この結末を、あなたは受け止められるか?『ミュージカル「黒執事」~NOAH’S ARK CIRCUS~』ゲネプロレポート
15年、上海、北京、深圳の3都市に進出し、ついにアジアをも席巻した『ミュージカル「黒執事」』。その待望の最新作『ミュージカル「黒執事」~NOAH’S ARK CIRCUS~』がいよいよ2016年11月18日(金)よりTOKYO DOME CITY HALLにて幕を開ける。
“悪魔で執事”の主人公・セバスチャンには、前回に続き、今、ミュージカル界で最も将来を期待される俳優のひとり・古川雄大。そしてセバスチャンの主人にしてもうひとりの主人公・シエルには、オーディションを勝ち抜き、本作が初舞台となる内川蓮生。新しく生まれ変わったこの“主従関係”で、原作屈指の人気エピソードである【ノアの方舟サーカス編】に挑む。果たしてその全貌は……。
ここでは、公演に先立ち、同日実施されたマスコミ向けの公開ゲネプロの模様をお届けする。
セバスチャン・ミカエリス役の古川雄大
『ミュージカル「黒執事」』の魅力は、その独自の世界観。19世紀後半、ヴィクトリア王朝時代のイギリスを舞台にした名門貴族ならではのゴシックで華やかな衣装と舞台美術が、劇場に足を踏み入れた観客を別世界へと誘っていく。
シエル・ファントムハイヴ役の内川蓮生
本作もそんな黒執事ワールドはもちろん健在。冒頭、黒衣をまとったコロスたちが登場すると、その上方、鳥籠のような檻の中に閉じ込められたシエルの姿が。シエルが悪魔であるセバスチャンと「契約」を結び、セバスチャンがシエルの執事となるまでのエピソードをスピーディーに説明していく。初見の観客のことを配慮した導入部をしっかり設けているところも、本作が人気を広げている秘密のひとつだろう。シリーズ初観劇という人でも、すんなりとこの世界に入っていけるので安心して劇場へ足を運んでほしい。
そして、そこから今回の主題へ。何でも英国内で次々と子どもたちが行方不明となる事件が発生しているらしい。“女王の番犬”として、英国の裏社会を暗躍するファントムハイヴ伯爵家の当主・シエルは、ヴィクトリア女王の命を受け、この失踪事件の真相を探ることに。
(左から)メイリン役の坂田しおり、フィニアン役の河原田巧也、バルドロイ役の鷲尾昇
ここで登場するのが、シエルに仕えるお茶目な使用人トリオ(鷲尾昇、河原田巧也、坂田しおり)。原作同様のハイテンションなキャラクターで、舞台を所狭しと駆け回る。そんな3人の後処理に追われるセバスチャン。普段はクールなセバスチャンのコミカルな表情が何ともキュートだ。
(左から)ソーマ・アスマン・カダール役の陳内将、アグニ役のTAKUYA
さらに、本作から新たに加わるのが、原作ファンの間でも高い人気を誇るソーマ(陳内将)&アグニ(TAKUYA)のコンビ。日頃からクールで色気のある役を振られることの多い陳内が、ここではシエルを溺愛する好奇心旺盛な王子を好演。いとしいシエルにすり寄る姿など、他作品では見られない表情が続々。
また、インドの王子らしくオリエンタルなダンスも披露。首から上だけを左右に振るアイソレーションも見事に決めているので、ぜひお見逃しなく。
そんな賑やかな幕開けから、舞台はサーカス団「ノアの方舟」のサーカス小屋へ。ここが本作前半の大きな見せ場だ。華やかなダンスはもちろん、エアリアルや綱渡りなどアクロバティックな大技で、観客の視線を釘付けにする。
(中央)ダガー役の三津谷亮
中でも拍手喝采なのが、ダガー(三津谷亮)の一輪車だ。実は三津谷は2000年・2004年と一輪車の世界大会で1位になった経歴の持ち主。元ワールドチャンピオンの腕前を本作で遺憾なく発揮。一輪車にまたがり華麗に疾走する三津谷に思わず目を奪われることだろう。
このサーカス団が子どもたちの失踪事件に関与しているのではないかと疑い、テストを受けサーカス団に入団するセバスチャンとシエル。ふたりの前に現れるのが、ジョーカー(三浦涼介)だ。
ジョーカー役の三浦涼介
三浦は、大阪弁と京都弁が入り混じったような「エセ関西弁」を巧みに操り、不敵なジョーカーのキャラクターを忠実に表現。ミステリアスな三浦のヴィジュアルも相まって、得体の知れない不気味さが匂い立っている。
スネーク役の玉城裕規
他にも、蛇つかいのスネーク(玉城裕規)や、紳士的で物腰の柔らかい先生(姜暢雄)など個性的なキャラクターが目白押し。様々な登場人物が入り乱れる中、セバスチャンとシエルは失踪事件の謎を追いかけていく。
先生役の姜暢雄
その先に待っているのは、衝撃の真実、燃えるような憎悪、そして決して救われることのない深い悲しみだ。その残酷なクライマックスに、原作未見の観客はしばし打ちのめされるかもしれない。しかしこの絶望感こそが、本作が多くの人を魅了してやまない最大の理由だ。ぜひこの悲しくも美しいダークファンタジーの世界を存分に味わってほしい。
もちろんミュージカルならではの歌唱シーンも圧巻だ。特に古川雄大と三浦涼介のふたりが白眉。神々しさすら感じる気高い古川の歌声と、感情をそのままぶつけるような三浦のヴォーカルに、多くの観客が心揺さぶられることだろう。
東京公演は11月27日まで。そこから福岡、兵庫とまわり、大千秋楽の愛知公演まで約1ヶ月のロングランとなるが、各ステージ、プラチナになることは必至。「観に行くのか」と問われれば、誰もがこう答えるに違いない。あのセバスチャンのように恭しく――Yes,my lordと。
取材・文=横川良明
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日時:2016年11月18日~11月27日
会場:TOKYO DOME CITY HALL
【福岡公演】
日時:2016年12月3日~12月4日
会場:キャナルシティ劇場
【兵庫公演】
日時:2016年12月9日~12月11日
会場:あましんアルカイックホール
【愛知公演】
日時:2016年12月17日~18日
会場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
セバスチャン・ミカエリス:古川雄大
シエル・ファントムハイヴ:内川蓮生
ビースト:田野アサミ
ダガー:三津谷 亮
ウィリアム・T・スピアーズ:輝馬
アグニ:TAKUYA(CROSS GENE)
フィニアン:河原田巧也
メイリン:坂田しおり
葬儀屋:和泉宗兵
フレッド・アバーライン:髙木 俊
シャープ・ハンクス:寺山武志
ドール:設楽銀河
ピーター:倉知あゆか(G-Rockets)
ウェンディ:知念紗耶(G-Rockets)
ジャンボ:後藤剛範
ケルヴィン男爵:小手伸也
先生:姜 暢雄
※ドール役で出演を予定しておりました松井月杜は、変声期により本来のパフォー マンスを発揮できないという事情から、今回は大事をとりキャストを交代することにいたしました。新たなドール役は設楽銀河が務めさせていただきます。
■脚本:竜崎だいち/毛利亘宏
■演出:毛利亘宏
ステージに近いアリーナ席やバルコニー席を含む【Sサイド席】あり
申込時に座席番号を確認して購入いただけます
開催日時:2016年12月18日(日) 17:00開演
料金:3,600円(税込/全席指定)
一般発売:12月7日(水)18:00~
※一般発売は先着順での受付となりますので、予定枚数に達し次第受付終了となります。