今回は「どうした橋本!?」と言われるかもしれません~『レ・ミゼラブル』新キャストインタビュー 橋本じゅん(テナルディエ役)編~

インタビュー
2016.12.29
橋本じゅん

橋本じゅん


ミュージカル界に燦然と輝く金字塔、『レ・ミゼラブル』が2017年、日本初演30周年を記念して全国各地で上演される。11月に行われた新キャストお披露目会見での主な質疑応答と、会見後に敢行した単独取材の内容とをあわせてお届けしているSPICEインタビュー、その第2弾は橋本じゅん。劇団☆新感線の看板役者の一人として数々の公演に出演する一方、安定した歌唱力と独自のコメディセンスを生かしてミュージカルの世界でも活躍する橋本がテナルディエとはいかにもハマリ役だが、果たして本人の思いは──。

【会見Q&A】テナルディエが大嫌いだった!?

――オーディションを受けた理由を教えてください。

小学生の頃、給食の時間に先生が「ああ無情」の読み聞かせをしてくださっていて、毎日が泣き笑いで次の日が楽しみだったのですが、テナルディエのことは大嫌いでした(笑)。でも舞台で斎藤晴彦さんがすごく楽しそうに、生き生きと演じられている姿を観て、好きになり始めた自分がおりまして。また、この作品は海外でも日本でも拝見しているのですが、いつ観ても「自分がやるとしたらあそこやな」という欲はありました(笑)。

あの時代、ああいう生き方しかできなかったのは、テナルディエだけではなかったと思います。そういう部分で、「明日への活力」をお客様と分かち合えるようなものを作りたいと思ったことが、オーディションに受かりたいと思ったいちばん大きなモチベーションです。嫌いだったテナルディエですが、「大好き」で幕を上げられるように、そして皆さんに憎めない存在だと思っていただけるように頑張りたいと思います。

――『レ・ミゼラブル』のなかで、特にお気に入りのナンバーは?

僕は《民衆の歌》ですね。元気が出ますし、勇気がもらえます。でもこれからは、テナルディエの歌を好きになりたいと思います(笑)。

――オーディションに受かった時のお気持ちは?

「嘘やーん」って(笑)。連絡をもらったのは、受けてからだいぶ時間が経ってほとぼりも冷めて、普段の生活を送り始めていた時。自分では「ダメだったな、縁がなかったな」と、サバサバした気持ちで思っていたので、歩いていたら頭に石が当たったみたいな感じでした(笑)。でも人生で、“合格通知”というものをもらったことがそんなになかったので(笑)、とっても嬉しかったです。

橋本じゅん

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【インタビュー】役者ではなく物語を観る作品

――海外でも日本でも作品をご覧になっているとのことでしたが、第一印象は覚えていらっしゃいますか?

最初に観たのはロンドンです。イギリスのボーンマスで働いていたことがありまして、連休があるとロンドンに出て美術館や劇場で過ごしていたんですが、その時に観たうちの一つが『レ・ミゼラブル』でした。フランス革命を題材にした舞台を、隣の国のイギリスで観たことで、現在にもつながっている歴史というものについて考えさせられたのを覚えていますね。国を動かす人がいて、彼らも人間だから欲が出てくるのは仕方のないことだけども、それによって市民に負荷がかかって血が流れる。血で血を洗うようなことはイギリスにも、当然日本にもあります。歴史というのはその繰り返しで、悲しいことだなあ、という印象が強かったですね。

――音楽の力やミュージカルとしての表現以上に、物語に目が向かれたのですね。

小学生の頃に読み聞かせをしてもらった時に、「争いはダメだ」と感じたことが、深く強烈に残っていたせいもあるかもしれません。その後に日本で観た時も、どんなにスターさんが出ていても、僕はやはり物語やテーマといったほうに惹かれました。『レ・ミゼラブル』というのは、スターを観るのではなく、役者を通して透けて見えるものを観ることが第一義の作品だと、僕は思うんですよね。そういう作品に出る以上、僕も今回は、台本に書かれていることを一字一句正確に言うような関わり方がしたい。実はそれは、ここ3~4年の僕のマイブームでもあるんですよ。そういう意味では、アドリブ的なことを期待して観に来られた方には、「どうした橋本!?」と思われるような舞台になる可能性もあると思います。

橋本じゅん

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――橋本さんはいつも自由自在に演じてらっしゃる印象があるので、ここ3~4年の舞台が全て台本通りだったというのは意外な感じがします。

もちろん、「ここの転換に時間が必要だから何かアドリブ的なことをやっておいてくれ」と言われればやっていましたよ。今回も、指示があれば何か考えようとは思ってますけども、まずは型があってのことなので。型があるからこその“型破り”であって、勝手にやるのはただの“カタナシ”ですからね。

――なるほど。ではその“型”の部分で、テナルディエという役の核について、今の時点でどんなふうに捉えていらっしゃいますか?

あの時代にきっとほかにもたくさんいたであろう人々に、ちょっとエッジを効かせた形容、というところでしょうか。ドブネズミのようになってでも生きたい、生きなきゃ、という気持ちが強い男。でもこれは、今の僕が勝手に思っていることであって、稽古が始まってみないと分かりません。僕は、稽古場で役者と演出家が並走して、諦めと成長を繰り返していけば(笑)、いちばん大きいレンジになるんじゃないかと思ってるんですね。そのスタンスは今回も変えない…というか、変えられない。歌が歌えるわけじゃない、楽譜も読めない、音程も悪い僕には、今までと同じように芝居と向き合うしかないんです。本当に、「こんな僕が何で受かったんですか?」って、僕がインタビューしたいぐらいですよ(笑)。

――いやいや、歌も十分お上手です! でもご自身では苦手意識があるのだとしたら、それでもミュージカルに挑んでいかれる原動力はどこにあるのでしょうか。

初めて出演する前は、「ミュージカル、なんぼのもんじゃい」っていう思いがあったんです(笑)。でも挑んでみたらボコボコにされてごめんなさいと、ほうほうのていで逃げ出してしまった。それが悔しくて、それからはお話があったら絶対にやろうというスタンスで歩いているうちに、新しい世界が見えるようになりました。今回の『レ・ミゼラブル』にも、挑むことでまた何かが得られるかもしれない、という期待が大きいですね。そのためには、もちろん歌も頑張りたいですし、早くからいい準備をして稽古に臨みたいと思っています。

橋本じゅん

橋本じゅん

(取材・文:町田麻子 写真撮影:荒川潤)

公演情報
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
 
■作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■原作:ヴィクトル・ユゴー
■作詞:ハーバート・クレッツマー
■オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
■演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
■翻訳:酒井洋子
■訳詞:岩谷時子
■プロデューサー:田口豪孝/坂本義和
■製作:東宝
■公式サイト:http://www.tohostage.com/lesmiserables/

■配役:
ジャン・バルジャン:福井晶一/ヤン・ジュンモ/吉原光夫
ジャベール:川口竜也/吉原光夫/岸祐二
エポニーヌ:昆夏美/唯月ふうか/松原凜子
ファンテーヌ:知念里奈/和音美桜/二宮愛
コゼット:生田絵梨花/清水彩花/小南満佑子
マリウス:海宝直人/内藤大希/田村良太
テナルディエ:駒田一/橋本じゅん/KENTARO
マダム・テナルディエ:森公美子/鈴木ほのか/谷口ゆうな
アンジョルラス:上原理生/上山竜治/相葉裕樹
ほか
 
<東京公演>
■会場:帝国劇場
■日程:2017年5月25日(木)初日~7月17日(月・祝)千穐楽

 
<福岡公演>
■会場:博多座
■日程:2017年8月

 
<大阪公演>
■会場:フェスティバルホール
■日程:2017年9月

 
<名古屋公演>
■会場:中日劇場
■日程:2017年9月~10月


<e+貸切>7月4日(火)18:15、7月9日(日)12:00、7月14日(金)18:15
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