「ウィリアム・テル」初演記念日、PMFから聴くか?PFMから聴くか?

SPICER

本日(8月3日)は、ジョアキーノ・ロッシーニのオペラ『ウィリアム・テル』がパリ王立音楽アカデミー劇場(パリオペラ座の前身)で初演された日だ(1829年)。ロッシーニはイタリア出身、『セビリアの理髪師』など39本のオペラを書き、19世紀前半最も成功したオペラ作曲家の一人だったが、37歳の時に発表したこの『ウィリアム・テル』の大成功をもってオペラ作曲家活動に終止符を打ち、その後は隠居したり、復活してパリでサロンやレストランを経営するなど楽しい余生を送って、76歳まで生きたのだった。

オペラ『ウィリアム・テル』を全曲聴いたことのある人はあまりいないかもしれないが、その序曲を知らない者はいない。なんといっても「ひょうきん族」のオープニングテーマなどで日本人の耳にもすっかりこびりついている。

そしてまさに本日(2015年8月3日横浜みなとみらいホール)と翌日(8月4日サントリーホール)に、「ウィリアム・テル序曲」を国内で演奏するのが、あのワレリー・ゲルギエフが指揮するPMFオーケストラである。他に、ショスタコーヴィチ『交響曲第10番』、そしてなんと先日チャイコフスキー国際コンクールで優勝したばかりのピアニスト、マスレエフを呼んでラフマニノフ『ピアノ協奏曲 第2番』という、垂涎のプログラムだ。この演奏会を聴ける人は至福以外のなにものでもなかろう。

PMFオーケストラは1990年にレナード・バーンスタインが札幌に創設した国際教育音楽祭「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」のオーケストラで、ゲルギエフは今年から第6代PMF芸術監督に就任、3年間これを務めることになったのだ。

ところで! …ロック愛好家にとっての『ウィリアム・テル』序曲といえば、PMFではなく、PFM(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)のほうだ。間違いない(←なぜ今、長井秀和?)。PFMはイタリアン・プログレッシヴ・ロックの代表格だが、1974年には英国マンティコアレーベルから英語盤アルバムもリリースされ、世界的な人気を博した。英語盤アルバムの歌詞とプロデュースはピート・シンフィールドが担当。ピート・シンフィールドは、いわずとしれたキング・クリムゾン創設メンバーで『クリムゾンキングの宮殿』を作詞した人である。

そんなわけでPFMは、イタリア国外では基本的に英語でライヴをおこなう。しかし、やはりイタリア人としての矜持なのであろうか、イタリア作曲家ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」をライヴの定番曲としてほぼ毎回演奏する。1974年発表の『クック=ライヴ・レコーディング』では、「アルタ・ロマ5~9時」からの流れで「ウィリアム・テル序曲」を聴くことができる。2013年にクラシックと真正面から向き合った『イン・クラシック〜モーツアルトからの祭典』でも、ボーナストラックとして付いてくる。

21世紀以降、来日機会が多くなったPFMだけに、日本でのライヴのアンコールでこれを聴いた人は多いだろう。彼らの凄テクを堪能するうえでも、ライヴでこれを聴かないとスッキリしない。youtube上にも、PFM「ウィリアム・テル序曲」の動画は幾つか見出されるが、とくに必見なのは初期PFMの鬼気迫る動画(マウロ・パガーニ入り)である!


「ウィリアム・テル序曲」は7分過ぎくらいから
 Franz Di Cioccio(ドラムス、パーカッション、ボーカル)
 Patrick Djivas(ベース)
 Franco Mussida(ギター、ボーカル)
 Mauro Pagani(フルート、バイオリン)
 Flavio Premoli(キーボード、ボーカル)
 TV番組Old Grey Whistle Test(1975年​​)より

『ウィリアム・テル』初演記念日に、PMFとPFMの「ウィリアム・テル序曲」を続けざまに聴けるオツな人がいるとしたら、このうえない羨望の眼差しを注がずにはいられない。

 

シェア / 保存先を選択