“天才芸術家”の新たな一面を垣間見る 『ミケランジェロ展~ルネサンス建築の至宝~』レポート
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2016年6月25日(土)より、『ミケランジェロ展~ルネサンス建築の至宝~』がパナソニック 汐留ミュージアムで開催だ。イタリア・ルネサンスの巨匠ミケランジェロ・ブオナローティの展覧会は、日本でも幾度となく開催されてはいるものの、本展はそれらとは一線を画すものとなっている。というのも、本展はミケランジェロの建築的偉業に特化して紹介する展覧会となっているのだ。こうした建築家としてのミケランジェロをフィーチャーした展覧会は、日本初となる。
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ミケランジェロはイタリア盛期ルネサンス期に活躍した芸術家だ。《ダヴィデ像》に代表されるような彫刻、ヴァチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂に描いた史上最大の天井画、そして《最後の審判》など、彼の生み出した創作物は枚挙にいとまがない。彼は、彫刻・絵画・建築という視覚芸術の3領域において卓越した人体表現と深い精神性を表現し、「神のごときミケランジェロ」と称えられた。展覧会では、そんなまさに超人技といえる彼の作品たちを振り返ることができる。
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会場ではもちろんこれら彫刻家・画家としての彼の業績にも触れられているが、今回のメインは「建築家としてのミケランジェロ」だ。本展ではミケランジェロの手掛けた建築の模型や写真、映像に加えて平面図と立面図などの図面を用いて、彼の建築家としての全貌に迫っていく。彼の活躍の舞台となったフィレンツェとローマには、今も彼が手がけた建築が都市の景観を形づくっている。同時代の人々を驚かせた斬新な表現形式や空間の取り扱いは、現代の私たちをも魅了してやまない。
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筆者は現在、建築に関わる仕事をしており図面を毎日目にしているのだが、彼の生み出したそれは通常の図面とは異なり、お洒落なテキスタイルとも言えるような美しさを秘めていた。綺麗な曲線で描かれたまるで花柄の様な平面図は、それ自体がアートとして完成しているといえよう。
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さらに東京会場だけの特別コーナーでは、日本を代表する丹下健三や磯崎新といった建築家たちが、ミケランジェロに対する畏敬の念を自らの作品にどう取り入れてきたかを紹介している。ミケランジェロが400年以上にわたって建築家たちの師であり続けていることを、改めて提示してくれるコーナーだ。
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また展覧会では、ミケランジェロの邸宅である『カーサ・ブオナローティ』が所蔵する、本人による素描や書簡などを含めた約70点を総覧することもできる。そのうち30点を超える素描と2点の手紙は、日本初公開となる資料だ。実はミケランジェロには、自身の死の直前に大量の素描を焼き、その製作過程をヴェールに包もうとしていたというエピソードがある。これらの資料を私たちが現在目にすることができるのは大変貴重で、幸福なことだといえるだろう。
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本展の作品たちは、ミケランジェロと同じ時代を生きたフィレンツェの職人によって作られた額縁を使って展示されている。こういった細部へのこだわりも意識しながら、ミケランジェロという巨匠が活躍していた当時の世界観を体感してみてはいかがだろうか。
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「天才なる者を信じない人、天才とはどのようなものかを知らない人は、ミケランジェロを見るがいい。」 本展のにも記載されているこの言葉は、フランスの作家、ロマン・ロランが自身の著書に書いた一文だ。ぜひ人々が"神"や"天才"と称え続ける彼の建築家としての新たな一面を知りに、会場へ足を運んでみてはいかがだろうか。
文=山口智子 撮影=丸山 淳一郎・山口智子
開館期間:2016年6月25日(土)~8月28日(日)
開館時間:午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
一般:1,000円 65歳以上:900円 大学生:700円 中・高校生:500円 小学生以下:無料