ミュージカル『フランケンシュタイン』稽古場レポート Wキャストならではの魅力炸裂
ミュージカル『フランケンシュタイン』の稽古の様子
ミュージカル『フランケンシュタイン』が2017年1月8日から開幕した。本作は、イギリスの女流作家メアリー・シェリーが書いた小説を元に、韓国で舞台化され、ロングランを続けているミュージカルで、日本初上陸となる。主役のビクター・フランケンシュタイン役に中川晃教と柿澤勇人が、また、その親友アンリ・デュプレ/怪物役を加藤和樹と小西遼生がそれぞれWキャストで挑む。さらにメインキャスト8人が1幕と2幕で全く異なる二役を演じることでも話題を集めている。今回は開幕に先立つ12月に、都内の稽古場を見学させてもらった時の模様を綴る。
ミュージカル『フランケンシュタイン』の稽古の様子
午後1時過ぎから始まった全体稽古。俳優陣は、思い思いにストレッチや筋トレで体を軽くほぐした後、約5分間の発声練習をして、稽古に臨んだ。
本作の舞台は19世紀のヨーロッパ。科学者のビクター・フランケンシュタインは、無実の罪で命を落とした親友のアンリ・デュプレを生き返らせようと、自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし、そこから生まれたのは「怪物」で、その怪物はビクターに復讐を誓う……という物語。この日は1幕の、アンリの身に起こったことを説明する一場面を集中的に稽古した。
シリアスなシーンの連続で、稽古場にも緊張感が漂う。一通り場面を通した後、俳優陣は、俳優同士もしくは潤色・演出の板垣恭一らスタッフと、それぞれ動線の確認や魅せ方の工夫を話し合っていた。特に、稽古に入ってまだ日が浅いという中川は自分が納得できるまで話し合いを重ねているように見えた。一言一言、一音一音、手を抜くことなく拘り抜きたいという印象を受けた。
一方、今年6月の主演舞台で右脚アキレス腱を断裂した柿澤。稽古が始まる前は杖をついて歩いていたが、稽古中は難なく動き回っていたので、順調に回復しているようだ。8月の製作発表会見で、柿澤は中川を「憧れの人」と語っていたが、柿澤自ら稽古の合間に中川の元に駆け寄って、台本を見ながら真剣に議論しあう場面も見られた。
ミュージカル『フランケンシュタイン』の稽古の様子
ビクターの苦悩を歌うソロは圧巻だった。天に救いを求めるかのように訴えながら歌う中川に対し、自分の中で苦悩を深く落とし込むように歌う柿澤。一場面だけしか観られてはいないが、主役の中川と柿澤が作っているそれぞれのビクター像の違いを垣間見た気がした。ビクターに合わせて周りの俳優陣の演技も、当然変わる。Wキャストならではの楽しみ方ができそうだ。
ビクターの親友であるアンリ役を演じる加藤和樹と小西遼生。この日の稽古では、台詞こそ少なかったが、哀愁漂う雰囲気で、何とも言えない切ない表情を披露。あぁ、この後、「怪物」になってしまうのか……。続きが見たくなる。
ビクターの婚約者であるジュリア役を演じる音月桂。宝塚歌劇団時代の男役のイメージから一転し、白いトップスとロングスカートを着て、可愛らしい「お嬢様」になっていた。8月の製作発表会見では「こんな本格的なドレスを着るのが初めて。なんかスースーするんですけど(笑)」と話していた音月だが、すっかり板に付いてきた様子。ビクターとの掛け合いでも、繊細な演技を見せていた。
ビクターの姉のエレン役を演じる濱田めぐみは、姉としての優しさが滲み出る演技をしていた。ビクターの理解者である執事のルンゲ役を演じる鈴木壮麻は、低音の落ち着いた声を武器に、作品の説得力を増す存在。これまでミュージカルはコメディー作品が多かったと語る相島一之も、シリアスな雰囲気に溶け込み、貫禄たっぷり。
中川と柿澤、加藤と小西が作るそれぞれの『フランケンシュタイン』の違いはもちろん楽しみだが、怪物創造前の1幕と怪物誕生後の2幕とで俳優陣がどう変貌するか。見ものになりそうだ。
ミュージカル『フランケンシュタイン』の稽古の様子
取材・文・写真撮影:五月女菜穂
【大阪公演】2017年2月2日(木)~2月5日(日) 梅田芸術劇場 メインホール
【福岡公演】2017年2月10日(金)~2月12日(日) キャナルシティ劇場
【愛知公演】2017年2月17日(金)~2月18日(土) 愛知県芸術劇場大ホール
■脚本・歌詞:ワン・ヨンボム
■潤色・演出:板垣恭一
■訳詞:森雪之丞
■音楽監督:島 健
中川晃教/柿澤勇人(Wキャスト)
加藤和樹/小西遼生(Wキャスト)
音月桂
鈴木壮麻
相島一之
濱田めぐみ
他