アルバム完成直後に訊く 豊かな曲調×冴えわたる超絶技巧なH ZETTRIOの新作はいかにして生まれたのか?
H ZETTRIO・H ZETT M Photo by Taiyo Kazama
驚異の配信シングル8連発。からの、2か月で23か所を回る全国ツアー。合間を縫って、フェスにも出るし、情報番組『スッキリ!!』にも出る――。疾風怒濤の勢いに乗るH ZETTRIOから届いたサードアルバム、その名は『PIANO CRAZE』。これまで以上に幅広く豊かな曲調と、冴えわたる超絶技巧。目の前に座る、青い鼻の、ぽつりぽつりとしゃべる物静かな男の、どこからこんなパワーがあふれ出すのか。ツアー・ファイナルの数日前、アルバム完成直後のH ZETT Mに、直撃インタビューを試みた。
――ツアー、調子どうですか。
ツアーは、非常に盛り上がってるんですけども。初めて来た方もけっこう多くて、年齢層もかなり広いというか。スーツ姿のおじさまとかも。
――おお。いいですね。
ライブ終わって、退場する時に、そのスーツ姿のおじさまが、すごい頬を真っ赤にして、“来てくれてありがとう!!!”って。ありがたいなあと思ったし、すごくうれしかったですね。
――今回は、ツアーを進行しながらどんどん配信シングルを切っていきましたね。そのたびにセットリストも増えていくという。
そうです。曲を出すたびに、だんだんやる曲が増えていくので。それも、楽しんでます。
――レコーディングは、ツアー中にやってたんですか。
合間ですね。時間がある時に。
――そういうのは苦にならない。
大丈夫です。作るのは好きなので。
――配信シングル8曲という、ものすごいペース。ちょっと振り返りますけど、最初に出したのが「Wonderful Flight」で、これはツアー・タイトルにもなってました。
これは去年出した「Beautiful Flight」という曲の、フライトつながりなんですけど。その曲ができたからこそ見えたものがいろいろありまして。それが“飛んでる感”といいますか、やっぱり、空を飛びたいなという気持ちがありまして。それの続きですね。
――空を飛びたい。ファンタジーですね。
ファンタジー好きなもので(笑)。
――“飛んでる感”というのは、よくわかります。H ZETTRIOの曲には常にある要素だと思うので。
“飛んでる”というのは、常に意識してるかもしれないですね。
――そして「晴天-Hale Sola-」。これはPE'Zというバンドの曲で、カバーではなく、オマージュという言い方をしてますね。古いファンには懐かしくてうれしいです。
14年前ぐらいですかね。
――あらためて、今やってみようと思ったきっかけは。
やはりその、今の状況があるというのは、過去からのつながりですし。そのメロディを鳴らしておこうかな、というのはあります。でも意外にも、長崎あたりで「晴天-Hale Sola-」をやった時に、“この曲の原曲を知ってる人、いますか?”って聞いたら、半分ぐらいだったんですよ。
――えっ。それはだいぶ意外。そんなに代替わりしてるのか。
けっこう、してますね。だから、やり続けようかなと思います。
――「ダイナミックにとろけて」は、珍しく、シンセっぽいフレーズが派手に入ってます。
ショルダー・キーボードを使っていて――KORGのキーターというんですけど、キーボードとギターを混ぜた名前で。それをライブで使っていて、その流れですね。いわゆる一般的なピアノトリオではないというか、何か普通と違うところは、やりたいことではありますね。というところから、ショルダー・キーボードは、好きでやってますけど。
――80年代っぽいけれど、今見ると新鮮だったりします。
僕、絶対ショルダー・キーボードは弾きたくないって、十何年前は思ってたんですけど。でもやっぱりあの機動力と、一周回ってかっこ悪くなくなった感もあって。音楽も、80年代っぽいものを今風にやってるみたいなものが、サイクルでありますし。ちょうどうまくハマッてるのかな、と思いながら弾いてます。
H ZETTRIO・H ZETT M Photo by Taiyo Kazama
――「Dancing in the mood」は?
これは、神戸に『in the mood』というイベントがありまして。それにお世話になって、神戸という街を意識して作った曲です。ライブとか、いろんな流れの中で、イメージをふくらませて、作りました。
――そして、まさかの「MESHI 2」。KOUさんのすごいラップが聴ける「MESHI」の続編ですけど、これも、声はKOUさん?
いや、これはNIREです。去年出したのは、KOUさんですけど。
――なんで変えたんですか。
やはり「2」は、新たな敵が出てきたりという(笑)。
――なるほど(笑)。これは「3」にも期待しちゃいますね。
どうなんですかね(笑)。考えてないですけど。「2」が好評ならば、その可能性もあるかもしれない。
――そう書いておきます。みなさんぜひ好評をお寄せください。そして「Another Sky」ですけども、個人的にとても好きな曲で、クラブジャズっぽいムードの、めちゃめちゃかっこいい曲。
タイトルから作ったわけではないんですけど、ツアーの追加公演が決定しまして、そのタイトルが“Another Sky”になったので。それが、この曲にぴったりだということになりまして、つけました。
――今回のアルバム、かっこいい系が多いんですよ。別に前がかっこよくないわけじゃないですけど(笑)、明るくノリノリというよりは、クールで、テクニカルで、甘さ控えめというか。
そう言われると、そうかもしれない。
――「Den-en」は、とてもメロディアスなバラード。素晴らしいです。
これは私が一人でソロ活動を始めた直後に、出したアルバムの中の1曲なんですけども(H ZETT M『5+2=11』/2007年)。あの曲が非常に好きな人が多いということなので、この3人でやってみようかと。自分としては、自分の成長感を出せたかなと思ってます。
――成長感というのは、たとえばどういうところに。
フレーズとか、曲の広がり方とかに、私も大人になったんだなという気がします。
――そして、アルバムタイトルにもなった「PIANO CRAZE」。
これは本当に、暴れるといいますか、非常に勢いのいい曲なんですけども。やってやるぜ、という決意表明みたいな感じでしょうか。
――タイトルかっこいいです。
かっこいいですね。
――あと、そうそう、ジャケットのデザインを公募してたじゃないですか。去年に続いて。あれ、いいアイディアですね。送ってくれるファンの方たちの、熱意や愛がすごくて。
熱意も愛も感じましたね。いろんなタイプの人がいて、“こういう解釈もあるんだな”とか、いろいろ感じました。
――びっくりするようなもの、ありました? 選ばれなかったものの中にも。
ありましたね。これもいいんだけどな、というアイディアはありました。たとえば、女性の靴のヒールを描いた方がいまして、これはどういうことなんだろうな?って、面白かったですね。あと、相撲を描いてきた人もいて、いろんな想像をしてくれてるんだなと。女性のヒールは、先のところが、水色になってるんですよ。
――ああ、鼻のイメージで。面白い。アルバムのジャケットは、公募じゃないですけど、これもすごくいい。
これは木ですね。すごくきれいです。アート的な。
――やっぱりかっこいいですよ、今回。音もジャケも。
……かっこいいですね。そんな気がしてきました(笑)。
――そして、初めて聴く曲があと4曲。それとボーナストラック1曲。
まだ配信してないのは、2曲目「Next Step」と、5曲目「Passion」と、10曲目「Memory」ですね。あと11曲目「夢と希望のパレード」も。これは本当に、聴いてほしいなという感じがしてますね。まだ配信してない曲も、結構な曲だと思うので。結構、すごいかなという気がしてます。
――自信満々です。
去年『Beautiful Flight』というアルバムを出して、ツアーをして、夏フェスに出て、海外にも行ったりして。H ZETTRIOってこういう感じなんだなって、自分らで理解してきたのと同時に、それをどんどん超えて行こうという意識もやっぱりありますから。その一歩先、二歩先を常に意識したいなというのがありますから。それが表現できているような気がします。
――実はまだ、このインタビューの時点で新曲は聴けていないので。でも「Next Step」とか、タイトルだけでも、すごいだろうなーと想像します。
「Next Step」は、狂ってますね(笑)。
H ZETTRIO・H ZETT M Photo by Taiyo Kazama
――このアルバムを引っ提げて、これから夏フェスに臨む気持ちは?
今年の夏フェスも、暴れたいですね。
――ちょっと早いですけど、次のツアーも発表されました。『PIANO CRAZE Next step!』ツアーは、10月から11月にかけて全国5か所で行われます。これはどのようなプランで?
細かいことはまだですけど、いろんな人に見てもらいたいので。ここでも、暴れたいですね。(周囲が)思っている二倍ぐらい暴れたいですね。
――あはは(笑)。Mさんが?
そうです。見に来てくれる人が、“H ZETT Mさんはこれぐらい暴れるだろうな”という、三つ先ぐらいのものを見せます。
――大丈夫ですか。そんなこと言っちゃって。
大丈夫です(笑)。
――9月には東京、10月には札幌で、恒例、ピアノ独演会もあります。これは通常のライブとは雰囲気がかなり違っていて。
違いますね。
――しかも、ここにフライヤーがありますけど、東京では、ベーゼンドルファーの名器を弾くという。
そうなんですよ。すごく珍しい楽器で、形も全然見たことがなくて。まだ弾いてなんですけど、楽しみですね。
――楽しみです。めちゃめちゃ期待してます。最後におまけ質問で、最近聴いてる音楽とか、教えてもらっていいですか。最近のお気に入りは?
最近は、アンダーソン・パークという人が、かっこいいですね。アメリカ人なんですけど、ディアンジェロとか、フライング・ロータスとか、その流れのハイブリッドな感じです。ハイエイタス・カイヨーテのリミックスもやってたりするんですけど、アメリカのヒップホップ/ソウルの一番尖ったところの、ハイブリッドの、そのまた尖ったところみたいな。僕の勝手な解釈ですけど。リズムのセンスですかね。
――早速チェックします。
発見というか、発明してるような人が好きです。何だこれは!というような。
――H ZETT Mさんも、発見する人ですから。
発見していかないとつまらない、と思っちゃうタイプですね。
――いい言葉出ました。日本のものは聴きます? たとえばクラブジャズ系とか。
面白い人もいますけども。取材とかの文章を読むと、文字の印象が強くて、“ああ、この人が好きなんだ”とか。
――この人に影響受けたんだな、とか。
そう思われちゃうのが、難しいところで。なかなか言いにくいんですけど。海外の人は、遠いからこそ言えるというところが、ちょっとありますけど。
――H ZETTRIOを聴くといつも、この人たちはどこにいるんだろう?と思うんですね。ライターとしては、ジャンル分けはしたくないけれど、何か言葉を探そうとしてます。
どこにもいない感が、僕の理想です。
――そうかもしれない。だからこそロックでもジャズでも、子供の集まりにでも、どこへでも出て行ける。それがたぶん、居心地がいいんでしょうね。
そうですね。誰でもない感が、居心地いいですね。“この人とこの人はつながってる”とか、相関図ができてしまうと、こういう人なんだなと思われる、その裏を行きたい(笑)。
――狙いますね、裏。
裏が好きですね。サッカーでも、裏に走るとか。そこにスルーパスを出すのが気持ちいいみたいな。
――めっちゃわかります。そこ出す? すげえ!って。
そこを狙いたいですね。
――今日はいい言葉が出ますね(笑)。とはいえ、H ZETTRIOはめっちゃポップじゃないですか。マニアックには決して行かない。裏は狙うけれど。
その、裏が表になるというか。裏に走りこんだ時のスルーパスから点を決めて、観客が全員ワーッ!となる、そういうのが好きなのかもしれないです。センタリングを上げて、ヘディングで狙うみたいなのは、あんまり好きじゃないです(笑)。スルーパスが通って、うおおーっ!って熱狂するみたいなのが好きです。
――サッカーのたとえ、わかりやすい。
言いやすいですね。視野といいますか、ほかの人の何歩先を見ていないと動けないとか。そういうのが、やっぱり大事ですよね。
――いい話。
サッカーの話ですけどね(笑)。
――ただのサッカー話(笑)。いやいや、Mさんの音楽センスの話に、ちゃんとなってます。
みんながワーッとなったら良いですね。このアルバムは、本当にいいものができたと思っているので、感想が楽しみです。
撮影=風間大洋 インタビュー・文=宮本英夫
H ZETTRIO・H ZETT M Photo by Taiyo Kazama
2016.9.7(水) Release
02.Next Step
03.Dancing in the mood
04.晴天 - Hale Sola -
05.Passion
06.Den-en (Beautiful Mix)
07.Another Sky (Beautiful Mix)
08.ダイナミックにとろけて
09.MESHI - episode 2 -
10.Memory
11.夢と希望のパレード (Beautiful Mix)
12.Wonderful Flight
13.炎のランニング(Bonus Track)
02.Next Step
03.Dancing in the mood
04.晴天 - Hale Sola -
05.Passion
06.Den-en (Beautiful Mix)
07.Another Sky (Beautiful Mix)
08.ダイナミックにとろけて
09.MESHI - episode 2 -
10.Memory
11.夢と希望のパレード (Beautiful Mix)
12.Wonderful Flight
13.ダイナミックにとろけて(2016.5.5 WONDERFUL FLIGHT TOUR 2016 ~Acoustic & Electric~ こどもの日Special)
※ドリンク代別、tax in
※all standing
※未就学児入場不可
OPEN 16:00/START 17:00
・サンライズオンライン・イープラス・Peatix・ローソン・ぴあ
※tax in、整理番号付、ドリンク代別、all standing
info:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
OPEN 18:00/START 19:00
・イープラス・Peatix・ローソン
※tax in、整理番号付、ドリンク代別、all standing
info:名古屋CLUB QUATTRO 052-264-8211
OPEN 16:00/START 17:00
・店頭・イープラス・Peatix・ローソン・ぴあ
※tax in、整理番号付、ドリンク代別、all standing
info:SMASH WEST 06-6535-5569
OPEN 16:00/START 17:00
・店頭・イープラス・Peatix・ローソン・ぴあ
※tax in、整理番号付、ドリンク代別、all standing
info:BEA 092-712-4221
OPEN 16:00/START 17:00
・店頭・イープラス・Peatix・ローソン・ぴあ
※tax in、整理番号付、ドリンク代別、all standing
info:Mount Alive 011-623-5555
ピアノ独演会2016(H ZETT M)
日にち:9月28日(水)
会場:東京 草月ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
:前売\5,000 / 当日\5,500
一般発売:7/16(土)
・サンライズオンライン・イープラス・Peatix・ローソン・ぴあ
※未就学児童は無料(大人1名につき、子供1名まで膝上可)
※tax in、全席指定
info:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
日にち:10月23日(日)
会場:北海道 由仁町文化交流館ふれーる
OPEN 18:00 / START 18:30
:一般\3,000 / 高校生以下\2,000 / 中学生・小学生\1,000
一般発売:7/16(土)
・電話予約 080-3235-3557(7/16?8/19)
・文具のてる、小寺商店、由仁町商工会、ゆめっく館、デンキの加藤、平尾商店(8/20~)
※未就学児童は無料(大人1名につき、子供1名まで膝上可)
※tax in、全席自由
info:由仁町文化交流館事業実行委員会事務局 080-3235-3557