lynch.、A9、Psycho le Cému、NOCTURNAL BLOODLUSTが競演『GENESIS』ライブレポート
lynch. 撮影=Akihiko Yokoi
GENESIS
2016.10.10(MON)新木場STUDIO COAST
10月10日(月・祝)に新木場STUDIO COASTで開催されたイベント『GENESIS』に、lynch.、A9、Psycho le Cému、NOCTURNAL BLOODLUSTと個性の異なるバンドが集結。それぞれが熱く濃いアクトで楽しませた。
NOCTURNAL BLOODLUST 撮影=Kazuhisa Takayama
ステージの幕が開き、口火を切ったのはラウドシーン、ヴィジュアルシーンで注目を集めている“ノクブラ”ことNOCTURNAL BLOODLUSTだ。“ウォーッ”という歓声の中、爆音でヘヴィチューン「ZeTeS」を投下し、いきなりCOASTの温度を上昇させた。凶暴な音にまったく負けていない声量とスクリームの多彩さで圧倒する尋(Vo)、早弾き、タッピングとテクニカルなギターを奏で、派手なパフォーマンスで動き回るCazquiと7弦ギターで荒々しい低音を担うDaichiのギター陣、バキバキの重低音でバンドの土台を支えるMasa(B)とNatsu(Dr)のリズムセクション。
NOCTURNAL BLOODLUST 撮影=Kazuhisa Takayama
「オイ! まだまだそんなもんじゃないだろ!? 上手、かかってこい! 下手! ガッツリ暴れて帰っていけ!」と強力な音と強烈なパフォーマンスで最初は戸惑っていた人もいるフロアをどんどん巻き込んでいった。
「I-V-Ⅲ」では「歌えるか!?」とコール&レスポンス。<罪深き神の子達よ>という一節を<罪深き新木場の子達よ>とアドリブで歌う場面も飛び出し、場内はサークルモッシュ、ウォールオブデス状態へと。
ラストナンバー「V.I.P」ではCazquiがバズーカ砲を持ちこみ、尋は鍛え抜かれたマッチョな上半身をさらけ出し、いったい何が起こるのかノクブラ初心者が心臓バクバクの中、発射されたのは金テープという粋な演出! 日本のみならず海外でも活躍していることに納得の実力と迫力のあるアクトを見せつけた。
NOCTURNAL BLOODLUST 撮影=Kazuhisa Takayama
A9 撮影=Akihiko Yokoi
フロアにサイリウムの光が揺れる中、続いて登場したのはA9だ。「楽しむ準備はいいですか? ハンドクラップで踊っていきましょうか!?」と将(Vo)が煽り、オープニングは伸びやかなメロディとソリッドなダンスビートに高揚させられる「Daybreak」。不動の5人で結成12周年を迎えたバンドの一体感と息遣いが感じられるような艶やかでグルーヴ感たっぷりのサウンドでオーディエンスを魅了した。
A9 撮影=Akihiko Yokoi
そして今の彼らに洗練されたロックバンドのイメージがあるとしたら、それを根底から覆したのがデスボイスで「死んでくれないか!」と叫び鳴らされた、インディーズ時代から演奏している代表曲のひとつ「闇ニ散ル桜」だった。スクリームとファルセットを使い分ける将、パワフルなドラムを叩きだすNao、音の隙間を縫うフックのあるベースでA9のサウンドに深みを与える沙我、ヘヴィ且つ妖艶なギターサウンドに場内のヘドバン率もどんどん増加していった。
ここから攻めのモードに転換した彼らは虎とヒロトのツインギターの絡みが絶妙なナンバーでさらに加速し、弦楽器陣が前に出てフロアを挑発するパフォーマンスも実に鮮やか。「Alice NineがA9として頑張っているバンドです。それだけ覚えて帰っていってください」と短い自己紹介から、ラストナンバーは「開戦前夜」。全力のライブで今の5人を目と耳に焼き付けた。
A9 撮影=Akihiko Yokoi
Psycho le Cému 撮影=Akihiko Yokoi
そして本イベントで最もアウェイな存在、Psycho le Cémuがステージに姿を表すと場内から歓声と驚きの声が飛んだ。バンド復活後の全国ツアーでは“大江戸カラクリWorld”、“ミステリーWorld”、“パラレルWorld”の3つの設定でライブが開催されてきたが、この日の設定は“カラクリWorld”。
ナレーションが流れ、巨大な十字架を背負った四郎時貞(YURAサマ/Dr)、大奥に憧れる花魁(AYA/G)、物の怪、シーク・ワーサー(seek/B)、金色の生き仏(Lida/G )とメンバーが登場するたびに、振り切れたコスチュームに笑いと拍手が起こり、最後に歌舞伎者(DAISHI)が表れ、オープニングは4つ打ち和風ダンスナンバー「大江戸旅ガラス」だ。そのエンターテイナーっぷりは期待を裏切らず、歌うDAISHIの横で踊るAYAとYURAサマが扇子を振って紙吹雪を散らすとオーディエンスは大受け&呆然とする人も。
Psycho le Cému 撮影=Akihiko Yokoi
MCでAYAが「あんたたち、よく見るとTVの裏の配線みたいな顔してるナリ」と客をいじった後は、キャッチーなメロディと痛快なビートの「You&Me」で場内をこれまでにないピースフルな空気で包んだかと思うと一転、seekが「今日は俺たちとオマエたちの間にあるこの壁をぶち壊していくぞ!」と叫び、彼らがただのパフォーマンス集団ではないことを見せつけるメタル魂炸裂のバンドサウンドを叩きつけ、煽りまくる。この振り幅のデカさ、キテレツでありながら音楽的に王道でもあるところがPsycho le Cémuの面白さなのである。ラストはメジャーデビュー曲「愛の唄」でメンバーがセンターに集結する見せ場も。いい意味でイベントをかきまわし、「また遊ぼうぜ!」とPsycho le Cému初体験の人も惹きつけて去っていった。
Psycho le Cému 撮影=Akihiko Yokoi
lynch. 撮影=Akihiko Yokoi
その空気を再びガラリと変えたのはトリのlynch.だ。オープニングは「TIAMAT」。葉月(Vo)の激烈なスクリームと激しく突き刺さってくる演奏でフロアはたちまちカオスとなった。正確無比で胸がすくようなエネルギッシュな晁直のドラミング、スラップで挑発する明徳のベース、研ぎ澄まされた激しさと繊細さを兼ね備えた玲央と悠介のギターワーク。最新アルバム『AVANTGALDE』からのリード曲「F.A.K.E.」では毒の華が咲き誇るような狂おしいボーカルとエッジのある演奏でCOASTを一つにした。
MCでは葉月が「最初から見てたんですけど、こうも違うバンドがいるのかと。特にノクブラとA9、全員、いい男じゃないですか。どうしようかと思ってたんですけど、Psycho le Cémuが出てきて安心しました。今日の中でいちばんかわいい、歌って踊れるlynch.です」とジョークを飛ばして沸かせたかと思うと、「GREED」で再び狂乱の渦にたたきこみ、フロアはサークルモッシュ、ウォールオブデス続出。
lynch. 撮影=Akihiko Yokoi
「セックスしようぜ!」と挑発するlynch.のライブに欠かせないナンバー「Pulse_」でクライマックスへと誘い、ラストは葉月の強烈なシャウトが突き抜けていった切なくも獰猛な「EVOKE」。アンコールでは熱狂的な声に応えてlynch.が再びステージに登場。
「lynch.のファンじゃない人も最後まで残ってくれてありがとうございます! そのピカピカしたヤツ、lynch.にも振ってくれませんか?」とA9、サイコ・ル・シェイムのファンに呼びかけ、激烈なメタルコアナンバー「GALLOWS」を投下。刺激的なスパイスたっぷりのこのイベントを総括し、みごとに締めくくった。
lynch. 撮影=Akihiko Yokoi
取材・文=山本弘子
撮影=Akihiko Yokoi(A9 / Psycho le Cemu / lynch.)、Kazuhisa Takayama(NOCTURNAL BLOODLUST)
2016.10月10日(月・祝) 新木場STUDIO COAST
◆NOCTURNAL BLOODLUST
01. OPENING SE/ZeTeS
02. Malice Against
03. Punch me if you can
04. PROVIDENCE
05. I-V-III
06. VENOM
07. V.I.P
◆A9
01. Daybreak
02. 華
03. 闇二散ル桜
04. the Arc
05. 開戦前夜
◆Psycho le Cému
オープニング登場芝居
01. 大江戸旅ガラス
02. You&Me
03. Liberty,babies
04. Murderer Death Kill
05. 愛の唄
◆lynch.
01. TIAMAT
02. I'm sick, b'cuz luv u.
03. F.A.K.E.
04. GREED
05. MIRRORS
06. pulse_
07. EVOKE
<ENCORE>
08. GALLOWS