「東京に杭をぶち込みます。深く、深く」窪塚洋介×豊田利晃インタビュー『怪獣の教え』

インタビュー
2016.7.21
『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

2015年11月、横浜で初演され、絶賛された豊田利晃監督によるオリジナル脚本、窪塚洋介主演のエンタテインメント・ライブシネマ『怪獣の教え』が、ついに2016年9月、ブルーシアター六本木に上陸する。再演となる今回、どのような舞台を見せてくれるのか、『怪獣の教え』の舞台となる小笠原諸島に心を奪われた豊田と窪塚に話を聞いた。

――『怪獣の教え』が生まれたきっかけを教えてください。舞台となる小笠原との関係も。

豊田: 2014年に自分の父親が亡くなったこともあって、どこかに旅行しようと思ったんです。作家の森永博志さん、20年くらいの付き合いになるんですが、彼の作品によく小笠原のことが書いてあって、いつか小笠原に行ってみたいとは思っていた。でも、具体的に小笠原のどこにいったらいいかを相談したら「宮川典継(サーファー)がすべてを知っている」と紹介されました。それで彼に会ったんです。その年の6月に小笠原に渡り、最初は10日間くらいの滞在予定だったんですが、結局1カ月くらいいた(笑)。 滞在しているときにいろいろなことが閃いて、その閃いた物語が『怪獣の教え』の始まりでした。

――小笠原の何が刺激だったんですか?

豊田: 東京と180度違ってたんです。品川ナンバーの車がバンバン走る中、160万年前の風景が今もそのまま手付かずに残っていて。だからこそ「東洋のガラパゴス」と言われるんですが、固有種しかいない。イルカもウミガメも飛び込めばすぐそこにいる。魚もほっぺたを叩くくらい泳いでいる。パラダイスですね。小笠原は一度も大陸とくっついたことがないんですって。だから一番古い地層が残っている。怖い生き物もいないんです。山に入ってもめんどうなのは蚊だけ(笑)。生態系の感覚が違うんです。それでいて、第二次世界大戦のときに、隣の硫黄島が激戦地になって父島要塞……島ごと要塞になった記憶も引きずっている。離島なのに島民が若いんですよ。もちろん年寄りもいますが、平均年齢が30歳代。まるでリトルハワイみたいです。元々、欧米系の人が最初の原住民なので、四世、五世までいる。島というより惑星のようです。

窪塚: 「ボニン・アイランド」でなく、「ボニン・プラネット」か。

豊田: 今年7月から片道24時間、6月までは25時間半かかった小笠原。小笠原にハマる理由をうまく言葉にはできないので演劇だったり書物だったりドキュメンタリーにしたり……最終的には小笠原を舞台にした映画を作ろうと思っています。ここには怪獣がいそうなんです。ゴジラも小笠原から出てきたって話ですし。『怪獣総進撃』という映画では、父島が怪獣ランドで、怪獣が棲んでいて、毒ガスが流れてて本土に攻めに行く物語なんですよ(笑)。

――小笠原を知ったことで東京が相対的に認識できた、という発想もありますか?

豊田: そうですね。よりよく見えやすくなりましたね。実は僕、先日島民になったんですよ。住民票を移しちゃいました(笑)。

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

――そんな思い入れの深い小笠原を舞台にした『怪獣の教え』。この作品に窪塚さんをオファーした理由は?
 
豊田: 窪塚は小笠原が合うんじゃないかなって思っていました。スコセッシの映画『Silence』のちょっと前くらいに思っていて。「その撮影が終わったら行こうよ!」ってメールしましたね。

窪塚: 小笠原からメールをもらったんだよね。僕も小さいころから小笠原は気になってました。「エジプトのピラミッド」のように、「小笠原」という場所が地球の中で行くべき場所だと思っていたんです。小笠原が東京都であることも知っていたけど、具体的に行くきっかけも機会もなく、なんとなく「アンコールワットに行きたいな」くらいの存在でした。でも豊田さんがその場所からメールしてくれたとき、「ああ、とうとう自分は呼ばれたんだな。人生のチケットが来たんだ」と。自分はどこかガイダンス(天啓)に従って生きているところがあるので、大きなチケットが届いた気持ちになり、「すぐに行きます」と答えました。

豊田: ところが昨年は台風の当たり年で、「来ても動けないかもよ、どうする?」と聞いたら「いや、行きます!」って。すべての引き金が引かれた感覚でした。

窪塚: 小笠原には嫁と子どもと三人で行きました。豊田さんとは「向こうで会おう!」って話していて。小笠原に向かう途中は、まるでロケットに乗っているようでした。夜、甲板に寝転がると、天の川がいっぱい広がっていて、宇宙船に乗っているような気持ちになれるんです。星の中を渡っている気分。で、朝になるともう海の色が全然違うんです。「ボニン・ブルー」という言葉を宮川さんが作ったんですが、本当にこんな「青」ってあるんだなあ、宇宙船が「ボニン・プラネット」に到着したんだ!って。すごい刺激を受けて一生忘れない経験を子どもと一緒にさせてもらって、しかもそれが作品につながり舞台の土台になっていく……これがあったからこそ、昨年僕らの中で納得がいく形で「杭をぶち込む」ことができました。その杭がより深いところ「次の公演」という層にまで刺さったから、またこの舞台ができるんだと思っています。だから今回はさらにもっと深いところまで杭をぶち込んでみたいです。 (※「杭をぶち込む」はこの舞台において大事なキーワード。その意味はぜひ劇場でご確認を)

豊田: 舞台を観てもらうのは、「杭打ち」にみなさんを招待している、という気持ちでもある。みんなで杭を打ってもらおうと。

窪塚: 小笠原って島が怪獣みたいなんです。岩肌が背びれに見えたり。岩礁がスターゲートに見えたり。その間を通ったら違う世界に行けそうな場所もあって。宮本武蔵の言葉で「自然を師とする」というのがあるんですが、それが究極の教え。地震も怪獣だし、火山も怪獣。演劇や芸術という豊田さんの世界で俺らが現実社会に天変地異を起こしていると思うんです。

――豊田さんにとって窪塚さんという役者は、どういう存在だったんですか?

豊田: 言葉にするのは難しいけど、「怪獣」というのは「天変地異」のメタファーで、その中で一人岩礁の上に立てる人となると選択肢として窪塚しか思い浮かばなかった。あと、小笠原で僕が感じていることを窪塚も同じように感じてくれるんじゃないかな、とも思ったんです。彼という人を知っているから、そういう直感があったんです。「好きだろうな、アイツ」って。

――窪塚さんからみた豊田さんは?

窪塚: 僕のことをすごく理解してくれていて、お父さんというには年齢が近すぎるし、お兄さん……でもないし。親戚の……。

豊田: 遠くなった(笑)。

窪塚: (笑)すごく親近感があるんです。離れてはいるけど、同じ方向に向かっている人、この人となら安心してクリエイションできる。俺をすごく活かしてくれる。ぶつけたいことややりたいこと、たまっている不満や憤り……普段これはあまり出さないように暮らしているけれど、そういうものを昇華するような作品に呼んでくれる人。アイスホッケーのパックみたいにすごい力で運んでくれる人。もちろん僕が自分で行先をチョイスしているので勝手に運ばれてるわけじゃなく、選んで運ばれているんですけどね。

――窪塚さんと共演するお二人についても教えてください。

窪塚: 大観(渋川清彦)は、僕がデビューする前から「メンズノンノ」とかで知っていた。かっこいいなあと僕の中で思う分類の人だったんです。ARATA(井浦新)くんとか伊勢谷友介くんとか。癖があって個性がある人。直観でかっこいいなと思ってた。初対面ではなかったが、直接お仕事をしたのはこれが初めてで嬉しかったです。肝が座っている人だから、その一緒にいる時間を楽しんでいた。前回の公演をなぞるんじゃなくて、新しい天作(窪塚の演じる主人公)と大観の関係が見せれたらいいですね。

クッキー(太田莉菜)は謎っぽい出で立ちでいいですよ。やっていくうちに回を重ねて楽になっていけたから、今回もっと自由なアイランドボッパーなクッキーが見れるんだろうなって。

豊田: 渋川さんとはデビュー作からずっと一緒なので、リズム感が独特で、窪塚のリズム感とも違うのでそのかみ合わせが楽しみだと思っていました。レゲエとロカビリーみたいな。太田莉菜さんは松田龍平の奥さんで、龍平と一緒にいるときに会ってた。やっぱり舞台で「アイランドボッパー」としての説得力がある。何よりあの脚の長さ!ぎゃふんと言わせられそうで。

窪塚: その脚の長さなら島から島へと渡り歩けそう(笑)。

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

――上演中の印象的な出来事って何かありますか?

窪塚: 舞台の最後に岩礁の上で独白みたいな場面があるんですけど、岩礁と自分と後ろのバンドと正面の豊田さんがいて混ざって、何か自分が人間でなく怪獣になったような気分でした。豊田さんが小笠原で感じたことも含めて、渦を巻きながら岩礁と自分を一体化させてくれた。それが怪獣……頭の部分が俺で、身体の部分が岩礁という……。地球の向こう側にも届くような怪獣。自分が叫びきったときに、2回の公演では本当に意識が飛んで気絶しました。

豊田: 「いい気絶の仕方を体得した」って言ってたよね(笑)。

窪塚: 人前で気絶するって気持ちいい(笑)。しかも自力で落ちることができるなんて。デカイ声を出し、酸素を吐き切りながら頭をあげていくと、人は落ちれるんだな、と。さすがに岩礁の上なんで向こう側(観客側)に落ちるとドン引きされると思うから、適度な落ち場所を見つけました(笑)。

――この舞台に「ライブシネマ」というタイトルがついているのですが、この言葉の意味は?

豊田: 僕が35歳のときに使いだした言葉で、そのときに一度「戦争」をテーマにした公演をしているんです。そこから僕と中村達也と勝井祐二の三人でTWIN TAILというバンドを作ったんです。それをずっと続けていましたが、最終形としてそこに役者が入ったらどうなるだろう……と。『怪獣の教え』は舞台をやるというより、その活動の延長線です。

窪塚: 一回やってみたらものすごい力を感じました。あのグルーヴを体験できるのは楽しみですね。最後の中村達也さんのドラムと杭打ちの音がシンクロするのがすごいですよ。

――演奏はすべて生なんですよね?

豊田: 毎回生演奏です。即興とはいえタイミングは決まっている。なのに、時々忘れることもあるんです。「ギター、早く行け!!」って(笑) 。エフェクターをたくさん使っているから時々踏み忘れてたりしてますね。

窪塚: 舞台を始めた頃、同じことを何度も何度もやるのがすごいストレスだったんです。でも、あ、楽しいなって思ったのは、毎日同じように見えるんですが、少しずつ違うってことに気が付いたから。今日はこんな風に攻めてきてるな、とか。『怪獣の教え』も「あれ?音が入ってこないな……出ていいのかな」という、生ならではのハプニングもあってね。

豊田: 僕も毎回映像を変えているんですよ。終わったらホテルに戻って公演を見直して、編集してもっとよくなるようにしていましたね。だから初日と最終日はかなり違いますよ!

窪塚: 映像のJAMですよ、JAM。

――ライブシネマでしか生み出しえないものとは何だと思いますか?

豊田: 映像と役者と音楽が一体化しているのを僕はこれまで見たことがない。これは「発明」だと思っています。そしてこれからいろいろな人にパクられていくんだろうなって(笑)。やっているほうは大変ですけどね、ミュージシャン3人は特に。

窪塚: 達也さんなんてときどき声出してますからね(笑)。想定外な感じが、生のライブで、荒々しい、猛々しい、男臭い三人が出してくるグルーヴはヒリヒリします。最初からエネルギーをくれるんです。最初のGOMAさん(アボリジニの金管楽器Didgeridoo/ディジュリドゥの演奏者)さんもすごいですよ、GOMAさんの儀式があってのこの舞台ですから。
 
――会場が横浜から東京に移ったことについて、どう思っていらっしゃいますか?

豊田: むしろこの舞台は東京でやらないと意味がない、と最初から思っていました。横浜公演はいいリハーサルだったなと思っています。今回はハンパじゃないぞ。叩きのめしてやるって気持ちです。

窪塚: 壊す仕事ね!(笑)

――最後になりますが、窪塚さんから、この舞台を観る方に伝えたい事は?

窪塚: 観た人それぞれの感じ方でいいと思うんです。昔、映画『イージーライダー』を見たときに、「ハーレーがかっこいいな」と僕は思ったけど、違うメッセージを感じた人だっていただろうし、人生が変わるくらいの刺激を受けた人もいたはず。すべては受け手次第。僕らは純粋に、無心で『怪獣の教え』を伝える。天作が舞台の中で思いっきり杭をぶち込めれば、現実に影響があると思うんです。

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

『怪獣の教え』Photo by TAKAMURADAISUKE

(取材・文:こむらさき)

公演情報
『怪獣の教え』

■日程:2016年9月21日 (水) ~2016年9月25日 (日) 
■会場:Zeppブルーシアター六本木
■演出・脚本・映像:豊田利晃
■出演:窪塚洋介 渋川清彦 太田莉菜
■音楽:TWIN TAIL (中村達也:Dr、ヤマジカズヒデ:Gt、青木ケイタ:Sax&Fl)/GOMA(Didgeridoo)
■公式サイト:http://kaijuno-oshie.com/

<あらすじ>
小笠原諸島の青い海。海の上を漂う一隻の船。船の上には二人の男。
国家の秘密を暴露して、政府から追われる天作(窪塚洋介)。パラダイスで生きることの葛藤を胸に抱く、島育ちのサーファーの大観(渋川清彦)。東京で事件を起こし、島へ逃げて来た天作は従兄弟の大観に船を出してくれるように頼む。無人島にでも隠れるのだろう、と大観は思っていた。しかし、天作の目的は、祖父から教えられた、『怪獣』を蘇らせることだった。一隻の船に乗り込むと二人は海へ出る。昨夜、二人は世界の島を転々としながら暮らす、アイランドホッパーのクッキー(太田莉菜)と出会った。 クッキーは怪獣の教えの秘密を知っていた
……

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