上野耕平&反田恭平がサンデー・ブランチ・クラシックで再共演! 溶け合う二つの若き才能
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反田恭平(ピアノ)、上野耕平(サックス) 撮影=岩間辰徳
上野耕平&反田恭平、共演再び!CD製作の裏話も……。第35回 “サンデー・ブランチ・クラシック”7.17ライブレポート
7月17日、eplus LIVING ROOM CAFE&DININGは外の暑さにも負けない熱気を帯びていた。つめかけた観客が今か今かと待っていたのは、クラシックサクソフォン奏者の上野耕平と、ピアニストの反田恭平。3月に『サンデー・ブランチ・クラシック』で初共演を果たした二人が、再び登場したのだ! 前回とはまた趣の違った、才能の融合を存分に感じさせてくれるライブとなった。
最初に登場した上野耕平は、優しい笑顔で会場を見渡すと、囁きかけるように演奏を始めた。上野がこの日の1曲目に選んだのはボノー作曲「ワルツ形式によるカプリス」。難易度の高いクラシカルサクソフォンの名曲を、無伴奏の中すいすいと吹き上げていく。滑らかに、時に歯切れよく。時折、上野の呼吸の音まで聞こえる。
上野耕平(サックス) 撮影=岩間辰徳
演奏を終えると、上野は「皆さん、こんにちは。本日はお越しくださりありがとうございます。短い時間ではありますが、ぜひ最後まで楽しんでいってください」と集まった多くの観客に感謝を述べた。今日のプログラムは、まず上野と反田がそれぞれソロで演奏し、最後にデュオを披露するとのこと。
「それでは、早速ピアニストの反田くんをお呼びしましょう!」とステージに呼び込まれた反田に、上野からバトンが渡る。颯爽と登場した反田は一礼し、ふっと一呼吸置いてから、一気に演奏が始まった。
自身のSNSで、「弾きたい曲がありすぎて、選曲が大変だった」と言っていた反田(前日には一応選んだものの、結局朝5時まで悩んで決めたという)であったが、選び抜かれたソロ1曲目は、ショパン作曲の「子犬のワルツ」。長い髪を揺らしながら、実に柔らかく、軽快に音を紡ぎあげていく。転げるような音色は何とも心地いい。反田の指先が見える席は、きっと特等席だったことだろう。
反田恭平(ピアノ) 撮影=岩間辰徳
演奏を終え、「ステージの上で皆さんにお届けするのは約11年ぶりなんです」と振り返った反田の11年前というと、反田はまだ小学生(!)。会場に訪れていたお子さんを見て、「あれぐらいの頃に弾いたな……」などと感慨深く思いながら弾いていたようだ。
そしてもう1曲、「こちらは少し大人っぽい曲です」と紹介したのは、こちらもショパン作曲の「ノクターン 第2番」だった。メロディに身をゆだねながら、悠然とピアノに手を滑らせる反田の姿に、客席の視線がぐっと集中する。最後の一音の余韻まで聞き入った客席からは、割れんばかりの大きな拍手が沸き起こった。
「有名な作品なのですが……実は、初めて本番で弾きました」と、こちらの曲でも驚きの告白が飛び出した。これには、会場からも「ええっ……!?」と驚きの声が上がる。「(この日のために)初めて勉強をしました。皆さんに聴いて頂けて幸せです」と話す反田の奏でた2曲は、ファンにはたまらない貴重な機会となった。
反田恭平(ピアノ)、上野耕平(サックス) 撮影=岩間辰徳
「それでは、もう一度上野さんに登場して頂きましょう」と、今度は反田が上野を呼び込み、ついに二人がステージに揃う。「MCがいつ終わるかドキドキしていた(笑)」とコメントし、会場を和やかな笑いで包む上野。ちょうど新しいソロアルバムのレコーディングをそれぞれ終えたばかりの二人のトークでは、その裏話も飛び出した。
イタリアのオーケストラとレコーディングを行った反田は、その最中に体調を崩してしまい、緊急搬送される事態に! 一方、5月に山形でレコーディングを行ってきたという上野は「僕は(レコーディングの最中)胃腸炎っぽい感じになりまして……」と、まさかの両名ともに体調不良に見舞われながらのレコーディングになったという。
しかし、「レコーディングの時は気力なんですかね。全然問題なく。逆に集中力が上がったといいますか」という反田の言葉に、「逆境があった方が、いい音が出たりもするんだよね」と上野も同調する。どちらも体調不良を感じさせない、ここ一番の力が発揮された作品に仕上がったそうだ。
反田の2ndアルバムは、協奏曲を収めた作品になるという。上野の2ndアルバム『Listen to...』は、8月24日に発売となる。また同日には、上野がコンサートマスターを務める“ぱんだウインドオーケストラ”のCD発売記念コンサート(3月20日、東京藝術大学奏楽堂にて開催)の模様を収めたライブCDも発売される。このコンサートには反田もゲスト出演しており、「ラプソディ・イン・ブルー」(ガーシュウィン作曲)で共演。ライブならではの臨場感溢れる熱い演奏が収められているので、こちらも合わせてお楽しみに。
反田恭平(ピアノ)、上野耕平(サックス) 撮影=岩間辰徳
盛りだくさんのお知らせを終えると、「それじゃあ、弾きますか!」とお待ちかね、反田と上野によるデュオ演奏の時間がやってきた。二人が演奏するのは、ミヨー作曲『スカラムーシュ』。こちらの選曲は、「こういう茶目っ気のあるフレーズの曲を反田くんが弾いているイメージがあまりないかなと思って」という意外性から上野が選んだそうだ。
3曲から成るこの楽曲。第1曲の「ヴィフ」では茶目っ気のある楽し気なフレーズが踊り、第2曲目の「モデレ」では二つの楽器が会話をするように、第3曲目の「ブラジルの女」では特徴的なサンバのリズムを刻んでいく。二人の演奏は、せめぎ合うようにどんどんと熱を帯びる。演奏する側も、聴く側も、実に楽しそう! 会場のボルテージが最高潮に達する中、華やかにフィナーレを迎えた。
割れんばかりの拍手に応え、アンコールではバザン作曲「ロマンス」を披露。二人の息の合った美しい演奏を聴かせ、30分を締めくくった。
サイン会の様子 (撮影=岩間辰徳)
終演後、上野は「1回目に増して楽しかったです。前回の共演で演奏したようなエネルギッシュな曲とはまた雰囲気の違った曲を選んでみたので、僕らの新たな面を聴いて頂けたのが嬉しかったですね」と語ってくれた。反田も「前回の上野さんとの共演はかなり挑戦的だったんですけど、今回は深みを追及できたかなと」と充実の表情に。お互いに「溶け合ったね」と、改めて共演の醍醐味を噛みしめていた。
最後に、「超絶ピアニッシモや、休符まで一緒に感じてくださるような、すごい一体感でした。その一体感に、僕らも楽しませて頂きました。本当にありがとうございました」と改めて感謝の言葉を口にしていた上野。反田は、「今後も、こちらを拠点に全国の皆さんに、クラシックと出会う場をお届けできればと思います。お子さんもぜひ一緒に」と、自身の思いを語ってくれた。
インタビュー中の2人 (撮影=岩間辰徳)
この後、反田は8月30日~9月1日に浜離宮朝日ホールにて3夜連続コンサート(
反田恭平(ピアノ)、上野耕平(サックス) 撮影=岩間辰徳
茨城県東海村出身。8歳から吹奏楽部でサックスを始め、東京藝術大学器楽科を卒業。これまでに須川展也、鶴飼奈民、原博巳の各氏に師事。第28回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門において、史上最年少で第1位ならびに特別大賞を受賞。2014年11月、第6回アドルフ・サックス国際コンクールにおいて、第2位を受賞。現地メディアを通じて日本でもそのニュースが話題になる。また、スコットランドにて行われた第16回世界サクソフォンコングレスでは、ソリストとして出場し、世界の大御所たちから大喝采を浴びた。
1994年生まれ
2012年 高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞(高校生での優勝は11年ぶり、併せて聴衆賞を受賞)、毎日新聞社主催による全国ツアーで好評を博す。2013年、桐朋学園大学音楽学部に入学するも、同年9月M.ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席(日本人初の最高得点)で入学。2014、15年度(財)ロームミュージックファンデーション奨学生。2015年5月「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。同年7月、デビューアルバム「リスト」を日本コロムビアより発売。
9月には、東京フィルハーモニー交響楽団定期への異例の大抜擢を受け、ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 を(指揮:Aバッティストーニ)熱演し、満員の会場で大きな反響を呼び、同月27日は、新日本フィルハーモニー交響楽団と「フレッシュ名曲コンサート」にてチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(指揮:円光寺雅彦)を演奏し観客を魅了した。12月には「ロシア国際音楽祭」にてマリインスキー劇場管弦楽団とのコンチェルト「パガニーニの主題による狂詩曲」と、リサイタルでマリインスキー劇場デビューを果たす。2016年1月のデビュー・リサイタルは、サントリーホール2000席が完売し、圧倒的な演奏で観客を惹きつけた。8月に、3夜連続ピアノコンサートを行う予定だが一般発売と同時に完売してしまったため、追加公演を3日間予定している。 現在、M.ヴォスクレセンスキー、S.・クドリャコフ、A.ガマレイ各氏に師事し、 ロシアを拠点にし、国内外にて演奏活動を意欲的に行っている。
日時:2016年9月29日(木)
会場:王子ホール (東京都)
ピアノ:山中惇史
<曲目・演目(予定)>
ビゼー:カルメン・ファンタジー for サクソフォン
ドヴォルザーク:家路 ~交響曲第9番《新世界より》
ムソルグスキー:モスクワ川の夜明け ~歌劇《ホヴァンシチナ》
ガーシュウイン:ラプソディー・イン・ブルー
バザン:バザンのロマンス ~歌劇《パトラン先生》
日時:2016年12月14日(水)
会場:浜離宮朝日ホール (東京都)
ピアノ:山中惇史
<曲目・演目>
J.S.バッハ:G線上のアリア
P.モーリス:プロヴァンスの風景
ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー
日時:2016年8月21日(日)
会場:鎌倉芸術館 大ホール (神奈川県)
<出演>
須川展也、國末貞仁、福井健太、山田忠臣、上野耕平(サクソフォン) 、小柳美奈子(ピアノ)
<曲目・演目>
カッチーニ(朝川朋之編):アヴェ・マリア
ブルーベック(挾間美帆編):トルコ風ブルー・ロンド
石川亮太: 「銀河鉄道の夜」
チック・コリア(本多俊之編):スペイン
他
日時:2016年9月17日(土)
会場:中野サンプラザホール (東京都)
音楽監督:船山基紀
演出:中野俊成
ゲスト:五輪真弓、小野リサ、宮本笑里、Sarah Alainn、WeiWei Wuu、上野耕平、fiola
日時:2016年12月3日(土)
会場:Bunkamuraオーチャードホール (東京都)
<出演>
藤重佳久(指揮/活水女子大学 音楽学部 教授)
ぱんだウインドオーケストラ(コンサートマスター:上野耕平)
<曲目・演目>
C.T.スミス:華麗なる舞曲
C.T..スミス:ルイ・ブルジョアの賛美歌による変奏曲(※14:00公演のみ)
C.T.スミス:フェスティバル・バリエーション(※19:00公演のみ)
P.スパーク:宇宙の音楽
真島俊夫:シーガル
他
日時:2017年1月9日(月)
会場:サントリーホール 大ホール (東京都)
上野耕平(サクソフォン)
林英哲/英哲風雲の会
加耒徹(バリトン)/長谷川顯(バス)/森谷真理(ソプラノ)/金山京介(テノール)/腰越満美(ソプラノ)/池田直樹(バス・バリトン)/高橋維(ソプラノ)/平方元基(俳優)
構成台本・演出:田尾下哲 指揮:高関健 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
<曲目・演目>
【第1部】
■Part1
Promising Artist 上野耕平(サクソフォン)
J.S.バッハ:パルティ―タ イ短調 BWV1013(原曲:無伴奏フルート・パルティ―タ)
■Part2
日本の伝統芸能。太鼓パフォーマンスの至芸。 林英哲/英哲風雲の会
『澪の蓮』抄 2017 Live Version
青年マゼットの回想『ドン・ジョヴァンニ』への招待 <モ―ツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より>
※演奏会形式/イタリア語・日本語字幕
構成台本・演出:田尾下哲 指揮:高関健 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
日時:2016年9月7日(水)~9日(金) 3日間ともに14:00開演
会場:浜離宮朝日ホール (東京都)
■9月7日~ドイツ~
バッハ:パルティータ 第2番 BWV.826
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 op.13「悲愴」
リスト:詩的で宗教的な調べより 第7番「葬送」
ショパン:スケルツォ 第2番 変ロ短調 op.31
スクリャービン:幻想曲 ロ短調 op.28
ラフマニノフ:絵画的練習曲 op.39 より抜粋
小泉和裕 都響デビュー40周年記念
鈴木愛理/ヴァイオリン&阪田知樹/ピアノ
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
MUSIC CHARGE: 500円
仲田みずほ/ピアノ&ロー磨秀/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円