田オリザ(撮影:青木司)

平田オリザ(撮影:青木司)

公演情報
青年団 第75回公演  『ニッポン・サポート・センター』 (新作)
 
■会場:吉祥寺シアター (東京都)
■会期:2016/6/23(木)~2016/7/11(月)全19ステージ
■作・演出:平田オリザ
出演:山内健司 松田弘子 志賀廣太郎 永井秀樹 たむらみずほ 辻 美奈子 小林 智 兵藤公美 島田曜蔵 能島瑞穂 大竹 直 村井まどか 河村竜也 堀 夏子 海津 忠 木引優子 井上みなみ 富田真喜 藤松祥子
■公式サイト:http://www.seinendan.org/play/2016/01/4914

※平田オリザのポストパフォーマンストーク開催=6/23(木)19:30、6/24(金)19:30、6/25(土)18:00、6/26(日)14:00、6/27(月)19:30
 
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