シド パフォーマンスの強度にはブランクの影響などまるでない、1年7ヶ月ぶり単独ライブで全力疾走の態勢

レポート
音楽
2017.5.19
シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

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シド『夜更けと雨と』
2017.5.12(FRI)日本武道館

約1年7ヶ月ぶりの鮮やかな復活劇の舞台は、日本武道館2daysだった。2015年9月以来となる単独公演は、初日が『夜更けと雨と』、2日目が『夜明けと君と』と題したコンセプト仕様。その初日は、巨大スクリーンに映し出される美しい森、水、雨、満月のシーンと、荘厳なサウンドエフェクトと共に静かに幕を開けた。

ステージに仕込まれたポップアップからメンバーが登場する、劇的なオープニング。耳をつんざく大歓声の中、アップテンポで一気に突っ走る……と思いきや、1曲目は重厚なミドルチューン「紫陽花」だった。スクリーンには万華鏡のように回転する紫陽花の色彩。続く「林檎飴」ではぐっとテンポを上げ、マオが「武道館、行くぞ!」と激しく煽る。ステージ背後で、天井まで届く星の電飾がきらりと輝く。「罠」では七色のレーザービームが飛び交い、マオはステージ左右に張り出したウィングに飛び出して熱く歌う。2016年にはいくつかのイベント出演を果たし、短い時間ながらもバンドとしてライブは行なっていたが、フルセットでのライブは冒頭で述べたとおり約1年7ヶ月ぶり。しかしパフォーマンスの強度にはブランクの影響などまるでない。

マオ/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

マオ/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

「待ってた? 俺らも待ってた。この2daysはコンセプトライブです。期待してるかわかりませんが、かなりマニアックな曲もやります」

期待、してないわけがない。ここまで3曲は、気が付けば2004年のファーストアルバムからサードまでの曲を1曲ずつ。続く「アリバイ」もセカンド『星の都』からで、古くからのファンには感涙のセットリスト。イントロで派手に銀テープが発射される。マオ、Shinji、明希が代わる代わる左右ウィングへ走ると、東西スタンドが沸騰する。マオがマイクを客席に向けると、完璧な合唱が返ってくる。マオの満足げな笑顔がスクリーンに大写しになる。

「妄想日記」から間髪入れずに「妄想日記2」へ。強力なスカビートが炸裂し、照明は妖しくギラギラ。途中で音を止め、“もっと!”のポーズで煽るのはお約束。煽り、焦らし、突き放し、引き寄せる。シドのロックショーの醍醐味ここにあり。

Shinji/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

Shinji/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

「感慨深いものがあるというか、お客さんの顔を見た瞬間、安心しました。俺らの場所を作ってくれてありがとう」(ゆうや)
「いつも節目のライブの前には眠れないんですけど、今日は9時間半寝てます! 君らのハートを鷲掴みにして帰るから最後まで盛り上がって帰ってください」(明希)
「懐かしい曲をやるのはうれしいことです。苦労とか、いろいろ思い出します。涼しい顔して武道館やってるけど、ありがたいなって思います」(Shinji)
「俺がせっかく盛り上げたのに、そう持ってく?(笑)  そういうMCはラストのほうで!」(マオ)

うっかり、しんみりしそうなムードをマオが明るく混ぜっ返す。でもきっと4人が考えていることは同じだろう。軽やかにスウィングする「レイニーデイ」からアダルトな4ビートの「暖炉」へ、そしてポップでロマンティックな「ハナビラ」へ。明希が固定ベースでメロディックなフレーズを、Shinjiがアコースティックギターでスパニッシュなメロディを奏でる。ラストでマオが超ロングトーンのメロディをばっちり決めた。映像は水から火、花へと刻々とシーンを変えてゆく。昨年リリースされた『SID ALL SINGLES BEST』収録の「夢心地」は、ライブ初披露。天上一面に万華鏡のような光模様が現れ、ミラーボールが星の雨を降らせる。壮大でエモーショナルなスローナンバーに、オーディエンスは声を飲んで聴き入っている。

明希/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

明希/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

「鮭の切り身ってさ、細くなってるところのほうが脂が乗ってておいしいんだよね。今のシドはそうなってきてると思うんだ」と不思議なたとえ話でバンドの成長を表現するマオを、明るい笑いが包み込む。ほっこり和んだあとは、一気にスパーク。マオの「後半戦盛り上がっていけるか!」という叫びを合図に始まったのは、リリースされたばかりの新曲「バタフライエフェクト」。ずしりと重いダンスビートのへヴィロックで、スクリーンに映し出されるミュージックビデオも禍々しく刺激的。鋭いレーザービームが飛び交い、Shinjiがギターを掻きむしる。これが今の新しいシド。容赦なく、攻撃的だ。

ほとんどシングル曲をやらないセットリストの中で、2014年のシングル「ENAMEL」の強烈なスラッシュビートは圧巻だ。矢継ぎ早にアッパーでへヴィな「dummy」を繰り出し、フロアはヘドバンタイムへと突入。明希がマイクに向かい「Oi! Oi!」と叫ぶ。そしていよいよクライマックス、本編ラストは「吉開学17歳(無職)」。シドのダークサイドを代表するこの曲、限界を超える高速ビート、狂気をにじませた歌詞、禍々しさ満点の強烈な一撃。最新の「バラタフライエフェクト」へ、時を超えて変わらぬものがここにある。あの頃とは見た目も、音も、キャラも変わった。が、シドの本質は何も変わっちゃいない。

ゆうや/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

ゆうや/シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

ブレイクタイムは、たっぷり15分。赤黒のボーダーシャツにデニムのマオを筆頭に、リラックスした格好で奏でるアンコール1曲目は「硝子の瞳」。1月リリースのシングル、劇場版『黒執事』の主題歌は、ポップでダークでせつなくて速い、シドらしいヒットチューン。活発な活動を続ける2017年のシドの象徴とも言える1曲に、会場内の熱気が再び上昇してゆく。

「ここからひたすら激しい曲を。瞬きなしで」

マオの宣言通り、まずはオールディーズタイプのハードなロックチューン「循環」を。2階、1階、アリーナと、全員がくるくる回るお馴染みのシーンのなんと楽しげなことか。立て続けにアッパーな「プロポーズ」を、さらにスピードアップして「隣人」、そして本当のラストチューン「眩暈」では、ステージに炎が立ち上るド派手な演出に沸き、メタリックな重低音に武道館の壁が震え、サビでの全員ジャンプに床が大きく揺れる。なんというへヴィで挑発的なエンディング。1年7か月ぶりのシドはやはりシドだった。

「今日はみんなが引っ張ってくれて最後までぶっ飛ばせました。ありがとうございます。初日、最高でした!」

マオのお別れの言葉はマイクを通さずに叫んだ「愛してます!」だった。翌日の武道館2日目を終えれば、シドは新たなビジョンを発表することになっている。4人はすでに全力疾走の態勢に入った。今後のシドの動きに注目せよ。


取材・文=宮本英夫 撮影=今元秀明

シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

シド『夜更けと雨と』2017.5.12(FRI)日本武道館 撮影=今元秀明

 
 
セットリスト
『夜更けと雨と』
2017.5.12(FRI)日本武道館

01. 紫陽花
02. 林檎飴
03. 罠
04. アリバイ
05. 妄想日記
06. 妄想日記2
07. レイニーデイ
08. 暖炉
09. ハナビラ
10. 夢心地
11. バタフライエフェクト
12. ENAMEL
13. dummy
14. 吉開学17歳(無職)
<ENCORE>
15. 硝子の瞳
16. 循環
17. プロポーズ
18. 隣人
19. 眩暈

 

リリース情報
シングル「螺旋のユメ」 
2017年8月2日(水)発売
※TVアニメ「将国のアルタイル」オープニングテーマ
【初回生産限定盤(CD+DVD)】KSCL-2943/2944 1,500円+税
【通常盤(CD)】KSCL-2945 800円+税
【期間限定通常盤(アニメ盤)(CD+DVD)】KSCL-2946/2947 1,500円+税
※収録内容は後日発表
 

アルバム
2017年9月発売
※詳細後日発表

 

ライブ情報
MUSIC THEATER 2017
2017年5月27日(土)・28日(日)
さいたまスーパーアリーナ(アリーナモード)
【出演】
シド / 綾野ましろ / Aimer / ELISA / Kalafina / GARNiDELiA / ClariS / さユり /
SawanoHiroyuki[nZk] / 三月のパンタシア / 高垣彩陽 /
CHiCO with HoneyWorks / 戸松遥 / TrySail / 春奈るな / FLOW / LiSA
AND MORE…(両日共通)
 ※シドは両日出演となります。
料金】
各8,640円(税込)

SID TOUR 2017
9月23日(祝・土) 千葉:松戸・森のホール21      開場16:00/開演17:00
9月24日(日) 千葉:松戸・森のホール21   開場15:00/開演16:00
10月1日(日)福岡:福岡市民会館    開場17:00/開演18:00
10月8日(日)神奈川:厚木市文化会館 開場17:00/開演18:00
10月12日(木)大阪:オリックス劇場  開場17:30/開演18:30
10月15日(日)新潟:新潟テルサ     開場17:00/開演18:00
10月21日(土) 群馬:ベイシア文化ホール(群馬県民会館)開場17:00/開演18:00
10月27日(金) 東京:東京国際フォーラム ホールA 開場17:30/開演18:30
11月3日(祝・金)兵庫:神戸国際会館 こくさいホール    開場17:00/開演18:00
11月4日(土)京都:ロームシアター京都 メインホール    開場17:00/開演18:00
11月7日(火)埼玉:大宮ソニックシティ 開場17:30/開演18:30
11月11日(土)愛知:日本特殊陶業市民会館 フォレストホール    開場17:00/開演18:00
11月12日(日)愛知:日本特殊陶業市民会館 フォレストホール    開場15:00/開演16:00
11月21日(火)東京:中野サンプラザホール  開場17:30/開演18:30
11月23日(祝・木)宮城:東京エレクトロンホール宮城     開場17:00/開演18:00
11月25日(土)北海道:わくわくホリデーホール(札幌市民ホール) 開場17:00/開演18:00

 

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