初演から100年!日本初演を果たした東京二期会が《ナクソス島のアリアドネ》を上演
左より)中山欽吾(理事長)、シモーネ・ヤング、カロリーネ・グルーバー、清野友香莉、近藤圭
ウィーン初演から100年となる今年、東京二期会がR.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》(以下《アリアドネ》)を上演する。
東京二期会は同作品を1971年7月に東京文化会館で日本初演。以降も2002年、08年に上演しているが、今回は9月の《トリスタンとイゾルデ》に続くライプツィヒ歌劇場との提携公演第2弾として、 カロリーネ・グルーバーの演出、シモーネ・ヤングの指揮で上演する。
10月27日、東京都内で両名らが出席し、記者会見を行った。
(Photo:J.otsuka/TokyoMDE)
指揮者のシモーネ・ヤングと演出家のカロリーネ・グルーバーは、これまでハンブルク州立歌劇場《リア》や《死の都》、ウィーン国立歌劇場《妖精ヴィッリ》等でタッグを組み、息の合った演出、指揮で人気を博している。日本での共演は今回が初めて。東京二期会のオペラ公演で指揮者と演出家がともに女性となるのは、1952年の創立以来初となる。
会見冒頭、中山欽吾・東京二期会理事長はこのところのヨーロッパと日本のオペラにおける提携について 「十分ではない資金を知恵で克服し、ヨーロッパの歌劇場と直接交渉、先方の新制作のコストをシェアし、日本でも上演する国際共同制作にふみきりました」と説明、「彼らは膨大な作品を劇場にストックしているので、それを国際共同制作という形で日本にもってきて、継続的に日本人の歌手で上演しています。二期会ではこれまで多くの国際共同制作をし、日本公演の際、指揮者と演出家を招聘、公演の質をヨーロッパと対等になるように努力してきました。今回は、日本のオペラカンパニーとして初めて女性指揮者の最高峰であるシモーネ・ヤングさんをお呼びし、公演できることを光栄に思います」と期待を述べた。
中山欽吾(東京二期会 理事長)
今回の来日が13年ぶり、日本でオペラを指揮するのはベルリン・コーミッシェ・オーパー日本公演以来、22年ぶりとなるシモーネ・ヤングは「1989年にノルウェーで《アリアドネ》を初めて指揮してから約30年が経ちました。この作品はとても小ぶりなオペラですが、オケと歌手陣が近い距離で、お互い響き合って創り上げられる素晴らしい作品。創り上がったものが小さな宝石のような輝きをもつものだと思っています。大事な友人であるカロリーネと日本でオペラを創り上げることができて嬉しい。2日間の練習ですでに《アリアドネ》全曲を練習し、若い方と一緒に楽譜の中に深く入り込んでいく作業は楽しい」と語った。
シモーネ・ヤング
シモーネ・ヤング(左)、カロリーネ・グルーバー
シモーネさんとの仕事は創造性にあふれていると語る演出家のカロリーネ・グルーバーは、本プロダクションのコンセプトについて「強調したかったのは、芸術家がかかえる過酷な問題です。ウィーンの大富豪たちは夜9時の花火とご馳走の方が大事で、芸術家はそれよりも価値が低く、粗雑に扱われている訳です。それを殺風景な地下のガレージという設定で表現しています」と説明した。(コンセプトの詳細は後日稽古場レポートとともに掲載予定)
清野友香莉(左)、近藤圭
会見には11月24日、27日に出演の清音友香莉(ツェルビネッタ役)と近藤圭(ハルレキン役)も出席。両名はこれまでにカロリーネ演出作品に出演経験がある(清音は新国立劇場研修生時代に《魔笛》〜短縮版〜(2013年7月)で夜の女王を、近藤は二期会《ドン・ジョヴァンニ》(2011年11月)でマゼット役)。
清音は「二期会デビューでツェルビネッタ役を歌うことが叶うとは思っていなかったので、飛び上がるほど嬉しかったです。素晴らしい指揮者とカロリーネさんと一緒に仕事ができ幸せです」と喜びを露わにした。
昨年までハンブルグに留学していた近藤は、「シモーネさんがハンブルク州立歌劇場音楽総監督をされていて、オペラやコンサートにいきました」と、大指揮者と共演する喜びを語るとともに、グルーバーの演出については「自然とその時の状況や心理に入っていけるシチュエーションを創っていかれる。私は常に演じることに正直でいたいと思っているのですが、立ち稽古で『常に正直にいないといけない』というカロリーネさんの言葉を聞いて、ほっとしています。このゴールデンコンビで素晴らしい作品ができあがるのではないかと確信しています」との抱負を述べた。
『ナクソス島のアリアドネ』
(プロローグと1幕のオペラ・日本語字幕付き原語<ドイツ語>上演)
■日程:2016年11月23日(水・祝)~11月27日(日)
■作曲:リヒャルト・シュトラウス
■台本:フーゴ・フォン・ホフマンスタール
■指揮:シモーネ・ヤング
■演出:カロリーネ・グルーバー
■装置:ロイ・スパーン
■衣裳:ミヒャエラ・バールト
■照明:喜多村 貴
■演出助手:太田麻衣子
■舞台監督:幸泉浩司
■公演監督:加賀清孝
■管弦楽:東京交響楽団
■出演:
<11/23・26 出演>
執事長:多田羅迪夫(全日出演)/音楽教師:小森輝彦/作曲家:白土` 理香/プリマドンナ/アリアドネ:林 正子/テノール歌手/バッカス:片寄純也/士官:渡邉公威/舞踏教師:升島唯博/かつら師:野村光洋/召使い:佐藤望/ツェルビネッタ:高橋維/ハルレキン:加耒徹/スカラムッチョ:安冨泰一郎/トゥルファルデン:倉本晋児/ブリゲッラ:伊藤達人/ナヤーデ:冨平安希子/ドゥリヤーデ:小泉詠子/エコー:上田純子
<11/24・27 出演>
執事長:多田羅迪夫(全日出演)/音楽教師:山下浩司/作曲家:杉山由紀/プリマドンナ/アリアドネ:田崎尚美/テノール歌手/バッカス:菅野敦/士官:伊藤潤/舞踏教師:大川信之/かつら師:原田圭/召使い:湯澤直幹/ツェルビネッタ:清野友香莉/ハルレキン:近藤圭/スカラムッチョ:吉田連/トゥルファルデン:松井永太郎/ブリゲッラ:加藤太朗/ナヤーデ:廣森彩/ドゥリヤーデ:田村由貴絵/エコー:北村さおり
■公式サイト:http://www.nikikai.net/