リッカルド・ムーティ、旭日重光章を受章

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2016年はシカゴ交響楽団、東京・春・音楽祭、ウィーン国立歌劇場と、3回もの来日公演が行われるリッカルド・ムーティ (c)Silvia Lelli

2016年はシカゴ交響楽団、東京・春・音楽祭、ウィーン国立歌劇場と、3回もの来日公演が行われるリッカルド・ムーティ (c)Silvia Lelli

2016年4月29日、内閣府は春の叙勲を発令した。各界で功労のあった内外合わせて4,024人の中に、リッカルド・ムーティの名があった。

このたび受賞した旭日重光章は、あのヘルベルト・フォン・カラヤンが1989年に受賞したのと同じものだ。海外叙勲制度はなかなか一般人には縁遠く思われるものだが、今回の受賞には長年活躍を続けるマエストロへの感謝を、我々音楽ファンに代わって国が示してくれたようにも感じられ、なにか喜ばしく思われるものである。

長年の功績が国によって評価された格好だ(内閣府 サイト「平成28年春の叙勲等」リストより)

長年の功績が国によって評価された格好だ(内閣府 サイト「平成28年春の叙勲等」リストより)

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最初の来日はカール・ベームとともにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1975)と、そして二回目はユージン・オーマンディとともにフィラデルフィア管弦楽団(1981)と、前世代のマエストロたちに紹介されるような形で日本を訪れたムーティ。ご存知のとおり彼はその後、フィラデルフィア管、そしてミラノ・スカラ座を率いる存在へと成長し、現在までに25回もの来日を重ねた。今年の1月にはシカゴ交響楽団の音楽監督就任後初の、待望の来演で鮮烈な印象を残したことは記憶に新しい。
また日本での活動といえば3月から4月にかけて開催された「東京・春・音楽祭」とは近年特に関係が深く、ことしで前身の「東京のオペラの森」時代から数えて5回目の登場となった。今年の音楽祭開幕公演で、日本におけるコンサートは通算で150回と、日本の音楽団体にポストを持たない外国の指揮者としては異例な公演数を数えている。

初来日の頃、つまり頭角を現しはじめた1970年代には若き才能として将来を期待された彼も、今ではウィーン・フィルに名誉団員として遇される、押しも押されもせぬ偉大なマエストロの一人だ。そんな彼は、長く務めたスカラ座の音楽監督を退任してからは後進を育てる活動にも注力し、2004年には母国イタリアの若者たちを支援するため、偉大な作曲家の名前を冠したルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団を創設している。

また、2007年にはパシフィック・ミュージック・フェスティバルの首席指揮者を務めているし、今年の2月からはシカゴ交響楽団の指揮者育成プログラム「Solti Apprentice」により八嶋恵利奈をアシスタントに選ぶなど、彼の若手育成活動は日本とも縁がある(もっとも、八嶋はドイツに生まれ育った注目の若手指揮者である)。

記念すべき日本での150回目のコンサートとなった東京・春・音楽祭の開幕公演が、ムーティのイタリアと日本での教育活動の、ひとつの集大成として行われたことはコンサートに来場された方、また先日放送されたドキュメンタリーをご覧になった方はご存知のとおりだ。若者たちとのリハーサルで自らの知識、経験を惜しみなく伝えて貪欲に良い演奏を追い求める姿も印象的だが、ときに指揮台をはみ出さんばかりの大きなアクションで若いオーケストラから最高の音楽を導き出そうとするコンサートでの指揮姿に、より強い感銘を受けた。果たしてあれが、来日前のアクシデントでその体調が心配された指揮者の姿なのだろうか?私は放送を深夜に視聴し、オーケストラの若者たちの紡ぐ音楽以上に、1941年生まれのマエストロの若々しさに圧倒されてしまった。7月には75歳となるムーティだが、まだまだ衰えとは無縁の活躍が続くように思える。また、6月には疎遠になっていたミラノ・スカラ座への復帰公演も予定されており、リッカルド・ムーティの活躍からはますます目が離せない。

ムーティ自身のサイトでも受章を伝えている(写真右側、6月に行われるスカラ座への復帰を伝える記事に2003年来日公演のものが使われていることに注目)

ムーティ自身のサイトでも受章を伝えている(写真右側、6月に行われるスカラ座への復帰を伝える記事に2003年来日公演のものが使われていることに注目)

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上述したとおり、日本ではことし既に二度の来日公演を行っているが、さらにこの秋にはウィーン国立歌劇場との来日公演が予定されている。世界の名門シカゴ響、そして若者たちの合同オーケストラに続いて、”オペラの殿堂”とも称されるウィーン国立歌劇場での来演と、これだけの経歴を誇るマエストロが、一年のうちにそれぞれに性格の違うアンサンブルとの来日公演をたて続けに行うことは異例中の異例だ。シンフォニー、若手育成、そしてオペラと、巨匠の活動を多面的に捉えられる、これほどの機会はそうは訪れまい。

今回ウィーン国立歌劇場と披露してくれるモーツァルトの「フィガロの結婚」は、1980年にスカラ座にデビューした際にも、1993年に長く離れていたウィーン国立歌劇場に復帰した際にも取り上げている、ムーティのレパートリーの中でも重要な作品だ。そんなオペラをジャン=ピエール・ポネルの名演出で、彼自身が選んだ歌手たちとウィーン国立歌劇場によって上演されるのだから、決定版となる上演を期待してもいいだろう。

なお、10月から予定されているウィーン国立歌劇場の来日公演のうち「フィガロの結婚」のみ横浜の神奈川県民ホールでの上演となるので、予定を立てられる際にはご注意いただきたい(「ナクソス島のアリアドネ」「ワルキューレ」は上野の東京文化会館で上演)。チケットは6月4日(土)より一斉発売が開始される。

公演情報
ウィーン国立歌劇場 モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」

日時:2016年11月10日(木)17:00開演、11月13日(日)、15日(火) 15:00開演
会場:神奈川県民ホール 大ホール
■出演:
指揮:リッカルド・ムーティ
演出:ジャン=ピエール・ポネル 
合唱&管弦楽:ウィーン国立歌劇場

伯爵夫人:エレオノーラ・ブラット 
スザンナ:ローザ・フェオーラ 
ケルビーノ:マルガリータ・グリシュコヴァ 
アルマヴィーヴァ伯爵:イルデブランド・ダルカンジェロ 
フィガロ:アレッサンドロ・ルオンゴ  ほか

 

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