『ミュージアムGO』美術館の中にひそむ、“隠れアート”をゲットだぜ!

コラム
アート
2016.7.28
東京都庭園美術館正面玄関 ガラスレリーフ扉 ルネ・ラリック

東京都庭園美術館正面玄関 ガラスレリーフ扉 ルネ・ラリック

画像を全て表示(10件)

美術館でアート作品が展示されているのは、展示室だけとは限りません。

美術館によっては、

「えっ、こんなところに?!」と驚くような場所にアート作品が展示されていることも。今回は、そんな“隠れミッ●ー”ならぬ、“隠れアート”の数々をご紹介してまいります。

 

 

まずご紹介したいのは、東京都庭園美術館の本館です。

東京都庭園美術館 本館  正面外観

東京都庭園美術館 本館  正面外観

 
こちらはもともと、皇族のひとつである「朝香宮」の邸宅として、1933(昭和8)年に建築された建物。1910年代半ばから1930年にかけて、ヨーロッパやアメリカを中心に流行したアール・デコの様式が、随所に取り入れられています。この建物それ自体が一つのアート作品と言っても過言ではありません。

展示されているアート作品はもちろん、建物の細部に至るまで見どころの多い美術館です。しかし、意外と見過ごされがちなのが、正面入り口にあるこちらの4枚のガラス扉。

 
正面玄関 ガラスレリーフ扉 ルネ・ラリック

正面玄関 ガラスレリーフ扉 ルネ・ラリック

実はこのガラス扉は、アール・デコを代表するジュエリー作家、ガラス工芸家のルネ・ラリックの手によるものなのです。

正面玄関 ガラスレリーフ扉(部分) ルネ・ラリック

正面玄関 ガラスレリーフ扉(部分) ルネ・ラリック

なんでも、この建物のために、ラリック自らが設計したのだとか。現在は作品保護のため、封鎖されてしまっているのですが、何を隠そう朝香宮邸として現役だった時には、このガラス扉こそが玄関の扉だったとのこと。

ルネ・ラリックがデザインしたアートなガラス扉から、朝香宮家の皆さまは出入りしていたわけです。次に東京都庭園美術館を訪れる際は、想像上で(妄想上で?)この扉から出入りするイメージをお楽しみくださいませ。

 

 

続いてご紹介するのは、埼玉県立近代美術館。

埼玉県立近代美術館 外観

埼玉県立近代美術館 外観

こちらの美術館、いろいろなところに“隠れアート”があるのですが……イチオシは、なんと言ってもこちら!

宮島達男 《Number of Time in Coin-Locker》

宮島達男 《Number of Time in Coin-Locker》

コインロッカーの中にあるアート作品です。作者は、宮島達男さん。発光ダイオードなどを使用した、デジタル・カウンターによる作品で知られる現代美術家です。

埼玉県立近代美術館の37番ロッカー内に預けられている(?)のは、150個のデジタル・カウンター。それらすべてが、数字をカウントアップしています。しかし、その速度はまちまちです。

それもそのはず。このカウンターは、かつて公募で選ばれた150人の埼玉県民によって、カウントする速度を自分好みに設定されてしまっているのです。美術鑑賞の時に、普段はロッカーに荷物を預けないという方も、埼玉県立近代美術館を訪れた際には、是非ともロッカー室に足を運んでみましょう。

 

 

意外な場所にある“隠れアート”と言えば、こちらを忘れてはいけません。東京23区内初の区立美術館として、昭和54年に開館した板橋区立美術館です。

板橋区立美術館 外観

板橋区立美術館 外観

“隠れアート”があるのは、なんとトイレ。それも男性用トイレの中です。

牛波《泉水》板橋区立美術館蔵

牛波《泉水》板橋区立美術館蔵

上の写真のセンターに写っているのが、“隠れアート”。中国人アーティスト・牛波(ニュウポ)による《泉水》という作品です。その両サイドは、ただの男性用小便器です(笑)。

 

《泉水》は、1917年にマルセル・デュシャンによって製作された《泉》をパロディした作品。デュシャンは、ただの男性用小便器を横向きにしてサインし、《泉》というそれっぽいタイトルを付けました。そしてそれ指さし、「これがアートだ!」と言い張って、当時のアート界を大いに困惑させました。

牛波は、そんな《泉》を、さらに横向きにして、男性用小便器として使えるように戻したのです。つまり、一周回って元通り……という作品。

というわけで、こちらの作品は、きちんとトイレとして使用可能なのです。男性の皆様、板橋区立美術館を訪れた際は、思い切って用を足してみましょう!

 

 

最後にご紹介したいのは、"KING of 隠れアート"がある府中市美術館。

府中市美術館 外観

府中市美術館 外観

館内ではないのですが、美術館の入り口付近にそのアートはあります。

若林奮《地下のデイジー》

若林奮《地下のデイジー》

一見すると、排水溝の蓋のようにしか思えませんが、こちらはれっきとしたアート作品。町田市に生まれ、小金井市で長く制作を続けた多摩ゆかりの彫刻家・若林奮による《地下のデイジー》です。

今、地上に60センチ四方の正方形の鉄板が見えていますが、なんと地下には、この鉄板が120枚、地下3メートル分埋められているのだそうです。

「信じるか信じないかはあなた次第……」の見えない彫刻、まさに、“隠れアート”です。そこに作品があることを、感じられるか、信じられるか。鑑賞者の心を試すようなアート作品となっています。

 

今回紹介した以外の美術館にも、“隠れアート”は存在しています。是非、スマホ(カメラ)を片手に、"隠れアート"をゲットしてみてはいかがでしょうか?

美術館情報
東京都庭園美術館

開館時間:10:00-18:00 (入館は17:30まで)
休館日:毎月第2・第4水曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始
住所:東京都港区白金台5丁目21−9
公式サイト:http://www.teien-art-museum.ne.jp/

 

美術館情報
埼玉県立近代美術館

開館時間:10:00~17:30 (展示室への入場は17:00まで)
休館日:月曜日(祝日または県民の日の場合は開館)年末年始、メンテナンス日
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9−30−1
公式サイト:http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?page_id=0

 

美術館情報
板橋区立美術館

開館時間:9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし月曜が祝日のときは翌日)年末年始、展示替え期間中(常設展示はありません)
住所:東京都板橋区赤塚5丁目34−27
公式サイト:http://www.itabashiartmuseum.jp/

 

美術館情報
府中市美術館

開館時間:9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日:月曜日(この日が祝日の場合はその翌日) 国民の祝日の翌日など(その日が土曜日、日曜日及び祝日にあたる場合などは開館しています。詳しくは、カレンダーをご覧ください。) 年末年始 、展示替えの期間など
住所:東京都府中市浅間町1丁目3番地
公式サイト:https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/
シェア / 保存先を選択