『コンタクトゴンゾ展 フィジカトピア』レポート あらゆる境界線を消失させる“身体の楽園”

レポート
2017.2.10
展覧会風景より 《Physicatopia》部分

展覧会風景より 《Physicatopia》部分

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肉体の衝突を起点とした作品で演劇、ダンス、アートの垣根を越えて活躍してきたコンタクトゴンゾ。現在は、塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZEの4名からなるパフォーマンス集団であり、今年から東北で開催される総合芸術祭『Reborn-Art Festival2017』にも招聘されている。その『Reborn-Art Festival2017』のプレイベントも兼ねた個展『コンタクトゴンゾ展 フィジカトピア』が、2017年3月26日(日)までワタリウム美術館で開催中だ。その見どころを、一般公開に先駆けて行われたプレス内覧会より紹介する。

 

境界線を壊すコンタクトゴンゾ

この展覧会は、コンタクトゴンゾによる過去のパフォーマンスの記録映像とNAZEのドローイング群から始まる。NAZEによるドローイングは展覧会概要でもある。本展には、普段美術館でみるような白いボードに文字が印刷されたステートメントの類は一切ない。キャプションはすべて、白い壁に直接ペンで書かれているのだ。そもそもこの展覧会のタイトルにある「フィジカトピア(Physicatopia)」とは、「物理的な事実のみが理性や言語、社会正義に対して優位を誇る瞬間的な空間」を指す造語である。理性的な文章やキャプションは邪魔なのだろう。そして、通常は会場入口にある言語によるステートメントの代わりに、ドローイングが設置されているというわけだ。

ドローイングによる展覧会概要の一部 絵:NAZE

ドローイングによる展覧会概要の一部 絵:NAZE

そのドローイングで描かれた、キャタピラと人間が一体になったものを立体化した作品が、部屋の中央で存在感を放っている《無機物と生命(キャタピラはカニを轢く)》だ。

展覧会風景より 《無機物と生命(キャタピラはカニを轢く)》

展覧会風景より 《無機物と生命(キャタピラはカニを轢く)》

展覧会風景より

展覧会風景より

作品背後、金網の向こうに見えるのはコンタクトゴンゾの生活エリアだ。受付で渡された概要の紙には《メゾンゴンゾ外苑前》と書かれている。1月末からコンタクトゴンゾメンバーがその場所に住み込み、ワタリウム美術館の空間としての面白さを使って作品を創作・配置したのだそう。

塚原自身は「何が作品で何が作品でないか、その境界を溶かしたい」と語る。「下半身がキャタピラの人間」という発想も、無機物と生物という相反するものの境界をなくしたい欲求から生みだされたのであろう。


空間で、遊ぶ

真上の3階の会場には、鑑賞者自身が球に当たることもできる作品《黒い家の庭》がある。体験を希望する鑑賞者は指定の位置に立ち、目の前の真っ黒な家(型の箱)から出る光をみつめる。そして黒い家の煙突から球を供給すると、飛んでくる。球が飛んでくる箱は黒く、床も黒い。背景がすべて黒い中で黒い球が飛んできても、距離を見失い避けることができない。筆者も体験したが、考える間もなく球に当たった。やはりそれなりには痛いのだが、耐えられない痛みや危険を感じる痛みでは勿論ない。安全は保障されたうえで、ただ自身と物質の衝突が引き起こされるといった状態だ。

もしも気が向いたらぜひ体験してみてほしい。丁度その真下で、あなたと球が衝突する様子が《無機物と生命》の口から映写されるだろう。その位置関係の面白みは、3階の壁がガラス張りであるおかげでよく可視化されている。こういった展示会場の配置の面白さは、ワタリウム美術館の4階建て構造ならでは。複数の作品を鑑賞する個展であると同時に、建物全体でもひとつの世界「フィジカトピア」を構成しているともいえよう。

エレベーターで3階に上がり、ふと右手を見るとそこは「メゾンゴンゾ外苑前」真上。ここからの目線のことも考えられた遊び心が窺える

エレベーターで3階に上がり、ふと右手を見るとそこは「メゾンゴンゾ外苑前」真上。ここからの目線のことも考えられた遊び心が窺える

 

フィジカトピアという“楽園”

その展覧会タイトルと同じタイトルの作品、《Physicatopia》が4階にある。「森の中でゴムを使いグレープフルーツを打つ」映像インスタレーションなのだが、四方の壁すべてを使った圧巻のつくりで、「打たれたグレープフルーツが空間を回ってきて最終的に打った人間の背中に当たる」ようになっている。これはぜひ部屋の中央で映像を観賞していただきたい。もちろん実際には、そのような軌道で果物を打つことができるわけがない。ある種の編集があるのは間違いないということは冷静に考えればわかることだ。しかし「自身の周りを人間に当たりながら果物がまわって飛んでいく」という奇妙な感覚を前に、「あきらかに嘘だ」と判断する理性はあまりにも無意味で無力に思えるだろう。

「-topia」は、楽園、地域を意味する接尾辞。つまり「Physicatopia」を無理やり日本語に訳すと、「身体の楽園」あるいは「身体特区」といったところだろうか。フィジカトピアを支配するのは、脳による思考を超えた身体のありようだ。無機物と生命、作品と非作品……理性によって引かれるあらゆる境界線を消失させる身体の楽園が、ここに出現している。

理性より身体を優位に持ってくるフィジカトピアについて、言葉を重ねて説明するのも野暮だろう。言葉で理解するより前に、まずはこの楽園に足を運んで言語を超えた体験をぜひ味わってみてほしい。

展覧会風景より 《木材、及び蛍光灯》部分

展覧会風景より 《木材、及び蛍光灯》部分

 

イベント情報
コンタクトゴンゾ展 フィジカトピア

会期:2017年2月5日(日)~3月26 日(日)
休館日:月曜日 ※3月20日は開館
開館時間:11 時より19 時まで ※毎週水曜日は21 時まで延長
入館料:大人 1,000 円 / 学生(25 歳以下)800 円
ペア割引:大人 2 人 1,600 円 / 学生 2 人 1,200 円
小・中学生 500 円 / 70 歳以上の方 700 円
主催 / 会場:ワタリウム美術館
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6 Tel:03-3402-3001 Fax:03-3405-7714
http://www.watarium.co.jp/
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