『SEAdLINNNG(シードリング)』高橋奈七永・世志琥のインタビュー到着 「戦う人々のモヤモヤを払拭する戦いを」
“熱い女子プロレス”を標榜し、高橋奈七永が2015年に立ち上げた「SEAdLINNNG」(シードリング)。昨年からは世志琥が加わり、3月からは新たに中島安里紗、Sareeeも加入と、新章開幕を迎えんとしている。年末年始に掛けては高橋と世志琥がプロレス外の戦いにも打って出て、それぞれプロレスラーの強さをアピールした。シードリングの戦い、そして目指すものとは。3月16日(木)後楽園ホール大会を控える、高橋と世志琥に聞いた。
――まずは帰国されたばかりとのことで(※インタビューは2月14日に実施)、世志琥選手、韓国・ROAD FCでパンチでの初回KO勝利おめでとうございます。
世志琥:自分的にはガッツリ当たった感触はなくて、“あ、倒れた。行かなきゃ”みたいな感じだったんですけど、とりあえず勝って安心しました。
高橋:途中で髪の毛を掴んだとかサミングをやったとか相手のアピールでレフェリーやドクターが入ってきて、そんなので試合が終わったら水の泡じゃんと思ってセコンドとしても焦ったんですけど、その後試合も再開されて、あのタイムでちょっと冷静さを取り戻せた部分もあったと思います。とにかくああいう瞬間を一緒に体感できたことが何より収穫というか、一緒に戦うことができたのがすごくよかったと思いました。
――今回は緊急参戦の形となりましたが、世志琥選手はいずれ総合格闘技に挑戦しようと思っていたのですか?
世志琥:いえ、自分はプロレスラーですし、プロレス以外のことをするっていうのは全く考えていなかったです。やろうとも思わなかったし、オファーがなかったら挑戦することはなかったと思います。
高橋:ROAD FCさんから要請があったのが1月になってからで、総合に特化した練習をしている訳ではなかったし何回かお断りしたんですけど、熱烈なアピールがあったので、世志琥に意思確認をして決まりました。 私は12月にラウェイ(※“世界一過激”と言われる、素手にバンテージを巻いただけで戦うミャンマーの打撃格闘技)をやって、もしお話がなければ自分が挑戦することさえできなかったと思っていて、そういうのって縁だし、やれたことに対して感謝もあるし、違う景色を見るには違う挑戦をしなければ絶対そこに到達できないので、やったらどうかなと思って世志琥に話をしました。
――話が前後しますが、高橋選手のラウェイ挑戦、そして無敗の相手を破っての王座奪取にも驚かされました。
高橋:私は去年20周年を迎えて、21年目の目標は「世界一」だっていうことで、プロレスだけじゃなく自分で獲りに行かないと世界一にはなれない、それで他の格闘技の練習も夏ぐらいから始めて、そういう巡り合わせもあってラウェイをやることになりました。 ラウェイの時もお話をもらったのが1ヵ月ぐらい前だったんです。でも私はやる以外の選択肢はないなと思って、短期間でしたけどガッと集中して練習をして勝つことができました。やっぱりレスラーって、何かが出てくるとそこへガッと向かう力はとてつもないものがあると思うので、世志琥も行けるだろうって思ったし、何かモチベーションになるものへ向かったらまた違う世志琥が生まれるんじゃないか、違う感覚を得られるんじゃないかっていう確信がありました。
――ラウェイに向かう高橋選手の姿を間近で見ていて、世志琥選手はどのように思いましたか?
世志琥:そこに行くまで普通にプロレスの試合もあったし、1ヵ月ぐらいしかなかったので単純にスゴいなって。ラウェイで女子の国際戦は初めてだったっていうし、そういうのに挑戦するっていうのは尊敬する部分があります。いや、それはちょっと言い過ぎですね、流れで言っちゃいましたけど(笑)。
――実際に素手でのパンチのほか、頭突きやヒジまで許されるラウェイの戦いを経験していかがでしたか?
高橋:不安が無くなることはなかったし、試合前、死んじゃうんじゃないかと思ったり、それでもしょうがないと思ってやりました。相手はそれを専門にやっている訳で、やっぱり甘くないなっていうのは感じたんですけど、でも私がこのパンチで倒れることはないなって思いました。痛いし、ボコボコ殴られて試合後腫れたりしたんですけど、プロレスの方が痛いしシンドいなって。
――他の誰も持たないラウェイのベルトを獲得し、“世界一”の座へ幸先のよい勝利となりました。今後もこのように、他の競技にも挑んでどんどんベルトを狙っていく?
高橋:これはけっして舐めた言い方ではなくて、やれることがあるならやりたいです。タイミングとか自分のコンディションとかプロレスとの兼ね合いがあるのでいろいろ難しい部分もあるんですけど、タイミングが合えば行きたいなっていう気持ちはあります。
――その後高橋選手は1月のSEI☆ZAでも勝利し、世志琥選手が2月にROAD FCで勝利と、シードリングとしては今年に入り総合格闘技2連勝となります。高橋選手が言われるように、世志琥選手は挑戦を終え、違う景色が見えましたか?
世志琥:今は次またやりたいとか、また出たい、何か挑戦したいっていうのは考えていないですけど、金網や総合、初めて尽くしの中で試合をしてちゃんと勝って無事日本へ帰れたことに今は安心している感じです。でも自分はプロレスラーなのでこの経験をプロレスに活かしたいし、これからもプロレスラーが強いっていうところを見せたいです。
――すっかり女子プロレス界の武闘派的イメージがついていますが、シードリングとしては今後もこの路線・挑戦を継続していくのでしょうか。
高橋:これはたまたまというか、タイミング的にシードリングがそういうイメージでアピールするよい機会になったと思うんですけど、私はプロレスも格闘技も“戦いの場”という意味で一緒だと思っています。細かく言えば違いますけど、戦いの場に上がれば気持ちの上では一緒なので、シードリングが目指す“プロレスは戦いだ”っていう根っこの部分を大事にして、女子プロレスの本道を歩いていきたいっていう思いがあります。私は“プロレスはエンターテイメントだ”っていう見方が強くなり過ぎているんじゃないかと思うんです。でも私たちの戦いが、“やったら強いから”っていうことを見せられているのであればすごく嬉しいです。
世志琥:私もプロレスが好きだからプロレスを1番にしたいっていう気持ちがあるし、やっぱりプロレスをなめられたくないっていう思いがあります。
高橋:SEI☆ZAの時もですけど、私はすごくプロレスに助けられていると思いました。こうやってチャレンジできるのもプロレスで20年やってきた自信があるのが大きいし、プロレス界に育てられて鍛えられたから、違う分野の戦いをやっても私は負けると思いません。
――では、そういった他流試合を経て臨む3月シードリングの後楽園ホール大会が近づいてきました。世志琥選手はちょうど復帰して1年というタイミングでの大会になりますが、この1年を振り返っていかがですか。
世志琥:復帰が1年前だなんて思えないぐらい、いろんなことがあって濃かったですね。もう休んでいたのも、もっと前で忘れたぐらいに感じます。改めて思うのは、やっぱりプロレス大好きだなって。
――世志琥選手に「大好き」と言わせる、プロレスの魅力って改めて何でしょう。
世志琥:やっぱり“戦い”だと思います。他にも総合とかいろんな戦いがありますけど、プロレスにしかない、何て言うんですかね。プロレスは違うんです。もう中毒になります。
高橋:奥が深いですからね、プロレスは。やってもやっても満足することはないし、天井がないというか。私だって20年やっていても、その上その上がどんどん出てくる。やればやっただけ返ってくる、お客さんが自分の動きで喜んでくれたり泣いてくれたり感動してくれたりっていうのがダイレクトに返ってくるので、“こんな幸せなことないよな”っていつもリング上で思います。そういう感覚を味わえたら、もう中毒になるんです。
世志琥:ヤバい中毒性があるんです(笑)。これは味わった人にしか分からないと思います。もしリングに上がっても、そういうのが味わえなかったら分からないと思いますし。
高橋:自分は人生そのものがプロレスラーっていうか、高橋奈七永はプロレスで出来ているというか。やるだけでなくを買って普通に観に行くのも好きだし、本当にプロレスが好きなんです。今も飽きないし、どんどん好きになっています。だからプレーヤーの自分がそう思うぐらいなので、もっと多くの人に見に来てもらいたいっていう気持ちがあります。なのでそれをどうやってまだ知らない人に届けていくかっていうのがすごく課題で、そういうこともあって違う分野に挑戦したりしています。世志琥がROAD FCで勝ったこともすごく話題になっていますし、そういう挑戦をするっていうことはそれだけまた可能性が広がるっていうことでもあるので、そういうところに行ける準備はいつでもしておくべきだなと思います。
――世志琥選手はSareee選手との対戦が決まりましたが、これについてお願いします。
世志琥:こないだのシードリングでタッグマッチで当たって、自分の6周年試合だったんですけどぶち壊されて、両者リングアウトで決着がつきませんでした。Sareeeとはシングルを2回やっていて2回とも勝っているから全然眼中になかったんですけど、そこまで言ってくるならもう2度とそんな口をきけなくしてやらなきゃダメだなと思いました。ほんと「吐いたツバ飲み込むなよ」って。このタイミングでこのシングルを組まれたので、リングの上で分からせてやります。
高橋:Sareeeはシードリング所属の第一戦になります。
世志琥:そうか、じゃあ花を添えてあげようと思います。汚ぇ花を(笑)。
――高橋選手はまだカードが決定していないので、シードリングとはどんな団体で、リングであるかを教えてください。
高橋:いつも言っているのは“熱い女子プロレス”っていうことなんですけど、高橋奈七永、世志琥、3月から中島安里紗、Sareeeっていう選手たちが集まってきて、こっちが“熱い女子プロレス”って言わなくても、もう間違いなく熱いんです。これからもそういう、“自分もこの輪に入りたい”っていう選手がどんどん増えていけばいいなって思います。みんなが上を目指して、女子プロってスゴいんだよ、女子プロレスって面白いんだよ、ワクワクするんだよっていうことをアピールできる、自由で熱いリングがシードリングです。“戦いの苗を植える”っていうのをテーマに旗揚げしたんですけど、その芽が出て、花が咲いて育ってきてるなっていうのを本当に感じます。 4人になってシードリンクの第2章じゃないですけど、自然と違う景色になっていくと思いますし、ほんと見逃しちゃいけないリングにしていきたいと思います。女子プロレスを見たいならシードリングに来た方がいいよ、損はさせませんよっていう感じです。
――それでは最後に、大会そして今後のシードリングへ期待される方々にメッセージをお願いします。
高橋:みんな日ごろリングの上じゃなくても、いろんなフィールドで戦っていると思うんです。日々いろんな仕事で、上司だったり周りの人と戦っていると思うんですけど、その中でモヤモヤしたりすることもあると思います。でも、そういうものを払拭するためのきっかけになる戦いを私はリングで見せていきたいと思っていて、高橋奈七永が代わりに誰かをぶん殴って、その姿を見てスッキリしてもらいたいし、私はやられてもやられてもまた立ち上がるので、そういうところと人生をリンクさせて見てもらっても楽しいと思います。そういう次の日の第一歩になるような戦いをシードリングでお見せしたいと思ってますので、本当に気軽に見に来てもらえたら嬉しいです。レディースシートを作って女性も来やすい雰囲気になっていますし、私たちはシードリングのファンの人たちを「シードラー」って呼んでいるんですけど、もう気軽にシードラーの仲間入りをしてもらいたいなと思います。
世志琥:私はやっぱりシードリングの一員として、シードリングを1番にしたいし、シードリングを1番だと思ってやっていきたいです。盛り上げたいっていうのもありますし、そのために自分ができることはやりたいなと思います。なので、またシードリングの試合へ向けて肉を2キロ食おうと思います(笑)。