MADBUNNY『BLANKET SHELTER』インタビュー “つまらない写真展”から脱却するための発明

インタビュー
2016.12.27
MADBUNNY『BLANKET SHELTER』

MADBUNNY『BLANKET SHELTER』

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2012年から2016年の4年間、モデル兼アーティストのRico.とともに、ベルリンで生活した日々を記録した、MADBUNNYの3rd写真集『BLANKET SHELTER』。渋谷・eplus LIVING ROOM CAFE&DININGにて、2016年12月28日(水)までの期間、本作の青焼き作品が展示されている。写真集のタイトルとなっている「BLANKET SHELTER」とは、移民やホームレスたちが頭から毛布をかぶって暑さや寒さ、一般社会から自らを凌いでいる状態を示したスラングだ。日本に暮らす我々からすれば、圧倒的な非日常であるこの土地での4年間、二人のアーティストが送った生活とはどのようなものだったのか。そしてそれらを発表する際にMADBUNNYが仕掛けた"とある発明"とは? 存分に語ってもらった。

 

――今回の写真集の舞台となったのは、"ベルリン最狂の地区"と言われている場所だそうですね。

クロイツベルクっていう、ベルリンでもアーティストやミュージシャンが一番多く住んでる場所です。移民やホームレスも多いから、家賃やスタジオの賃料のほか、食べ物や酒も安くて、日常の生活が安上がりなんですよ。世界的にも有名で、今では各地からアーティストが移住している場所です。

――これまで諸外国を渡り歩いてきたMADBUNNYさんですが、ベルリンという街ならではのインスピレーションはありましたか?

ベルリンって、すごくちっちゃいんですよ。山手線の内側の範囲より小さいと言われているパリよりも、さらに小さいのがベルリンなんです。そこに世界中のアーティストが集まってるっていうのが魅力的ですよね。濃度がだいぶ濃いというか。例えばロンドンだと、ライブやアートショーに行っても、いかにも売れそうだなという雰囲気のアートや音楽が多いんです。でも、ベルリンだと、いい意味でクエスチョンマークが浮かぶような出会いがいっぱいある。だから、自分がインスピレーションを受けるためには、今はやっぱりベルリンが良いですね。

――今回のRico.さんとの共同生活は、作品撮りという前提で始められたのでしょうか。

はい。作品集を出すっていう目的のために、一緒に生活をしていました。これまでに出た写真集でもモデルとの生活を撮影していますが、全部、本を作ることを前提でやっていました。

――Rico.さんはどんな女性ですか?

彼女もアーティストで、アートメイクで自分の会社を10年以上やりながら、油絵を描いたりもしているんです。なので、今回はアーティスト二人の共同生活っていう感じで、彼女のアートな部分も出してあげたいなっていう思いがありました。そこの才能も含めてモデルさんを選んでいます。

――写真集『BLANKET SHELTER』の表紙の作品には、顔と腕が描かれたバナナが写っていますね。

これは、Rico.ちゃんが落書きしてテーブルに置いていた、朝ごはんのバナナなんですよ。バナナって、セクシャルなイメージがあるじゃないですか。この写真集自体もちょっとセクシャルな内容なので、それでバナナをカッコよく、可愛く見せられればと思いました。背景にあるのは、作中でも使用していた、SM用の黒いロープです。

写真集『BLANKET SHELTER』

写真集『BLANKET SHELTER』

――続いて、展覧会についてお伺いします。今回、このeplus LIVING ROOM CAFE&DININGを会場に選んだきっかけとは?

こちらを運営する株式会社イープラスの橋本社長から、ここがオープンする前に「作品を購入したい」と連絡を頂いて。それで、オープンからこちらの常設作品として、僕の青焼きの額装が飾られているんです。そんなつながりもあって、今回作品集が出るということで、ぜひこちらで展覧会をやらせて欲しいとオファーをし実現しました。

――層状に重ねられている青焼きの作品を、来場者が直接触れてめくって楽しむという、斬新なスタイルの写真展ですよね。

よくある写真展だったら、ただ作品を見るだけで、撮影するのもダメだったりしますよね。そうじゃなく、半分インスタレーションにしたいという気持ちがあるんです。なので今回も、お客さんにも参加してもらえる空間作りを心掛けました。青焼きの写真に触れて、紙の質感や匂いを感じてほしい。そうすると、お客さんが長居してくれる。眺めて5分で出ていっちゃうんじゃなくて、20分でも30分でもいてくれるんです。

――展示作品を、写真集とは異なる青焼きにしているのはなぜでしょうか。

例えば、この本の写真展をやりますってなった時、展示が本と同じカラーだったら、僕はわざわざ見にいかないと思うんですよ。本を買った人が、写真展という現場に足を運ぶストーリーが欲しかったんです。

――すると、MADBUNNYさんは一般的な写真展にはつまらなさを感じている?

そうですね。だから、こういう展示をやっているんだと思います。写真展って何でつまらないんだろうなっていうのをずっと思っていて、その中で生まれたのが、この青焼き作品で鑑賞者に作品をめくらせるっていう技法だったんです。結構発明でしょ?(笑) 動きが出るから面白いかなあって。

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

――会場に訪れるお客さんの反応はどうでしょう?

作品に触ってはいけないっていう勝手な先入観が、日本人にはあるんですよね。だから、誰かが写真をめくっているのを見て、「ああいう風に見るのかな?」って様子をうかがっているお客さんもいて、それを見ているのも楽しい。心の中で「触っていいんだよ!」って(笑)。こっちからわざわざ「めくっていいですよ」とは言わないんです。その人が勇気を持ってめくり始めるのが、快感なんですよ。

――ちなみに今回の展示では、セクシャルすぎる写真はカットされていると伺いました。

パブリックな場では、あまりに性的なものは除いています。海外ではあまりない対応ですけどね。でも、そこのところは理解できているので、大丈夫です。写真集自体も日本の出版社から出ているものなので、正規で出せないような作品は省かれていますし。

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

――そういった日本での性表現の制限について、どう感じていますか?

ヨーロッパはそういう制限がなくてオープンですが、どっちがいいとは言えません。向こうは向こうだし、日本は日本だし。その中で自分がパフォーマンスをやりきれればいいかなって。アーティストとしては、文句言っててもしょうがない。そんなことよりも、100パーセントやりきる技術やセンス、仕事の早さとかが求められるので。「俺が俺が」と主張する前に、いかに環境に合わせて仕事を出来るかが重要ですね。

――そうしたスタンスは、MADBUNNYさん自身がデザイナーの仕事もなさっていることと関係しているのかなと思います。

そうですね。関係していると思います。展示とか、本を作ることっていうのを、仕事だと自覚してやっている感覚はあります。

――写真というメディアに対しては、どのような姿勢で取り組んでいるのでしょうか。

今もこうやって流れている時間を、作品として残すっていうことに喜びを感じます。さらに言えば、本にすることにこだわりがあるんですよね。今はデジタルの時代で、ネットで発信することはいくらでもできますけど、インターネット上で写真がどこにいったかわからなくなるっていうのは嫌なんです。いつでも本棚から出せるように、"もの"として、ちゃんと残してあげたい。

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGでの展示の様子

――そんな"もの"としての写真集を手に取る方や、来場者へメッセージはありますか?

深く掘り下げれば言いたいことはあるんですけど、自分がリリースしたものに関しては、受け取った人のジャッジでしかないと思うんです。だから、そこはあんまり深く考えてはいないですね。僕が「こういう風に見て欲しい」とか「ここにはこういうストーリーがある」とかは、本当は言いたくないんです。いいと思うかよくなかったと思うかも、その人が感じたままじゃないですか。だから、そこのガイドラインっていうのはあんまり言いたくないというか。捉え方は自由で、評価も自由でいいと思ってます。なので、展示に関しては、見た人の引き出しが一つでも増えたらいいかなあって思いますね。

eplus LIVING ROOM CAFE&DINING展示入口

eplus LIVING ROOM CAFE&DINING展示入口

 

プロフィール情報
MADBUNNY

Photographer / Designer / Graphic Artist
そのスピード感溢れる「生と死」の感覚を、暖かくもどこか冷たく「写真」や「ドローイング」に 忍び込ませ、デッサンやコラージュというワン・アンド・オンリーな技法に、シルクスクリーンや ステンシルという量産性のある技法をリミックスした作風でヨーロッパをベースに活動中。

 

書籍情報
BLANKET SHELTER
 
写真集『BLANKET SHELTER』

写真集『BLANKET SHELTER』


ARTIST:MADBUNNY
MODEL:Rico.
LOCATION:Berlin.de.
ISBN:978-4-904837-52-8
SIZE:260mm x 182mm
PRICE:3,500円 (+税)
PRINTED IN JAPAN. 2016.

 

イベント情報
BLANKET SHELTER


日時:2016年12月3日(土)~12月28日(水)
会場:eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
店内のバーエリア、及びテラスエリアにて展示中
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