愛刀「陸奥守吉行」や新発見の書簡も公開 坂本龍馬人気のワケに迫る『坂本龍馬展』記者発表会レポート
『特別展覧会 没後150年 坂本龍馬』記者発表会
いまなお多くの人を魅了し続ける幕末の志士・坂本龍馬。彼はいったい何故これほどまでに人を惹きつけるのか?歴史ファンにとっての永遠の命題であるこの問いに、真正面から向き合う展覧会が開催される。今年10月より京都を皮切りに全国で開催される『特別展覧会 没後150年 坂本龍馬』は、坂本龍馬直筆の手紙や愛刀を通じて、彼の生き様を浮き彫りにする大規模な展覧会だ。一昨年新たに見つかった龍馬直筆の手紙や、正式に龍馬の刀として認められた「陸奥守吉行」など、見どころ満載の内容を今月10日(火)に行われた記者発表のレポートを通じてお届けする。
京都国立博物館 上席研究員・宮川禎一さん
龍馬の生き様しめす 直筆の書
本展では、坂本龍馬直筆の手紙が複数点出品される。なかでも、日本の将来を案じた幕末の志士としての龍馬の息吹きを感じることができるのは、後藤象二郎に宛てた「越行の記」である。この書簡には、福岡藩の三岡八郎(のちの由利公正)を新政府の財政担当者とするために、彼に会いに行ったことが記されている。新政府の財政問題について熱をもって語り合う龍馬の姿を、彼の直筆を通じて感じることができる貴重な資料だ。なお、この手紙は一昨年テレビ番組の取材中に偶然発見されたものだという。21世紀にはあり得ないと思われていた奇跡の大発見となった一品だ。(※京都会場にて展示)
龍馬書簡 慶応三年十一月 後藤象二郎宛「越行の記」 江戸時代 慶応三年(1867)
龍馬と佐那、愛しあった二人のドラマを感じる
坂本龍馬は剣豪としての姿でも、我々を魅了してくれる。とりわけ、江戸で通っていた剣道場「桶町千葉道場」の娘・佐那との恋愛模様は、多くの映画やドラマ、漫画などで描かれてきた。「北辰一刀流長刀兵法目録」には、そんな龍馬と佐那の名前が連なって記載されている珍しい資料だ。佐那だけではなく、道場主であり佐那の父、千葉定吉と、その長男である千葉重太郎の名前も連盟されている。龍馬の剣術の技量を示す味わい深い目録となっている。(※京都・東京会場にて展示)
北辰一刀流長刀兵法目録(部分)江戸時代 安政五年(1858) 高知・創造広場「アクトランド」龍馬歴史館蔵
暗殺時も持ち合わせた「陸奥守吉行」に対面
さらに本展で最も注目の品といえるのが、「刀 銘吉行 坂本龍馬佩用」である。この刀は昨年、長年にわたる研究者の間での疑念を退けて、正式に坂本龍馬の愛刀である「陸奥守吉行」であることが認められたものだ。
刀 銘吉行 坂本龍馬佩用 江戸時代 京都国立博物館蔵
そもそも陸奥守吉行とは、17世紀後半の土佐の名工のこと。吉行の刀には「拳形丁子(こぶしがたちょうじ)」と呼ばれる、ぼこぼこした拳のシルエットのような刃文があることが特徴だ。出品される「刀 銘吉行 坂本龍馬佩用」は、この拳形丁子がみられないために、陸奥守吉行の作ではないのではと伝えられてきた。
ところが一昨年、最新鋭の調査機器により、「刀 銘吉行 坂本龍馬佩用」にうっすらと拳形丁子の刃文の跡が発見されたのだ。実はこの刀は、大正二年(1913年)に北海道にある坂本弥太郎宅にて火災にあって形状が変化し、研ぎ直しをされていたために刃文が見えなくなっていたのである。この刀は、龍馬が近江屋で暗殺された際に敵刀を受けた刀としての可能性も高いとのこと。龍馬の傍らで彼の人生を見続けてきたこの刀を見ることは、まさに彼の生き様を体感することといえよう。
「刀 銘吉行 坂本龍馬佩用」の拳形丁子の刃文(部分) 江戸時代 京都国立博物館蔵
その他にも、ペリー来航図、日本測量図など当時の時代感を感じられる資料も多数展示される。幕末という時代と、それを駆け抜けた龍馬という人を浮き彫りにする『坂本龍馬展』。龍馬ファンのみならず、彼の魅力を体感できるものとなるだろう。『特別展覧会 没後150年 坂本龍馬』は、2016年10月15日(土)から京都で開幕。12月からは長崎、2017年4月に東京、2017年7月には静岡を巡回する。
日程/会場:
2016年10月15日(土)~11月27日(日)/京都国立博物館
2016年12月17日(土)~2017年2月5日(日)/長崎歴史文化博物館
2017年4月29日(土・祝)~6月18日(日)/東京都江戸東京博物館
2017年7月1日(土)~8月27日(日)/静岡市美術館