the GazettE 全てをさらけ出し、無条件にぶつかり合ったスタンディングライブ
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
STANDING LIVE TOUR 2016 DOGMATIC-ANOTHER FATE-
2016.8.2(TUE)新木場STUDIO COAST
同じ曲、同じバンド、同じツアーでも、会場やオーディエンス、メニューの組み方と状況が変われば、まるで別物のようにガラリと変わるのが“ライブ”というものだ。特に本数を重ねれば重ねるほど、アーティストとオーディエンスのシンクロ率は高まり、始まりとは別物のように変貌を遂げることもある。それがツアーの醍醐味であり、だからこそツアーは面白いと実感させてくれたのがthe GazettE久々のスタンディングツアー。7月6日の豊洲PITから8月2日の新木場STUDIO COASTまで、全国を駆け抜けた『STANDING LIVE TOUR 16 DOGMATIC-ANOTHER FATE-』であった。
昨年8月にリリースした最新アルバム『DOGMA』を引っ提げ、途中「UGLY」「UNDYING」と2枚のシングルを加えながら、2本のホールツアーにワールドツアーと“DOGMATIC”の名のもとに行なってきた一連のツアー。グランドフィナーレとなる9月27日・幕張メッセでのフリーライブを前に、最終章となる全10本のファイナル会場・新木場STUDIO COASTは、通常封鎖されるバルコニーまでオーディエンスであふれ返り、これまで見たことがないほどの人の波に埋め尽くされていた。
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
スモークが立ち込める中、ユラリとお立ち台にRUKI(Vo)が上って咆哮をあげるとフロアはうねり、拳を振り上げて「DOGMA」の荘厳たる重低音をその身で受け止める。さらに「RAGE」の暴力的プレイに返すのはヘッドバンギングの嵐……と、目前に繰り広げられる光景は初日公演と変わらぬものだが、聴覚で受ける印象は明らかに異なっていた。紛れもなく荒れ狂う轟音でありながら、その響きは何故か耳に心地よく、在るべき場所に在り、自らも居るべき場所に居るのだという一種の安心感すら覚えさせるのだ。それは全10本のツアーの中で彼らが得てきた進化とオーディエンスに対する信頼感の結果であったに違いない。そして、そんな優しさの分だけ、続く「DAWN」で跳ね、頭を振り、手拍子する客席の楽しげな様子が、歌詞の不吉さと相まって狂気の度合いを際立たせるのだからたまらない。
「Oh Yeah、新木場! なんだか今日も熱い夜になりそうだぜ。実は今日はセミファイナルだったりします。でも、僕らはいつも通りにやるんで、皆さんはそれ以上にやってください。さあ、野郎ども! グチャグチャになる準備はできてるのか!?」(RUKI)
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
その言葉通り、緻密に絡み合うサウンドと語りにも似たボーカルが繊細な世界を作り出す「DERANGEMENT」に、4つ打ちのイントロから麗(G)のフリーキーなソロへの展開も豪快な「VENOMOUS SPIDER’S WEB」でフロアを狂乱させるが、直後の「BIZARRE」からは深淵へと急降下。静と動のメリハリが効いたミステリアスなナンバーに続き、「DEUX」では絶望の果てにエモーションを爆発させたRUKIがステージに頽れ、その心の内を戒(Ds)のダイナミックなドラミングが叫ぶ。さらにギター隊がアコースティックギターで悲哀を醸す「OMINOUS」では、真っ赤に染まった舞台でスモークに包まれたRUKIのシャウトと葵(G)のギターソロが悲痛に共鳴。その上空ではミラーボールが美しく煌いて、まるで天上の光と地獄の紅蓮を同時に映し出されたような光景に、しばし恍惚の心地から逃れられない。「BIZARRE」から「OMINOUS」にかけ、中盤でディープなゾーンを設けるというのは実は初日と同じ構成であったが、その世界に惹き込むスピードがグッとアップしているように感じられたのも、間違いなくツアーでライブを重ねてきた賜物であろう。
「WASTELAND」で再度ベクトルを内から外へと向けさせての後半戦では、オーディエンスとの打てば響くような狂鳴の時間に。「オイ! オイ!」と拳突き上げる声に引き寄せられるがごとく前方へと進み出たREITA(B)が容赦のないへヴィネスを鳴らす「INCUBUS」に、闇から光への潔い転換に客席中がモッシュする「HEADACHE MAN」では、RUKIも「いい感じだな!」と心からの声を漏らす。事実、フロアとステージとの一体感は見ていて肌で感じられるほど明らかで、イントロの1音目で手拍子が沸き上がった「ATTITUDE」では全員がヘッドバンギング。そしてセンターで煽るREITAの頭をRUKIが掴み、その首を切るような仕草で、さらなる狂気へと誘ってゆく。
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
「最高に熱いじゃねぇか! やっぱり暴れてナンボだよな、俺たちは。全力で愛してやるからよ。全員でかかってこい!」(RUKI)
その先の熱狂は、もはや説明するまでもないだろう。タフなパワーコーラス&ストロークを弦楽器隊が同時に繰り出す爆速チューン「SLUDGY CULT」に、楽曲の目まぐるしい展開にオーディエンスが身体全部で必死に食らいつく「UGLY」と、互いに全身全霊をかけて挑み合う姿は圧巻。さらに「もっともっと限界に行ってみたいと思わねーか?」(RUKI)と「BLEMISH」でフロアを揺らしたところで、場面を一変させたのが本編ラストの「UNDYING」だ。美と激、哀と怒が交錯するディープなナンバーで自在に変化するボーカルに、大きく身体を揺らす弦楽器隊の動きが呼応して、歌、音、感情、パフォーマンスと全てを繋げて描き出す様のドラマティックな事といったら! 厳粛な物語を麗のライトハンドが彩り、最後はスモークの中で戒が苛烈なドラムソロを放つが、そのプレイはアンコールでの「今日は良いとか悪いとかじゃない。ヤバいね。本編の最後のほうとか記憶ブッ飛んでた」という彼の言葉を納得させるほどに凄まじいものだった。
続いてダンスチューンで頭を振る客席に“流石!”と唸る「INSIDE BEAST」、フロアが一塊となってジャンプする「THE STUPID TINY INSECT」と、彼らの持つ“明”の部分を強く押し出したアンコールの最中。この日のライブの、そして昨秋に始まった一連のツアーの終わりを目前に控えた今の心境をRUKIが素直に告げる。
「まず、俺たちとお前らがこの時間を共有できることに感謝。時間が過ぎるのは早いね……。ホールツアーも合わせると相当な本数を回ってきて、セミファイナルってことになりまして。一つ言えるのは“最高だ”と。久しぶりのハコっていうのもあるんですけど、どこも良かったし、俺は楽しかった。やっぱライブは“楽しかった”っていうのが一番だからさ……今は、すごく近くに感じています。なので、もっと一心同体になっていきたい」
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
ここで「かかってこい!」と声をあげたオーディエンスに「愛しいね」と漏らした彼の言葉こそ、5人の偽らざる想いだっただろう。久々の国内ライブハウスツアーで本数を重ねるうちに、バンドとファンの間に横たわっていた距離は急速に縮まっていった。いや、そんなもの最初から無かったのだが、無意識に築かれていたかもしれない心の壁を、全てをさらけ出して物理/精神両面で無条件にぶつかり合う“スタンディングライブ”という空間が壊していったのである。
お馴染みのナンバーで全ての頭が回転する「COCKROACH」の最後、麗はガッツポーズのように右拳を握り、「DISCHARGE」ではファストな音の暴風にダイバーが出現。会場の壁を内側からなぎ倒してしまいそうなほど大きく波打つオーディエンスの勢いは場内の温度をグングン上昇させ、室内にいるのに熱中症になってしまいそうな暑さに見舞われる。今ツアーを通じてラストを飾ってきた「TOMORROW NEVER DIES」に至るとイントロのリズムから手拍子が沸き、全力の拳とダイバーをさらにお立ち台の上から葵が煽動。そして明るくなったライトの下でモッシュするフロアからも、思いのままパフォームするメンバーの自然な動きからも、晴れやかな“自由”の息吹が感じられた。これぞライブという営みの真の姿。まさしく真髄なのだ。
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
「お前らサンキューな。もう言うことないから、お前らわかってんだろうな? 最後はこの曲で飾るぜ!」
鳴りやまぬ声に応えたダブルアンコールで、RUKIがタイトルコールしたのは知らぬ者の無い初期からのライブ定番曲「関東土下座組合」。すし詰めのフロアの上を人が転がり、舞台前方ギリギリまで迫り出すREITAを後ろから葵が押し出そうとするフリーダムな空気に、客席を見れば床に土下座して頭を振る人々まで。最後に全員で手を繋ぎ一礼すると、戒は去り際バックドロップに染め抜かれたthe GazettEのロゴに拳を突き出す。そして別れを惜しむようにステージに残り、ペットボトルを投げ続けたRUKIは「バイバイ! THANK YOU SEMI-FINAL!」と叫んだ。そう。本当のファイナルは今日ではなく、9月27日の幕張メッセ公演『the GazettE STANDING LIVE TOUR 16 GRAND FINALE DOGMA-ANOTHER FATE-』。『DOGMA』を購入し、さらにホールツアーのファイナルであった2月の代々木第一体育館公演に来場した者――つまり生粋のファンしか集えない場所で彼らが提示する1年間の集大成は、恐らくロックバンドのライブという概念が持つ限界の先へ行くものとなるだろう。
取材・文=清水素子 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
the GazettE 撮影=山内洋枝<PROGRESS-M>
2016.8.2(TUE)新木場STUDIO COAST
01. DOGMA
02. RAGE
03. DAWN
04. DERANGEMENT
05. VENOMOUS SPIDER’S WEB
06. BIZARRE
07. DEUX
08. OMINOUS
09. WASTELAMD
10. INCUBUS
11. HEADACHEMAN
12. ATTITUDE
13. SLUDGY CULT
14. UGLY
15. BLEMISH
16. UNDYING
<ENCORE>
17. INSIDE BEAST
18. THE STUPID TINY INSECT
19. COCKROACH
20. DISCHARGE
21. TOMORROW NEVER DIES
<W ENCORE>
22. 関東土下座組合
幕張メッセ 国際展示場 9〜11ホール
open 10:00 / start 12:00
【出演アーティスト】
Slipknot (両日HEADLINER)
◆11月5日(土)
Deftones/Disturbed/A Day To Remember/ISSUES/SiM/RIZE/OLDCODEX
◆11月6日(日)
MARILYN MANSON/Lamb of God/IN FLAMES/ANTHRAX /
MAN WITH A MISSION/the GazettE/Crossfaith
and more...
【先着先行】
<最終先行>
2016年7月25日(月) 12:00 〜 8月26日(金) 23:59
2016年8月27日(土)10:00am〜
1日券 ¥14,000 / 2日通し券 ¥27,000