イラストレーター・天野喜孝が《流星刀》を擬人化! 森美術館『宇宙と芸術展』で制作エピソードを語る

レポート
アート
2016.12.1
天野喜孝

天野喜孝

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六本木・森美術館にて、2017年1月9日(月・祝)まで開催中の『宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ』。約200点の出展物のなかでも、特に人気が高いのが、隕鉄(鉄隕石)から作られた《流星刀》だ。この希少な日本刀を擬人化した描き下ろしビジュアルを、『ファイナルファンタジー』のキャラクターデザインを手がけたことでも有名な、イラストレーター・天野喜孝が発表した。11月23日(水・祝)より、同展覧会スペースにて、新たに公開されている。

岡吉国宗《流星刀》1898年 隕鉄 刃長68.6cm 反り1.5cm(東京農業大学図書館所蔵)

岡吉国宗《流星刀》1898年 隕鉄 刃長68.6cm 反り1.5cm(東京農業大学図書館所蔵)

流星刀とは、隕石の一種である隕鉄から作られた日本刀の総称だ。今回展示されているのは、幕末の政治家・榎本武揚の依頼によって、刀工の岡吉国宗が手がけた作品となっている。こうしたエピソードから、天野は「遠い宇宙から飛来し、その姿を美しい刃に変えた流星刀。未知なる輝きは封印を解かれ、その秘めた力が今、現れる。この刀は何と戦い、何を斬るのだろうか」というコンセプトを打ち出し、ビジュアル制作に取り組んだ。

ビジュアルの公開初日に行われた内覧会では、天野を囲んでのインタビューも実施。天野は、登壇早々「作品は想像で描いたので、本物の《流星刀》は、今日はじめて見ました」とコメントして集まった記者たちを笑わせ、今回の作品制作の意図について語りはじめた。

天野喜孝《流星刀》2016年 アクリル、紙 850×600mm

天野喜孝《流星刀》2016年 アクリル、紙 850×600mm

刀は人に使われるものですから、「じゃあそれを誰が使うのか?」というところを今回は考えました。刀を使う人間は亡くなりますが、刀という物は残り続けます。100年後、200年後、1000年後には、いったい誰がこの刀を使うんだろうか。そこで、現代ではなく近未来に生きるキャラクターをイメージしました。彼は、これからこの刀を持って、戦って誰かを斬るわけです。この刀を使ってこれから挑んでいく、そんな直前の瞬間を描きました。

――作品の色使いが印象的ですが、どんなイメージでこの色を選んだのでしょうか?

ブルーが基調になってはいますが、色付けはあんまり考えずにやったんです(笑)。本当は、背景を真っ黒にしてもいいのかなって思っていて。でも、あえて何も塗らず白を残すことで、空間の中にポンと浮かんだキャラクターが、もやの中をこちらに歩いてくるようなイメージにしました。鎧を着た上に羽織りのようなものを着ているので、西洋のような雰囲気もありますが、基本的には和のイメージですね。鎧も顔になっていて、目や角がついています。

――隕石というイメージは、どのような部分に一番現れているのでしょうか?

隕石というのは、地球以外のところからきていますよね。なので、今回お話をいただいて最初に抱いたのは、未来的なイメージだったんです。ただ、描くキャラクターは侍だと思ったので、侍と未来の融合を意識しました。あとは、刀には、何か特別なものがあると思うんですよ。西洋のアーサー王などもそうですが、剣は使う人間を選ぶようなイメージがありまして。隕石から作られた刀となれば、その使い手も特別な人間なんじゃないかと思って、そこから着想を得て描きました。

――この刀を実際に使った際の切れ味などは、どのようにイメージされましたか?

巨大なガンダムのようなロボットが一発で斬れてしまう、そんなイメージです。物理的なものだけでなく、すべてを断ち切ってしまう。科学的な技術などではなくて、何か精神的なものが刀に宿っていて、"闇を斬る"といった感じで気持ちですべてを斬る。僕は勝手に、日本刀はそういうものだと思っているんですよね。西洋の刀は叩くものですが、日本刀は斬るものですから。すべてのものを真っ二つに断ち切ってしまうという、潔さを刀に描いています。

――刀剣女子などにも見られるように、最近では刀剣が大きなブームとなっていますが、そうした流行についてはどのようにお考えでしょうか?

最近のブームでは、刀が美青年や美少年で、無骨というよりもアイドル的に描かれていますよね。ブームというのは変わるものなので、僕はそういうことはあまり考えずに描きました。美しい男を描くのは楽しいですよ。でも、みんながみんな美青年だと面白くないですし、いろんなバランスがありますから。ただ、美しいものがテーマになるのは当然かとは思うので、そういうものが一般の方が刀に興味をもつきっかけになるのだろうと思っています。

 

『宇宙と芸術展』では、この《流星刀》のほかにも、古今東西から集められたさまざまな作品を通して、未来に向かっての新たな宇宙観、世界観を提示している。会期は、2017年1月9日(月・祝)まで。

 

イベント情報
宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ

会期:2016年7月30日土)~2017 年1月9日(月・祝)
会場:森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
開館時間:10:00~22:00|火10:00~17:00 
*いずれも入館時間は閉館時間の30分前まで *会期中無休
入館料:一般1,600円、学生( 高校・大学生)1,100円、子供(4歳~中学生)600円
*表示料金に消費税込 *展望台 東京シティビュー、屋上スカイデッキへは別途料金がかかります。
展覧会公式サイト:http://www.mori.art.museum/contents/universe_art/index.html

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