寺岡呼人×多保孝一 世代を超え共鳴しあう2人のスペシャルインタビュー

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寺岡呼人(写真・右)、多保孝一(写真・左)

寺岡呼人(写真・右)、多保孝一(写真・左)

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2015年9月5日(土)、寺岡呼人が主催し回を重ねてきたライブ『呼人の部屋』が、久しぶりに開催される。今回のゲストは、寺岡がその歌に惚れ込む中村中、そして寺岡のアルバムへの曲提供をするなど交流の深い、多保孝一。SPICEでは寺岡と多保にインタビュー取材を実施。
「2人が世代を超えた共鳴を見せる「ポイント」はどこなのか?」「そんな2人が共演する『呼人の部屋』の魅力とは?」とことん語っていただいた。仲の良さがうかがえるやり取りにも注目。


――寺岡さんが2014年9月にリリースした14枚目のオリジナルアルバム『Baton』に、多保さんが「Japan As No.1」を書き下ろしていますが……それ以前から、親交があったのでしょうか。

寺岡呼人(以下、寺岡):その1年くらい前からかな? 

多保孝一(以下、多保):確かそうですね。共通の知り合いを介して、お会いしまして。

寺岡そうしたら、すっかり意気投合してね。一緒にご飯を食べに行ったり飲みに行ったりするようになったんですよ。音楽の話はほとんどしていないんですけどね(笑)。

多保:いや、そんなことないですよ?……でも、半分くらいか(笑)。

――もう半分は、いったいどんなお話をするんでしょうか。

寺岡:音楽とは全然関係ないようなことなんですけど、人生観とか価値観みたいなところで、多保くんとはすごく重なるところが多いんですよ。ちなみに、多保くんと初めて会ったのは、彼が台湾から帰ってきてすぐのタイミングで。

――台湾にはお仕事で行かれていたんですか?

多保:いえ、プライベートです。

寺岡:台湾にいる、日本のことをよく知っているおじいちゃんやおばあちゃんと触れ合うために行ったんだよね。そういうところとか、本当の意味で日本という国を愛して誇りに想うっていうところに共感できたんですよ。あと、僕は広島、彼は愛媛出身なので、文化的に近いところもあって。お互い、音楽の道を志して上京してきたわけで、僕としてはそういう同志感みたいなものもあります。

多保:そう言っていただけると嬉しいです。

寺岡:ま、今たまたま思いついたことなんだけどね(笑)。

多保:それでも僕は嬉しいです!(笑)

――“西日本あるある”みたいな部分でも、重なったりするんでしょうか。

多保:とりあえず、方言はだいぶ近いですよね。

寺岡:うん、そうだね。だからって、普段一緒にいて方言で話すことはないけど。そういえば、“母恵夢(ポエム)”っていうお菓子(瀬戸内の銘菓)はお互いに知っていたよね。小さいころからローカル曲でCMが流れていて、僕は岡山のお菓子だと勝手に思っていたら、多保くんがFacebookで「地元のお菓子です」って紹介していて。

多保:いやぁ、まさか本州にまで知れ渡っているとは思いませんでした。

寺岡:当時はまだ本州と四国が橋で結ばれていなかったけど、CMは流れていたんだよね。……って、いきなりどうでもいい話をしちゃってすみません(笑)。

――いえいえ、お二人に共通する貴重なお話、ありがとうございます(笑)。

寺岡:あれだね、母恵夢さんにスポンサーになってもらえたりしないかな(笑)。

――なんならお二人でCMソングを作るとか。

多保:それいいですね。この記事が母恵夢さんの関係者の方の目に留まることを願いましょう!(笑)

――さて、話を戻しますと……多保さんからすれば、寺岡さんはずっと一線で活躍し続けている大先輩であり、きっと少年時代からその存在をよく知る方だったわけですよね。

多保:そうです、まさに。なので、台湾から帰国後、共通の知り合いも含め三人で会うっていうときには、すごく緊張しました。

寺岡:ホント?

多保:しましたよ。あの寺岡呼人さんとお会いするのか!と思って。

寺岡:そうだったんだ。でも、世代が違うじゃない?

多保:いえいえ、ゆずのプロデューサーとしてもよく知っていましたし、Mr.Childrenの「星になれたら」(曲は桜井和寿と寺岡呼人の共作)も大好きですから。で、いざお会いしてみたら……呼人さんが僕の目をなかなか見てくれなくて(笑)。

寺岡:そんなことなくない? でも……ホント言うと、人見知りだからね。

多保:っていうことが今はもうわかるんですけど、最初に会ったときはあまりに僕の目を見てくれないから、「僕に興味がないのかな”って思ってしまいました(笑)。

寺岡:でもさ、西の人って意外に人見知りが多くない? 広島とか、人見知りばっかりだもん。

――シャイだったり。

寺岡:そうそう。

多保:言われてみれば、愛媛の人間もシャイですね。

寺岡:でしょ? いやぁ、昔よりはだいぶ人見知りがマシになったし、そのときもわりと頑張ったつもりだったんだけど……ごめんごめん(笑)。

多保:でも、いろいろお話してみたらホントに楽しくて。

寺岡:それは僕も同じくで。世代は一回りくらい違うけど、話が合うっていうのはすごく嬉しい。ま、歳っていうのはあんまり関係ないのかもね。『呼人の部屋』にしろ『Golden Circle』(寺岡が尊敬するアーティストや親交あるアーティストをゲストに迎えコラボレーションを行う不定期開催のイベント)にしろ、想いが一緒の人って一緒にいて話題が尽きることがないし。音を出すと、余計に年齢って関係ないなって思う。

多保:わかります。

寺岡:そうだよね。で、去年、僕がアルバムを作ろうかなと思っていたタイミングで、多保くんと一緒に飲んでいるときに「1曲書いてくれない?」ってお願いしたら、「書きます!」って即答してくれたんですよ。

多保:ホントに嬉しかったですから。逆に、呼人さんは自分で曲を作られる方なので、僕でいいのかなって思ったりもしましたけど。

――普通に考えれば、プレッシャーもありそうですよね。

多保:そうですよね。でも、結果的にはすごく楽しんで作らせてもらたんですよ。

寺岡:彼はロックという基礎があった上で、ちゃんと今という時代の要素を曲に入れられるというか。要は、自己満足だけでは終わらず、多くの人が入ってこられるポピュラリティを持たせられるんですよ。ロックって、それが一番難しいんですけど……。

――多保さんは絶妙なバランス感覚を持っている方なんですね。

寺岡:そうそう、素晴らしいですよ。その曲に関しても「今は珍しくなった70年代みたいなウエストコースト・ロック的アプローチをしてみたらどうか」っていうことを言ってみたら……

多保:まさに、なるほどと思って。僕自身、ウエストコースト・ロックも好きだし、ピンと来ました。

――お二人は、音楽の趣味も近いんでしょうか。

多保:近いですね。

寺岡:そうだね、うん。歌に対して寄り添うっていうスタンスも同じだと思うし。ただね、僕と違って彼は真面目。

多保:え、そうですか?

寺岡:真面目だよ。真面目だし、良い意味でかっちりしていて細かい。これからの僕の目標は、このかっちり男をいかにだらしなくするっていうことかな(一同笑)。

多保:そうだったんですか、今知りました(笑)。

寺岡:今度の“呼人の部屋”も、ひとつにはそういう目的があるからね……多保くん、ライブするの何年ぶりだっけ。

多保:7年ぶりとかですね。

寺岡:2年前に初めて会った時点で、「ライブするより曲を作るほうが好き」ってはっきり言っていたもんね。

多保:ですね(苦笑)。もともとサングラスかけてギターをバーンって弾いていたりしたはずなのに……今となっては、どうやってそうしていたんだろうと(笑)。

寺岡:そんな彼を、少しずつ、少しずつ外に引っ張り出そうという(笑)。音楽って自由だし、日々、気持ちとか考えが変わるっていうのもすごく大事なことだと思うんですよ。Aだと思ったことが次の日にはBになるとかって、勇気も要るし体力も要るけど……その移動するエネルギーこそが、実は音楽を長く続ける秘訣なのかなって。

――寺岡さんが言うからこその説得力!

多保:本当に。そういう呼人さんに声をかけていただいたから、僕も重い腰を上げましたし。呼人さんじゃなかったら、お受けしていないです。

寺岡:そう言ってもらえるっていうのはまた、嬉しいな。ステージに立ったら立ったで、そこで得たものがそれぞれの制作にフィードバックされたりとか……。

――共演者同士で刺激されたりもするはずですよね。

寺岡:そうそう。僕も、みんなから刺激を受けたいし。

多保:僕としては、そういう呼人さんにライブに呼んでいただけて本当に光栄だなと。こういう機会でもなければ、もう一生ステージに立つことはなかったかもしれないですからね。久しぶりなので不安もあるけど、ありがたいなという感謝の気持ちでいっぱいです。

寺岡:あとはね、ずっと音楽をやってきて……リリースして、ツアーをして、プロモーションして、っていうサイクルだけだとつまらないなと思うんですよ。もっと自由に、気軽に、一緒に音を出したい人と音を出して歌えたら、楽しいじゃないですか。

――そういう音楽の本来的な楽しさがあるのが、『呼人の部屋』であると。

寺岡:そういうことです。ほら、誰だっけ、アメリカの……ピアノ弾いて歌う人……。

多保:いっぱいいますよ、そういう人(笑)。

寺岡:だよねぇ。女の人なんだけど、名前が出てこない。♪テレレ~テレテ~レレレ~♪(←おそらく「ドント・ノー・ホワイ」のフレーズを口ずさむ)……。

多保:ノラ・ジョーンズですか。

寺岡:そう! ありがとう(笑)。彼女って、よくバンド仲間の週末セッションによく顔を出していて、そこでやったカヴァー曲を作品に収録していたりするじゃない? サラリーマンの方たちと僕らが違うところって、そういうことができるところだと思うんですよ。自分たちがやりたいこと、好きなことを仕事にできて、楽しみを自分たちで作り上げることができるわけじゃないですか。『呼人の部屋』は、そういう場所になれたらいいなと思ってこれまでやってきたし、来る9月の公演もそういう場所にしたいんです。

――なんと60回目を迎える今回、何かテーマやコンセプトのようなものはあるんでしょうか。

寺岡:裏テーマは“昭和の名曲を歌おう”です。内容はまだ決めていないんですけど(取材は8月初旬)、多保くんにも何曲か歌ってもらおうかと思っていますよ。

多保:……え?

――まさかのムチャ振り?(笑)

多保:いやもう、ハードルが高すぎてびっくりしました(笑)。っていうか、リードヴォーカルですか?

寺岡:そうそう。助け船出すから(笑)。それに、多保くんには歌心があるじゃない。歌心がないと曲なんて書けないからね。大丈夫だって。

――過去の『呼人の部屋』でも、そうやってゲストの方の新たな扉を開かれたりしてきたんでしょうか。

寺岡:うん、楽しんでくれそうな人だったら、いろいろアドリブを展開してみたりとか。そういうのも、ライブの楽しみですよ。

多保:そういう呼人さんから、僕は今回の『呼人の部屋』を通していろいろ教わりたいなと思っております。

寺岡:僕が多保くんを変えてみせます!(笑)

――なお、今回はお2人と中村中さんに加え、もう一方ゲストの方がいらっしゃるんですよね。

寺岡:そうです。中ちゃんは『呼人の部屋  Vol.43』(2010年開催)と『Golden Circle vol.15』(2012年武道館にて開催)に出てもらって以来だけど、彼女にしろもう一人のゲストにしろ、日本の音楽を心底愛しているので。“昭和ってこんなに良い曲がたくさんあったんだ”っていうことを、来てくれるお客さんたちにも再確認してもらえたらいいなって思っていますね。今って魅力的なシンガーソングライターやバンドが多くいるけど、作詞家、作曲家、編曲家がそれぞれいて分業制だった時代の良さっていうものもまたあって。

多保:うん。わかります。

寺岡:それぞれの道のプロフェッショナルが想いをひとつにして作り上げた曲って、時を経ても色あせないし……今現在の曲たちが30年後、40年後に果たして何曲歌い継がれるのかっていうことも、真剣に考えないといけないと思っていて。そのためには、今こそ僕らがもう一度昭和の名曲に光を当てるべきなんじゃないかなと思ったわけです。

多保:昭和の職業作家の方たちが書いた曲がいかに素晴らしいかっていう話、よく呼人さんとしますもんね。

寺岡:うんうん。でね、僕なんかは曲を作るときにiPhoneのボイスメモに鼻歌を入れるんだけど、多保くんは譜面に起こすんですよ。

――ロック畑の方としては珍しいかも。

多保:譜面といっても、メロディだけですけどね。

寺岡:でも、そうやってメロディを紡ぐっていう作業をする若者がいるっていうのは、頼もしいことだなと。キャロル・キングの自叙伝を読んでいたら、「タイプライターで打った「つづれおり」の歌詞が送られてきたとき、その字面がアートだと思った」って書いてあって。同じように、本当に良い曲は譜面が美しいということを、一緒に仕事をしたある人もいっていたんですよ。

多保:それ、すごくわかります。

寺岡:多保くん、わかるでしょ。そういう人がこの平成の世にいるというのは、すごく希望的だなと思ったりもするわけです。……ちょっとホメすぎたかな(笑)。

多保:恐縮です(笑)。ま、僕としては若手をちゃんと育てないといけないなということは思っています。

寺岡:それが僕らの役目でもあるよね。

――何しろ、今度の『呼人の部屋』が音楽の素晴らしさ、歌の力を再認識できるひとつの大きなきっかけになるのではないかなと思うと、期待感が高まってしまいます。

寺岡:もう、期待しておいてください。そして、今後も続けていきたいなと思っているわけですけど……僕はもう、59回やって友達ネタもだいぶ尽きているので。多保くんには、今後いろいろゲストを紹介してもらいたいなと(笑)。

多保:なるほど(笑)。そうですね、僕よりも若い世代のシンガーをどんどん誘いたいなという想いはあります。

寺岡:そういう人たちが意外な曲をカヴァーして、それが評価されたら……そんなに素晴らしいことってないよね。

多保:そうですね、まさに。海外では当たり前のようにされている数珠つなぎみたいなことが、日本でも自然と当たり前のようなことになったらいいなと。

――そして、今後また作品でもお二人のコラボレーションを実現させたいという想いも?

寺岡:もちろんあります。

多保:僕もです。ぜひ。

寺岡:……俺、詞も良いと思うんだよね、自分で言うのもなんだけど。ずっと自分の心の奥にしまっていたけど、今日初めて告白してみた(笑)。

多保:ドバーっと出ましたね(一同笑)。え、詞だけというのもありなんですか?

寺岡:ありあり。

――だとすると、多保さんが曲を書いて、寺岡さんが歌詞を書いて、誰かが歌うというパターンもあり得るわけですよね。

寺岡:いいね、それ。

多保:っていうことも、『呼人の部屋』というイベントを通して実現するかもしれないので。

――可能性がどんどん広がっていきますね。

寺岡:うんうん。可能性が無限にあるのが音楽だし、そこに規模は関係ないと思うんですよね。何がやりたいか、どういう想いの人が集まるかが大事ですから。

多保:とりあえず、僕は呼人さんに何かやろうと声をかけていただけたら馳せ参じますので。

寺岡:……愛媛は上下関係厳しいから、先輩に誘われたら断れないとかじゃなくて?(笑)

多保:ち、違います!(笑)

――もちろん、リスペクトがあるからでしょうし……本当に素敵な関係性であることがよくわかりました。ちなみに、普段はどう呼び合っているんでしょうか。

多保:僕は“呼人さん”で……。

寺岡:僕は“多保くん”。

――酔っぱらったら……。

多保:“よっひー”とは言えないですよ!(一同笑)。

寺岡:いつか言ってもらえるように頑張ります(笑)。

インタビュー=杉江優花 撮影=風間大洋


 

ライブ情報
呼人の部屋  Vol.60

 日時:2015年9月5日(土) 10:00
 会場:LIVING ROOM CAFE by eplus
 出演者:寺岡呼人、多保孝一、中村中 and more……!

 

 

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