『VOICARION~ヴォイサリオン~』作曲家・音楽監督の小杉紗代にインタビュー「おもしろいクリエーションの連鎖が起きています」
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小杉紗代
8月27日(土)から9月5日(月)まで、日比谷・シアタークリエにて、『クリエ プレミア音楽朗読劇 VOICARION~ヴォイサリオン~』が上演される。様々な朗読劇を手掛けてきた藤沢文翁が原作・脚本・演出を務めるこの舞台に不可欠なのは様々な場面を彩る「音楽」。本作の作曲を手掛け、さらには音楽監督を務めることになったのが、作曲家でピアニストの小杉紗代。ジュリアード音楽院の大学院作曲専攻卒業後、国内外を問わず活躍する小杉に話を聞いた。
――藤沢さんからこのお話をいただいたときの率直な感想は?
素直にすごく光栄だと思いました。こういったライブのための音楽を書くのって楽しいので。
――今回は作曲だけでなく、音楽監督という役割をも務められますよね。
音楽監督がそんなに大きな役であるとは思っていないんです。自分で作曲した作品を演奏する人たちと取りまとめることはありますし。それとやっていることが全く違うとは思ってないですね。
と、ここでインタビュー場所の近くを通りがかった藤沢に、「音楽監督の役割って何だろう?」と聞く小杉。これに対し「僕にとっての音楽監督ってのは、その場面ごとに使う音楽のアドバイザー……音楽まわりの「軍師」みたいなものかな? バンドに対しては監督だけど、僕に対してはアドバイザー……対等な関係だと思ってますよ」と話す藤沢だった。
藤沢さんが音楽にすごく重きを置いてくれていることを実感しています。きっと責任が大きいんだろうなあ(笑)。本作での音楽は、藤沢さんと台本を読みながら一緒に打ち合わせをして作っていったんです。最初から最後まで本をさらいながら。そこでどういう音楽が欲しいかを言っていただきました。台本に書かれている「言葉」のすべてがインスピレーションにつながっているので間違った方向にはいってないと思いますよ。
――小杉さんはどのように作曲をしていくタイプの方なんですか?
私が作曲するすべての作品について同じなのですが「色感」……色をイメージして絵を描くんです。私の中の感情を、色をイメージして作るんです。今回の「女王がいた客室」については、台本があり、赤いカーテンが……」とセリフにあったので、「赤いベルベット……深紅かな……」とイメージしつつ。またマダムがどういう色の服を着ているのか?と想像しながら作っていきましたね。もちろんロシアの歴史についても調べています。私自身も西洋音楽史と世界史を照らし合わせながら学んできたので、そのときの記憶を蘇らせながら作りましたね。
ちょうどこのお話をいただいた後、パリに行っているんです。台本を読んでから行ったので、すごく現地でインスピレーションが沸きましたね。セリフの中に出てくる場所も鮮明に浮かびます。光の入り方も「ああ、こんな色だったな」と……そう、やはり色で考えていますね。
――今回舞台で使われる楽曲、様々あると思うのですが、いちばん最初にできた曲は?
私はいろいろな曲を少しずつ書き、少しずつ調整しながら作っていくんです。そういう意味でいちばん最初にゴールにたどり着いたのはアレックスのピアノ曲ですね。劇中にちゃんとライブのシーンがあって、そこに生演奏で入る曲なので、あまりセリフの事を考える必要がなく、純粋に「曲」として作りやすかったです。
曲はほぼ大詰めといったところまでできていますが、コミカルな場面の違いの出し方はもう少し練りたいですね。エレオノーラが詐欺モードに入る場面、みんなで計画を立てる場面など、それらをどう差別化をしていくか……。
――本日の通し稽古で、実際の役者が演じるのを観て、場面や登場人物の印象が変わったりもしたのでは?
意外ともっと演劇っぽく、思っていたものよりずっと厳格な印象を受けました。豪華ですねー。実際に役者さんが読まれると、格式や重みがあるなと感じました。もう少し音楽も重くしようかな……。当初くどくならないようにさらっとした曲で考えていたんですが、もっと重みがあってもいい、という気づきがありました。たとえばエレオノーラについてはもっとキャピキャピした人を想像していたし。
今日のメンバーと違う組み合わせの稽古を見たらまた印象が変わると思いますが、もしかしたら、音楽がキャラクターや場面のイメージを定着させるための大事なスパイスになるかもしれないですね。
――このあと、本番に向けて音楽も仕上げに入られると思います。
もともと、藤沢さんが台本を書く際に、私の楽曲を聴きながら書いていたそうなんです。私の音楽があって、それを聴きながら台本ができて、そこに描かれている時代背景とか心情とかを私がくみ取って舞台のための音楽を作る…おもしろいクリエーションの連鎖だなと思っています。
■日時:2016年8月27日(土)~9月5日(月)
■会場:日比谷・シアタークリエ
■原作・脚本・演出:藤沢文翁
■作曲・音楽監督:小杉紗代
■出演
☆8月27日(土)~9月2日(金) 『女王がいた客室』
鈴村健一、浪川大輔、沢城みゆき、中村悠一、山口勝平、石田彰、保志総一朗、三森すずこ、甲斐田ゆき、入野自由、平田広明、山路和弘、水夏希/竹下景子
☆9月3日(土)~9月5日(月)『Mr.Prisoner』
上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一
■公式サイト:http://www.tohostage.com/voicarion/