自分たちの全てを音に変え輝いた、LEGO BIG MORLの結成10周年記念ワンマン
LEGO BIG MORL 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)
LEGO BIG MORL 10th anniversary SPECIAL LIVE 2017.3.28 新木場STUDIO COAST
新木場STUDIO COASTにて開催された、LEGO BIG MORLの結成10周年記念ワンマン。昨年3月28日から続く10周年プロジェクトの締めくくりがそのライブであること。新木場STUDIO COASTはワンマンの会場としてはバンド史上最大のキャパシティであること。そして中盤のMCでも明かされた通り、この会場はメンバーが長年憧れてきた場所だったこと。様々な要素が絡まり合い、当日を迎えるかなり前から“特別な日”として位置付けられていた2017年3月28日。そこに懸けるバンドの想いは強く、4人はこの1年間、この1日に向かって走り続けていた。だからこそこの日はこの1年の、いや、この10年のすべてが溢れては止まないような夜になったのだと思う。
1年前の赤坂BLITZでのワンマンでは、アサカワヒロ(Dr)が鼓動のリズムでバスドラを踏みしめる中、メンバーが一人ずつステージを去る――というシーンで本編を終えたが、この日の会場に入ると、まるでそれからの日々が地続きであったことを示すように、BGMとして鼓動の音が響いていた。コースト名物・フロア中央頭上の巨大ミラーボールがフロアを動脈の赤に染めるなか、鼓動の音は次第に大きくなり、静脈の青色がゆるやかに混ざっていく。カナタタケヒロ(Vo/G)、タナカヒロキ(G)、ヤマモトシンタロウ(B)、アサカワがステージに揃った。
LEGO BIG MORL 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)
1曲目に選ばれたのは、赤坂で本編ラストに演奏された曲、そしてこの1年間大切に鳴らされてきた曲「end-end」。そして「新木場STUDIO COASTへようこそ!」とカナタの挨拶を機に溢れ出すのは、「dim」(レゴ初のオリジナル曲)の爽快なサウンド。この2曲の並びからして、今日のライブは10周年を締めくくるためだけではなく、これから先の世界へ一歩踏み出すためのものであることが伝わってくる。しかし冒頭2曲の演奏は会場の規模に対してやや物足りない感があったのが正直なところ。バンドの音が良い方向に変わったのは3曲目「テキーラグッバイ」からだった。ライブ定番曲というだけあり、オーディエンスも「ハイ!」と積極的に声で加勢。それによって4人の緊張がほぐれたのか、リズム隊の小気味良いビートはオーディエンスのジャンプを誘い、タナカは立膝状態になりながら熱量の高いプレイを見せ、カナタの声はのびのびと遠くまで飛ぶようになった。MCに入るためここで一旦音が止むと、フロアから「おめでとう!」などと声が飛び、タナカが「いつも静かなクセによう喋るな(笑)」とすかさず一言。すっかりいつもの感じだ。
LEGO BIG MORL 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)
1stアルバム『Quartette Parade』収録曲が連続で演奏される場面もあったが、前半戦ではこのバンドのテクニカルな側面が浮かび上がり、だからこそ10年間での成長を読み取ることができた。例えば「三月のマーチ」の、歪だからこそ美しいあのコード進行。一際強い意味が宿り、力強く歌われるようになった「その時のこと」。呼吸を循環させるように静寂と激情を行き来する「A」のサウンドスケープ。それらの響きはどれも当時とは異なるもので、思わず息を呑んでしまう場面も多数。一方、このバンドの曲には間奏やアウトロで特に遊びまくっているものも多く、そういう箇所での“スタジオセッション延長戦”的なテンションも健在。音でじゃれ合うような温度感のアンサンブルに乗って、オーディエンスは思うがままに身体を揺らしたり歓声を上げたり。そして「どうっすか? カッコええやろ」とタナカが投げかけると、フロアから拍手が。バンドが音楽へ向けたその愛情に、聴き手が心躍らせ、また愛情で返していくこの感じ。フレーズひとつをとっても結構小難しいことをやっているし、なかなか一筋縄ではいかないバンドだけど、だからこそ、そのひとつひとつを紐解き歩み寄ってくるようなファンのことを彼らは10年間大切にしてきた。そして「この1年みなさんにはホンマに愛をもらったので、今日は全力でみなさんに愛を返していきたいと思います。そういう曲を聴いてください」(タナカ)と届けられたのは「大きな木」。<君の中に潜り込んだ/2つの鼓動は重なる>というフレーズは、まるで今この時を切り取っているかのようだ。
「大きな木」で前半戦が締めくくられ、ヤマモト&アサカワによるスリル溢れるセッション(途中にはビールで乾杯するお茶目な場面も)が空気をガラッと塗り変える。加速を重ねる展開に心奪われていると、いつの間にか「Wait?」イントロへ。ここでなんと、フロア後方からタンバリンを持ったカナタとビデオカメラをまわすタナカが登場したのだ。フロアを縦断しながら2人がステージに辿り着くと、いよいよ後半戦へ。観ている側のネジを吹っ飛ばしていくような狂騒感は、オーディエンスの歌声をも引き連れながら絶頂へ。カナタ、「ピーク! ピーク! すごくピークを感じてます!」とありのまま興奮を伝える。
LEGO BIG MORL 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)
そんな怒涛の展開の中で一際輝いていたのが、翌日に発売されたニューアルバム『心臓の居場所』収録の「君の涙を誰が笑えるだろうか」、「問う今日」、そしてアンコールに演奏された「あなたがいればいいのに」だった。曲調は違えど、3曲とも、もがいたり足掻いたりしながらこの10年を歩んできたレゴだからこそ歌える希望の歌である点は共通。アンコールでタナカが言葉を詰まらせながら明かした通り、長年共にやってきたマネージャーが辞めることになった、という意味でもこの日のライブは特別だったそうだが、言葉にしがたい感情もすべてに音に落とし込んでいくような4人の演奏は、胸が押し潰されそうになるほどの輝きに満ちていた。
「あーあ。こういうのやってるバンドがいたらいつも冷めた目で見てたのに」とタナカはボヤいていたし、言わんとしていることも分かる。しかし、実際、その演奏に目を潤ませていた人が多かったのも事実で。この日は確かに10周年の先へ突入するためのライブで、バンドは既に前を見ていたが、とはいえ、人間そんな簡単に前を向ききれないこともある。そういう部分とまっすぐ向き合いながら苦悩する過程こそが、このバンドを美しく、熱くさせてきたはずだ。自分たちの武器を明確に定めずいろいろなやり方をしてきたからこそ、バンドとしての土壌が鍛え上げられ、技術面・表現面での豊かさを手に入れることができた。だからこそ、この日のように温かなライブが生まれた。曲がりくねった道ばかり歩いてきたからこそ、希望に至るまでの道のりの長さと自分の手でそれを掴むことの尊さは知っている。だからこそ、『心臓の居場所』というアルバムが生まれた。決して外側に分かりやすく伝わるような音楽をやっているわけではなく、なかなか一方向に振り切ることのないこのバンド。しかしそういう自分たちの性格や歴史も含め、今のレゴは全部を音楽に変えている。希望も闇も内包した、一色では表せないこの姿こそが、LEGO BIG MORL 10周年の音である。
LEGO BIG MORL 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)
「みんな俺らのこと心配してるんでしょ? たぶん11年目も大丈夫です。……たぶんは要らんな。たぶんって言ったらアカンのか。11年目も大丈夫です!」とタナカ。“絶対大丈夫”と言われるよりも何故だか安心したような気持ちになったのは、おそらく私だけではないだろう。強くはなりきれないからこそ、光になることを望んで、足掻く。そういう人間の姿は同じような痛みを抱える人にとっては、強烈な光になりえるものだ。
それで良いし、それが良い。「これが最後になってもいい」という覚悟でステージに臨み続けたこの1年の答えが、バンド自身の道のりをやさしく肯定するものだったことを嬉しく思う。自らの生きる場所を確かめられたならば、きっと大丈夫。こうしてレゴは、11年目の春へと向かっていく。
取材・文=蜂須賀ちなみ
LEGO BIG MORL 撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER)
2.dim
3. テキーラグッバイ
4.Spark in the end
5.バランス
6.三月のマーチ
7.Noticed?
8.その時のこと
9.A
10.大きな木
11.Wait?
12.ドリルドリル
13.正常な狂気
14.溢れる
15.君の涙を誰が笑えるだろうか
16.問う今日
17.LAIKA
18.ワープ
19.Blue Birds Story
20.RAINBOW
[ENCORE]
21.あなたがいればいいのに
22.Ray
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販売制限:3歳以上はが必要/入場に関する年齢制限なし/1公演につき4枚までお申込み可能
注意事項:客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがありますので予めご了承下さい。