封鎖された洞窟壁画の傑作が目の前に! 『世界遺産 ラスコー展』まるで本物かのような世界遺産体験をレポート

レポート
アート
2016.11.10
「黒い牝ウシ」

「黒い牝ウシ」

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今からおよそ2万年前に描かれた、世界遺産ラスコーの洞窟壁画。現在は保全のため、その洞窟内には研究者ですら入ることはできない。そんな人類最初と言われる芸術を精密に再現した実物大の壁画が、東京上野の国立科学博物館に出現した。11月1日から公開となった『特別展 世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~』のプレス内覧会より、その迫力ある内容をご紹介しよう。

《クロマニョン人》復元模型 © SPL Lascaux international exhibition

《クロマニョン人》復元模型 © SPL Lascaux international exhibition

 

封鎖されたラスコー洞窟壁画を間近に!

フランス南西部のヴェゼール渓谷にある洞窟で、地元の少年たちによって偶然発見されたラスコーの壁画。そこには牛や鹿などの動物が600頭とも言われる数と圧倒的な大きさで描かれていた。

今では閉鎖され実物を見ることのできないその巨大な洞窟のうち、本展では「身廊」「井戸の場面」の2つの空間が3次元レーザースキャンと、当時の絵の具を使った手作業により、1ミリ以下の精度で実物大に再現されている。まるで洞窟の壁をそのまま持ってきたかのような迫力だ。場所によってはハシゴを使って描かれたとされる壁画を、こんなに間近でじっくりと観察できる機会は間違いなく他にないだろう。また、現在見えている図の下に隠された線画が、ライトアップによって幻想的に浮かび上がる特別な仕掛けも楽しめる。

「褐色のバイソン」

「褐色のバイソン」

ブラックライトで浮かび上がる線刻

ブラックライトで浮かび上がる線刻

 

世界初・日本初公開の品から、驚きの制作背景を探る

約2万年前のクロマニョン人が描いたとされるこの壁画群。その躍動感あふれる動物たちの描写力と迫力には、実に驚かされる。色の濃淡による遠近法や、動きを表現した線なども見られ、その丁寧な描かれ方にはクロマニョン人の自然への畏敬の念が滲み出ているようだ。一方、洞窟の奥深くに描かれている謎の鳥人間に関しては、いまだ真意が解明されていない。そのミステリアスな姿からは、様々な想像が膨らますことができよう。

「井戸の場面」

「井戸の場面」

真っ暗な洞窟内で、彼らはどんなふうに制作を続けたのか。その秘密が当時の道具や絵の具から少しづつ見えてくる。絶やさず明かりを灯すため作られた日本初公開のランプ、精製した黄土を使った何色もの顔料(絵の具)、線刻画を刻むために使用された石器は世界初公開となる。壁画制作のために磨かれた技術の高さが伝わる、非常に貴重な展示だ。

《ランプ》ラスコー洞窟遺跡(フランス)出土、約2万年前、赤色砂岩製、22.4×10.6×3.2cm フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵[フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託] © Claire Artemyz, collection A.Glory, conservée à l’Institut de Paléontologie Humaine, Paris

《ランプ》ラスコー洞窟遺跡(フランス)出土、約2万年前、赤色砂岩製、22.4×10.6×3.2cm フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵[フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託] © Claire Artemyz, collection A.Glory, conservée à l’Institut de Paléontologie Humaine, Paris

《顔料》ラスコー洞窟遺跡(フランス)出土、約2万年前 古人類学研究所(パリ)所蔵

《顔料》ラスコー洞窟遺跡(フランス)出土、約2万年前 古人類学研究所(パリ)所蔵

 

芸術のはじまりはクロマニョン人から?

クロマニョン人が現れる以前の人類には、芸術的痕跡は見当たらないという。アフリカからやってきて、やがて世界各地に大拡散したという彼らは、およそ現代のわれわれが思う「原始人」のイメージとは異なる生活を送っていたようだ。

本展では、当時の衣服やアクセサリー、ボディペインティングを施した実寸大の復元模型、精緻な造りの狩りの道具などが展示される。ホモ・サピエンス(新人)である彼らが、現代人と変わらぬ顔付きで、知恵と工夫と技術を凝らして生きていたことを感じられるだろう。

《クロマニョン人》復元模型 © SPL Lascaux international exhibition

《クロマニョン人》復元模型 © SPL Lascaux international exhibition

《体をなめるバイソン》ラ・マドレーヌ岩陰遺跡(フランス)出土、マドレーヌ文化(約2万年から1万4500年前)、トナカイ角製、10.4×6.9×2.3cm フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵[フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託]

《体をなめるバイソン》ラ・マドレーヌ岩陰遺跡(フランス)出土、マドレーヌ文化(約2万年から1万4500年前)、トナカイ角製、10.4×6.9×2.3cm フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵[フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託]

非公開の世界遺産の魅力を世界に広めようと、フランス政府公認のもと制作され、世界を巡回する展覧会『LASCAUX INTERNATIONAL EXHIBITION』に、日本独自のコンテンツをプラスした本展。研究に基づく丁寧で面白い仕掛けが盛りだくさんとなっている。会場で出会う新たな発見の連続に、子供から大人まで夢中になれること間違いなしだ。

実物大に再現された「身廊」「井戸の場面」

実物大に再現された「身廊」「井戸の場面」

 
イベント情報
特別展『世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜』

会  場:国立科学博物館 〒110-8718 東京都台東区上野公園7‒20
会  期:2016(平成28)年11月1日(火)~2017(平成29)年2月19日(日)
開館時間:午前9時~午後5時(金曜日は午後8時まで)
※入館は各閉館時刻の30分前まで。
※土曜日及び11月2日(水)、11月3日(木)の開館時間は、以下のとおりです。
特別展「ラスコー展」のみ午前9時~午後5時まで(入場は午後4時30分まで)
その他常設展示等は午前9時~午後8時まで(入館は午後7時30分まで)
休 館 日:毎週月曜日、12月28日(水)~1月1日(日)、1月10日(火)
※ただし、12月26日(月)、1月2日(月)、1月9日(月)、2月13日(月)は開館。
公式サイト:http://lascaux2016.jp/index.html

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