銀座の画廊がお酒でおもてなし!アットホームすぎるアートイベント『画廊の夜会』とは? 体験レポート #後編

2016.6.1
レポート
アート

『画廊の夜会』(東京画廊)

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銀座4丁目~8丁目の24 画廊 が夕方から夜にかけて一斉に開廊し、来場者をもてなす『画廊の夜会』。今回、SPICEでもライターとして活躍しているアートテラー・とに~氏の先導のもと巡るアートツアーに密着し、その様子をお届けしている。後編となる今回も、アートツアー内で最もディープな場所にあるギャラリーや、東京の現代アートを見続けてきた老舗画廊などが目白押しだ。日もとっぷり暮れた銀座で歩みを進めるアートツアー一行の様子を追ってみよう。

前編はこちら


 

Galleria Col

このツアー中、最もディープな場所にあったのは、このGalleria Colだ。築50年を越えるという雑居ビルの狭い階段を上ると、そこには15人も入ればぎゅうぎゅうになってしまう小さなギャラリー空間が広がっていた。

Galleria Col

会場ではしっとりとしたジャズ音楽が流れ、ツアー参加者は口々に「狭いのに居心地がいい」「落ち着く」と語る。一見気難しそうなGalleria Colの奥野氏はお酒をふるまうのがお好きなようで、ツアー参加者にしきりに「飲まない?」とワインボトルを差し出していた。にこにことワインを注ぐ奥野氏の様子に心が和む。

 

靖山画廊

新歌舞伎座の真正面にある路地を入ったところにある「靖山画廊」で行われていたのは超絶技巧が光る作家たちのグループ展。とに~氏も興味深そうに作品を眺める。

靖山画廊

切り絵作品を出品していた今井清香氏は「これを作るのには約2か月かかります。ポートフォリオなどにするときに写真を撮るんですが、なかなかうまくいかなくて…写真は勉強中です」と語っていた。お酒を片手に、アーティストたちとも気軽に話ができるのもこの『画廊の夜会』ならではだ。

 

至峰堂画廊

「至峰堂画廊」で行われていたのは現代洋画家の山田啓貴を中心とした作品展。こちらのソフトクリームを大きく描いた作品には《心に舞う灯り》という一見的外れにも見える作品名が。画廊の鈴木氏の解説による解説に、ツアー参加者から感嘆の声があがる。ギャラリストの方が自らの言葉で熱く作品を語る様子にに胸が動かされる。

至峰堂画廊 右:鈴木氏

その他にも人生ゲームで使われるルーレットを描いた《ちょっと作為的な運命》や、鶏をまるごと描いた《肉屋で交わした挨拶》など、その背景にある物語を想像させるようなタイトルの作品が並ぶ。その中に、クソゲーと評されるファミコンゲームソフト『スペランカー』を描いた作品があった。

「どうしてスペランカーを?」と尋ねたとに~氏に対し、「いやもうクソゲーとして名高いスペランカーを描いておかねばと思いまして」と語った山田氏。そこから二人の話題は、幼少期のころのゲーム事情について発展する。「僕の家は貧乏だったから、ファミコンじゃなくて父がPCエンジンを買ってきたんですよ。友達と話が合わなくてねぇ」と笑い所を交えるとに~氏の話術に引き込まれる。

左:山田啓貴 右:とに~氏

 

黒田陶苑

次に向かった「黒田陶苑」は今回のアートツアーで巡る中で唯一の”陶器専門のギャラリー”だ。1階部分に足を踏み入れると、味わい深い茶碗や茶器や皿がずらりと並ぶ。これまでのギャラリーとは一味雰囲気の異なる空間で、ツアー参加者たちは興味深げに作品を眺める。

黒田陶苑

中でも参加者たちを驚かせたのは、3階部分で展示されていた花や植物を精巧に模した陶器作品だ。「こんなに美しいのなら、もはや花いらずですね」と冗談めかして語った参加者の方も。地味なお茶碗だけではない、陶器の世界の広さを目の当たりにさせられるスポットであった。

「ここの画廊の方は、小学校の時から陶器が好きで、海外の陶器メーカーに『カタログをください』と手紙を送ったほどなんです」と、名物ギャラリストのエピソードを語るとに~氏。作品のみでなく、画廊の裏側を聞くことができるのも、とに~氏によるアートツアーの特徴だ。

黒田陶苑について語るとに~氏

 

東京画廊

いよいよアートツアーもクライマックス。最後に訪れたのは「東京画廊」。1950年にオープンした東京画廊は、日本でもっとも古くから近現代アートを扱っている画廊とのこと。

東京画廊

画廊の山本豊津氏は最近自身が執筆した著作『アートは資本主義の行方を予言する』について言及。「『資本主義』という言葉が入っているから、アートに関係のない人まで手に取ってくれているんですよ。おかげさまで沢山お買い求めいただいています」との言葉に、とに~氏はすかさず「宣伝上手ですね。画廊に来た人にもじゃんじゃん作品を買わせるんですか?」と冗談めいてつっこむ。

山本氏

山本氏は、吉村益信の《クッキング》をフィーチャーして紹介。《クッキング》は、旧式のシャープ製の電子レンジのなかに、丸い蛍光管が3本入れられている作品だ。なんと、今でも電子レンジに電源をいれると電磁波で蛍光管が光りだすのだという。「この作品の何がポイントかというと、彼が作ったものは何一つないということだ」と山本氏は語る。「ポップアートは、普段周りにある日用品をいかにアートに仕立てあげるか、生活をいかにアートに変化されるかが試されるジャンル。この作品はポップアートを体現している作品といえる」とのこと。デザインとして根強い人気を保つのポップアートの作品の本質とはなにか、改めて考えさせられる画廊であった。

吉村益信《クッキング》

 

銀座の画廊たちが、夜遅くまで開館しお酒とおつまみでもてなす『画廊の夜会』。一人でしっとり巡るのももちろん良いが、アートツアーを通じて出会った人々と賑やかに楽しむのもまた一興であろう。『画廊の夜会』は、来年も開催予定とのこと。新しい"銀座のオトナな楽しみ方"を、ぜひ1度体験してみてはいかがだろうか。

 

イベント情報
画廊の夜会

日時:2016年5月27日(金) 17:00-21:00 ※終了済み
会場:銀座4丁目~8丁目(東京都中央区)の24 画廊
詳細:http://ginza-galleries.com/yakai.html
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