『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』 バーザムの真実に迫る&岡本英郎全仕事史インタビュー後編

2017.6.5
インタビュー
アニメ/ゲーム

左から、タカハシヒョウリ、岡本英郎  撮影=岩間辰徳

画像を全て表示(16件)

ロックバンド『オワリカラ』のタカハシヒョウリによる連載企画『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』。毎回タカハシ氏が風来坊のごとく、サブカルにまつわる様々な場所へ行き、人に会っていきます。第十回となる今回は、数々のアニメ・特撮作品でデザインを担当した岡本英郎さんとの対談・後編。前回の「バーザムの真実に迫る&全仕事史~ガンダム編~」は、予想以上の大きな反響をいただきました。そして、今回はその後編として、さらなる濃さとボリュームで「特撮編」をお届けします。

前編はこちら

 

ZZの責任を取った『鎧伝サムライトルーパー』、初の特撮作品『超人機メタルダー』

タカハシ:1988年の『鎧伝サムライトルーパー』は、『ZZガンダム』降板の責任をとって企画段階から関わった訳ですよね。当時は、『聖闘士星矢』とか週刊少年ジャンプ系のものが流行っていたと思うんですが。

岡本:あのあたりとは全然違うんですよ。僕が考えていたサムライトルーパーって、今に置き換えると『戦国BASARA』に近いんですよ。ある日、商品を決めるときに「少年にするぞ」って言われて「えー!?」ってなって(笑)。

タカハシ:美少年5人っていうのは元々は決まっていなかった?

岡本:決まってなかったです。もちろん、僕が思う初期の段階っていうのが全体のどの時期かって、問われるとしどろもどろですが。

タカハシ:サムライトルーパーは女性人気がすごく高かったって良く言われますが。

岡本:いや、それはね、女性ばっかりっていうのは「記憶の書き換え」ですよ。

タカハシ:ははは(笑)。

岡本:やっぱり子供が主力ですよ。コミックボンボンで別冊とか出たんです。凄い珍しいことで、女子ファンだけなら出ないですよね。子供たちからの「僕の考えた武器、ヨロイ」のハガキなんか、一回にダンボール箱ぎっしり二杯半ですよ。

タカハシ:サムライトルーパーって、おもちゃのほうはどうだったんでしょう? めちゃくちゃ売れたっていうわけではない?

岡本:やっぱり、大きいお姉さん用のキャラクターグッズとかはかなり売れましたね。男の子向け玩具も成績残すくらいには売れました。

タカハシ:じゃあ、やっぱりサンライズに対してはある程度の結果を出して筋は通したと。

岡本:そうですね。

タカハシ:同時期には、『超人機メタルダー』に参加してますね。ここでついに特撮作品に初参加です。

岡本:これは、サムライトルーパーの前ですね。当時参加した時、すでに森木さん(※森木靖泰)デザインの軍団員が決まってました。でも、念願の特撮だったのでメタルダーに関しては「どうしてもやりたい!」と参加して、興奮しながらやっていましたね。

タカハシ:メタルダーはどのあたりのデザインをやっていたんですか?

岡本:ゴーストバンクで商品として発売されるネロス帝国のやつとかですね。機甲軍団、バーベリィ、ストローブとか、ブルチェック、ダーバーボ。ガラドー、ジャムネ、あとは、ジャース、ブライディ。あとは、それぞれ軍団のバイクですね。

タカハシ:この『鎧伝サムライトルーパー』『超人機メタルダー』の頃くらいから、すごい数の作品に関わっています。

岡本:サムライトルーパーの企画が落ちついた頃から『魔神英雄伝ワタル』もやっていました。番組後半出てくるメカのデザインですね。200体くらいデザインしました。明けても暮れてもやっていましたね。

タカハシ:200はすごいですね(笑)。その次が『桃太郎伝説 PEACHBOY LEGEND』。これは人気ゲームと「鎧もの」をミックスしたようなアニメ作品ですね。

岡本:これは、サムライトルーパーがヒットしたんで、声が掛かった作品ですね。ゲームの『桃太郎伝説』を結構アレンジしてテレビアニメにしました。僕は、テレビゲームやらないし、原作の方の人たちは、あまり面白くなかったかも知れないですね……。ゲストキャラクターもいくつか描いてました。

特撮原体験、そして『木枯し紋次郎』の衝撃

タカハシ:このあと90年代は、特撮系の作品にも多く参加していくわけですが、ちなみに岡本さんの原体験的な特撮作品っていうのは何だったんですか?

岡本:『フランケンシュタイン対地底怪獣(※バラゴン)』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』『キングコングの逆襲』ですね。

タカハシ:なるほど、東宝系ですね。ウルトラマンはどうですか?

岡本:ウルトラマンは、ドップリ見ていました。第一次怪獣ブーム世代ですよ。仮面ライダーも見ていました。

タカハシ:岡本さんって何年生まれでしたっけ?

岡本:昭和35年、1960年です。

タカハシ:そうすると仮面ライダーとかの時は、11~12歳くらいっていうことですね。『ウルトラQ』の本放送も見ていた?

岡本:5~6歳で見てました。仮面ライダーに関しては旧1号が好きだったので、一文字隼人の2号になってからはあんまり見ていなかったですね。(※『仮面ライダー』は途中で主役交代が行われた)

タカハシ:なんかわかりますねー、前半のホラー調の時期ですね。怪人のマスクから本物の目が出てる時期。

岡本:13話までですね。しかし、正月スペシャルの桜島対決、スノーマン、ゴースターが出てきた回で1号が助けに駆けつけるじゃないですか。あそこで少し熱が戻りましたね。

タカハシ:やっぱり1号が好きってことなんですね(笑)。本郷猛がお好きだと。後半のゲルショッカー編は、新1号が出てきますけれど。

岡本:新1号は見ていました!

タカハシ:ちなみにウルトラマンシリーズはどこまで見ていましたか?

岡本:『帰ってきたウルトラマン』までですね。

タカハシ:『ウルトラマンA』で卒業した?

岡本:いや、『変身忍者嵐』(※『ウルトラマンA』の裏番組)派だったので、エースは全く観てなかったです。エースを初めてに近い形で見たのは、40代の頃、桜井浩子(※『ウルトラQ』や『ウルトラマン』にヒロインを演じた)さんからDVD頂いて見ました。

タカハシ:逆に良いかもしれない!(笑) 子供のころにエースを見て「子供っぽくてつまらない!」ってなってる人、多いので。(※タカハシは「エース好き」)

岡本:特撮に関しては『ウルトラQ』に始まり、『恐竜グワンジ』『ヒルゴン』『ゴルゴ』とかまで色々見ていたんですけれど、小学校6年生の時に『木枯し紋次郎』を見てウルトラ、ライダーいったん全部すっ飛んでしまったんですよね。衝撃的でした。笹沢佐保から始まって子母澤寛、長谷川伸、村上元三も読み国定忠次の研究本にハマりました(笑)。

タカハシ:へー! 意外なところに! 『木枯し紋次郎』のDVD全話解説もやってますよね?

岡本:『木枯し紋次郎』は本当にもう大好きで。全話のDVDが出るっていう話を聞いたんですよ。「だったら全話解説を書くのは俺しかいない!」っていうことで強引に書かせてもらって(笑)。それで紋次郎役の中村敦夫さん、とか市川崑監督とかにインタビューをしたんです。『木枯し紋次郎』で、ずっと思ってた疑問が1つあって、それを市川崑に直接聞いたりとかしました。

タカハシ:ちなみにその疑問っていうのは?

岡本:渡世人の旅っていうのは2つあるんです。一つは「楽旅」といって、自分の名前を売るための旅。もう一つは「急ぎ旅」といって、人を殺した凶状持ちが逃げ惑う旅なんです。菅原文太の映画版『木枯し紋次郎』は「急ぎ旅」なんですよ。テレビシリーズの『木枯し紋次郎』は設定に「赦免花は、散った」というエピソード(※紋次郎が兄弟分の身代わりに島流しになった、という設定が語られる)が存在しないので「楽旅」なんじゃないか、って思っていたんです。それを市川崑に訊いたら「その通りだ!」と。

タカハシ:へー! それは、いつくらいですか? 市川崑さんは10年くらい前に亡くなっていますよね?(2008年没)

岡本:亡くなる2年位前だったかな。だから市川崑監督の最後にインタビューしたの僕なんです。ニュース番組で流れる市川さんの最後のインタビュー映像で、合間に聞こえてくる笑い声は、僕なんです。

タカハシ:すごい話ですね……!


メタルヒーロー、スーパー戦隊、そして念願の東宝作品参加『ゴジラVSデストロイア』

タカハシ:それじゃ話を戻しまして、『桃太郎伝説 PEACHBOY LEGEND』のあと、本格的に特撮に携わっていくわけですが、1989年の『ゴジラvsビオランテ』からの東宝特撮の数作っていうのは全く参加していないわけですよね?

岡本:していないですね。東宝との接点が、全くなかったです。当時、『ゴジラvsモスラ』時に知り合いから東宝の撮影所を見学に行こうって誘われたことがあったんです。それで撮影所の前までは行ったんだけど、ゲートくぐる段になった時、「俺はプロとして、仕事としてじゃないとこの東宝撮影所の門をくぐるの嫌だな」って、せっかく声掛けてもらったんですけど、ゲートはくぐらず帰ったんですよ(笑)。

タカハシ:かっこいい~! これも、すごい話だ。

岡本:何年か待ったかいがあって、お呼びが掛かった時は、本当嬉しかった。

タカハシ:特撮映画では最初に『ヤマトタケル』に参加したんですよね?

岡本:ヤマタノオロチ、イクサガミ、アマノシラトリ、全部やりました。全部ボツになりましたけれど(笑)。

タカハシ:なるほど(笑)。東宝系に最初に関わったのは94年の『ヤマトタケル』が最初で、同じ頃に『特捜ロボ ジャンパーソン』、そして『ブルースワット』もやっていると。じゃあ1993~95年くらいは、多忙を極めてるってことですよね。

岡本:そうですね。あとはイラストの仕事とかもしていましたから。

タカハシ:イラストっていうのはどういう?

岡本:いろいろです。雑誌も描いていたし、学習図鑑とかもですね。眼球を輪切りにした断面図とか、ダムの仕組みの絵とか。

画像提供=岡本英郎

タカハシ:あー! 僕らが、子供の頃に読んでたヤツですね。ちなみに、ジャンパーソンでは何を担当したんですか?

岡本:ジャンパーソンは劇中のイラストですね。ガンギブソンが、僕の描いた海底都市のイラストを川に投げ捨てるシーンがあるんですよ。それで104(※『特捜ロボ ジャンパーソン』企画協力を担当した『企画者104』)の葛西(※葛西 おと)さんから電話かかってきて「すいません……原画投げちゃいました」って。「えー!」って(笑)。

タカハシ:ガンギブソンに対して恨みがあると(笑)。ジャンパーソンは子供のころ、なんか凄いかっこよかったんですよね。デザインも、色が紫色っていうのが大人っぽくて。そして次が『忍者戦隊カクレンジャー』ですね。ここで初めて戦隊ものっていうのが結構意外ですが、戦隊ものは、カクレンしかやっていない?

岡本:そうですね。

タカハシ:カクレンもめちゃくちゃ好きだったなあ。これに関しては、なにをやったとか覚えていますか?

岡本:それはここにあります。

タカハシ:すごい! うわ、こいつ超覚えてます! うわーすごい。かっこいい! ……じゃあ妖怪のデザインの大部分をやっているんですね。ちなみに、これは原画ですか?

岡本:これはコピーかな。原画は東映に納品しちゃってる。カクレンは、篠原さんやマイケル原腸さんと一緒にデザインしてました。

タカハシ:これは超忍獣を操作しているところですよね。これすごい印象的でした!

岡本:そう、ロボの中で操作しているところ。ちょっとからくりっぽくしています。

タカハシ:伝奇感のあるカクレンジャーは他の戦隊ものとかなりテイストが違うから、岡本さん色が強く出てますよね。『恐竜戦隊ジュウレンジャー』、『五星戦隊ダイレンジャー』、『忍者戦隊カクレンジャー』の流れはめちゃめちゃ響いてましたよ当時。

岡本:あのあたりは本当にすごかったですよねー。

タカハシ:その次が、いよいよ『ゴジラvsデストロイア』。「ゴジラ死す」のキャッチコピーが衝撃的だった『ゴジラVS』シリーズの最終章ですが、デストロイアだけでなく、ゴジラジュニアのデザインも担当されてるんですよね?

岡本:そうです。

タカハシ:デストロイアは、完全体のデザインを担当しているわけですか?

岡本:そうですね、他の形態は別の方で、いろんな方と打ち合わせをしながらやっていった感じです。初期段階のバルバロイって呼ばれていた時は、人型や合成獣も提案しました。

タカハシ:デストロイアって、かなり悪魔的なデザインですよね。

岡本:あれはね、自分としては、新バラゴンなんですよ。

タカハシ:おおー確かに! 角も耳もバラゴンだ!

岡本:そうなんです。バラゴンを悪っぽくしたものをイメージしていました。

タカハシ:川北さん(※川北紘一)とかの監修は入ってくるんですか?

岡本::そこは、よくわかんないんですけどね。東映は、東映のやり方でデザイン詰めていくし、東宝は、東宝のやり方があるからね。川北監督と怪獣の在り方については、いろいろ話し合いました。僕は、生物の延長線上にあるのが、怪獣という認識でしたが、川北監督は、別なモノって意識だったから、当時は、自分が理解出来ていたとは、言い難いかもですね。なので、手応えがないというか……。

タカハシ:川北さんから「デストロイアはこういう風にしてくれ」っていうような指示はあったんですか?

岡本:フォルムのこととかはありましたね。夜遅くに東宝に呼び出されて、川北さんと二人きりで話したりしていました。

タカハシ:この作品で、いよいよゴジラとがっつり関わったわけですよね。結構そこは「ついにやったぜ!」的な感じはありましたか。

岡本:ありました、ありました。まあでも偶然が重なって関わることになったんですけれどね。

画像提供=岡本英郎

タカハシ:たしか、えみそん(※おかもとえみ、岡本さんの娘)も『ゴジラvsデストロイア』の撮影現場に行ったことがあるんですよね?

岡本:あります。『モスラ』も連れて行ったし、『ゴジラ2000 MILLENNIUM』も。

タカハシ::良いな~(笑)。そうだ、平成モスラとミレゴジの話もしないと!平成モスラでのデザイン担当されたのは?

岡本:モスラの本体ですね。水中モスラは吉田さん(※吉田穣)で、鎧モスラは西川さん(※西川伸司)です。

タカハシ:レインボーモスラですね。じゃあいわゆる平成モスラの根底になる、基礎的なモスラのデザインを担当されたと。

岡本:そうです、そうです。

タカハシ:でもすごい難しいですよね。もう確立された昭和のモスラがすでにあるわけじゃないですか。

岡本:モスラの時は、紙に鉛筆が、触れた瞬間に決めてやろうと。イメージが浮かぶまでは描かないって決めていたんです。「絶対に一発で決めてやろう」って。そういう馬鹿なことをやるんですよね(笑)。ずっと3日くらい紙の前にいて、それで「来た!」って時に一気に描き上げました。

タカハシ:かっこよすぎるエピソード。平成モスラって、デザインしたご本人的にはそれまでのモスラと、どこが一番変えていると考えてますか?

岡本:目とか、その後ろの毛の感じとか、このモスラも実はバーザムとかと同じでV字形というか、三角形のフォルムなんです。スズメ蛾をベースにデフォルメしていきました。

タカハシ:確かに、それまでのモスラって丸みのあるイメージでしたけれど、平成モスラって攻撃的なフォルムで、ヒーローっぽいですよね。

岡本:一発で描き上げたんで、プロセスを踏むラフは、1枚もないんですよ。一枚絵です。

タカハシ:そして『モスラ2』を経て、『ゴジラ2000 MILLENNIUM』の宇宙怪獣オルガですね。

岡本:新しいゴジラが戦う怪獣は、絶対に人型のフォルムを持った怪獣だっていう風に思っていて。そう考えながらデザインしていったんですよね。

タカハシ:オルガはかなりクリーチャー的な、ゴジラの対戦怪獣としては変わったデザインですよね。

岡本:人間をベースにした形なんです。考え方としては、『スター・ウォーズ  ジェダイの帰還』のランコアに近いですね。

タカハシ:たしかに、今までの怪獣と比較したら、かなり洋画っぽいですよね。だからすごく予想外だったというか「アメリカンなのが出て来たな」と思っていました。

岡本:デザイン提出したものはもっと人間っぽくて、指も5本あったんですけれど、若狭さん(※若狭新一)によって、より怪獣っぽくなっていった感じですかね。酉澤さん(※酉澤安施)がデザインをつめていったのとかは、若狭さんの着ぐるみが出来てから知りました。指も3本になってましたし、顔も若狭さんが粘土をいじって決定したと聞きました。

タカハシ:オルガって、アメリカで人気があるらしいんですよ。

岡本:あ、そうなんですか。

タカハシ:そうらしいんです。なんとなくわかる気がしますよね。指が5本あった人間的なオルガも、見てみたかったなあ。ちなみに、ゴジラシリーズいろいろとありますけれど、一番好きなゴジラのデザインってどれですか?

岡本:『キングコング対ゴジラ』と『ゴジラの逆襲』ですね。

タカハシ:キンゴジと逆ゴジ。じゃあ結構、意思疎通出来なさそうなゴジラが良い感じですかね。強くて、マッシヴな感じの。……さらに、様々な漫画の原作や書籍、カードゲーム系にも携わっていきますが、この『ゴジラ:トレーディングバトル』っていうのはプレステのゲームでしたっけ?

岡本:ゲームです。ゲーム内に新怪獣とかも出てくるので。

タカハシ:あとは、桜井さん(※桜井浩子、『ウルトラマン』のフジアキコ隊員)や、ひし美さん(※ひし美ゆり子、『ウルトラセブン』のアンヌ隊員)の本の構成もやってらっしゃいますよね。あれが「昔の特撮ヒロインが本を出す」のはしりですよね。

岡本:そうですね、それは「島本高雄」の筆名でやっていましたね。

タカハシ:桜井さんの本が1994年なので、本当に94年あたりが半端じゃないですね、仕事しすぎ感すらあります(笑)。で、そのあと『重甲ビーファイター』、『ビーファイターカブト』、『ビーロボ カブタック』、『テツワン探偵ロボタック』。メタルヒーローの流れのニチアサ枠ですね。

岡本:それぞれの回のゲストロボのようなものをやっていた感じです。

タカハシ:そのあとは、『ウルトラマンティガ』。

岡本:ティガでは、陸海空の怪獣を3体デザインして、その中の陸の怪獣ガーディーだけ採用されましたね。

タカハシ:その他の2体のデザインはまだ残っているんですか?

岡本:残ってます。

タカハシ:すごい、それは見たいですね! その辺の岡本さんの未発表のものって、権利ってどこにあるんですかね?

岡本:その時々で変わってきますからね。画集を作るってなったら各所と相談しないといけないですね。

タカハシ:画集ぜひ作ってほしいですね。そして2003年が、川北監督はじめ平成ゴジラのスタッフが参加した『超星神グランセイザー』です。

岡本:グランセイザーは、西川さんやデザイン会社と区分けしてデザインをやりました。思い出深いのは、インパクターロギアでしたね。ハカイダーを越えるようなダークヒーローを、ということで誕生させました。それと、ユウヒという、防衛隊が開発した戦闘ロボットをデザインしたんですが、「ロボット着ぐるみの欠点」を排除するデザインにしました。


プロレス、UMA、映画監督、広がり続ける岡本英郎の世界

タカハシ:さらに、プロレス好きが高じて、プロレスチームのマスクのデザインなどもやられているじゃないですか。それは何年くらいから?

岡本:長谷川咲恵っていうプロレスラーがマスクマンになるときにですね(※1994年)。ちょうどKADOKAWAで『ブリザードYuki』っていう漫画を始めるタイミングでもあって、そこで自由にやらせてもらいました。IWAプロレスでは、ビッグフットをリングに上げたの始まりに、雪男、デスワーム、ゴム人間、チュパカブラと続々登場させUMA軍団化させました。

タカハシ:そうですよね、UMA研究家としても名高いわけですが。僕が最近コンビニで見つけて「これは良いな」って買ったUMA本が、良く見たら岡本さんの著書だったこともあります(笑)。

画像提供=岡本英郎

岡本:その昔、「UOO PROJECT」っていうUMAを探索するプロジェクトがあったんです。その中で、トルコにいる「ジャノ」っていう怪獣を探しに行くってことになってたんです。でもその頃、映画秘宝の田野辺さん(※田野辺尚人)から「ジャノはいない」っていうこと聞いてたんです。だからジャノは、インチキだからって言ったんですよ。そうしたら「そんなに否定するなら、どこにUMAがいるんだ」と言われて。それで自分でUMAを探しに行くことになったんです。

タカハシ:なんかすごいなぁ(笑)。最初に行ったのはどこだったんですか?

岡本:アイルランドです。その当時も、今でもアイルランドは、日本のマスコミ誰も行っていなかったような場所です。

タカハシ:ちなみに、UMA研究家の岡本さん的に「こいつは、間違いなくいない!」っていうヤツはどれですか。

岡本:まず、断言出来るのは、想像図のようなプレシオサウルスのようなネッシーは、いないです。

タカハシ:ネッシーはいない! 逆に「こいつの可能性はゼロじゃない」っていうのは?

岡本:オゴポゴ、オランペンデグ、ヒバゴン、イッシーかな。ビッグフットも近年の研究では、生存率が高い。アイルランドの湖に出るUMAもゼロじゃないですね。名前もついていないようなものなんですけれど。行くの大変でしたよ。崖から落ちそうになって死にかけたり、深い森に入って遭難しかけたこともあります。森、ちょっと甘く見てました。モケーレ・ムベンベの研究で知られる、ロイマッカル博士が、30年前に入ったきり誰も入ってない森ですよ。

タカハシ:こわー。ちなみにモケーレ・ムベンベってどこのUMAでしたっけ?

岡本:コンゴのテレ湖付近、僕は行ったことはないです。行くのかなり大変です。モケーレ・ムベンベの調査を行なった早稲田の高野秀行さん達は、本当凄いです。現地行く途中の地域は、治安がヤバイですしね。あとはマラリアとか、それが自然のバリアになっているんです。だからこそ、人が足を踏み入れていない場所があるんです。

タカハシ:じゃあまだモケーレ・ムベンベが見つかる可能性もあるってことですかね?

岡本:あるんじゃないかなあ。知り合いの爬虫類研究所の富田京一さんから面白い情報も聞いています。富田さんは、僕にとっての一ノ谷博士(※『ウルトラQ』に登場する博士)みたいな存在で、アイルランドやスコットランドのUMAを探しに行く時に、UMA該当生物を想定してもらい、その生物の行動パターンをご教示してもらいます。

タカハシ:いまイチオシのUMAはいるんですか?

岡本:イチオシというか、タイの村にでる5メートル級のワニの所は、行きたかった。撮影準備までしたんですけど、その頃タイでクーデターとか始まっちゃって。ちょっと落ち着いた頃、タイに行くだけは行きました。キングコブラと、アユタヤ遺跡に行く途中でチャイヨー(※かつてタイでウルトラマン作品を制作していた映像会社)の朽ち果てた実物大ウルトラマンの首は、目撃しましたが(笑)。実は近々動かそうとしているものもあるんですけれど……。

タカハシ:おお、それはじゃあまた追い追いということですね。最近は、UMA研究家としてテレビに出たりもしていましたよね?

岡本:僕もう、それ嫌で、6年間断っていたんですよ。その前も河崎実監督が関わってるMONDO TVでUMAの番組をやるみたいな話もあったんですけどね、断ってしまいました。

タカハシ:ちなみにUFOとか、宇宙人方面っていうのに関してはご興味は?

岡本:あんまりですかねー。あー、でも『円盤戦争バンキッド』のDVD特典映像のUFO解説は、セリフ棒でやりました。でも、やっぱり怪獣のほうが好きなんで(笑)。そういえばそのUOO PROJECTの中で、本栖湖にモッシー探しに行ったんですよ。撮影隊には、僕と、『ウルトラQ』の江戸川由利子こと桜井浩子さんがいて、カメラマンが『怪奇大作戦』や実相寺(※実相寺昭雄)組の稲垣涌三さんで、飯島監督(※飯島敏宏、『ウルトラマン』監督)がいて。そのメンバーで本栖湖を高台から見てたら湖の中央付近に白い航跡がたったんです、30秒間くらいだったかな。

タカハシ:うわ、ジラース!

岡本:結局、その航跡は全然UMAとは違うものだったんですけれど、その30秒の間、その瞬間っていうのは、本当に『ウルトラQ』の世界にいるような時間でした。

タカハシ:本当にそうですねえ。

岡本:桜井さんご本人を目の前にして『ウルトラQ』ごっこをしていたという(笑)。「由利ちゃん、白い航跡が」って言ったら、バッカじゃないのって一笑されました(笑)。

タカハシ:岡本さんって『木枯し紋次郎』もそうだし、『ウルトラマン』に『ゴジラ』、UMA、プロレスって、好きなことはだいたい全部仕事にしましたね(笑)。

岡本:やりましたね(笑)。

タカハシ:すごいことですよ。ある意味、究極じゃないですかね、オタク道の。

岡本:本当に偶然ですね。運がよかったんですよ。

タカハシ:デザインの才覚やセンスももちろんそうですが、きっとなにかあるんでしょうね。……ちなみにデザイン系の仕事っていうのは、2000年代くらいからあまりやらなくなっていったような印象を受けるのですが。

岡本:なんかもういいや、ってなってしまったんですよね(笑)。1つきっかけとしては……中国でヒーローものの企画をやっていたんですよ。

タカハシ:円谷の一族の方がやっていたやつですか?

岡本:あ、それではなくて。いろいろ錚々たるメンバーでやっていたものがあるんですよ。それがずっこけてしまって。

タカハシ:公開自体はされたんですか?

岡本:いや、されてないんです。すべて企画を決めきった時に無しになってしまった。デザイナーとして怪獣もヒーローもデザインしていて、結構な規模でやっていたのでその痛手はすごかったですね。集大成的な感じでやっていたので。

タカハシ:なるほど、それはキツイ……。

岡本:そういう時ってベクトルを変えた方が良いんですよ。その失敗したときに学んだことがあって、全てを仕切る監督をやろうかなと。

タカハシ:なるほど。近年は映画監督として活躍しているわけですが、監督として本格的に撮り始めたのはどれくらいからでしょうか?

岡本:東日本大震災の1年前くらい、2010年くらいから撮り始めていますね。震災の最中撮った『究極の告白』という作品は、御蔵入りになってしまいました。

タカハシ:今現在は監督業がメインで、デザイン業はあまりやっていないという状況なんですね?

岡本:監督業がメインですね。でも、デザイン方面も動かしているものがあって、いずれ公開しますよ。あとはUMAの方も……これ、僕がアイルランドで見たUMA「ドアルクー」なんですけれど。

タカハシ:実際に見た!?


岡本:見ました。実はアイルランドの別な湖でも水面下を泳ぐ目測5メートル大の生物を目撃して映像に収めています。マクロス湖で撮影したドアルクーは、現地ガイドのデイクランさん、撮影の山本くんと3人でメチャメチャ間抜けな目撃したシーンをテレビでやる時あるんですけど(笑)。

タカハシ:それをソフビ化したと。最高ですね(笑)。あ、毛が生えているんですね。じゃあ哺乳類型なんだ。

岡本:大型のカワウソです。ロシアのアルマスティから独自展開ソフビになり、最新作がこのアイルランドの水棲UMAドアルクーなんですよ。

画像提供=岡本英郎

タカハシ:なるほど(笑)。そろそろ時間ですね……。それではこれからの活動予定についても聞かせてください。

岡本:6月3日にLOFT9 Shibuyaで開催される『大怪獣チャランポラン祭り 鉄ドン』というイベントに監督として「怪獣番長奴らを倒せ」という作品で参加しました。怪獣映画のオムニバスイベントです。面白ければ上映後に拍手が、つまらなければ「金返せ!」とブーイングが起こるという(笑)。あとは、ついに勝負作品をやろうと思っていて、それもいま動いているところですね。それと科楽特奏隊が、メチャメチャカッコいい主題歌を作ってくれた、史上初の平仮名名前のスーパーヒーローになった『獅子仮面あうん』も進んでます。

タカハシ:おお。楽しみです! また、いろいろやりましょう。本日は長時間、ありがとうございました!

岡本:ありがとうございました。


バーザム!(挨拶)
タカハシヒョウリです。

まずは、前回の「バーザムの真実に迫る&全仕事史インタビュー~ガンダム編~」に予想以上の反響があって、全世界に散らばるバーザマーのシェアに感謝です。そして今回も、編集部が“カスピ海ヨーグルトなみの濃さ”とザワつくすさまじい内容となりました。いちミュージシャンとしては、身の丈に合わぬ大仕事を終えた感慨があります。

岡本英郎さんのすごさは、一所に止まらず、つねに流浪して色々なところにデザインを残してきたことで、ある意味本物の「風来坊」なのかもしれません。それゆえに、残してきた仕事の数々が一つのイメージでくくれないので、意外に知られていない部分も多いのかもしれないです(前編公開時、「バーザム」と「デストロイア」のデザイナーが同じことに驚く人は多かった)。今回の全仕事史インタビューが、岡本さんの功績のアーカイブの一端になったら良いなと思うと同時に、どこかの出版社が原画集を出してくれないかなぁ、と思う風来坊なのでした。(どうですか? そこの出版界のバーザマーのあなた!)

長時間、たくさんの話を聞かせてくれた岡本英郎さん、ありがとうございました。

そして、ここまで読んでくれた読者の皆様に岡本英郎さんから、さらにすごいプレゼントが。岡本さんがデザインしたキャラクターが集合した新規イラストを描き下ろしてくれました! ここでしか見れない豪華すぎる新作!

(※左上から時計回りに)グリッドマンシグマ 、『超星神グランセイザー』インパクターロギア、ビッグフット、『魔神騎士ジャック☆ガイスト』、プロレスラー・ブリザードYuki、『仮面天使ロゼッタ』、『鎧伝サムライトルーパー』輝煌帝烈火  イラスト提供=岡本英郎

ちなみに、岡本英郎さんを父に持つおかもとえみこと「エミソンヌ」が在籍する特撮リスペクトバンド・科楽特奏隊のメジャーデビューアルバム『ウルトラマン・ザ・ロックス』が6/7(ロックでセブンの日)に発売です。ウルトラセブン放送50年を記念した、円谷プロ公認のウルトラマンロックカバーアルバムです!こちらもぜひにね。ボーカルは北斗ヒョウリってやつです。

 

さぁ、サブカル風来坊、次回はどこへまろびでるのか……。
ていうか、小説家の乙一さんのところにまろびでます。乞うご期待。

リリース情報
科楽特奏隊
アルバム『ウルトラマン・ザ・ロックス』
 


2017年6月7日発売
TKCA-74498 ¥2,000+税

予約:TOWER ONLINEAmazonDISK UNION

科楽特奏隊公式サイト:http://www.katokutai-band.com/
  • イープラス
  • オワリカラ
  • 『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』 バーザムの真実に迫る&岡本英郎全仕事史インタビュー後編