それでも尚、未来に媚びるSPICE初登場インタビューで才能の片鱗をみせる
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それでも尚、未来に媚びる
それでも尚、未来に媚びるというこの一風変わった名前のバンドが2017年3月8日に 2nd Mini Album「四季、式として」よりをリリースする。大阪で結成された“それ媚び”と訳されるこの5人組バンドが今、激情的なボーカルや、激しいライブパフォーマンスで人気を集めている。リリースと、大規模な全国ツアーを開催予定の彼らに直撃した。
それでも尚、未来に媚びる
――初登場という事で、まずはバンドの成り立ちから教えて下さい。2012年結成とお聞きしました。
オイケリョウタ:僕とがーこが大学の同級生で、大学の時それぞれ別のバンドをやっていて、一緒にやろうといいながらなかなか実現しなくて、就職活動の時期にさしかかった時、いよいよやろうと話を進めて。
――バンドではそれぞれどんな音楽をやっていたんですか?
オイケリョウタ:がーこは、どうしようもないくらい暗いバンドで、僕はもっとポップな感じのバンドをやっていました。僕の方は、何か月かに一回ライブをやっているような、ぬる~いというか趣味程度でやっていて、がーこの方は結構がつがつやっていて。それで僕のバンドのドラムが抜けて、活動ができなくなって、その時に一緒にやろうということになって、就活で履歴書とか一生懸命書きながら、ギター弾いていました。
――将来は音楽で飯を食べていこうという感じではなかったんですか?
オイケリョウタ:そこまでは思っていなくて、内定もいくつかもらっていて。僕は一生懸命就活をやったというよりは、妥協すれば何社か行けるというのがあったので、一応やっておこうかなという感じでした。
――それが見事に音楽業界に就職して。
がーこ:僕がこいつの人生変えてしまいましたね
オイケリョウタ:僕はゆくゆくはカフェの経営をやりたくて、飲食関係で働いて将来的にカフェをやりたいと当時は思っていました。
――全く違う音楽をやっていた二人が一緒にやる事になって、具体的にどういう音楽をやろうという事になったんですか?
がーこ:具体的にこうというより、今まで何かを意図して音楽を作れたことがないです。今こういうのが流行っているから、狙いすましてこういうの作ろうとか全く考えた事がないです。
オイケリョウタ:僕らの音楽はジャンルだけで見ると、いわゆる今シーンで注目を集めているようなジャンルではないですよね。めちゃくちゃカッコイイとは思いますが(笑)。
がーこ:こいつはでも元々ポップなバンドをやっていたので、僕が曲を作っている中で、メロディに関してだけはすごく厳しいんです。
――コピーはやっていたんですか?
オイケリョウタ:高校生のときは軽音学部でアジカンとかエルレガーデン、ACIDMANとか洋楽だったらレッチリが好きでした。
がーこ:でもそのバンドが好きでも、そうなりたいというわけではないので、そことの差別化は曲作りの時に話合ったりしました。あまり寄りすぎないようにというか。僕はもろに歌謡曲や演歌の影響を受けています。
――曲にどこかノスタルジー感を感じます。攻撃的なサウンドに、ノスタルジーを感じるメロディが乗ると間口が広がりますよね。デビュー当時から精力的にライブを行っています。
がーこ:ライブの本数は、他のバンドの3倍くらいはやっていると思います。
オイケリョウタ:難しい事は考えずに、ただただライブが好きなだけなんです。ライブしないと僕ら死んじゃいます。病気だと思う。
がーこ:言い方は悪いかもしれませんが、人間味あふれるイベントというか、おいしいイベントよりは、ライブハウスの知り合いが、熱意をもって「この日ライブ組みたいんやけど一緒にやろうぜ」と言ってくれるものを優先してしまうタイプです。人の熱い思いを感じ、それを僕が受けてメンバーにふって、スケジュールを決めていきます。
オイケリョウタ:僕はクールで残忍な人間なんですけど(笑)、こいつは人情味溢れる人で。人情というか、イベンターさんでも熱意のある、気持ちがある方に声をかけてもらうと動いてしまうタイプなので、そういう感じでブッキングしていくと、自ずとライブの本数は増えていきます。
それでも尚、未来に媚びる
――人気も出てきて、さらに声がかかって、本数が増えてきていると思います。
オイケリョウタ:始めた頃と今と違うところは、今のほうが多少多いですが、場所が違ってきています。全国でできるようになりました。昔は大阪だけの、小さいコミュニティの中で本数が多いというう感じでした。
――「それでも尚、未来に媚びる」というこのインパクトがありすぎるバンド名は、いつ付けたんですか?
がーこ:大学時代、一緒にバンドをやろうと言った時に、じゃあ先にバンド名を考えようと。
オイケリョウタ:当時彼は英語のバンド名で、よく一緒にライブを観に行っていたのが、凛として時雨とか東京事変で、僕は椎名林檎さんが昔から好きで、日本語の変わった名前のバンドが登場してきた頃で、それで、僕が大学の授業中に思いついて。降ってきたのをキャッチしました(笑)。ここきちんと書いておいてください(笑)。
――いい言葉ですよね。
がーこ:パンチもありますし、字面もカッコイイと思う。媚びると言っているものの、音楽には愛嬌はないですけど。
オイケリョウタ:日本で初めて「媚びる」という言葉を、カッコよく使った男かなと僕は思っていて(笑)。
――バンドの現在と過去と未来というものを想像してしまいます。歌詞もこのバンド名である事によって、深読みしてしまうというか。
がーこ:たまたまですけど、僕が書いている歌詞の感じとすごく合っているなと最近よく思います。
――がーこさんが書くあの歌詞は、すらすら出てくるものなんですか?
がーこ:雑巾を絞って絞って、ようやく垂れた一滴を集めて作る感じです。
――それで濃いんですね。
がーこ:そう、凝縮されています。普段から言葉をメモするようにしていて、面白い単語や、妙にダサい単語とかがすごく好きで。そういうのをまとめたりします。あまりかっこつけすぎるのも嫌なので。
――先ほどのお話だと、量産型ではないですよね?
がーこ:全然です。書き溜めることがあまりできていなくて、毎回それを使いきってしまうので。
――短編小説みたいですよね。短い行数の中ですごく考えさせられる、想像力を掻き立てられる詞です。
がーこ:嬉しいです。
オイケリョウタ:客観的に他のアーティストさんのCDを聴いた時に、ちょっと長めのアルバムだといい意味で抜けているというか、暑苦しくない曲というか、昔でいうところのB面曲のようなものを散りばめがちですが、僕らはそれがないと。それが強みであり、弱点なのかもしれませんが、ゆるい感じの曲が作れないんです。
がーこ:それでいいと思います。常に高カロリーでありたいです。
それでも尚、未来に媚びる
――この濃厚な曲達を2時間ずっとやっていると、歌う方も演奏する方もふらふらになりそうです。
がーこ:ライブが終わった後、吐いたりしています。でも音が鳴ったら楽しくなっちゃうので、普通には歌えないです。
――曲はがーこさんがまずデモを作って、それを元にスタジオで全員で肉付けして完成させる感じですか?
がーこ:逆に僕が1曲を全部作るという事がないんですよ。作りかけの状態でみんなに聴かせて、こんなイメージだけど、もっとこういうふうにしたい、ああいうふうにしたいと伝えて、後はみんなでがっちり固めていく感じです。
――スタジオでセッションしながら全体像を炙り出していく感じですか?
がーこ:だからむちゃくちゃ時間かかりますよ。
オイケリョウタ:下手くそというか不器用というか、今はみんなパソコンを使ってやっているのに、僕らはそれができないんです。もっぱら現場でセッションしながらという感じです。
――でも、言葉も音も血が通っている感じがします。
がーこ:結果的にそう捉えてもらえると嬉しいです。
――その曲の作り方は変えないで欲しいですね。
がーこ:本当ですか?僕らは簡単に作れるのなら、そっちのほうがいいんですけどね。
オイケリョウタ:スタジオに10回入るより、2回くらいでできた方がいいですよ。
――でもそうやって作る曲の方が、濃いものができますよね。やっぱり最初の段階から、全員でセッションしながら曲を作るから、パッケージにしてもセッション感を感じる事ができるのだと思います。
がーこ:Aメロをひとつ決めるのも、平気で2時間とかかかる。色々な事をやり始めるんです。
オイケリョウタ:2時間かけて決めて、よっしゃー、とりあえず形になったなっていって、でも次の日になったらやっぱりコード変えようか、という事はしょっちゅうあります。
――すごくちゃんと作っている感じがしますよね。3月8日に発売した2ndミニアルバム『四季、式として』もそうです。どの曲の詞も音もしっかり構築されていて、6曲だけどフルアルバムを聴いたような満足度の高さです。褒めすぎ?
がーこ:僕ら褒められて伸びるタイプなので(笑)。
オイケリョウタ:平成生まれの現代っ子なので褒められて伸びます(笑)。
――平成生まれですが、英語を使わずほぼ日本語で詞を構成していて、日本語の美しさにはこだわっていますか?
がーこ:それはすごくこだわっています。字面も気にしています。
――それは誰の、何の影響ですか?
がーこ:わからないのですが、僕は変なところが気になるんです。例えば仮に“ひかりの何とか”という曲を仮に作るとしたら、ひかりも普通の「光」なのか「輝」のほうがかっこいいのか、でもこっちだとキメキメすぎて微妙だから、あえて「光」のほうがいい、とか。「事」を平仮名にするか、漢字にするかとか、そこはメンバーによく相談します。
それでも尚、未来に媚びる
――確かに一文字で、イメージが全然違ってきます。
がーこ:もちろん意味は最優先ですが、発音は同じだけど意味が違う単語って多くて、それを選びだしてなおかつメンバーに相談して。『四季、式として』というアルバムタイトルにも、いっぱい含みがあって、まずバンドの「士気」、自分たちのやる気という意味もありますし、始まる時期、死ぬ時期という意味もありますし。この5人になってようやく1年経ったので、1年という意味で「四季」、1年通して組み立てた「それでも尚、未来に媚びる」という「式」のアルバムのタイトルが『四季、式として』というのはどうかなとみんなに相談して。
オイケリョウタ:しきしきとしてというのは、頭の中では決まっていたみたいで。
がーこ:語感もすごく大事にしているので、四季、式としてって気持ちいいじゃないですか。色々なしきをぶわーって書いて、並べて。
――それもまたアナログな感じですよね。
がーこ:それこそパズルみたいに、このしきとこのしきとを組み合わせてってずっとやっていました。
――そうやって語感にもこだわっているからこそ、曲にノスタルジー感を感じるのかもしれないですね。
がーこ:それ嬉しいです。
――言葉もリズムを生むし、言葉から生み出されるメロディもあるじゃないですか。だから言葉を大切にしているというのは、バンドの武器になっていると思います。
がーこ:そこまで汲み取っていただけると、むちゃくちゃ嬉しいです。
――社会や世の中にモノ申したい事を詞に反映させていると思いますが、直接的な表現はなく、圧倒的に皮肉っているところがいいですよね。
がーこ:僕は暗に意味する感じが好きで、核心に迫られるのが嫌なんです。なので大体表テーマと裏テーマを決めて、表テーマは悟られても大丈夫なんですが、裏テーマはわからないように奥の方にしまっています。
――3月にミニアルバムをリリースして、現在ツアー中ですが、各会場での手応えはどうですか?広がっている感じがしますよね?
がーこ:今までCDを2枚目出させてもらっていて、1枚目の時のツアーと比べて全然反応が違って、嬉しいですね。
オイケリョウタ:MUSIC VIDEOが完成して、先行で流して、こんな曲です、こんなアルバムを作りますという、発売前に視聴イベントのような、1日限定でフルで視聴できますという施策をやったので、そういう機会に聴いてくださっている方も多く、ノリはいいです。
――それ媚びの、今後の野望、構想を教えて下さい。
がーこ:あんまり構想は練れていませんが、とにかく曲を作って貯めるように頑張っています。いつ何があっても、パッと出せるように。そして何があっても、とにかく、地面這って泥水すすりながらやっていきたいです。
オイケリョウタ:今回ライブで初めて行った土地には、また行きたいですし、リリースツアーに入れられなかった場所もあるので、そういうところには、アンコールツアーのような気持ちで行きたいです。
――今日このインタビューの後ライブですが、そんな時にインタビューさせていただいても大丈夫だったんですか?
がーこ:全然大丈夫です(笑)。2分あれば気持ちを集中させて、キッ!て戦闘モードになりますので。
取材・文=田中久勝 写真=三輪斉史
「昨日のこと」MV
「摂氏4℃」MV
それでも尚、未来に媚びる 「四季、式として」
2017年3月8日(水)発売