愛されて生き残るコゼットから、自力で生き残るマダムへ!~『レ・ミゼラブル』新キャストインタビュー 鈴木ほのか(マダム・テナルディエ役)編~
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鈴木ほのか
ミュージカル界に燦然と輝く金字塔、『レ・ミゼラブル』が2017年、日本初演30周年を記念して全国各地で上演される。11月に行われた新キャストお披露目会見での主な質疑応答と、会見後に敢行した単独取材の内容とをあわせてお届けしているSPICEインタビュー、その最終回は鈴木ほのか。コゼット役(1987~91年)、ファンテーヌ役(1997~2001年)からのマダム・テナルディエ役という、レミゼファン騒然の転身を決意した理由に迫る。
【会見Q&A】初演の稽古は神がかっていた
――オーディションを受けた理由と、オーディションでのエピソードを教えてください。
(「『レ・ミゼラブル』と『ミス・サイゴン』のオーディションは、ミュージカル俳優であればまずは受けるもの」というマリウス役・内藤大希のコメントを受けて)私もその通りにさせていただきました(笑)。まだ演じたことのない女性の役二つのうち、エポニーヌではどうかなと思い(笑)、マダム・テナルディエで挑戦しました。
オーディションでは、初演の時にずっと近くで観ていた鳳蘭さんの素晴らしい動きの通りにやりましたら、演出のエイドリアン(・サープル/演出補)から「なんで君はそんなに本番のように動けるんだ」と。初演でコゼットをやっていたことをお伝えすると、「リトル・コゼットか?」と言われまして、10年後にはファンテーヌもやったことをお伝えしたら、「なんだ君は!?」と驚いていただきました(笑)。そんなオーディション後、なかなかうまくいったということでしょうか、エイドリアンにチョコレートをいただきまして、今は神棚に飾ってあります(笑)。
――『レ・ミゼラブル』のなかで、特にお気に入りのナンバーは?
31年前のロンドンで、《At The End Of The Day(一日の終わりに)》を初めて聴いた時には全身に鳥肌が立ちました。ジャン・バルジャンが
――初演の時の思い出をお聞かせください。
本稽古に入る前の1年間ぐらいでしょうか、「エコール レ・ミゼラブル」という学校が開かれまして、週に2日ほどみんなで基礎レッスンを受けました。テレビによく出ていらしたスターの方もアマチュアの方も、一人ひとりが自分をかなぐり捨てて、一丸となって作品に向きあっていましたので、初日の幕が開いた時には全員で涙を流して感動したのを覚えています。あの時のお稽古には本当に、神がかったものがありましたね。
スターが“出る”のではなくスターを“生み出す”、「時代を変える」と言われるミュージカルが開幕し、日本中が『レ・ミゼラブル』色に染まった初演から30年。今日こうして新キャストの皆さんとご一緒して、私がファンテーヌをやっていた頃にもまだ生まれていなかった方がいらっしゃることに時間の重さを感じますが(笑)、このメンバーでまた日本中を揺るがすような『レ・ミゼラブル』が作れるような気がしております。
鈴木ほのか
【インタビュー】ヘレナ・ボナム=カーターに憧れて
――マダム・テナルディエ役を演じてみたい、という思いはいつ頃、どんなきっかけで芽生えたものなのでしょうか。
「いつかは…」という思いはずっとあって、冗談半分で口にすることもあったのですが、現実的に考え始めたのは『レ・ミゼラブル』が映画になってからですね。マダム・テナルディエ役を演じたヘレナ・ボナム=カーターが、年齢が近いこともあって私は大好きで、彼女のように、恐れずに色んな役に挑戦する女優になりたいという思いが昔からあるんです。私も最近は『マンマ・ミーア!』のドナのように、少しずつ活発な役もやらせていただけるようになってはきましたけれど、やはりいただく役はまだヒロイン路線が多いので、ここは思いきって自分からオーディションを受けてみようと。ヘレナ・ボナム=カーターがうちの姉によく似ているので、顔の系列的に「もしかしたら私も!?」と思ったというのもありました(笑)。
――それにしても、相当大きな決心が必要だったのではないかと思うのですが…?
あの…私の人生、“オーディション人生”なんですよ(笑)。初演の時もエポニーヌ役で受けてコゼット役になっていますし、『ミス・サイゴン』ではキムで受けてエレンに、『回転木馬』ではキャリーで受けてジュリーになって…と、いつも受かった役が私のミュージカル人生を決めてきてくれました。今回も、サー・キャメロン・マッキントッシュをはじめとする本国のスタッフが、私の根っこにあるものを見て決めてくださることが分かっていましたから、受けること自体についてあれこれ迷うことはなかったんですよね。会見でも言った通り、やったことがなくて私の年代で受けられる役は、男役を除けばマダム・テナルディエだけ(笑)。だから私としては、とにかく大海に身を投じるような気持ちで書類を出して、陸まで泳ぎ着けるかどうかはむこうが決めること、という気持ちでした。
鈴木ほのか
――なるほど、それで見事、泳ぎ着かれたわけですね。
まさか本当に泳ぎ着けるとは思っていなかったので、今はサー・キャメロンに選んでいただいたという自信だけが私の支えです(笑)。マダム・テナルディエ役は今、全世界的に豊満でコメディが上手でパワフルな方が多いんですよ。私自身も、ファンテーヌをやっていた時からご一緒していた森公美子さんのイメージがとっても強いですし。でも今回、オーディション中にサー・キャメロンやエイドリアンから「そろそろ新しいマダム・テナルディエ像を作りたいんだ」と言われて、なるほどなあと納得する思いでした。同じところにとどまらずに、常に新しいものを求めているからこそ、『レ・ミゼラブル』は30年も続いているんですよね。この作品を風化させないぞ、という勢いを彼らから感じたので、新時代のマダム・テナルディエを観ていただけるように私も頑張ります。
――ちなみに、素のほのかさんご自身はコゼット、ファンテーヌ、マダム・テナルディエのどのキャラクターにいちばん近いのでしょう。
本当の私ですか? …コゼット、かなあ。ファンテーヌではないと思いますね。理由は…生き残るタイプだから(笑)。ファンテーヌのように、誰かのために命を捨てるタイプではない気がするんです。コゼットは“愛されて”生き残る人で、マダム・テナルディエは“自力で”生き残る人ですよね。今の私はまだコゼットに近いけれど、年齢を重ねるごとにタフさが身についてきていますから(笑)、この公演が始まる頃にはマダム・テナルディエがいちばん近くなっているかもしれません。最近の私は、泣いていても、お腹が減ったら大福を食べちゃうみたいなところがあって(笑)。そういうたくましさやコミカルさを生かして、「あんな生き方もいいかも」と思ってもらえる、コゼットとは逆の意味で“愛される”マダム・テナルディエになれたらと思っています。
鈴木ほのか
(取材・文:町田麻子 写真撮影:荒川潤)
■原作:ヴィクトル・ユゴー
■作詞:ハーバート・クレッツマー
■オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
■演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
■翻訳:酒井洋子
■訳詞:岩谷時子
■プロデューサー:田口豪孝/坂本義和
■製作:東宝
■公式サイト:http://www.tohostage.com/lesmiserables/
■配役:
ジャン・バルジャン:福井晶一/ヤン・ジュンモ/吉原光夫
ジャベール:川口竜也/吉原光夫/岸祐二
エポニーヌ:昆夏美/唯月ふうか/松原凜子
ファンテーヌ:知念里奈/和音美桜/二宮愛
コゼット:生田絵梨花/清水彩花/小南満佑子
マリウス:海宝直人/内藤大希/田村良太
テナルディエ:駒田一/橋本じゅん/KENTARO
マダム・テナルディエ:森公美子/鈴木ほのか/谷口ゆうな
アンジョルラス:上原理生/上山竜治/相葉裕樹
ほか
■会場:帝国劇場
■日程:2017年5月25日(木)初日~7月17日(月・祝)千穐楽
■会場:博多座
■日程:2017年8月
■会場:フェスティバルホール
■日程:2017年9月