トランプ大統領誕生から考える、アカデミー賞と人種差別


11月9日に、不動産王のドナルド・トランプ大統領が誕生したことは、驚きをもって伝えられた。また「11.9は、同時多発テロのあった9.11に次ぐアメリカの悲劇」と言われ、全米各地でデモが繰り広げられている。

セレブにはヒラリー・クリントン率いる民主党支持者が多いが、人種差別や性差別撲滅の活動家としても知られているマドンナやシェールらも、ニューヨークで開催されているデモに参加。「私たちはトランプを米大統領として認めない」と訴えているが、オスカーの例を見れば、今回の結果は驚くべきことでもなさそうだ。

アカデミー賞には長い間、人種差別や性差別の歴史があった。今年は特に、黒人俳優たちからのボイコット運動があり、「政治の世界よりも保守的」「白すぎるオスカー」とバッシングされた。それを受けて女性会長を迎えたアカデミー協会が、「メンバーの抜本的な見直し」を宣言し、改善が期待されている。

ヒスパニック系、アジア系、黒人など「人種のるつぼ」と言われるアメリカで、現在アカデミー会員の多くを占めているのは、白人キリスト教信者の男性と、高齢者たちだ。そしてノミネート者や受賞者もまた、白人、キリスト教信者、男性が圧倒的多数を占めている。

ひとえに白人と言っても、アメリカには多くのユダヤ教徒が存在するが、映画界の重鎮にユダヤ教徒は多いものの、ユダヤ教徒のノミネート者や受賞者は非常に少ないことも見逃せない点だ。

そこに存在するのは、アメリカ社会に残る人種差別の思想。アメリカでは、「人種、性別を問わず、すべての人が平等」というのが建前だが、残念ながら根本には「白人、キリスト教信者、男の俺様が一番」という思想も根強く残っている。

今回トランプ大統領を支持しているのは、「白人の無教養な低所得者層」と言われていたが、トランプを勝利に導いたのは、実は「裕福なキリスト教徒の高齢男性」という隠れ支持者だと言われている。

前期は、変化を期待する社会の流れから、オバマ大統領誕生を涙を飲んで受け入れざるを得なかったが、雪辱感と不満を持ち続けていた人も多かったのは紛れもない事実だ。

さらに、女性にアメリカ社会を支配されるのは由々しきこと。トランプを嫌ってヒラリーに投票する人たちもいた一方で、ヒラリー嫌いだけではなく、どうしても女性大統領誕生は避けたいと考える人たちも多く存在したことが、浮き彫りになった。

男女平等の概念は、日本とは比にならないほど強く根付いているが、まだまだ女性のリーダーが少ない男性至上主義というのが、アメリカの現実。

トランプ大統領誕生によって、アメリカ人の思想が、過去の古き良き時代である「人種差別のあった、世界で一番強いアメリカ」「白人、男性至上主義」という時代に回帰しようとしている今、来年のアカデミー賞にもどんな影響がもたらされるのか、今後の行方が注目されている。【NY在住/JUNKO】
 

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