岩井里菜インタビュー 『天空の城ラピュタ』『レオン』などを題材に描かれるファッショナブルな作品たち
『5 Continental Movies Special Exhibition Rina Iwai』会場入口
渋谷のeplus LIVING ROOM CAFÉ&DININGで3月24日まで開催されている『5 Continental Movies Special Exhibition Rina Iwai』。会場では『天空の城ラピュタ』や『レオン』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など著名な映画をテーマにした25以上のコラージュ作品を楽しむことができる。作者の岩井里菜は、割り箸を用いて描くファッショナブルなイラストで、女性ファッション誌、広告、マグカップデザインなど国内外の幅広い分野で活躍中。アジアの若手作家にフォーカスしたアートフェア『UNKNOWN ASIA』でイープラス賞を受賞した経歴も持つ、気鋭の作家の素顔に迫る。
――割り箸を使って絵を描く手法は独特ですね。そのような描き方を始めたきっかけを教えてください。
美大受験のときに鉛筆のデッサンを練習したのですが、それがどうにも苦手で。試しに割り箸で描いてみたら?と薦められたのが、意外としっくりきたんです。
会場で行われるライブ・ポートレートの様子。岩井が割り箸を使って描いていくさまを、間近で見ることが出来る。
――描きやすいように割り箸を削ったり、アレンジはしますか。
いえ、しないです。割ってそのまま描きます。尖った部分で細い線、断面の広いところを使えば力を入れなくても太い線が描けるので便利です。たまにかすれた線になったり、自分の意図しない線ができるのが面白いですね。
――今回の展示は、ユーラシア、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアの五大陸の映画がテーマなんですね。具体的な作品の解説をお願いします。たとえば、『天空の城ラピュタ』とか。
私にとって、ラピュタ=主人公のパズーが目玉焼きを乗せたパンを食べるシーンなんです(笑)。
――パズーが目玉焼きだけ先に食べちゃうシーンですよね。
そうですそうです。ラピュタを見た後はアレが食べたくなりますよね(笑)。これは、目玉焼きだけをイラストにして、パンとお皿は実物を使っています。目玉焼きとパンの両方をイラストにすると味気なくなってしまうので、実物のパンを使って若干、生々しい感じに仕上げました。ぱっと見では、写真かイラストかわかりにくいけど近づくとわかる、という。私は思いつきで作品を描くので、テーマは本当にシンプルです。見た人に「こういう意図で描いたんでしょ」といわれて初めて自分で気づくこともあるくらい。
――今回ピックアップした映画の中で、印象に残った作品を教えてください。
『レオン』ですね。マチルダがレオンに愛の告白をするシーンがあるんですが、そのシーンの台詞をマチルダの手に描きました。
――『レオン』はかなり大きなサイズで展示されていますね。同じく、大きなサイズの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も私は気になりました。このドクの手に描かれた「ROAD」という単語はなにを意味しているんですか。
両方とも100号のキャンバスを使っています。1,621mm×1,303mmで、今回の展示で一番大きいサイズです。ドクの手に描かれた文字は、劇中でドクがいった「道? これから行く場所に道などない」といったニュアンスのセリフから取っています。
――どんな基準で映画を選んだのですか?
自分で見た作品のほか、映画好きの友だちにおすすめされた作品とかですね。あとは、多くの人に見てもらいたいので、マニアックな作品はなるべく外しました。全部で25以上の有名な映画をテーマにした作品を展示していますので、皆さんの好きな映画があると嬉しいですね。
――今回、LIVING ROOM CAFÉ&DININGで展示するようになったきっかけを教えてください。
大阪で開催された『UNKNOWN ASIA』というアートフェアに応募して、イープラス賞をいただいたことがきっかけです。イープラスの副社長の方に気に入っていただき、こちらのカフェで展示させてもらうことになりました。アートフェアのコンペに応募したのは初めてで、こんな広い空間に自分の絵がたくさん飾られるのは嬉しいですね。
――岩井さんが作品を作られる際のスタンスを教えてください。作家やアーティストとしての意識は強くありますか?
私自身は「アーティスト」よりも、「サービス業」という意識でイラストの仕事に向き合っています。自由に描くよりも、相手のニーズとか制限がある中で描く方が好きなんです。自分のテイストも入れつつ、相手が喜ぶ作品に仕上げるような描き方の方が好きですね。
――インスタグラムではオリジナルの作品も発表していますが、これはどういった位置づけでしょうか。
インスタに載せている作品は、「こういうテイストも描けますよ」というプレゼン的な意味合いが強いですね。SNS経由で仕事をいただくこともありますので。私のテイストが好きな相手のニーズに合わせた作品を描いて、気に入っていただけたら本望です。
the melody of New York City
――インスタにはちょっと不思議というか、面白さを感じさせる作品をUPしていますね。
女性のネイルをホットドックにしてみたり、NYの街にある信号と道路標識をリコーダーにしたり、高層ビルをルージュに見立てたり……クスッとさせる感じを取り入れています。おしゃれでカッコいいイラストの中に、笑えるテイストも加えた作品を描いていきたいです。
――影響を受けたアーティスト、好きなアーティストを教えてください。
影響を受けたのはファッションイラストレーターのStina Perssonさんです。線と色の美しさが好きです。あとは、ニシワキタダシさん。シュールでかわいくて、ずっと見ていられます。Stina Perssonさんの洗練されたイラストと、ニシワキさんの見ていて楽しいイラスト、双方のいいところをミックスした作品を描いてみたいですね。
――岩井さんはファッション系のイラストが多いですが、今後手がけてみたいジャンルはありますか。
伝統工芸とか日本を感じさせる分野に興味があります。伝統工芸や伝統文化の世界の魅力を、普段その分野に触れる機会の少ない人々に伝えていければなと。私自身もその1人なので、より伝えやすい表現を探っていけるのではと思いました。あともうひとつは、医療関係にも興味があります。高校生の頃、『パッチ・アダムス』という無料で患者を診察する実在の医師の映画を見て、非常に感動したんです。今後、なんらかの形で医療の世界に関わることができればと思っていますね。
日程:2017年2月24日(金)~3月24日(金)
会場:eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
下記のスケジュールにて、在廊する岩井里菜さんによるライヴ・ポートレートを行います。
日程:2/26(日)、3/5(日)、3/12(日)、3/19(日)
時間:14:30~16:30
ポートレート・チャージ:¥500 (御飲食で御来店のお客様のみとなります)
詳しくは店舗スタッフまで
https://livingroomcafe.jp/art
女子美術短期大学情報デザイン専攻を卒業後、デザイン事務所に勤務。2008年に単身ニューヨークに移住した後にフリーのイラストレーターに。画材に割り箸を用い、国内外問わず、女性誌、広告、ディスプレイ、雑貨、アパレル、ポートレート・イベント等、幅広く活動中。
2016年アジア中より気鋭アーティストが集うアートフェア「UNKNOWN ASIA」で「イープラス賞」「Peach賞」「紀陽銀行賞」を受賞。