『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』がまもなく開幕 "ドラマチックな名前"を持つ名碗3点をピックアップ

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初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 大黒 重要文化財 桃山時代(十六世紀) 個人蔵

初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 大黒 重要文化財 桃山時代(十六世紀) 個人蔵

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『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』が、2016年12月から2017年5月にかけて、京都国立近代美術館と東京国立近代美術館にて開催される。

本展は、450年前に長次郎と呼ばれる人物によって創造され、現代まで受け継がれている樂茶碗を総覧する展覧会だ。千利休が好んだといわれる、通称『利休七種』の筆頭《初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 大黒》が出品されるほか、数々の名品が登場する。

今回は本展に登場する茶碗のなかから、"ドラマチックな名前の由来"をもつ3つの作品をピックアップして紹介する。

 

■初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 禿

初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 禿 桃山時代(十六世紀) 表千家不審菴蔵

初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 禿 桃山時代(十六世紀) 表千家不審菴蔵

本作は、利休が愛し、常にそばに置いていたといわれる茶碗。読み方は「かぶろ」。利休を祖とする、表千家に伝わる名碗として知られている。なお現在は、利休の年忌の際にしか使われない、"秘められた茶碗"である。

この「かぶろ」というのは、最上級の遊女である太夫のそばに付き添って、身の回りの世話をする少女を指す言葉。利休のそばにいつも置かれたために、この名がつけられたという。そんな背景を知ると、その控えめな佇まいは、あどけない少女がちょこんと腰かけているかのようにもみることができないだろうか。利休の愛情を目いっぱいうけた名碗、ぜひその魅力を感じ取っていただきたい。

春屋宗園賛 長谷川等伯筆 千利休像 重要文化財 文禄4年(1595) 表千家不審菴蔵 【展示期間:京都会場のみ】

春屋宗園賛 長谷川等伯筆 千利休像 重要文化財 文禄4年(1595) 表千家不審菴蔵 【展示期間:京都会場のみ】

 

■初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 一文字

初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 一文字 桃山時代(十六世紀) 個人蔵 【東京会場は会期中展示替えがあります】

初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 一文字 桃山時代(十六世紀) 個人蔵 【東京会場は会期中展示替えがあります】

利休本人が、碗の内面部分に「一」の字と自分の花押を書き込んだことから、「一文字」の名がついた本作。こちらは、長次郎赤樂茶碗の中でもっとも完成度の高い茶碗と評されている。「一」と利休が書き込んだ理由は定かではないが、「一」の字の意味はそのあたりにあるのかもしれない。数ある名碗のなかでも、まさに頂点の作品である《一文字》。利休が認めた名器を、ぜひ見逃さないでほしい。

 

■初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 俊寛

利休が九州の弟子に茶碗をいくつか見せて選ばせたところ、この黒茶碗を選んだという。その際利休は「この黒茶碗は、俊寛僧都よな」とつぶやいたのだとか。

この「俊寛僧都」とは、平安時代に平氏打倒の陰謀に加わったために、同志の藤原成経、平康頼とともに九州の鬼界ヶ島へ流された僧のこと。『平家物語』では、彼らへの赦しを言い渡す使いが鬼界ヶ島へやってくる場面が描かれる。しかしその赦免状には、成経・康頼の名しかなく、俊寛は一人島に取り残される運命に。俊寛はその後、絶望にさいなまれたまま鬼界ヶ島にて最期を迎える。この俊寛の悲しみを体現しているかのような漆黒の茶碗《俊寛》。一人の僧侶の悲劇のストーリーを想いながら、観賞してほしい一品である。

 

今回紹介したように、茶碗の名前とその由来にはあらゆるドラマが隠されている。本展にはこのほかにも、多数の名器が出品される。ぜひその茶碗が辿ってきた歴史、命名の背景などを反芻しながら鑑賞してほしい。"単なるお茶碗"ではすまされない深い味わいが感じられることだろう。

『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』は、2016年12月17日(土)より京都で、2017年3月14日(火)より東京で開幕。

初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 無一物 重要文化財 桃山時代(十六世紀) 頴川美術館蔵 【展示期間:京都会場2016/12/17~2017/1/15,東京会場2017/3/14~4/2】

初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 無一物 重要文化財 桃山時代(十六世紀) 頴川美術館蔵 【展示期間:京都会場2016/12/17~2017/1/15,東京会場2017/3/14~4/2】

初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 太郎坊 重要文化財 桃山時代(十六世紀) 裏千家今日庵蔵

初代 長次郎 赤樂茶碗 銘 太郎坊 重要文化財 桃山時代(十六世紀) 裏千家今日庵蔵

初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 万代屋黒 桃山時代(十六世紀) 樂美術館蔵 【東京会場は会期中展示替えがあります】

初代 長次郎 黒樂茶碗 銘 万代屋黒 桃山時代(十六世紀) 樂美術館蔵 【東京会場は会期中展示替えがあります】

 

イベント情報
茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術

<京都会場>
会期:2016年12月17日(土)-2017年2月12日(日)
会場:京都国立近代美術館
The National Museum of Modern Art, Kyoto
〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町
TEL.075-761-4111(代表)
休館日:月曜日及び12月28日(水)~1月2日(月・振替休日)、1月10日(火)
[ただし、1月9日(月・祝)は開館]
開館時間:午前9時30分-午後5時
入館は午後4時30分まで
入館料:一般1,400円(1,200円) 大学生1,000円(800円) 高校生500円(300円)
※中学生以下無料
※心身に障がいがある方とその付添者1名は無料(要証明)
※( )内は、前売りおよび20人以上の団体料金。
※本展の観覧券でコレクション展もご覧いただけます。
※前売券の発売期間は10月15日(土)-12月16日(金)まで。

<東京会場>
会期:2017年3月14日(火)-5月21日(日)
会場:東京国立近代美術館
The National Museum of Modern Art, Tokyo
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル 8:00-22:00)
休館日:月曜日・3月21日(火)
[ただし、3月20日(月・祝)、3月27日(月)、4月3日(月)、5月1日(月)は開館]
開館時間:午前10時-午後5時(金曜日は午後8時まで)
入館は閉館の30分前まで
入館料:一般1,400円(1,200円) 大学生1,000円(800円) 高校生500円(300円)
※中学生以下無料
※( )内は、前売りおよび20人以上の団体料金。
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展MOMATコレクションもご覧いただけます。

 

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