雑誌創刊20周年を祝う『Talking Rock! FES.』、ミュージシャンたちと歩んだ今日までを吉川編集長が語る

インタビュー
音楽
2016.7.19
吉川尚宏編集長

吉川尚宏編集長

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今夏で5回目となる音楽ファンお待ちかねのフェス『Talking Rock! FES.』が7月23日(土)に開催される。しかも今回は、舞台を大阪市内のライブハウスから、泉大津フェニックスという野外の会場にスケールアップ。と言うのも、フェスを主催する雑誌『Talking Rock!』が創刊20周年というメモリアルイヤーだから。そこでSPICE取材班は『Talking Rock! 』編集部へ急行し、吉川尚宏編集長を直撃、ロングインタビューを敢行した。前後編でお届けするインタビューの前編は、雑誌とフェスの生い立ちについて訊く。
 

――はじめに、『Talking Rock!』の歴史から教えていただけますか?

1992年に京阪神エルマガジン社という在阪の出版社で月刊情報誌「Lマガジン」(09年に休刊)の音楽担当になって、イベントとかやったらおもしろいかな?ということで僕が司会進行役で公開インタビューを始めたんです。「Lマガジン・トーク・ライブ!!」というタイトルで、当時、大阪市内の某百貨店にあったショールームが1時間3000円ぐらいで借りられたので、そこに読者の方を100人くらい招待して。実はそもそもこの雑誌は、月1回のその公開インタビューの1年分をまとめた別冊本だったんです。だから創刊当初の誌面を見ると、アーティストがマイクを持って話している写真が多いんですよね。『Talking Rock!』(創刊時は『トーキンロック!』)という誌名にしたのも、トークライブを一冊にしたというところから考えたんです。

――なるほど。そもそもなぜ公開インタビューをやろうと?

何かおもしろいことをしたいというのは常々あって。特に当時は若かったから、人よりもおもしろいことをしたいという欲がすごく強かったと思うんです(笑)。で、ちょうどJロックの勢いが出始めてきた時期で。スピッツやJUDY AND MARY、THE YELLOW MONKEYのブレイク前、1994年頃ですね。その勢いと、トークライブの企画がうまくハマって。第3号(1997年10月発行)にはGLAYが載っているんですけど、あの時はFM802とのタイアップで、御堂会館で開催して。トークライブの後にアコースティックライブもやってくれたんですよ。ちょうど「BELOVED」がヒットしていた頃です。そういうこともあって、だんだん「トーキンロック!」の名前が知られるようになっていって、公開インタビューだけじゃなく、普通のインタビューで定期発行してもいけるんじゃないかなと思って、1999年4月に隔月刊化したんです。

Talking Rock!

Talking Rock!

――まだ『Talking Rock! 』ではなく、『トーキンロック!』の時代ですね。

そうです。そこから社内でTalking Rock!の編集部を作り、しばらく隔月発行を続けたんですけど、04年の秋に一度休刊したんです。で、2005年に僕はITの会社に誘われて、その出版社を辞めて大阪から東京へ行き……当時、確実に訪れると予想されていたネットの影響力に対して、もう紙媒体はこの先ダメだろうなと思ったんですよね。実際にそのITの会社では新規の音楽ビジネスを立ち上げるという事業部に加わったんですけど、とにかくネットの世界はすごいなと感じました。当時はTwitterもYouTubeもなくて、Myspaceもまだ日本でのサービスが始まる前で、mixiが100万人を超えたとか、そういう段階だったんですけど、その事業部で描かれた5年先、10年先の未来予想図と事業プランが驚くような内容で。しかも、雑誌は読者からの反応がプレゼントの応募ハガキでしか感じられないみたいな世界だったんですけど、ネットにはこんなにユーザーがいるんだ!と。しかもすぐに大勢と繋がれる。これは確実に情報メディアの在り方は変わるなと思って、一人で勝手に興奮してました(笑)。ただ、実際にそのプランは結果的に何一つとして形にはならなかった。すべて(価値判断が)机上なんですよね。現場を知る人があまりいなくて、何もかもを数字化していくようなやり方だったんです。特にカルチャーに対しての価値観がとても乏しかったので、これは自分には合わないなと思って1年程度で辞めて。その中で出会った信頼できる数名がSNSサイトを立ち上げて、それを手伝いつつ、そういうITの世界に携わる中で、次第にネットと紙メディアの特性の違いを感じはじめたんです。

――なるほど。

役割が違うとでもいうか。情報の即効性は圧倒的にネットが強いけれど、写真の見せ方や取材の仕方も含めて“編集”という部分においては、まだまだ雑誌のほうが作りやすくて表現がしやすいんじゃないかと。そして、そういうものを求めている人もまだまだいるんじゃないかと。だから作り方次第では、雑誌ならではのおもしろさが出せると思ったし、紙メディアは淘汰されていくだろうけれど、なくなることはないなと思ったんですよね。それでもう一回、雑誌を自分でやろうと。基本は撮りおろしの写真とロングインタビューだけというスタイルにして。WEBでも読めるディスクデビューや書き原稿(実働する取材のない原稿)は無しにして、名前も『トーキンロック!』から『Talking Rock! 』に少しだけ変えて07年3月に新創刊しました。そこから来年の3月でちょうど10年が経ちます。

――フェスはいつからスタートしたんですか?

『Talking Rock!FES』は2011年からです。実は(新創刊時の)2007年の時はまだ僕は東京にいたんです。でも自分にとっていちばんやりやすい街=大阪で作ろうと思って2011年に戻り、そうしたら大阪のイベンターさんから「記念にBase Ball Bearとandymoriで何かライブイベントをやりませんか?」と言われて。その数日後にASIAN KUNG-FU GENERATIONのマネージャーさんと会う機会があったので、お誘いしてみたらOKの返事がもらえて、そこから膨らませて第1回はなんばHatchで2日間開催したんですね。で、イベントタイトルがなかなか思い浮かばなくて。フェスがどんどん増え始めた頃でもあったので、もう『Talking Rock! FES』でいいやと(笑)。

――その時の出演は、他にthe pillows、THE BACK HORN、killing Boy、ねごと、The SALOVERSと、豪華ですね。

でも、チケットが売り切れなかったんですよね。わずかに残ってしまって。1回目だからもちろんイベント自体の認知度が低かったのもあるんですけど、関西人はわりと1回目のものに対して、様子見をする人が多いというか(笑)。もともとはとてもお祭り好きで、受け入れたらものすごい愛情で接する人が多いんですけど、そうなるまでに少し時間がかかる。実は保守的なところがあるんですよ(笑)。東京の人からすると「そのメンツなら結構、人が入りますよね」というラインナップのイベントでも、意外とお客さんが入らなかったりもするので。そこはもっと関西人には積極的になってほしいです(笑)。

――それ以降はどうでしたか?

2回目の2012年は完売しました。ちょうどZepp Nambaが出来た年で、そこで3日間開催して。おかげさまで大盛況で、すごく楽しかったんですけど、なかなかタイトでした。特に2日目の打ち上げがヤバかったです(笑)。ACIDMANとMAN WITH A MISSIONに、BRAHMANでしたからね……いい人たちなんですけど(笑)、いや、ずっと、どんな時もいい人です!(笑) ライブはどのバンドも最高でした!(笑)

吉川尚宏編集長

吉川尚宏編集長

――(笑)他に印象に残っている素敵な思い出はありますか?

4回目の2014年も良かったですね。2日間でTHE BAWDIES、ストレイテナー、SiM、KEYTALK、andymori、GOOD ON THE REEL、SHISHAMO、the pillowsが出演してくれて。この時はandymoriの大阪ラストライブで、彼らはthe pillowsが大好きで、第1回目に続いて、再度共演したいという彼らの想いを、僕がthe pillowsに伝えて出演の相談をしたら即OKがもらえて。この時のthe pillowsのステージが本当に素晴らしかったんです。andymoriに捧げると同時に、会場には間違いなくandymoriのファンが多くいた中で、the pillowsの音楽のカッコよさを全力で披露してくれて。僕も長く彼らのライブを観てきましたけど、ベストと言ってもいいくらいのパフォーマンスで、とても感動しました。そしてトリを務めたandymoriのライブも最高によくて、僕は最後の挨拶で感動のあまりに泣いてしまったという、恥ずかしいエピソードもあるんですけど(苦笑)。

――でも、そういう顔合わせの作り方もフェスの醍醐味ですね。

そうですね。ただ“この組み合わせだったらおもしろい”というのも、もちろんありなんですけど、『Talking Rock!』という雑誌自体が、毎号だいたい15組から多くても20組ぐらいの掲載数で、ニューフェイスからビッグネームまで、“これ、いいな!”と思う音楽を取り上げるという姿勢でやっていて。その雑誌の感覚を、そのままダイレクトにイベントに繋げられないかなという気持ちもあったんですね。で、結果論なんですけど、今回20周年記念で、初めて野外……1日で2ステージ19組出演という形で開催させてもらうことになって、まさにこの雑誌の世界が、そのままイベントに繫がったような内容になったなあと。この本には載らないようなアーティストは当然ラインナップにはいないし。よくあるじゃないですか、「ロックフェスに突然知らないアイドルが出てきて、どう反応したらいいのか困った」みたいな(笑)。

――ありますね(笑)。

あるいは「このラインナップはどういう理由なんだろう?」とか。『Talking Rock! FES.』は、そうは誰も思わないはずなので。ある意味でわかりやすいと思うし。“いいな!”と思うアーティストを雑誌に掲載して、“いいな!”と思うアーティストにフェスに出演いただく。雑誌作りもイベンとも、そこはブレずにやっています。

(後編へ続く)


インタビュー・文=服田昌子

イベント情報
『Talking Rock! FES.2016』

日時:7月23日(土)
会場:泉大津フェニックス
開場/開演:9:30/11:00
前売り:6,900円(税込)​
出演者:
<T-STAGE!> 
エレファントカシマシ/クリープハイプ/ACIDMAN/androp/ASIAN KUNG-FU GENERATION/THE BACK HORN/Base Ball Bear/THE BAWDIES/KANA-BOON/THE ORAL CIGARETTES 
<R-STAGE!> 
雨のパレード/サイダーガール/シナリオアート/Awesome City Club/Brian the Sun/GOOD ON THE REEL/LAMP IN TERREN/My Hair is Bad/SUPER BEAVER


 

 

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