平尾祐紀子(ハープ) ハープのもつ多彩な魅力をもっと多くの人に伝えたい
平尾祐紀子 ©ミューズエンターテインメント
金沢出身のハープ奏者・平尾祐紀子がデビューCDをリリース。注目されるのは全16曲中4曲をグランドハープで、残りの12曲をサウルハープという小さな楽器で弾いていること。サウルハープは日本の青山ハープが製造している小型ハープで、音域は3オクターブ半(gからcまで25弦)。通常のグランドハープの11度上までカバーしている。基本の調弦は変ホ長調で、半音は糸巻き近くにあるレバーで操作する。弦はナイロン弦(グランドハープはガット弦)。
「小型ハープは各ハープ・メーカーがそれぞれ作っているのですが、サウルハープはキラキラした銀色の音。星が降ってくるような音色が特徴です。25弦しかないのに、表現力が豊かで多くの可能性を持った楽器です」
実際に楽器に触れた経験のある人は少ないサウルハープ。もっとその魅力を身近に感じてほしい、という。
「この楽器はグランドハープに比べたらずっと手頃な価格ですし、こういう小さな可愛い楽器もあることを知って親しみを持っていただけるように、CDには、どこかで聴いたことのある聴きやすい曲を選びました。バランスのいい選曲ができたと思います。パッヘルベルの『カノン』や、ドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』などの名曲のほか、ワトキンスの『ファイヤー・ダンス』などハープのオリジナル曲も入れました。収録順も、グランドハープの後でサウルハープを聴いて物足りないと感じられないように試行錯誤して、しっとり自然に終わっていけるアルバムになりました」
ハープは自分を映す鏡だという。
「弓でも爪でもなく指で直接弦を弾く楽器。自分の心が全部音に出る。だから奏者の性格も出てしまうんですけれども(笑)、一番感情が伝わる楽器です」
11歳からハープを弾き始めた。愛知県立芸大と大学院で学んだあと、オランダのマーストリヒト音楽院で長澤真澄に師事。
「長澤先生は世界で一番音色が美しいハーピスト。やっぱり人柄が音に出るんです(笑)。少しでも近づきたいですが、同じ人間にはなれないので、自分らしい音色で弾いて、それを喜んでいただける演奏家になりたい」
発売記念リサイタルを東京と金沢で。トークを交えて進めるのが彼女流だ。
「お客さんとコミュニケーションをとりながら弾くほうが好きですし、私がどういう人間かわかっていただいたほうが親しみを持ってもらえると思うので」
CDのブックレットには詳細な自己紹介も載っているので(ネコ派でなくイヌ派。掃除と洗濯が好き。好物は日本酒と寿司と金沢おでん…)、まずは熟読してパーソナリティを知ってから聴きに行ってほしい、チャーミングな人だ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2016年12月号から)
平尾祐紀子 ハープリサイタル
12/5(月)14:00 19:00 近江楽堂(東京オペラシティ3F)
12/15(木)18:30 金沢市アートホール
問合せ:キャピタルヴィレッジ03-3478-9999
http://harp.yukikohirao.com/
CD
『平尾祐紀子/華音 KANON』
ソニー・ミュージックダイレクト
MECO-1035(SACDハイブリッド盤)
¥3000+税
11/23(水・祝)発売