中村雀右衛門(芝雀改め)、片岡仁左衛門、笑顔咲く春の風物詩『こんぴら歌舞伎大芝居』製作発表

レポート
舞台
2017.1.31
第三十三回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」記者発表 (左から)芝雀改め五代目中村雀右衛門、片岡仁左衛門

第三十三回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」記者発表 (左から)芝雀改め五代目中村雀右衛門、片岡仁左衛門


四国・香川の春恒例『四国こんぴら歌舞伎大芝居』が、今年で33回目を迎える。25日に都内のホテルで行われた製作発表には、歌舞伎俳優の片岡仁左衛門と、襲名披露を行う五代目中村雀右衛門(芝雀改め)が登壇した。

(左から)松竹株式会社 安孫子正氏、中村雀右衛門、片岡仁左衛門、琴平町長 小野正人氏

(左から)松竹株式会社 安孫子正氏、中村雀右衛門、片岡仁左衛門、琴平町長 小野正人氏

平成29年4月8日(土)~23日(日)の公演の会場は、現存する日本最古の劇場、旧金毘羅大芝居である「金丸座」。建物の造りだけでなく、電力を使わないアナログな機構(人力で動かすセリ等)も含め、江戸時代の雰囲気をそのまま今に伝える。

15年ぶり、ファン待望の片岡仁左衛門

片岡仁左衛門

片岡仁左衛門

15年ぶり3回目の出演となる片岡仁左衛門は、「大好きな大好きな金丸座に、15年ぶりに出演させていただけるということで、今からワクワクしております」と声を弾ませた。「江戸時代の芝居小屋の姿を残す金丸座にいると、楽屋で裏山の鶯の声を聞いたり、舞台に立っている時でも、私たちの先祖はこういうところでお芝居をさせていただいたんだなあと、歌舞伎の原点を改めて考えさせられます。頭ではわかっていても、体で感じられる場所は貴重」と語り、こんぴら歌舞伎の再興に尽力した澤村藤十郎に敬意を表した。

金丸座の来場者については、「お客様が“楽しみたい!”という気持ちで入ってきてくださいます。客席と舞台には相乗効果がありますから、役者にはやりやすい劇場ですね。大劇場ですと、入場から5分ほどで舞台に出ても、もうお休みになられているというお客様がいらっしゃるものです(笑)。金丸座には、そういうお客様はまずいらっしゃいません!」と語り、笑顔をみせた。

襲名披露の、5代目中村雀右衛門(芝雀改め)

雀右衛門は、昨年3月から続いた襲名興行のすべてで仁左衛門と共演した。「多くを勉強させていただきました」と感謝を述べ、「松嶋屋のお兄様(片岡仁左衛門)のお力をいただき、いわば松嶋屋のお兄様の一座の中で襲名披露をさせていただくようなことでございます」と仁左衛門にお辞儀し、会場を和ませた。

こんぴら歌舞伎では、仁左衛門と絡む出し物がないため「一人でとっても不安ではございますが、一所懸命に舞台を務めさせていただき、皆さんに喜んでいただきたいです。第一部は妖術使い、第二部は狐が化けている姿を演じますが、あの劇場の雰囲気や風情、灯りの明るさ、暗さにあっている演目だと思います。また、父・4代目雀右衛門が務めたとおりにできるだけ務める、というのが襲名だと思っております。その意味で、こんぴらだから特別に、ということはございませんが、『葛の葉(第二部)』の引っ込みでは、父と同じく、差出にろうそくの演出が劇場の明るさにあっていてよいのではと考えています」と、現段階でのイメージを明かした。

おのずと芝居は変わってくる

記者からの「金丸座だからこそ意識することはあるか?」という質問に対し、仁左衛門は「金丸座だから特にこうしようという考えはもっていませんが、舞台に立てばおのずと芝居は変わってくるものです。それを計算はしていませんが、やはり歌舞伎座の寸法でお客様に訴えるのと、金丸座のスペースで訴えるのとでは、自然とお芝居は変わってくるものだと思います」と答えた。隣りの雀右衛門は、じっと耳を傾け時々深く頷いた。

五代目中村雀右衛門、片岡仁左衛門

五代目中村雀右衛門、片岡仁左衛門

雀右衛門の襲名披露興行を、同じ舞台に立ち、そばで見守ってきた仁左衛門。襲名後の雀右衛門の印象を訊かれると、「この1年積み重ねてらして、段々と“雀右衛門”という名前が身についていらした感じがしますね。『雀右衛門でございます』ということに自然さを感じるようになってきました」と温かい言葉を贈った。

五代目中村雀右衛門、片岡仁左衛門

五代目中村雀右衛門、片岡仁左衛門

それに対し雀右衛門は、「本当に今まで勉強不足だったと感じざるをえない1年でした」と苦笑いをしてみせた。そして「雀右衛門という名前を襲名させていただいた以上、名前に則すような努力を、毎日毎日続けなくてはいけないと身に染みて感じています。最善の努力を尽くして、できるだけ名前により近づくように努めるのが自分の生き方だと身を引き締めている次第です」と、強い決意を伺わせ締めくくった。

(左から)松竹株式会社 安孫子正氏、中村雀右衛門、片岡仁左衛門

(左から)松竹株式会社 安孫子正氏、中村雀右衛門片岡仁左衛門

第三十三回 『四国こんぴら歌舞伎大芝居』演目

第一部
一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし) 一幕
二、忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの) 将門
三、お祭り

第二部
一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ) 葛の葉
二、口上
三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)

初日前日となる4月7日(金)には、金毘羅宮成功祈願のお祭りと人力車で役者が顔見世をする「お練り」が催される。

公演情報
第三十三回『四国こんぴら歌舞伎大芝居』

日程:2017年4月8日(土)~4月23日(日)
会場:金丸座(香川県琴平市・旧金毘羅大芝居)
出演:(芝雀改め)中村雀右衛門、片岡仁左衛門、片岡孝太郎、尾上松緑、坂東新悟、大谷廣太郎、大谷廣松、片岡松之助、坂東竹三郎、坂東彌十郎、大谷友右衛門
■公式サイト:http://www.konpirakabuki.jp/index.html
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