空きっ腹に酒がSPICEインタビュー初登場。ファンクもラップもロックも詰め込んだ5thフルアルバム『しあわせ』に込められた現在。

インタビュー
音楽
2016.8.23
空きっ腹に酒(左から:幸輝(Vo)、いのまた(Dr)、西田(Gt))

空きっ腹に酒(左から:幸輝(Vo)、いのまた(Dr)、西田(Gt))

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田中幸輝(Vo)と、彼の高校の先輩である西田竜大(Gt)、いのまた(Dr)により2007年に結成された空きっ腹に酒。インストバンド(LOW-PASS)で活動していたシンディ(Ba)が2015年に正式メンバーとして加入し、現メンバーとなってはや1年。7月6日(水)にリリースした5thフルアルバム『しあわせ』は苛立ちや悲しみといった負の感情さえも無駄にしない。格好付けた言葉ではなく自分の言葉で歌う意味へと昇華させた日本語ラップとフロウがたぎりよく詰め込まれ、高速カッティングと柔軟で躍動感あるファンクのリズムに溢れている。“音楽と踊る楽しさ”を信条としながらも、踊れるだけではないバンドの地力も発揮。アルバムの話題を中心に、結成当初のエピソードから現在彼らが思うこと、9月からのワンマンツアーについて語ってもらった。

――現メンバーになって早くも2枚の作品をリリースされていますが1年経ってみていかがでしょうか?

田中幸輝(Vo・以下、幸輝):今年の3月に1stミニアルバム『人のきもち』と、7月に5thフルアルバム『しあわせ』をリリースしてみて、4人でやってたら1年くらいでもちゃんと“空きっ腹に酒”になるんやなぁという感覚はあります。お客さんからもシンディのベースを求める声がたくさんありますし。

――3月~7月の4ヶ月空きでのリリースでしたが、短いスパンでリリースをする事は元々予定されていたのでしょうか?

幸輝:計画自体はありました。でも、やってみたら結構大変な計画なんだなと思いましたね。同時進行というわけじゃなく、『人のきもち』の曲が完成してから『しあわせ』の曲を短期間で作り出したので。

――全員の名前が作曲クレジットに載っていたり、各々の持ち味も現れた作品ですね。楽曲制作はいつもどのように進めているのでしょうか?

幸輝:うちのバンドは“こういう曲が作りた”いと提案したり、何らかのフレーズを弾いたり、口ずさんだメンバーをアイデアマンとして作曲者にしてるんです。アイデアが出るまでが長いんですけどね(笑)。

西田竜大(Gt・以下、西田):アイデアが出てしまえば、スタジオで合わせていたらみんな出てくるので。

――新作『しあわせ』に収録されている曲たちは、何度リピートして聴いても新鮮に響きます。これまでの作品と比べてシンプルで温かみのあるタイトルですが、どういう意味が込められているのでしょうか?

幸輝:パッと目に入れた瞬間に、一発で意味がわかるタイトルにしたかったんです。毎回タイトルは日本語で付けてるんですが、漢字だと一文字に意味が込められてしまう。平仮名にすることによって意味が分散するし、リスナーに委ねやすくなるかなと。それぞれが『しあわせ』の曲を聴いた時に、タイトルがどういう意味に変換されるのか考えると面白いなと。回りくどいタイトルにしようかとも思ったんですが、結局“自分が何故歌ってるのかと思ったら、幸せになりたいから歌う”、今現在幸せな自分がどれだけ幸福感を歌っても、多分それ以上は無いんです。でも自分が今苛立ってるだとか、怒りを歌い続ける事によって幸せになろうとしてるというか。ちょっと厳かな話になってしまいましたが……。何人かのお客さんにも“この内容で何が幸せなのか?”って、“このタイトルは間違ってると思う”って言われたんですが、そういうお客さんも居たら面白いなと思って付けたので、僕からしたらしてやったりなんですけどね(笑)。

――確かに『しあわせ』というタイトルでありながら、幸福感を前面に出した内容でもないですよね。リード曲は2曲目「夢の裾」で推し曲は「宇宙で独り」と「ALC」という事ですが、思い入れの違いはありますか?

幸輝:リード曲は売りたい曲で、推し曲は本当にかっこいいから聴いてみてほしいという曲ですね。でも、結局「夢の裾」のPVはまだ撮れてないんです。シンディも入院していたので。

――今年の4月、バンドの移動中に交通事故に遭われたと伺いました。シンディさんが骨折、いのまたさんが打撲、幸輝さんと西田さんは軽傷を負われたそうですね。ファンの皆さんも心配なさってると思います。

幸輝:でも、Twitterもいっぱい呟いててファンとの交流はシンディが1番多いんですよ。本人も足以外は本当に元気で、やる気もあるし、作曲して送ってきてくれたりもしてるのでシンディが帰ってくるのを楽しみにしてて下さい。正式メンバーになって1年のくせに、めっちゃやる気があるんですよ。グイグイくるから、何やねんこいつってなるよな(笑)。

――因みに個人個人での推し曲はありますか?

幸輝:毎回、前に言った事と変わってしまうんですよ。インタビューが終わった後に自分でもう1度聴いてみると、こっちの方が好きやなとか思っちゃうんですけど3曲目の「ブス」ですかね。

西田:こないだと一緒やん(笑)。

幸輝:推し曲の「ALC」も好きで、今までお酒に関する曲って意外とやってきてないんです。バンド名が空きっ腹に酒なので、どっちが曲名か本当に分からなくなってしまうので。やってみたら楽しくて、自分はやっぱりお酒が好きなんだなって思いました。ラップのフロウに関してもメンバーの意見を凄く取り入れてます。1回歌ってみて、“ちょっと違うな”って言われて録り直す作業が本当に嫌いなんですよ。“何でお前らに言われなあかんねん”みたいな感情があったから。でも、素直に聞いてやってみたら良くなったので思い入れがある曲ですね。「ブス」は疾走感があるので単純にライブで早くやりたいです。

いのまた(Dr):僕は毎回一緒なんですが、自分が作曲した7曲目の「ゼロ」ですね。いのまたの作曲はバラードっぽいかミドルテンポな跳ねたファンクみたいなパターンがあったんですが、沸々と違う感じの曲が作りたいなと思っていました。こういうテイストも好きっていうのを出したくて。とにかくダサい、昭和のアニソンで使われるような曲を作りたいと思ったんですよ(笑)。正直、持ってきたフレーズはほんの一部分だけなんですけど、最終的にスタジオで各々に任せたら、僕が思ってるようなダサさをいい感じで出してくれたので凄く好きな曲です。

幸輝:俺がスタジオ休んでて次の日に行ったら出来てましたしね。“ダッサ。なんちゅう曲作ってんねん”て思ったもん(笑)。

西田:僕は9曲目の「トラッシュ」が好きです。曲が綺麗ですし、“クズ”とか“ゴミ”とか出てくる歌詞も好きです。ギターのアプローチも気に入ってます。

空きっ腹に酒 幸輝(Vo)

空きっ腹に酒 幸輝(Vo)

――一定のジャンルに捉われる事なく、これが空きっ腹に酒だ!という音作りをされていますよね。楽曲を作る上で、各々が好きな音楽ジャンルやアーティスト等のバックボーンも反映される事はありますか?

幸輝:反映するつもりで聴くことはしないですが、そうなってる箇所もあるのかもしれません。この曲のこの部分をこうしたいと思いながら聴く事はないです。でも、音楽って遊びで聴くもんじゃないですか。家に帰ってCDを流して踊りたい時にお酒を飲んで踊って、寝て起きたらそれが残ってるんですよね。そのままスタジオに行った時に、それが出てしまうことはあります。

西田:わかるわかる。

幸輝:そうやって自分のものにしていくんだろうなと思います。パクったんじゃなくて単純に俺に染み込んだ、俺のものにしたっていう感覚ですけどね。好きなアーティストへの憧れはありますね。僕はラッパーやヒップホップが好きなんですが、ヒップホップってフロウの仕方や韻を踏んでビートに乗せる大まかな事しかないので、どうしても被ったり同じライムが出てきたりはします。でも、そこで俺がやった方がかっこいいという進化はさせたいですね。そういう意味では、ラップをバンドでやるってのもいいかなって。憧れてきた音楽は、そういう形でどんどん自分のものにしていこうと思います。

西田:俺は新しいものより、昔から好きな音楽ばっかり聴いてますね。時々街中で流れていたり、友達から教えてもらって新しい音楽を聴く事もありますが、なるほどなって、最近こういう感じかぁと勉強してる気持ちで聴いてしまうんです。昔から好きな音楽は、単純に自分のやる気を出すためだけに聴いてる。あぁ音楽っていいな、っていう気持ちを高めるために聴いてますね。

――普段から各々の好きなジャンルの音楽のライブやイベントに遊びにく事も多いですか?

幸輝:リリースしたばっかりで行けてないんですけど、地元の友達がDJをやっているので遊びに行こうかという話はしてます。ライブハウスで生の低音爆音っていうのも好きなんですけど、家でヘッドフォンして台所で料理作りながら踊るのとか好きですね。その方が音楽の本来の目的に近い気がするんですよね。ライブハウスに行くと“観るぞ”っていう感覚で観るので、違う自分になってるというか。CDや音源って何のためにあるのかって考えた時に、台所でお酒作りながら聴く音楽が自分に1番近いから、ライブハウスに行くっていうよりそっちのほうが楽しいですね。

――生活に音楽が寄り添っていますね。さて、9月からはワンマンツアーが始まったり今後も忙しい日々が続きそうですが、今後の活動への野望や目標を教えてください。

幸輝:よく聞かれるんですけど、 毎回目の前の目標をひとつひとつ実現していくだけですね。さっきとちょっと違うんですけど、僕らはリリースしてライブをするっていうのがバンド本来の目的の二項目だと思っていて、それだけ出来てたらいいんですよ。毎回誠実に1本のライブに向き合う。ワンマンも近いので音源を聴いてくる人たちに、ライブならではのびっくりするようなアレンジで提供したいですね。来年10周年なのでリリースやツアーもきっとあるし、この先もずっとその二項目を更新していけたらいいなと思いますね。

――『しあわせ』の曲たちがライブでどのように披露されるのか凄く楽しみです。9月からのワンマンツアーのセットリストも今から練っているのでしょうか?

幸輝:そうですね。ジワジワ考えつつはありますね。

西田:色々凝りたいので、悩みつつ考えています。

空きっ腹に酒 西田(Gt)

空きっ腹に酒 西田(Gt)

――その日の会場の空気でセットリストを変える事もあるのでしょうか。

幸輝:ライブの最中にセットリストを変えるという事は無いですけれど、同じ曲でも会場ごとに表情が変わってくるのが空きっ腹に酒のライブだと思っています。そういう意味では他のバンドと違いますね。音源通りにライブで演奏するのではなく、その瞬間その曲をどう魅せるかっていうのをその場で作っていくようなバンドです。同じ曲でも会場ごとに雰囲気は変わってくると思いますね。

いのまた:対バンやフェスで初めて観てくれた人もいるんですが、リリースした新作を聴いてワンマンツアーに来てくれる人たちって、タワーレコードでの展開を見たり、ラジオ等で知って新しく来てくれる人たちが増えるタイミングなので(語調を強めて)病みつきにさせたいなって思います。

西田:(病みつきの発音について)言い方でボケるんやめろ。記事やねんから(笑)。

空きっ腹に酒 いのまた(Dr)

空きっ腹に酒 いのまた(Dr)

――記事再現できますかね(笑)。

西田:空きっ腹に酒はライブアレンジにこだわってるので、再現する所と違う所とを両方楽しみにしていてほしいです。

 

取材・文=松永くるみ 撮影=K兄

空きっ腹に酒

空きっ腹に酒

空きっ腹に酒     

空きっ腹に酒     

 
リリース情報
5thアルバム『しあわせ』
空きっ腹に酒『しあわせ』

空きっ腹に酒『しあわせ』

2016年7月6日(水)発売中
AOME-0013/2,000円(税込み)
<収録内容>
1. 音楽と才能
2. 夢の裾
3. ブス
4. 宇宙で独り
5. ALC
6. 青にかまけて
7. ゼロ
8. ミラーボールロマンス
9. トラッシュ
10. グルーヴ問題

 

イベント情報

ツアー情報
■対バン公演 

8月9日(火)【東京】渋谷WWW w)挫・人間 / 最終少女ひかさ BAR STAGE ACT :あいみょん
8月10日(水)【大阪】梅田Shangri-La w)神頼みレコード and more
8月13日(土) 【愛知】名古屋Electric Lady Land w)Amelie / uchuu, / CRAZY VODKA TONIC / ジラフポット / Swimy / 空きっ腹に酒 / Half time Old / ビレッジマンズストア / Booby Adventure / ユナイテッドモンモンサン / yonige / ラックライフ / LOCAL CONENECT / 他
8月14日(日) 【広島】広島 BACK BEAT w)ORESKABAND /ラックライフ and more
8月15日(月) 【岡山】岡山 CRAZYMAMA 2ndRoom  w)ORESKABAND /ラックライフ /ペロペロしてやりたいわズ。
8月16日(火) 【神戸】神戸VARIT w)THE TOMBOYS / ORESKABAND
8月17日(水) 【京都】二条GROWLY  w)HINTO 【O.A】ミスタニスタ

■ワンマン公演『5th Full album release 夢でみた幸せ ONEMAN TOUR』
9月16日(金) 【北海道】札幌 BESSIE HALL
9月23日(金) 【大阪】心斎橋CONPASS
10月12日(水) 【愛知】池下 CLUB UPEST
10月14日(金) 【福岡】福岡the voodoo lounge
10月21日(金) 【東京】渋谷 TSUTAYA O-nest

 
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