「明日からも笑って生きていけるように」――ゆかりんツアー「*Sunny side Lily*」千秋楽は感動に包まれた
ゆかりんツアー「*Sunny side Lily*」千秋楽レポ
ゆかりんこと田村ゆかりさんが、4 月から開催していたライブツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2015 Spring *Sunny side Lily*」。全国 11 ヶ所 14 公演の約 5 万人を動員した史上最大規模のツアーとなった。2015年 6 月 28 日(日)に行われた千秋楽公演/東京・国立代々木競技場公演2日目の詳細レポートをお届けする。
■ <今から鍵を探そうか>──『I DO愛』からライヴスタート!
千秋楽とあって開演前から異様な熱気に溢れていた会場だったが、暗転と共に沸き起こった大歓声がこの日のライヴへの期待度を物語っていた。カーテンにも見える白い布、ベッドのフレームのような可愛らしいピンクのステージセットから、スラッと伸びた花道──その花道の先端部分(アリーナ中央センターあたり)から、せりあがる形でオンステージしたゆかりん。『I DO愛』を爽やかに届けると、文字通り「ゆかり愛」を背負った、超満員の王国民たちがピンクの光でエールを送る。この一団となっていく光景は、何度見ても感動してしまう。
そして、桃色男爵(バンドメンバー)が待つメインステージに戻ると、レイザーが観客の頭上を勢いよくすり抜けるなか桃色メイツ(ダンサー)と一緒に『秘密の扉から会いにきて』を元気いっぱいにパフォーム。くすんだネコとくすんでないネコも「世界一かわいいよ」に花を添えた『fancy baby doll』、アッパーな『アンドロメダまで1hour』と続け、ピンクと白のドレスがよく映えるカラフルなセットリストで序盤を駆け抜けた。
「こんばんはー!田村ゆかりです。ついに14公演目、千秋楽、国立代々木競技場第一体育館……です! 千秋楽の入れ場所、間違えちゃった気がする(笑)」
お茶目な挨拶から、話は朝ごはんの差し入れへと変わる。
「7時にオープンするお店のサンドウィッチをスタッフさんが並んで買って来てくれて、今朝はそれを食べました。申しワケないです。ゆかりが好きだと言ったばかりに。……好きって言わないほうがいいのかな(場内から「えぇー!」の声)。だって好きって言ったら買ってもらっちゃうわけだから。でも好きなものは好きって言いたいよね。……ここで次の曲なんだっけ?(と曲順を確認する) あーっ、凄くない!?ゆかり!」と、驚いた様子で始まったのは、『好きだって言えなくて』と『I.N.G』。甘酸っぱい恋心を爽やかに歌うと、一旦バックステージへと戻りムービーへ。
■ 前回のライヴに引き続き、妖精との物語が
ステージの左右と、メインステージのバックのスクリーンに映ったのは、2月に行われた「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2015 Winter *Lantana in the Moonlight*」@日本武道館にも登場した、花の妖精と恋に悩む女の子である。
前回は妖精に恋(勇気)の魔法を掛けてもらい、一歩前に踏み出した女の子であったが、今回は妖精が女の子に恋をしてしまうお話。ある晩、月夜のお花畑へと散歩に出かけ、花言葉で遊んでいるうちに女の子に対する想いに溢れてしまい、妖精の体は徐々に消え始めてしまう。
闇の世界へ葬られる直前に、自分の気持ちを“薔薇”として伝えた妖精と、妖精が消えたあとに薔薇の花言葉が“愛”だと知った女の子。お花畑に残された女の子は何を思ったのだろうか。
映像が明けた後、斜めカットの純白のドレスのゆかりんがステージ中央に現れ、テーブルに添えられた花を見つめながら、人魚姫のような切ない恋を表現した『レリーフのひとかけら』を優しく歌う。<好きだと言ってはいけない/さよなら言ってもせつない><いつでもあなたは/そばにいるのに>という言葉が痛いほど胸に染みた。
■ アコースティックコーナーにいく前に
アコースティックのセットに転換をする様子をステージ上でじーっと見つめるゆかりん。なんともシュールな光景である(笑)。楽器をいじり「あまりにも堂々と鍵盤に手を伸ばすので、よく弾けるの?って言われる」とランダムに鍵盤を叩き出す。後から登場した桃色男爵と「今の気持ち」をテーマに、キーボードで即興でセッションしたり、さらに新規メンバー2人のあだ名の和気藹々と説明したり、仲の良さが伺えるかのようだ。その直後の「まぁ、今回のツアーからの、そんなに心の距離も近くない我らですけど」とテンション低めで話すゆかりんには、桃色男爵からはツッコミが入っていたが(笑)。
アコースティックの準備が終わると「じゃあ心の距離が近い5人で、アコースティックやりたいと思います」と『虹の奇跡』を優しいトーンで歌い上げる。この日は『まだ好きでいさせて』『うたかた』と珠玉の名曲を選曲。しっとりと会場を潤したのだった。
再びムービーへ。バーチャルデートは千葉の松戸に始まり、東北、大阪、京都、北海道、福岡、最後に新潟……と、ツアーでゆかりのある地を巡るもの。地元・福岡でマリンメッセを見て「いつか行ってみたいけど!」と明るく話すゆかりんに応援の声が湧く。新潟での「なんかさぁ、落ち込んじゃったり、さみしくなったりしたこともあったんだけど、君と一緒に旅して、笑えて、すごく楽しかったよ。ありがとう」「また来ようね、約束だからね」というメッセージは、ツアーに遊びに行ったファンも想いを重ねたのではないだろうか。
ここで柔らかなドレスに衣装にチェンジして、『Traveling with a sheep』でファンタジックな物語を。続けて、桃色メイツ3人がバレエともミュージカルとも捉えられる美しいダンスを舞う中で『砂落ちる水の宮殿』を繊細に歌い上げ、霧が晴れていくなか『神聖炉』を神秘的に紡ぐ。前回に引き続き、表現者としての魅力を感じさせる美しいブロックだ。そこから『恋のアゲハ』『Luv Fanatic』『エキセントリック・ラヴァー』と三者三様の楽曲を黒のセクシーな衣装で表現。ゆかりんにしかできないパフォーマンスで、強く印象付けた中盤戦であった。
■ 鍵がついに開く……!?
ここで“大人の事情と戦う”『乙女戦士クルピヨン』のムービーが始まり、客席から「おぉー!?」と驚きの声が。というのも、前日の公演で公開されたのは最終回というテイストで、クルピヨンのシリーズが終わってしまうかと思いきや、千秋楽でまさかの新作が。物語は太郎君から相談を受けた桃子(ゆかりん)が、職場から帰ってこない太郎君のお父さんの様子を見に行く、というところからスタートする。初上映ということもありシーンひとつひとつに歓声が起こったが、中でも珍しいゆかりんのスーツ姿には特に大きな歓声が。
桃子の働きで、太郎君のお父さんを支配している課長がワカメ怪人だったことが分かり、クルピヨンに変身。戦隊モノらしく街で巨大化したり、かと思ったら「スカートの中身が下から丸見え」という理由で小さくなったり(笑)、見どころ満載の戦闘シーンを経て無事に勝利。最後に「大人の事情がある限り、彼女はきっと戻ってくる!」というナレーションがあったので、また会えることに期待……!
上映が終わると、メインステージには大きな宝箱が(この一連の流れは前回のライブレポートを参照)。カウントダウンが始まり宝箱が開くと、パステルカラーのドレスをまとったゆかりんが花道先端の下からせりあがる形で元気いっぱいに登場し、悪の組織・JJ団に封印されていた『スパークリング☆トラベラー』が解禁! JJ団のジジとジョー、くすんだねことくすんでないねこもステージに上がり、ハッピーな一体感を持って披露されたのだった。
ブレイクでは「もうゆかり、ポップアップで飛ぶのイヤなの!」とさきほどの登場シーンについて語りつつ、地方でカラオケ屋に入ったときのエピソードや、そこで『好きだって言えなくて』を歌おうとしたらスタッフさんにマイクを奪われた話から、『好きだって言えなくて』の振付のレッスンになるなど、相変わらず楽しいMCが繰り広げられる。しかし本編もいよいよクライマックスへと差し掛かる。
■ 畳み掛けていくだけじゃないラストスパート
巨大風船がアリーナに舞うなか、トロッコで客席をグルりと半周して『君と LOVE』を。後方の客席でもゆかりんを近くに感じられる嬉しい演出である。残りの半周では『Fortune of Love』を歌いハッピーなムードで会場を満たすと、今度はカラフルなレイザーが飛び交うなか『W:Wonder tale』を。さらに『Candy Smile』『もうちょっと Fall in Love』『Pleasure treasure』と、ラストパートをポップに、賑やかに駆け抜けていった。
キラーチューンを畳みかけたあとは、一瞬の静寂と水の音色が……。前回のライヴでは本編ラストに、異色のロックチューン『エキセントリック・ラヴァー』を衝撃的にパフォーマンスしたが、今回本編ラストに選曲されたのは、バラードの『雨のパンセ』。純白のドレス姿で、妖精の叶わぬ想いを歌うように、切なくしっとりと。雨を彷彿させるステージ照明の演出も美しい。オーディエンスの包み込むような拍手が、盛大なアンコールに繋いでいく。
■ まさかの曲からアンコールスタート
アンコールはゆかりん柄Tシャツとミニスカートというスポーティなスタイルで、『未来パラソル』からスタート。6年振りに披露となる選曲に、ファンからは驚きと感動の声が上がる。まるで、『雨のパンセ』で振っていた雨が止み、虹がかかったように輝くゆかりんとステージが印象的であった。『Gratitude』では桃色男爵と一緒に花道を駆け抜け、<ひとりなんかじゃないよと/熱く深い勇気をくれる><ありがとう/嬉しい涙をたくさん/優しい声をまっすぐに>──とオーディエンスへの感謝の気持ちを弾ける歌声で届けるゆかりん。サビに合わせてシルバーとピンクのテープがどかーんと宙を舞い、客席を煌びやかに彩った。
「千秋楽アンコールまで来てしまいました。ツアーではいろんなことがありました。今日だけでも、いろいろなことがありました。さっき出た特効テープ、リハのときに間違って出ちゃって。玉が一個しかないから、みんなで回収して巻きました(笑)。全スタッフで巻いてゆかりも着替えなきゃいけないギリギリまで巻きました」
リハで回収した特効テープのなかに、間違って前日の金色のテープが1本入っていたことに気づき、その裏にメッセージを添えて入れたと話すと、受け取ったオーディエンスが嬉しそうに掲げる(その表情がスクリーンに抜かれ、思わずこちらも笑顔に)。「ちゃんと届いたんだ、嬉しい。みんなで巻き巻きしたから、指紋とかついてるかもしれないけど……そこは許して」「最後の最後にスペシャルイベントみたいなのが起きて。今までも一致団結していたとは思うんだけど、より一致団結したと思う」「それのおかげであんまり緊張せずにステージにあがれたかも」──実際とても大変な作業だったのだろうが、それすら嬉しそうに語る様子から、ツアーの充実感を改めて感じさせる。オーディエンスとの会話を楽しんだあと「名残惜しいですが、最後の曲に行きます!」と、『あのね Love me Do』を披露。まっすぐなラブソングで最高のフィナーレを描き出したのだった。
■止まらない拍手と歓声を受けて……
しばらくオーディエンスひとりひとりと視線を結ぶように手を振っていたが、「ゆかりー!」の声援を受け止めながら花道をゆっくり歩き出し、今ここに立っている瞬間に感じている素直な気持ちを吐露する。
「ツアーは本当にいろいろなことがありました。楽しかったこともあったけど、嫌なこともあって。でもみんなが笑顔をくれて……本当にありがたいなと思っています。今回のツアーでどうしても歌いたくて毎週歌ってて。本当は色々な気持ちがあって、あんまり歌いたくないなと思ってる曲なんですけど、最後の最後に歌いたいなと思います。いつも上手に歌えなくて、今日も上手に歌えるか分からないけど……歌いたいと思います」
大きな声援が贈られるなか、ピアノの伴奏に合わせて『you』を。この曲に対して複雑な想いを抱いていることは以前ブログにも綴っていたが、切なくて震えるような、美しくて泣きたくなるような繊細な歌声は、ツアータイトルの“Lily”の花言葉を改めて感じさせる「これ以上ない」完璧なものであった。
喝采が止まらぬなか、最後に「明日からも笑って生きていけるように支えてくれると嬉しいです」と精一杯のメッセージを贈り、*Sunny side Lily*の幕が閉じたのであった。
[文・逆井マリ]
■「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2015 Spring *Sunny side Lily*」セットリスト
01 I DO愛
02 秘密の扉から会いにきて
03 fancybaby doll
04 アンドロメダまで1hour
05 好きだって言えなくて
06 I.N.G
07 レリーフのひとかけら
08 虹の奇跡
09 まだ好きでいさせて
10 うたかた
11 Traveling with a sheep
12 砂落ちる水の宮殿
13 神聖炉
14 恋のアゲハ
15 Luv Fanatic
16 エキセントリック・ラヴァー
17 スパークリング☆トラベラー
18 君と LOVE
19 Fortune of Love
20 W:Wonder tale
21 Candy Smile
22 もうちょっと Fall in Love
23 Pleasure treasure
24 雨のパンセ
<ENCORE>
25 未来パラソル
26 Gratitude
27 あのね Love me Do
<W ENCORE>
28 you
【リリース情報】
ライブ Blu-ray&DVD
「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE *Lantana in the Moonlight*」
2015.7.29 release
【Blu-ray】7,000円+税
【DVD】 7,000円+税
>> 田村ゆかり Official Web-Site