10月13日はトイスの日! POLYSICS『TOISU!!!感謝祭』オフィシャルライブレポート到着

レポート
音楽
2016.10.15
 撮影=緒車寿一

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まず確認。トイスとは、20代のハヤシが「“乾杯!”に変わる新しい挨拶を考えよう」と友人たちと盛り上がった末に考案された造語である。世間的に流行る兆しは今のところ一度も見えないが、ポリシックスとファンの間ではすでになくてはならない共通の挨拶となった言葉だ。

結成19年目にして、誰が言い出したのか「10月13日はトイスの日!」と設定された。特別な感謝祭、は破格の1,013(トイス)円というニュースは、数ヶ月前に品川ステラボールで行われた『What’s This???』ツアーファイナルで発表され、当日終演後から先行予約が始まったものだ。

撮影=緒車寿一

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新宿ReNYのキャパシティはステラボールよりもマイナス1000人ほどなので、を入手できたのは猛者中の猛者だろう。半円形のフロアを見渡せば、全身オレンジツナギの人々もちらほら見えるし、意気揚々とゴモラの巨大フィギュアを掲げている人もいる。また、暗転と同時に鳴り響いたのは、HP上で募集した「トイス!」の音声を元に作られた特別SE「Mebius Toisu」だった。

集まった音声データについては中盤MCで説明があったが、ドレミファソラシドと高音域へ駆け上がる「トイス、トイス、トイス~♪」、爽やかな青春の挨拶みたいな「トイスッ!」、自分の子供に言わせた「といす…」、ヴォコーダーを使ったデジタルボイスの「ト~イス」などなど、それぞれに工夫を凝らして録音したことがよくわかる。その情熱が最高だし、そもそも総合的にくだらない。こんな企画を思いつくバンドもバンドだが、真剣に応募するファンもファン、といったところか。ポリシックスの主成分である「ハヤシの偏愛」を本気で溺愛するファンたちの熱気に包まれ、ライブは定刻にスタートした。

撮影=緒車寿一

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11年前の『Now is the time!』収録曲、本日のメインテーマとなる「Toisu!」から始まったバンド演奏。「Tei! Tei! Tei!」「シーラカンス イズ アンドロイド」と続く展開もどこか懐かしい。当時よりも全体がソリッドかつタフになり、ヤノのドラムなどは驚くほどスクエアに研ぎ澄まされている。

こう書くと時間をかけてストイックに先鋭化していったかのようだが、新作から「Funny Attitude」が始まれば、ぶっちぎりのポップさ、カラフルな花が一面に咲くような明るさが生まれていく。サビのメロディを普遍的名曲の方向に広げることはいくらでもできると思うが、そうせずに、次へ次へと猛スピードで展開が進んでいき、3分ジャストでスパッと終わるところも実に潔い。

撮影=緒車寿一

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つまり、常に明るく元気、ハイテンションで思い切りの良いところは、変わらないどころか今もパワーを増しているのだ。これは時間と共に研ぎ澄まされることよりも大変だし驚異的なことだろう。

そして新作のナンバーであれ13年前の隠れたポップソング「Genki Rock A-B-C!」であれ、等しく興奮して盛り上がるのがここに集まったファンである。二階から見て驚いたのは、フロアの後ろの後ろ、ほぼ最後尾まで全員が拳を振り上げていることだった。

複雑なリズムや唐突なストップ&ゴーを散りばめたポリシックスの曲を、見事に覚えきって反射神経のみで動いている感じ。腕組みして様子を見ている者など皆無である。まったく、素晴らしきファンの姿勢。それを支えているのは「いつだってポリは面白い!」という信頼感なのだろう。共感や感動などエモーションの部分にまったく触れてこないヘンテコな音を作り続け、でも、こんなにも愛されているし信用されている。バンドの在り方もまた、素晴らしいものだと痛感した。

撮影=緒車寿一

撮影=緒車寿一

中盤には、最近のワンマンでしばしば披露されているテクノポップ/エレクトロニカのコーナーが。ドラム・ベース・ギターという定位置を離れたメンバーが、それぞれシンセやサンプラーに向かう時間帯だ。

機材を前に3人が横並びになっている様子はYMOみたいだし、ノンストップでビートを繋いでいく様子はクラブDJのよう。サウンドの格好良さと、いつでもサービス精神を忘れない立ち居振る舞いは電気グルーヴ的といってもいい。会場の壁一面に設置されたLEDライトが鮮やかに点滅する演出もあって、ReNY全体が深夜のクラブと化していく。

撮影=緒車寿一

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ここでの7曲がまた良かった。バンドを離れることで当然ながら爆音に頼る曲はない。妙に色っぽい歌にそそられる「New Melody」など、「いつでも元気!」の一言では収まりきらないポリシックスの奥深さが浮かび上がる。あとはクールさ、電子音への偏執的なこだわりと、不穏ともいえる狂気の部分なども。

本当に「元気なだけ」ならバンドはここまで続いていない。箸休めとは違うが、余裕と遊心を持って自分たちの側面を伝えていく3人。こういうコーナーがあることでライブはさらに厚みを増していくのだ。ついでに、ハンドマイクのヤノがフロア最前列の柵に飛び込もうとして一旦断念、なぜかステージ下手に移動して再びダイブ。「なんでそんな隅っこなんだよ!」とハヤシとフミに突っ込まれていたオチも記しておきたい。

撮影=緒車寿一

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後半は再びバンドセット。2003年から今日まで何千回と演奏されてきた必殺の「カジャカジャグー」に始まり、新旧のアルバムから名曲が惜しみなく放出される。危険なモッシュピットとは違う、倍速フォークダンスのようなサークルが発生した「ロボットマイムマイム」、何の意味もないのに異様な祝祭ムードに包まれる「Let’s ダバダバ」、爆音に我を忘れたダイバーが続出した「Shout Aloud!」など、ひたすら恍惚としたハッピーアワーが続く。

音量はマックスで姦しく、ビートは耳に痛いほど攻撃的、ハヤシが歌っていることもクレイジーすぎるのだが、それでも鉄板の名曲と言える曲ばかりだ。こういうバンドはやっぱり他にいないし、フォロワーもいないまま堂々と続いているのが凄い。何より、大団円の本編ラストが最新の曲、ニューアルバム収録の「SUN ELECTRIC」であることが一番素敵だった。

誰もやらないアイディアを思いつくだけなら、さほど難しいことじゃない。だが、それらを毎回名曲たらしめ、名曲がいくつ増えても、最後は新曲が一番いいと納得させる。これは本当に難易度の高い話だ。それをポリシックスはやっている。19年ずっと苦労なんて言葉とは無縁の佇まいで、今なお楽しそうに20年目へ突入しようとしている。「まさか20年もやると思わなかった」と言いつつも「好きなもの、変わらないからね」とMCでハヤシが笑った。そのブレのなさが、たまらない、と思う。

撮影=緒車寿一

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この日に発表されたのは、来年の3月4日、ちょうど20年前に初めてポリシックスがライブを行った日に、豊洲PITで20周年記念ワンマンライブが開催されるというニュースだった。ファンの「おめでトイス!!」と、メンバーの「ありがトイス!!」が重なるまで、あと5ヶ月。どんなスペシャルが待ち受けているのか、楽しみは尽きることがない。
 

取材・文=石井恵梨子

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