いよいよ「びわ湖リング」が始動、来年3月に《ラインの黄金》上演
左から、山中隆(びわ湖ホール館長)、沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)、砂川涼子(フライア)、ヴィタリ・ユシュマノフ(ドンナー)、清水徹太郎(ローゲ) 写真提供:びわ湖ホール
びわ湖ホールが2017年より、ワーグナーの大作《ニーベルングの指環》を4年かけて連続上演する。いよいよ「びわ湖リング」のスタートだ。10月21日、3月に上演される序夜《ラインの黄金》の制作発表が行われ、山中隆(びわ湖ホール館長)、沼尻竜典(同芸術監督)、砂川涼子(フライア)、ヴィタリ・ユシュマノフ(ドンナー)、清水徹太郎(ローゲ)が出席し、抱負を述べた。
取材・文:横原千史
まず山中は「400万年の古代湖である琵琶湖に相応しい壮大な指環の物語にしたい。これまでのような共同制作ではなく単独で、独自の『びわ湖リング』を創りたい」。
続いて沼尻は「《指環》は上演すること自体が劇場のステイタスであり、2007年の監督就任以来の宿願だった」と語り、ミヒャエル・ハンペの演出について「彼は、最近よく見られる演出家の自己満足のような“読み替え”による、音楽無視のひどい演出に批判的。歌手に無理をさせることも、非音楽的になることも一切ない。今年81歳のハンペにとっておそらく最後の《リング》となり、これまでびわ湖ホールで演出した12年の《タンホイザー》や今年の《さまよえるオランダ人》のように、映像などの新しい技術を駆使した、美しい舞台となるだろう」と期待を込めた。そして、ここのところ新国立劇場、東京・春・音楽祭、名古屋などで《指環》の上演が重なっているが「競合と考えるより、いい意味での相乗効果を生み出したい。単独制作についても、びわ湖ホール独自の4面舞台の優れた機構をフルに使えることや業界の枠を超えた自在なキャスト作りなどの利点は大きく、世界と対等に戦えるグローバル・スタンダードを日本で作りたい」と意気込む。
歌手陣も、それぞれが初めて取り組む重要な役柄であり、魅力を伝えたいと意欲的で、とりわけ清水は、ローゲと出身地の神戸をかけて(半神=阪神)で笑わせ、《オランダ人》でハンペが『ワーグナーが夢見て叶わなかったものが、現代ではできる可能性があり、それをやりたい』と言っていたのが印象的だった」と語る。
「びわ湖リング」がどんな「美しい舞台」になるのか、どんなに豪華な「グローバル・スタンダード」の響きを聴かせてくれるのか、いまから大いに楽しみである。
ワーグナー:《ラインの黄金》(全1幕・日本語字幕付)
2017.3/4(土) 3/5(日) 各14:00 びわ湖ホール大ホール(16:30終演予定)
指揮:沼尻竜典
演出:ミヒャエル・ハンペ
装置・衣装:ヘニング・フォン・ギールケ
管弦楽:京都市交響楽団
ヴォータン:ロッド・ギルフリー/青山貴
ドンナ-:ヴィタリ・ユシュマノフ/黒田博
フロー:村上敏明/福井敬
ローゲ:西村悟/清水徹太郎
ファゾルト:デニス・ビシュニャ/片桐直樹
ファフナー:斉木健嗣/ジョン・ハオ
アルべリヒ:桝貴志/志村文彦
ミーメ:与儀巧/高橋淳
フリッカ:小山由美/谷口睦美
フライア:砂川涼子/森谷真理
エルダ:竹本節子/池田香織
ヴォークリンデ:小川里美/並河寿美
ヴェルグンデ:小野和歌子/ 森季子
フロスヒルデ:梅津貴子/中島郁子
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