『エリック・カール展』をレポート 色彩豊かな絵本の世界と、歩んできた道のりに迫る

レポート
アート
2017.4.27

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世田谷美術館にて、『エリック・カール展 The Art of Eric Carle』(2017年4月22日〜7月2日)が開催されている。『はらぺこあおむし』の作者として世界的に有名な絵本作家であるエリック・カールの展覧会は、日本では約9年ぶりの実施となる。本展は、米国・マサチューセッツ州にあるエリック・カール絵本美術館の全面協力のもと、代表作の絵本原画や立体作品、舞台装飾デザインなど多岐に渡った作品約160点が展示されている。一般公開に先立ち公開されたプレス内覧会より、本展の見どころを紹介しよう。

絵本作家エリック・カールについて

カール氏は1929年、アメリカのニューヨーク州に生まれ、ドイツで育つ。その後アメリカに戻り、グラフィック・デザイナーとして活躍した。1968年には初めての自作絵本『1,2,3 どうぶえんへ』(ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞)を発表。以来、世界中で親しまれる絵本作家となる。ベストセラーの絵本『はらぺこあおむし』は昨年、日本での刊行40周年を迎えた。

『1,2,3どうぶつえんへ』最終原画、1986年、エリック・カール絵本美術館  © 1968 and 1987 Eric Carle

『1,2,3どうぶつえんへ』最終原画、1986年、エリック・カール絵本美術館  © 1968 and 1987 Eric Carle

『はらぺこあおむし』関連作品原画、制作年不詳、エリック・カール絵本美術館  © Eric Carle

『はらぺこあおむし』関連作品原画、制作年不詳、エリック・カール絵本美術館  © Eric Carle

約160点の作品で振り返る、エリック・カールの世界と物語

本展は、「エリック・カールの世界」と、「エリック・カールの物語」の2部構成となっている。

第1部は色彩豊かな絵本の世界を、「動物たちと自然」「旅」「昔話とファンタジー」「家族」という4つのテーマで紹介している。第2部はカール氏の人生や創作の原点に迫った内容で、「初期作品・素描」「画家とともに」「広がるカールの世界」「カールと日本」という4つのテーマで、カール氏の作家としての人生を振り返る。

動物や昆虫を描く、鋭い観察眼と繊細な表現

『こぐまくん こぐまくん なに みているの?』表紙原画、2006年、エリック・カール絵本美術館  © 2007 Eric Carle

『こぐまくん こぐまくん なに みているの?』表紙原画、2006年、エリック・カール絵本美術館  © 2007 Eric Carle

カール氏が最も得意とする生きものたちを取り上げた第1部内のテーマ「動物たちと自然」では、色彩豊かに描かれた動物や昆虫が数多く登場する。動物の肌の質感や昆虫の足の繊毛までもが繊細に表現されており、カール氏の鋭い観察眼を見ることができる。

数・曜日・12ヶ月などでめぐる「旅」をテーマにした展示では、『1,2,3 どうぶえんへ』と、日本でもおなじみの『はらぺこあおむし』が登場する。いずれも、文字や数字を覚えるといった、子どもにとっては難しいことを乗り越えられるようにと考えられた作品だ。

カールと日本のつながりにも注目

『うたがみえる きこえるよ』最終原画、1972年、エリック・カール絵本美術館  © 1973 Eric Carle

『うたがみえる きこえるよ』最終原画、1972年、エリック・カール絵本美術館  © 1973 Eric Carle

カール氏は「色の魔術師」と称されるほど、色彩豊かな世界を表現している。その色使いに影響を与えたフランツ・マルクやアンリ・マティスといったアーティストたちの作品の展示もされており、創作活動の原点に触れることができる。また、立体作品や舞台美術などの、絵本を超えたアーティストとしての一面に加え、いわむらかずお氏との共作による作品原画や、和服にインスピレーションを得て制作された作品など、日本とつながりのある作品を紹介する。

初期の素描

初期の素描

日本の出版社によって印刷・製本された『はらぺこあおむし』の初版本

日本の出版社によって印刷・製本された『はらぺこあおむし』の初版本

エリック・カール本人も太鼓判

プレス内覧会には、今年88歳を迎えるカール氏が杖をついてゆっくりと登場し、本展に寄せて見どころなどを語った。「こんなにいい形でたくさんの作品が集まっているのは初めて、すごくいい展覧会だ」と太鼓判。見どころを聞かれると作品に向けて指さしをしたり、時折笑顔を見せて語る姿が見られた。「子どものための絵本以外にも、今回は初期の作品や最近の作品、パウル・クレーへオマージュした天使の作品も見て欲しい」とのこと。最後に日本の好きなところを聞かれると、「エブリシング」と即答したのが印象的だった。


会期中は関連イベント、オリジナルグッズも盛りだくさん

世田谷美術館では、室内音楽とワインが楽しめる大人向けイベント、どなたでも参加できるワークショップといった、関連イベントが多数予定されているので、こちらもチェックしてほしい。また、展覧会特設ショップでしか手に入らないオリジナルグッズも必見だ。


 
イベント情報
エリック・カール展 The Art of Eric Carle

会期:2017年4月22日~7月2日
開館時間: 10:00~18:00入場は17:30まで
休館日: 毎週月曜日(ただし5月1日は開館)
会場: 世田谷美術館 東京都世田谷区砧公園1-2

※東京会場(世田谷美術館開催)の後、7月29日~8月27日に京都会場(美術館「えき」KYOTO)、10月28日~12月10日に岩手会場(岩手県立美術館)、2018年4月14日~5月27日に福島会場いわき市立美術館にて開催
展覧会公式サイト:http://ericcarle2017-18.com/

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